以下のリンク先の近畿大学の声明の意味がよく分かりません。
https://www.kindai.ac.jp/news-pr/important/2019/07/017318.html
なぜ、労働協約を締結されないあいだに、近畿大学が組合員に賞与を支給することが不当労働行為に該当するのでしょうか。
日本の多くの(労働組合が存在する)企業、法人等では、毎年の賞与の支給率については、労働組合と団体交渉を行い、決定するという方式を採用しています。この場合、賞与の支給率についての交渉が実施され、妥結を経て、労働協約が締結されないと、支給率が決定しません。最高裁判例は、支給率の決定をもって、賞与の請求権が発生するという立場を採用していますので(これ自体は、学説からは異論もあります)、協約が締結されるまでは、その組合の組合員には賞与の請求権が発生していないことになります。
ところで、団体交渉およびその結果としての協約の締結においては、しばしば複数の内容が抱き合わせされる場合があります。たとえば、当局が基本給の引き下げと賞与の支給率についての条項をセットにして提案してきたとしましょう。A組合は、基本給引き下げ提案を受け入れて賞与の支給率とあわせて妥結したのに対し、B組合は基本給の引き下げに反対し、妥結しなかったとします。このような状況において、B組合の組合員に賞与を支給してしまうと、A組合の人たちは思いっきり損をすることになります。結果、A組合に対する不当労働行為になる(結果として、A組合を不利に扱うことになるので)のではないか、という有力な学説が存在します。おそらく、近大の当局は、このことを言っているのではないかと推察します(実際、近大は、労働条件の引き下げをめぐって、現在労使で大もめにもめているという風の便りを耳にしています)。
もっとも、このような場合に、B組合が受け入れがたいような条件を抱き合わせにすることが、B組合に対する不当労働行為になるという議論もあり(不当労働行為と判断した判例と、不当労働行為の成立を否定した判例がありますので、この限りで、本件に関する組合側の主張も、理がないというわけではありません)、非常に難しい問題なのです。
早速のご回答ありがとうございます。
2019/07/14 19:04:30丁寧に説明していただき感謝しています。大学の主張にも一分の理があり、複雑な問題であることがわかりました。
どういたしまして。この手の問題は、多数組合が妥結したにもかかわらず、反対姿勢に固執する少数組合に対して行われる→少数組合に対する嫌がらせというケースが多いです。が、中には、使用者側が誠実に交渉しようとしているのに、一向に少数組合が話し合いに応じず、らちが明かないというケースもないわけではありません。近大の労務管理は、他の多くの大学・学校法人と同様、かなりいい加減と聞いているので、状況はおおよそ察しますが、詳しい事実関係が分からないと、どちらの言い分に理があるかははっきり分かりませんね。
2019/07/15 09:01:44