お題:「斧」
という要素を含むショートストーリーを回答してください。初心者のかたも歓迎です。
・本文やタイトルに直接キーワードを使う縛りはありません。
・字数制限は設けません。読みやすく、内容に見合った長さにしてください。長編も、つぶやきサイズの掌編も歓迎です。
・〆切前の加筆・修正はご自由になさってください。大幅に変えた場合はコメント欄などで通知してくださるとありがたいです。
・私個人の好みを前面に押し出した感想(場合によっては講評っぽい何か)を書きます。そんなのいらん、という場合はあらかじめおっしゃってください。
〆切:少なくとも年内一杯は締め切らない予定です。
醜い斧の子(R-15:残虐要素あり)
昔々、右手が斧の子供が居ました。
兄弟姉妹たち、同世代の友達からは、醜い斧だ、醜い斧だ、と罵られて暮らしていました。
当時は、教育委員会とかが隠蔽体質だったのです。
さらには継母からあることないこと用事を頼まれ、
「今日中に庭の水撒きと、猫が遊んで解けた毛糸玉を元に戻しておくのよ!」
舞踏会には留守番させられる始末。
児相もフリーダイヤルで繋がらないのです。
斧の子は、泉に行きました。
いじめっこたちの返り血を洗い流すためです。
右腕を洗い終わった時に、泉から神様が登場しました。
「お前が拭った返り血は、おののの○の返り血か?」
「いえ、おのの○かの返り血ではなく、他の右手がおののこの返り血です」
「そんなことはないだろう、血液型がA型ぢゃ」
「A型人口は多いので、そういうこともあるかと」
「正直ものだ、ではお前の左手をこの金の斧に変えてやろう」
こうして、醜い斧の子の右手はもともとの鉞で、左手が金の斧になりました。
右足は鉈で、左足はチェーンソーです。
全身兵器となった、刃物の子は、一路、山を目指します。
こうなってしまっては木こりとして暮らしていくしかありません。
熊が出ました。それも全身が鋼鉄で覆われた鋼鉄羆です。
「鉄製の武器では歯が立たない、ましてや金の斧なんて……」
「刃物の子や……、それは金ではない」
神様の声が響きました。
「こんなに金色に輝いて錆もしないのに、金ではないですって?」
「そうじゃ、あの時は金と言ったが、それは……」
そこで声は途絶えました。実際のところ、金だったのかもしれません。
羆が語り掛けてきます。
「おらあよう、こんな身なりだから人々から恐れられているが、実際ははちみつを舐めながらだらだらくらしたいんだ。どうだ? その金の斧、ゆずってくれないか? それを売って山ほどはちみつを舐めてみたい」
「では家来になるなら、この金の斧を与えよう」
「家来になるから金の斧を譲ってくれ」
斧の子は金の斧を羆に譲り、代わりにその辺の木の枝を腕に装着しました。
左右でバランスが大きく変わってしまったので、後元々、左足のチェーンソーが勝手に動いたりするので、斧の子はまっすぐ歩けなくなってしまいました。
いくらまっすぐ歩こうとしてもその場でぐるぐるぐるぐると回ってしまいます。
ぐるぐるしているとバターになってしまいます。
ちょうどそこへ羆が帰ってきました。
「斧の子、もとい、刃物と木の棒の子、はちみつが沢山買えたよ! せっかくだからパンケーキにでも塗って食べようと思ってるんだけど、生憎、バターがない」
「バターならここにあるさ」
バターになってしまった元醜い斧の子は言いました。
「だが、小麦粉も卵も砂糖もフライパンもない」
「買ってこなかったのか?」
「はちみつを買ったら先立つものが無くなった。買えたのは食パンだけだ」
「あとで子羆に食パンにはちみつを塗ったものを食べさせてやればいい」
「それは良いことを聞いた。そうさせてもらおう」
そんな時、刃物と木の棒の子の電話がなりました。ガラケーどころか音声通話しかできないタイプのやつです。
電話の相手は継母でした。
「あんた! どこほっつき歩いているの! 水撒きは終わったの!? 仕事をほったらかして遊び歩いてたらただじゃおかないわよ!」
斧の子は言い返しました。
「そんなのとっくに済ませてます。
撒き終わる(薪を割る)のは得意なんで、斧だけに」
おあとがあれなようで。
(おしまい)
「 純金の斧 純銀の斧 純銅の斧 そなたが湖に落とした斧はいづれなるか?」
光り輝く和服の女性が、湖面に現れたのに驚いて、
鉄製の斧だったのだけれど、慌てた私は本音を隠さず即答した。
「 私が落とした斧は、ステンレスとチタンの合金製です。」
しばらく、沈黙の時間が流れた。
頭の中と心の内を見透かされたと感じて、背中に冷たい汗が少し流れた。
「 そなたは、本音で申したな。
合金製のは、いまから用意するのは手間が掛かりすぎて面倒じゃ。
今持っている金銀銅の斧を、三つ共、そなたに与えるから持ち帰るがよい。」
すばやい一番乗りありがとうございます!
金斧銀斧の話はさまざまな変造版があって面白いです。
最近ではtwitterの《中学二年生向け「金の斧」》で笑いました。
もともとのイソップ寓話では湖や泉じゃないし女神でもないし斧は両手に持ってないんですね。伝承されるにつれて絵になりやすい方向へ変化しているのも興味深いです。
醜い斧の子(R-15:残虐要素あり)
昔々、右手が斧の子供が居ました。
兄弟姉妹たち、同世代の友達からは、醜い斧だ、醜い斧だ、と罵られて暮らしていました。
当時は、教育委員会とかが隠蔽体質だったのです。
さらには継母からあることないこと用事を頼まれ、
「今日中に庭の水撒きと、猫が遊んで解けた毛糸玉を元に戻しておくのよ!」
舞踏会には留守番させられる始末。
児相もフリーダイヤルで繋がらないのです。
斧の子は、泉に行きました。
いじめっこたちの返り血を洗い流すためです。
右腕を洗い終わった時に、泉から神様が登場しました。
「お前が拭った返り血は、おののの○の返り血か?」
「いえ、おのの○かの返り血ではなく、他の右手がおののこの返り血です」
「そんなことはないだろう、血液型がA型ぢゃ」
「A型人口は多いので、そういうこともあるかと」
「正直ものだ、ではお前の左手をこの金の斧に変えてやろう」
こうして、醜い斧の子の右手はもともとの鉞で、左手が金の斧になりました。
右足は鉈で、左足はチェーンソーです。
全身兵器となった、刃物の子は、一路、山を目指します。
こうなってしまっては木こりとして暮らしていくしかありません。
熊が出ました。それも全身が鋼鉄で覆われた鋼鉄羆です。
「鉄製の武器では歯が立たない、ましてや金の斧なんて……」
「刃物の子や……、それは金ではない」
神様の声が響きました。
「こんなに金色に輝いて錆もしないのに、金ではないですって?」
「そうじゃ、あの時は金と言ったが、それは……」
そこで声は途絶えました。実際のところ、金だったのかもしれません。
羆が語り掛けてきます。
「おらあよう、こんな身なりだから人々から恐れられているが、実際ははちみつを舐めながらだらだらくらしたいんだ。どうだ? その金の斧、ゆずってくれないか? それを売って山ほどはちみつを舐めてみたい」
「では家来になるなら、この金の斧を与えよう」
「家来になるから金の斧を譲ってくれ」
斧の子は金の斧を羆に譲り、代わりにその辺の木の枝を腕に装着しました。
左右でバランスが大きく変わってしまったので、後元々、左足のチェーンソーが勝手に動いたりするので、斧の子はまっすぐ歩けなくなってしまいました。
いくらまっすぐ歩こうとしてもその場でぐるぐるぐるぐると回ってしまいます。
ぐるぐるしているとバターになってしまいます。
ちょうどそこへ羆が帰ってきました。
「斧の子、もとい、刃物と木の棒の子、はちみつが沢山買えたよ! せっかくだからパンケーキにでも塗って食べようと思ってるんだけど、生憎、バターがない」
「バターならここにあるさ」
バターになってしまった元醜い斧の子は言いました。
「だが、小麦粉も卵も砂糖もフライパンもない」
「買ってこなかったのか?」
「はちみつを買ったら先立つものが無くなった。買えたのは食パンだけだ」
「あとで子羆に食パンにはちみつを塗ったものを食べさせてやればいい」
「それは良いことを聞いた。そうさせてもらおう」
そんな時、刃物と木の棒の子の電話がなりました。ガラケーどころか音声通話しかできないタイプのやつです。
電話の相手は継母でした。
「あんた! どこほっつき歩いているの! 水撒きは終わったの!? 仕事をほったらかして遊び歩いてたらただじゃおかないわよ!」
斧の子は言い返しました。
「そんなのとっくに済ませてます。
撒き終わる(薪を割る)のは得意なんで、斧だけに」
おあとがあれなようで。
(おしまい)
ご参加ありがとうございます!
全く先が読めない怒涛の展開で面白かったです。辻褄が合ってるんだか合ってないんだかわかんないけど好き。落語っぽいオチがついてるのに笑ってしまいました。
その彗星は斧の形をしており、回転していた。
とある先進国の首長の執務室。
「だから、地球に衝突する可能性はどれくらいあるんだ!」
「何度も申しますとおり、データ不足で……」
「しないのならそれで良い。万一、いや億が一にでもぶつかる可能性があるなら対策を講じなければならんだろう。そもそもどうして今まで……」
「ですから、特殊な形状で、またどうやら回転しているらしく……」
「それは何度も聞いた。とにかく調査は続けてくれ。それと他国での状況は?」
「現時点で詳細な情報を出している国はありません。そもそも、我が国よりも詳細なデータを入手できる国などは……」
「即刻、全世界に共有させろ、ああ、私の権限でだ」
「ですが……」
「機密がどうのと言ってる場合ではないだろう。地球の危機かもしれんのだ」
首長の命令に、誰もがあわただしく動き始める。
この国で実施した、官民軍一体となった宇宙開発プロジェクト。それは大成功を納め、この国は他国の技術を数年、いや十年以上引き離した。そのプロジェクトの主要メンバーがここには集結していた。それぞれが自分の仕事を誇りに思っていたし、地位や名誉も得た。老齢の者などは、自身の人生の集大成とまで考えるほどの業績だった。
だが、厄介な土産を送って寄越したのだ。
「わからない……」
「所長……」
研究所の所長は頭を悩ませていた。
彗星の軌道について計算すればするほどわけがわからなくなっていく。
所長という役職に就いているが、彼は研究者としても第一線で活躍しているどころか、国内でも、いや世界でも最高峰の知識と経験、実績を持っている。件の彗星の発見者でもある。
その彼がまったく手掛かりすら掴めずにいた。
「探査衛星のセンサ類が壊れているとしか思えない!」
「しかしそれは……」
「ああ、わかってるさ。整合性は取れているんだ。ある時点を切り出して考えれば。だが、数時間後に過去のデータと最新のデータを照らし合わせると全くもって辻褄が合わなくなる」
「所長……」
「なあ、君、あの彗星は本当に存在するのか? いや、そもそもどこから来た。何故今になって発見された? ありえない。突如、こちらの観測範囲の内側に出現し、そしてこちらの計測の隙間を縫って、我々をあざ笑うかのように、その位置を、速度を、軌道を、自由自在に変えているとしか考えられない」
「ですがそんなことは……」
「ああ、だからあり得ないと言っている。だが……」
所長が言葉に詰まるのも無理はない。
実際に目を離した――多数のセンサーの非観測期間の――隙に、瞬間移動しているか、あるいは意思を持って動いているとしか思えないのだ。
「一定なのは回転軸だけか……」
それだけが唯一整合性の取れたデータであるが、だがそれが事態の解決に何ら寄与するものではない。
「所長、首長からデータの公開の許可を得ました。無制限で直ちに全世界へ発信せよとのことです」
「願わくば、この絡繰りの真相を突き止める知能が地球上にいることを……」
それから数時間後。所長のみならず、全世界の有識者が混乱に陥るのであった。
彗星は、位置や軌道のみならず、その大きさすら変化するようになっていた。
各国は、独自に探査機の打ち上げ、それに至らなくとも持てる技術を結集して観測を行い、そのデータを世界中で共有することで調査精度は飛躍的に向上したが、斧彗星に対して、それは焼け石に水であった。
相も変わらず、斧彗星は、出鱈目ともいえる動きをしているとしか思えず、時には後退したり、あろうことか一時的に消失しては、再度現れるという状況まで発現させた。
『マーキュリーⅡ』と名付けられたその彗星は、その巨大質量の影響によって月を地球圏から追い出し、その後釜に座った。
「斧がだいぶ小さくなったな、そういえば、もう週末か……」
地球の衛星軌道に収まったそれは、7日間サイクルで、大きくなったり、小さくなったりしていた。
まるで、有史以前、人類発祥以前からそこに存在していたかのように。自身の存在が、<週の概念>を人類にもたらしたかのように。
その後の調査を経て、斧彗星――もはや、あらたな月、斧衛星――は、当時の人類には未知の粒子で構成されていたことが判明する。
斧子(英名:axeon)、斧妹子(英名:kenzuishion)、斧ヤス子(英名:star dokkiri maruhihoukoqon)、などである。
人類がそれらの粒子の特性を解明し、活用することによって、時間跳躍、空間超越などの技術を得て、太陽系外への進出を果たすには、まだ数百年の時が必要であった。
地球&人類の存亡やいかに!とドキドキさせておきながら、結局何だったのかよくわからないまま、という尻すぼみな脱力感が面白かったです。
ご参加ありがとうございます!
2019/12/13 23:08:00全く先が読めない怒涛の展開で面白かったです。辻褄が合ってるんだか合ってないんだかわかんないけど好き。落語っぽいオチがついてるのに笑ってしまいました。