アドレスは、ダミーです。頼む人(本人)をA、頼まれる人(代理人)をB、相手方をCとします。
契約トラブルは、最後は裁判でどう判断されるか、です。
成りすましによってAに法的効力が生じるかどうかは、「AがBに代理権を与えていたか否か」に尽きます。
与えていた場合、A・C間の契約は有効(=Bではなく、Aが契約当事者になる)ですから、Cに対して履行してあげざるを得ません(しないと債務不履行で損害賠償しなければなりません。民法415条。)
Aが全く代理権なしに契約したなら、Aは契約意思が無いわけですから、契約不存在です。(無効以前の問題。)
問題は、A・B間で「不完全な」代理権授与があった場合で、(1)AがBに代理権を与える旨を表示した(本物の委任状をBがCに示していた等)場合−A・C間の契約は有効とされます(民法109条)。(2)Bが与えられた権限を逸脱して契約した場合−CがBが権限内の代理権行使と信ずべき正当な理由がある場合は、A・C間の契約成立。そうでなければAは免責です(民法109条)。(3)契約時点で代理権が消滅していた場合−原則A・C間の契約成立。但し、Cが消滅を知っているか、知らないことに過失があるとき免責(民法112条)。
上記で、Aに責任が無い、とされる場合は、契約は「不存在」ないし「無効」なので、Aは「無効だ。無効だ。」と言っていればよい。「無効」は「取り消し」と違い、何らかの手段をとらなくても「無効(効力が生じない)」です。(「取り消し」とは、例えばAが未成年者なら契約を「や〜めた」とCに意思表示することで契約当初にさかのぼって無効とする行為(制度)で、「取り消し」の意思を相手に伝えることが条件で、それまでは契約は有効です。取り消しが出来る場合は法定されています。−未成年、詐欺・強迫されてした意思表示など−)
無効を主張するAは、Cに無効である旨伝え、あとは「で〜ん」と構えていればよろしい。但し、訴えられる覚悟と、その際不存在ないし無効である証拠をしっかり持っていなければなりません。裁判では、証拠と弁論技術(裁判官に「なるほど」そうだろうと思わせる材料・論理構成・表現力・話術)が重要です。実際の裁判では、A・B・Cの利害・思惑が入り混じり、証拠も不十分であったりと、なかなかAの思う通りの結果が出るとは限りません。そのため、裁判内外で「和解」(双方が折れ合う)という形が、特に日本では多いようです。(裁判官も裁判内で和解を勧告することも多いようです。)