源氏物語「紅葉賀」、
光源氏のおうちに迎えられて、立場上「側室」となったものの、まだまだ子供っぽい若紫に対して、お付きの女房が
「かく、御男など設けたてまつりたまひては、あるべかしゅう、しめやかにてこそ見えたてまつらせたまはめ。
御櫛まゐる程をだに、物うく せさせたまふ」
と言う場面がありますが、これですか?
このように夫をお持ちになったのですから、それらしく大人っぽく(相手に)見ていただけるようにしなくてはならないのに(そうじゃないのは困ったものです)。
そのうち髪を上げて成人する時期になるのに、そのときの事が思いやられます。
とかそんな意味のはず。
これを聞いて若紫は、初めて自分が夫を持っているという立場なのを自覚するシーンです。
(かわいがってくれるお兄さんのおうちに住んでいる程度の意識しかなかった)。
あとは「更級日記」の最初の方で、源氏物語にかぶれた少女時代の作者が
「われはこのごろわろきぞかし、盛りにならば、容貌(かたち)もかぎりなくよく、髪もいみじく長くなりなむ、光の源氏の夕顔、宇治の大将の浮船の女君のやうにこそあらめ」
私は、今は不細工だけど、年頃になったら顔もすばらしくもきれいになって、髪もとても長くなるでしょう、夕顔や浮舟みたいになるかしら、
と夢想するシーンも、ちょっとシチュエーションは違いますが、表現にかぶる部分がありますが、どうでしょうか。
「古典の教材」というのが、学校で配布されたレベルのものか、赤本やZ会みたいな、多少マニアックなのもアリのレベルかがわかると、探しやすいかもしれません。
前者だと源氏、更級、蜻蛉、伊勢あたりに限定されますが、後者だと「浜松中納言」とか「とりかへばや」、「堤中納言」、古今以外の六大集なんかも視野にはいるので。
文章前半ですでに「盛りになりなば(年頃になったなら)」と言っているのですから、
「髪が伸びる」というのは、特に「大人になる」という比喩ではないと思います。
単に「源氏」に描写された女性たちの美しい長い髪にあこがれて言っているんだと思いますよ。
「いみじく長くなりなむ」ですから、年頃になれば髪は伸びるに決まっているけど、どうせなら「すごく長い、ステキな髪」になりたいと言っているのです。
長い髪は「大人」の象徴ではなく、「美女」の象徴です。
数年前のことで、全てがうろ覚えで、そう習ったような樹がする、というニュアンスでの質問でした。
人の記憶は確かではないですね……。
捕捉、ありがとうございます。