ニュースに「左派コレア氏が優勢 エクアドル大統領選 親ベネズエラ色濃く」
とありましたがなぜエクアドルの左派が大統領候補になったりベネズエラへの親交色が強いのかがわかりません。
この辺の背景についてご存知の方がいらっしゃいましたら教えていただけるとありがたいです。
よろしくお願いいたします。
問題を浮き彫りにするため、左派コレア氏の視点で回答させていただきます。また少し文章ながくなってことをお許しください。
歴史的背景
南米諸国の大半は、十九世紀前半に独立しました。しかし、欧州列強と対抗しつつこの地域を「裏庭」とみなす米国の支配、干渉のもとに長く置かれた辛酸の歴史を共有しています。とりわけ最近数十年は、米国などが主導する「新自由主義」の“実験場”とされ、多くの国民が貧困と格差に苦しめられてきました。
新自由主義(neoliberalism)とは、小さな政府と、大幅な規制緩和、市場原理の重視を特徴とする経済思想で、小泉さんのとった政策も新自由主義です。南米諸国は、この新自由主義のもと、極端な民営化を強要され、失業と貧困層の増大、貧富の差の拡大が激しくなるなど「失われた十年」(一九八〇年代)、「絶望の十年」(九〇年代)といわれる苦難の時代を経てきました。
基本的に南米諸国の国内の裕福層と軍部を米国が支援するかたちで新自由主義の体制が構築・維持され、左派勢力は徹底的な弾圧を受けた経緯があります(一般に日本のメディアでは反米勢力・政権を「左派○○」と表現し、親米を「右派○○」といっています)。
しかし、九〇年代末から各国で、こうした状況からの脱出、転換をめざす新しい政権の誕生(つまり左派政権)が相次いできました。ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイとボリビアの新政権は、自主的な国民本位の政策運営で南米大陸の様相を変えつつあります。
変化の波
昨年11月アルゼンチンで開催された第4回米州会議(カナダ、北米と中南米の首脳会談)でブラジル、ウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイ(4カ国は南米諸国共同体のメンバー)にベネズエラが同調して米国主導の米州自由貿易地域構想の強引な推進に反対して何ら合意に至らず大きなニュースになりました。また、ボリビアでは、昨年末の大統領選で当選を決めたモラレス氏が今月就任し、「新自由主義」からの転換、ガスなど天然資源の国有化、貧困問題の解決などの政策を掲げて新たな一歩を踏み出します。
エクアドル大統領選について
11月26日の決選投票では、バナナ輸出による大富豪で右派のノボア氏とベネズエラのチャベス大統領を信奉する左派のコレア元経済相の対決となります。
右派のノボア氏はエクアドルの主力産品であるバナナの輸出に関して企業110社を所有する、中南米でも指折りの大富豪ですので、富めるものがさらに富む新自由主義経済の立場です。新自由主義は日本の金融市場の例をみるまでもなく米国に大きな経済的なメリットをもたらすので米国の支援を受けています。
左派のノボア氏は、「新自由主義」からの転換、天然資源の国有化、貧困問題の解決などの政策を掲げており、貧困層の強い支持を集めています。またこの米国の標榜する新自由主義に対立する先導役を果たしているのがベネズエラのチャベス大統領でエクアドルに新たさ左派政権を樹立することをサポートすることで米国主導の米州自由貿易地域構想を阻止する狙いがあります。
しかし、米国に頼らざるを得ない(輸出や金融支援、無償援助など)面もあり多くの中南米新政権は国民は反米であるが、政府は親米(右派政権)となっていきます。