ミクロン単位の神経線維1本1本を外科手術でつなげられるとは思えないので、「神経繊維が束になってある程度太くなっているもの」をつないだということなのでしょうか?
だとすると、その束の中の神経線維はもともとと違うように接続されてしまい、意図したところと別の筋肉が動いたり、皮膚感覚がでたらめにマッピングされたりしてしまいそうな気がしますが、大丈夫なんでしょうか?
http://q.hatena.ne.jp/1163258626 の関連質問です。「運動器・感覚器と脳が神経線維で1本ずつ直接つながっている」ことを前提にしています。
神経とその終末器官(皮膚の細胞とか筋線維)は完全に一対一ではなく、一本の神経線維に対して複数の終末器官が支配されています。手は細かい知覚を必要としますので神経線維と終末器官との対応は一対一に近くなりますが、太ももとか、粗大な感覚や運動しか必要としない部分は一対一から離れ、一本の神経線維で多数の終末器官を支配しています。また、神経支配は線維間でもその支配領域はオーバーラップしています。例えば、隣の筋線維を収縮させてしまうようにまちがって支配しても、筋全体として収縮すれば問題とはなりません。
そのため、完全に神経線維一つ一つを対応させる必要はないのです。
また、質問者様のご想像通り、神経縫合の際には細い神経線維を一本一本縫合するのではなく、神経の束(神経束と言います)を包んでいる膜(神経周膜といいます)を縫合するのです。あるいはもっと大ざっぱに、神経束を束ねている神経上膜という膜を縫合する方法もあります。いずれも神経線維そのものを縫合するわけではありません。電気コードで例えると、内部の金属の導線をつなげずに、外側のビニールだけを縫合するのです。そうすると、神経線維はそこから縫合したトンネル内を終末器官に到達するまで伸びていきます。そのさい、神経線維は一本当たり百本ほどの線維を伸ばし(イソギンチャクのような感じです)、手当たり次第に伸びていき、終末器官に到達しますが、ここで神秘的なことが起こります。神経線維と終末器官に相性のようなものがあり、相性の悪い神経線維は到達してもつながりにくいのです。相性のいい線維だけが終末器官の細胞とつながることが出来るのです。そうすることで、感覚線維が筋肉に入ったり、運動神経が皮膚につながったりしにくくなっているとされています。
マッピングが変わることはあり得ますが、神経縫合する場合には、顕微鏡を使います。そこで、神経の断面を見て、神経束の形や、神経周囲に沿って走っている血管の形などを参考に、元の形からズレにくいように縫合します。そうすることでマッピング異常を出来るだけ少なくするのです。また、多少のズレがあっても、脳が認識を変えてくれます。そのためにリハビリが重要なのです。
下記のサイトはPDFファイルですが、整形外科医のすべてが知っているというような有名な医学書の神経縫合術に関する部分です。かなり専門的な記載ですが、神経の構造も載っています。よろしければご参考ください。
http://www.elsevierjapan.com/books/detail/campbel/chap59-60_vol8...
http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/1022yubi.html
ご指摘の通り、指の接合手術では神経線維一本一本を接合している訳ではなく神経束を接合しているので旧来の神経同志が必ず繋がる訳ではありません。上記サイトではその回復率は70%程度とされていますから、残り30%は誤った接合が起こり機能が失われてしまったという事になりますね。
(実際は繋がった神経ルートによる機能の代替・迂回が発生するので神経が元通りに繋がった確率はさらに落ちるのかな、とも思います。かくいう私も右薬指の指先をプレスで潰してしまい、当初は指先の感覚がなかったのですが、今では感覚もだいぶ戻ってきました。これは多分神経細胞の機能代替~脳神経での再学習/ネットワークの組み変え~が起こったのだと思うのですよ。この辺りのソースがちょっと見当たらなかったので申し訳なく。)
「多数の細い電話線を束ねた電話ケーブルを鋭利な刃物で切り、
その断面を再度つなぎ合わせても、たぶん混線しますが、神経束ではどうなのですか?」
ということです。
生物・医学畑の人には分かりにくい「電気屋イメージ」でごめんなさい。
質問してから気が付きましたが、指はもっと掌側の筋肉から腱で引っ張られて動かされているだけなので、動かすだけなら腱をつなげればよさそうな気がします。
指ではなく腕や手首をつないだ場合でお答えください。
(そういう手術がうまくいく事例数は多くない気もしますが)
でも、筋肉の数は全身でもせいぜい数百のオーダーなので、腕の筋肉への神経の数はそれほど多くないのかな?
ですが、修復します。
その過程が可能なのが、生物の面白いところでして、、
コメント見落としてました。
言葉足らずだったり、わかりにくい表現があったかもしれません。
全力でお答えします。