文政8年(1825年)7月――。売れない歌舞伎狂言作者のY蔵は、思案をしながら江戸中橋界隈を歩いていた。すぐに中村座が見えてきた。演目は、「東海道四谷怪談」、三代目菊五郎のまねきが掲げられている。
「南北め!今にみておれ・・・」。そうつぶやきながら、自宅で書机に向かった。
Y蔵の筆がどんどん走っていく。
ある深夜のことだった。トン、トンとかすかに木戸をたたく音と、「1両・・・2両・・・」とお金を数える女のか細い声がした。
大店のXとの情事を目撃したO一郎は、今でも後妻の母が許せずにいた。
幾重にも折れ曲がった山道を抜けるときれいな滝がある。
「あなたを殺していいですか」
O一郎は驚愕した。
消えゆく意識の中で、思いつくまま一人旅に出かけた道中、美しい女性と再会し、恋仲になったことが脳裏をかすめた。
山道で男の惨殺死体が見つかる。
遠国奉行は、連れの女性を疑ったが、ひどい拷問にあわせても殺しを否認し続けた。
Y蔵は、「イマイチだな」と言って、センテンスを入れ替え始めた。
原文をシャッフルするとこんな感じかな、と思いました。
幾重にも折れ曲がった山道を抜けるときれいな滝がある。
山道で男の惨殺死体が見つかる。
遠国奉行は、連れの女性を疑ったが、ひどい拷問にあわせても殺しを否認し続けた。
大店のXとの情事を目撃したO一郎は、今でも後妻の母が許せずにいた。
ある深夜のことだった。トン、トンとかすかに木戸をたたく音と、「1両・・・2両・・・」とお金を数える女のか細い声がした。
「あなたを殺していいですか」
O一郎は驚愕した。
消えゆく意識の中で、思いつくまま一人旅に出かけた道中、美しい女性と再会し、恋仲になったことが脳裏をかすめた。
これだけですとよく分らないので補足をすると、人を殺して山道に置いたのがO一郎で、O一郎を殺しに来た女はO一郎の前妻なのではないかと思いました。
以下は私が想像した怪談のあらすじです。
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まず、結婚する前の前妻に恋をしたO一郎が、彼女の連れである男を殺して山道に放置しました。
その犯人として疑われ拷問を受けた前妻と、旅先で再会したO一郎は、見事に前妻と恋仲になりました(キーワード「美しい女性」=O一郎の前妻ということで)。
しかし、前妻は病気か事故で亡くなってしまいました。
その後、後妻を娶ったO一郎ですが、後妻は浮気をしてします。
それがどうしても許せないO一郎は、今度は後妻をその母もろとも殺してしまおうか・・・と考えました。
そんな様子を天国(?)から見ていた前妻は、連れの男を殺された恨みを晴らすため、そして後妻たちが殺される前にと、O一郎を殺しにきたのです。
死んだはずの前妻が木戸を叩いて現れたことに驚愕したO一郎は、前妻と恋仲になった時のことを思い出しながら死んでいったのであった・・・。
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全然違ってたらはずかしいな~と思うのですが、「片道切符の時間旅行」の時から楽しませていただいているので、挑戦させていただきました!
幾重にも折れ曲がった山道を抜けるときれいな滝がある。
山道で男の惨殺死体が見つかる。
大店のXとの情事を目撃したO一郎は、今でも後妻の母が許せずにいた。
遠国奉行は、連れの女性を疑ったが、ひどい拷問にあわせても殺しを否認し続けた
ある深夜のことだった。
トン、トンとかすかに木戸をたたく音と、「1両・・・2両・・・」とお金を数える女のか細い声がした。
「あなたを殺していいですか」
O一郎は驚愕した。
消えゆく意識の中で、思いつくまま一人旅に出かけた道中、美しい女性と再会し、恋仲になったことが脳裏をかすめた。
文章の前に [1] とか 数字を入れて もらえると
どの単位で どこを 並び替えたらいいのか わかりやすいと思います。
たぶん、Xは、山道で 殺された男だと思いますが・・・。
前回で私のクセをご理解いただけたと思います。
このままでは、単なる「殺人事件」で、「怪談」ではありませんよね。
キーワードは、「美しい女性」です。
回答は6月11日(月)午後5時までオープンいたしません。
ご回答をお待ちしています。
皆さんからの回答をご一緒に楽しみにしていましょう。
「ある深夜~」から「~し続けた。」まででよろしいですか?
あと、入れ替えるのは「行ごと」ではなく「センテンスごと」でいいですね?
ついでに、一応、鎖国時代のお話ですから「センテンスを入れ替え始めた」じゃなく「文言を入れ替え始めた」の方が(笑)
細かい事を言い始めると、明治に入ってから出来た漢字熟語は使わないとか言う友人もいるのですが、私はそこまで言いません(笑)
お問合せの件ですが、シャツフル対象範囲と入れ替えがセンテンス(一部は行ごとでもOKなような・・・)ごと、というのはそのとおりです。
「センテンス」は確かによくありませんね。訂正いたします。
なお、kuro-yoさんからもご回答をいただくために、回答は明日12日午後5時以降にオープンいたします。
諦めていたんですが、それならがんばって考えます。
ご回答を楽しみにしております。
Y蔵が書いた怪談のタイトルは、「天城幽霊街道」です。そんなわけで、松本清張さん原作の旅情ミステリー「天城越え」や、石川さゆりさんが歌う「天城越え」の一部をちりばめてみました。
Y蔵が文脈を入れ替えると、以下のような怪談に化けました。
幾重にも折れ曲がった山道を抜けるときれいな滝がある。
山道で男の惨殺死体が見つかる。
遠国奉行は、連れの女性を疑ったが、ひどい拷問にあわせても殺しを否認し続けた。
大店のXとの情事を目撃したO一郎は、今でも後妻の母が許せずにいた。
ある深夜のことだった。トン、トンとかすかに木戸をたたく音と、「1両・・・2両・・・」とお金を数える女のか細い声がした。
「あなたを殺していいですか」
O一郎は驚愕した。
消えゆく意識の中で、思いつくまま一人旅に出かけた道中、美しい女性と再会し、恋仲になったことが脳裏をかすめた。
O一郎の父が亡くなり、生活に困った後妻の母は、大店のXと援助交際を始めます。多感なO一郎は、自分にとって天女であり、心の恋人でもあった母を許せませんでしたが、お金で母を自分のものにしたXのほうが許せず、いつしか憎悪が殺意へ変わっていくのでした。
ある日、2人が伊豆国へ旅に出た後を追うようにO一郎も殺人旅行に出かけます。2人は九十九折を抜け、浄蓮の滝で一休みをしていましたが、再びO一郎は熱い抱擁を目撃してしまいます。「殺してやる」――。半狂乱になったO一郎は、懐から包丁を抜き、Xをめった刺しにしてしまったのでした。
そして、呆然と立ちつくしていた母(美しい女性)に本心を打ち明け、逃避行の旅が数日続きます。でも、来るべき日がやってきます。母が容疑者として地元の同心に捕縛される日が・・・。そんなわけで、どんなに責められても母が口を割ることはなかったのです。
母を見捨て郷里に逃げ戻ったO一郎は、初めのうちは母の安否を心配していましたが、いつしか忘れて、「○△小町」と評判のZと祝言を上げ楽しい生活を送っていました。
そんな、ある日の深夜でした。O一郎の身代わりになって拷問死した母親が、O一郎と永久の愛をかわした母親が、幽霊になって現れたのです。
見るも無残な母親の幽霊を見て、O一郎は発狂し、廃人になってしまいます。
Y蔵ですか? もともと心臓が弱かったY蔵は、タイトルを書き終えるとショック死してしまいます。そういうわけで「天城幽霊街道」が世に出ることはなかったのです。
数日後に3部作の残り1つを「リリースしてもいいですか」。
あなたのシャッフルは完璧でした。推理も超面白かったのでポイントより「いるか」を差し上げました。
その旨、よしなに。
『後妻の母』の意味を思い切り読み違えていたのに、シャッフルだけはバッチリという結果で、恥ずかしいやら嬉しいやら複雑な気持ちですが、ありがたく頂戴したいと思います。
「誰も知らない怪談」という題名が、Y蔵の末路を示しているとは考えも及ばなかったので、なるほど…と思っています。
次回作も期待しております。
>ある深夜のことだった。トン、トンとかすかに木戸をたたく音と、「1両・・・2両・・・」とお金を数える女のか細い声がした。
の文章で
ある深夜のことだった。 と
トン、トンとかすかに木戸をたたく音と、「1両・・・2両・・・」とお金を数える女のか細い声がした。
を 分けたほうがいいのか 悩んだからです。
ま、センテンスとあったので 一行なのかなぁと判断しましたが。