比較憲法学では、戦争違法化の規定を持つ憲法のことをすべて「平和憲法」と呼びます。ですから、比較憲法学で「平和憲法」という場合は、学問的には「日本国憲法」だけが「平和憲法」ではありません。「日本国憲法」は「平和憲法」のひとつですが、学問上は「日本国憲法」だけが「平和憲法」ではありません。
日本国憲法と以下ごとき憲法は、学問的にはすべて「平和憲法」と呼ばれます。
1791年フランス大革命憲法
第三章一節二条
フランス国民は、制服の目的をもって、いかなる戦争をも行うことを放棄し、また、いかなる国民の自由に対しても、決して武力を行使しない」
1848年フランス憲法
フランス国民は、制服の目的をもって、いかなる戦争をも行うことを放棄し、また、いかなる国民の自由に対しても、決して武力を行使しない」
1891年ブラジル憲法
第八十八条 ブラジル合衆国は直接にも間接にもまた単独にても他国と同盟しても征服の戦争に従事しない。
1934年ブラジル憲法
ブラジル国は直接にも間接にもまた単独にても他国と同盟しても征服の戦争に従事しない。
1931年スペイン憲法
第六条 スペインは国家の政策の手段としての戦争を放棄する。
1935年フィリピン憲法
フィリピンは国家の政策の手段としての戦争を放棄する。
1946年フランス第四共和国憲法
前文 その伝統に忠実なフランス共和国は、国際公法の原則に従う。フランス共和国は、征服を目指していかなる戦争をも企てることがなく、また、いかなる民族の自由に対してもその実力を行使することがないであろう。
相互主義の留保のもとに、フランスは平和の組織と防衛に必要な主権の制限を承諾する。
1947年イタリア憲法
第十一条 イタリア国は、他国民の自由を侵害する手段としての戦争、および国際紛争を解決する方法としての戦争を否認し、他国とたがいに等しい条件のもとに、諸国民のあいだに平和と正義を確保する秩序にとって必要な主権の制限に同意し、この目的を有する国際組織を推進し、助成する。
1979年ドイツ民主主義共和国憲法(旧東ドイツ憲法)
第四条 すべての国民との友好関係を維持し、および継続することは、国家権力の義務である。いかなる市民も、いずれかの国民を抑圧するにいたるべき戦争行為に参加してはならない。
1949年ドイツ連邦共和国基本法(西ドイツ憲法)
第二十六条 諸国民の平和的共同生活を乱すおそれがあり、かつその意図をもって行われる行為、とくに侵略戦争の遂行を準備する行為は、これを違憲とする。これらの行為は、処罰される。
戦争遂行のための武器は、連邦政府の許可のあった場合のみ、製造し、運搬し、および取引することができる。その細目は、連邦法でこれを定める。
1949年コスタ・リカ共和国憲法
第十二条 軍は、恒常的組織としては、これを禁止する。
警備及び公安維持のため、必要な警察力を設ける。
アメリカ大陸協定によってのみ、又は国家防衛のためにのみ、軍を組織する。いずれの場合においても、軍は常に非軍事的権力部門に隷属しなければならない。軍は、みずから、又はその他のものと共同して、政見を発表し又は宣言を発することができない。
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