金融商品取引法に詳しい方へ。
いわゆる「適合性の原則」により、金融機関は、「リスクを顧客に適切に説明する」
義務を負い、「リスクを理解できない顧客へリスク商品を販売してはいけない」
ことになりました。
そのため、各金融機関は内規・マニュアルを作成していますが、その中には
「女性へのリスク商品販売は差し控える」のような内規もあるようです。
あるいは
「この商品購入者の性比は女性の方が高いので、金融庁から「リスク説明をしているのか?」と
疑念を持たれかねない。
だから、女性への営業は避け、男性客を獲得しろ」というような動きもあるようです。
1.仮にリスクについて理解力がある女性が金融商品の購入を申し込んだにもかかわらず、
金融機関側の「女性への営業は避ける」という非公開の内規により「販売拒否」された場合、
この女性は裁判を起こして勝訴できるのでしょうか?
2.そもそも、日本国憲法違反の内規を惹起する金融商品取引法は、法として
欠陥を抱えていないでしょうか?
http://d.hatena.ne.jp/itarumurayama/20070622
私には弁護士資格がありませんので、正確な法的アドバイスを求めている場合は、弁護士に相談を依頼してください。
質問1について
金融商品取引法における「適合性原則」とは、金融商品取引法第四十条の規定を指します。
金融商品取引法
(昭和二十三年四月十三日法律第二十五号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO025.html
(適合性の原則等)
第四十条 金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。
一 金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行つて投資者の保護に欠けることとなつており、又は欠けることとなるおそれがあること。
二 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。
「適合性原則」は、立法史的にはアメリカ合衆国において1930年代から証券業者の自主規制機関の規則という形態で定められていたもので、日本国では、証券取引に関する大蔵省通達(昭和49年12月2日付大蔵省証券局長通達(蔵証第2211号)においてその考え方が示され、その後、旧証券取引法、旧商品取引所法等で規定され、前述の金融商品取引法40条1号、そして商品取引所法215条に規定されるようになりました。
もし適合性原則が女性差別を誘発するような問題なら、昭和49年の時点で大論争になっていたはずですが、そのような議論が起きたということは聞いたことがありません。
「適合性の原則」が作られた立法理由は、先物取引商品の説明をよく受けずに強引なセールスで取引契約を結ばされて損害を被る高齢者、若年者、認知症の方などが大量に出たことなどが背景にあります。弱者に損害を与える悪質な先物取引商品などを押し売りしていた悪徳金融商品会社は、「適合性の原則」に反対していました。
「適合性の原則」について言いがかりをつけて反対する人の多くは、強引なセールスをしていた悪徳金融商品会社・ファンドの関係者であり、まともな法学者はそうした議論には参加していない状況です。
平成19年8月、金融庁監督局証券課は「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」を公表し、適合性原則について以下のような指針を示しています。
金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針
http://www.fsa.go.jp/common/law/guide/kinyushohin.pdf
Ⅲ-2-3-1 適合性原則
金融商品取引業者は、金商法第40条の規定に基づき、顧客の知識、経験、財産の状況、投資目的やリスク管理判断能力等に応じた取引内容や取引条件に留意し、顧客属性等に則した適正な投資勧誘の履行を確保する必要がある。
そのため、顧客の属性等及び取引実態を的確に把握し得る顧客管理態勢を確立することが重要であり、例えば以下のような点に留意して検証することとする(特に、インターネット取引については、その非対面性に鑑みて細心の注意を払うこと。)。
(1)主な着眼点
① 顧客属性等の的確な把握及び顧客情報の管理の徹底
イ.顧客の投資意向、投資経験等の顧客属性等について、顧客カード等の整備とあわせ適時の把握に努めるとともに、投資勧誘に当たっては、当該顧客属性等に則した適正な勧誘に努めるよう役職員に徹底しているか。
ロ.内部管理部門においては、顧客属性等の把握の状況及び顧客情報の管理の状況を把握するように努め、必要に応じて、顧客属性等に照らして適切な勧誘が行われているか等についての検証を行うとともに、顧客情報の管理方法の見直しを行う等、その実効性を確保する態勢構築に努めているか。
② 顧客の取引実態の的確な把握及びその効果的活用
イ.顧客の取引実態の把握については、例えば、顧客口座ごとの売買損、評価損、取引回数、手数料の状況等といった取引状況を、顧客の取引実態の把握の参考としているか。
ロ.取引実態の把握において、取引内容を直接顧客に確認する必要があると判断した顧客については、例えば各営業部門における管理責任者等(担当者以外の責任者で内部管理責任者、部店長等を含む。以下同じ。)による顧客面談等を適時・適切に実施し、取引実態の的確な把握に努めているか。
ハ.内部管理部門においては、各営業部門における管理責任者等が行う顧客面談等に係る具体的な方法を定め、当該方法を役職員に周知徹底するとともに、顧客面談等の状況を把握・検証し、当該方法の見直し等、その実効性を確保する態勢を構築するよう努めているか。
(2)監督手法・対応
日常の監督事務や、事故届出等を通じて把握された適合性の原則等に関する金融商品取引業者の態勢上の課題については、深度あるヒアリングを行うことや、必要に応じて金商法第56条の2第1項の規定に基づく報告を求めることを通じて、金融商品取引業者における自主的な改善状況を把握することとする。また、公益又は投資者保護の観点から重大な問題があると認められる場合には、金商法第51条の規定に基づく業務改善命令を発出する等の対応を行うものとする。更に、重大・悪質な法令等違反行為が認められる等の場合には、金商法第52条第1項の規定に基づく業務停止命令等の発出も含め、必要な対応を検討するものとする。
このように、「顧客の知識、経験、財産の状況、投資目的やリスク管理判断能力等に応じた取引内容や取引条件に留意し、顧客属性等に則した適正な投資勧誘の履行を確保する必要がある」とは書いていますが、「女性の取引を制限しろ」などという指針はどこにも書いていません。
金融商品取引法はそもそも女性差別のための法律ではありませんし、監督指針も同様に女性を差別するために存在しているわけではありません。
また、金融庁が金商法第51条の規定に基づく業務改善命令として「女性に販売するな」と命令した事例も、当然のことながら皆無です。そういう情報はデマです。
「女性への営業は避ける」という内容を持っている内規というのを私は見たことがありませんが、仮にそのような内規を持つ会社が存在するとして、その内規が適合性原則として合理的か、あるいはどの程度社会的に容認され得る合理性を持っているのか、が争点になり得ると思われます。
仮に裁判になれば、まずその内規そのものが存在していることを証拠を示して証明しなければなりません。そして「女性への営業は避ける」といった内規が存在していることも証明しなければなりません。また女性への営業を避けることが不合理であることを証拠を提示して証明しなければなりません。それらの証拠が無かったり、証拠として不十分であると裁判官に判断されれば、裁判で勝つことは出来ません。
裁判をするのであれば、ちゃんとした証拠をそろえることが大前提です。
いきなり裁判という方法ではなく、不当な取引について監督する団体・官庁がありますので、そういう団体に指導してもらうほうが、金もかからないし、早くて効果的、という判断もあろうかと思います。
いずれにしても、なんらかのアプローチをとるのであれば、女性差別的な規定を含む内規を手に入れる、差別を受けた女性の具体的な被害状況を調べるなど、具体的な証拠を用意しなければならないと思われます。
質問2について
日本国憲法は、いわゆる「平等権」「両性の本質的平等」を規定しており、不平等な法令の排除を求めています。
したがって、平等権、両性の本質的平等に違反する法令は、違憲無効です。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
しかし、問題は、金融商品取引法が憲法違反となる内容を備えているかどうか、という点です。
前述したとおり、金融商品取引法は、金融商品の消費者被害をとめるための法制度であり、そこに女性差別を求める内容は含まれていません。「女に売るな」という内規は私は見たことがありませんし、その内規の内容もよくわかりません。
仮に、金融商品取引法を執行する行政が法の執行を怠っていて、その結果として現実に女性が差別を受けているのなら行政側に法令執行責任を裁判で問うことは可能です。ただしその場合、監督機関や指導機関が不当な差別的取扱いを放任したという事実の証明が必要です。
ですから、順序としては、やはり不当な差別的取扱いを受けている人が不当な差別的取扱いを受けていることを事業者なり監督団体や監督官庁に求めて排除してもらう、という実績をつくることが重要で、それが裁判の前提条件になりますし、そのような要請が実際の差別を解決していくのではないかと思います。
前述したように、規制を受けて商売ができなくなった悪徳金融商品会社によるデマである可能性もあるので、本当にそのような内規が存在するのかどうか、まずはしっかり調査することが必要だと思います。
・何故憲法違反になるんでしょう?
・もし憲法違反になるんだったら女性"優遇"もなるはずですよねぇ?
"公共"交通機関の鉄道会社が女性専用車両とか作っちゃってるんですけどねぇ。
ことから「女性へ販売しない」
は何の関連もありません。
従って、金融商品取引法に問題があるのではなく、
単純に女性へ販売しないと決めた会社に問題があります。
他の条件などが全くなく、単に女性のみへは販売しないとした場合は、明らかに男女差別であり、憲法に反し、公序良俗に反し、人権侵害と言えるでしょう。
先の販売条件を立証できれば(会社が簡単に認めるとは思えない)
損害賠償請求訴訟などで勝訴の可能性はあると思います。
「差し控える」の定義がわからない。「しない」とどこが違うか。
為替商品とかも現在持ってる主婦がおおいですよ。
ていうか、ゆうちょ銀行への預金だって今後はリスク商品じゃないのか。
という部分を読ませていただきました。リンク先にも書いてありましたが、これは単純に会社側が不利益を被る可能性があるから断っているだけではないのでしょうか?
この不景気なご時世に個人的感情で自らの営業成績を下げるような人はいるのでしょうか?
こじ付けが強引過ぎる気がします。