地方の公立大学から、都会の国立大学の大学院に進学しました。
進学先を選んだポイントは、やってみたい研究をしている先生だったからです。
大学3年生の時に読んだ論文(日本語でした)から、こういう研究がしたいという思いが強く生まれました。その夏に行われた学会に行ってみて、実際に先生にお会いしました。人柄もよく熱心に対話できたことで、さらに進学したいという思いが募りました。
その先生の研究室がもちろん第1希望でしたが、滑り止めも用意しました。
大概の研究者は、過去・現在において複数の共同研究ネットワークを持っています。
私が滑り止めに選んだ大学院は、第1希望の先生と以前から親交もあり、
共同研究もしていた先生のいらっしゃる所です。
大学院進学前には、希望研究室に所属する先生方のネットワーク、
特に共同研究者・グループメンバーを押さえておくのがベスト。
大学院はあくまで研究をするところです。
できる限り希望ジャンルの研究者の事を知っておくのが、進学後にも役立ちます。
むしろその点を、常識として厳しく判断する先生方もいらっしゃいます。
『何故、この大学院のこの研究室を選んだの?』という志望動機は、
きちっと押さえておくのがいいでしょう。
実際の面接試験でも、
『他所の○○研でも~の研究をしてるけど、どうしてうちの大学にしたの?』
と、大概質問をされると思います。
私自身も、複数大学院を受験しましたが、どこでも似たことを聞かれました。
『ココじゃないと●●はできないから!』が明確であればあるほど、
進学後の研究生活もスムーズです。先生や先輩受けもいいと思います。
(目上の立場で見たら、しっかりしたビジョンのある学生と判断しますしね)。
他の研究者がどういった研究をしているのか、同じような研究をしているなら何が違うのか?
誰かと同じテーマでは研究費どころか予算申請すら通りません。
共同研究者でも、各人ファースト・オーサー(first author)として原著論文を書くため、
何か違う切り口、異なる分析・解析方法、基盤になる技術開発などテーマにしているでしょう。
そっくりでも、着眼点が違ったり求める成果が違ったり、何かしら相違点があります。
各研究者の違いを把握する意味も含め、ネットワークを辿れば自ずとベクトルが定まります。
その上で他の要因も加味して、志望校を絞るのがいいと思います。
志望校を絞り、3年生の間か受験の3か月前までには研究室訪問をしますよね。
その時も、所属研究室の筆頭教授だけでなく、准教授・助手・博士課程の学生さんの
研究テーマの違いも調べておくのがベストです。
同じ研究室内であっても、切り口が違った研究をしていると思います。
(テーマが完全にかぶると、各人の研究予算申請が通りませんから。)
アポを取ってから訪問するわけですが、必ず希望する先生が会ってくれるか分かりません。
春先などは学会も頻繁に行われますし、ジャンルによってはフィールドワークの時期で、
先生も学生も忙しすぎて、お客さん(進学希望生)に十分対応できないことがあります。
そういったときに対応してくれるのが修士・博士課程の学生さんたちです。
この時、他大学や研究者間の違いを知らずに、話がチグハグになったりすると、
対応する側としても正直、「う~ん、この子が来ても大丈夫かな?」と心配します。
それと、ここが落とし穴なんですが・・・
質問者さんは、『教授』と書かれていますね。
教授の年齢によっては、進学後に退官してしまう人もいます。
最近は若い教授も増えていますが、退官・異動予定の先生だと進学先も変わります。
高齢の教授なら、そのお弟子さんがどの大学や研究室にいるかチェックですね。
また過去の研究が先駆的であっても、今も最先端とは限りません。
大学にもよりますが、直属の弟子が准教授などに納まるとは限りません。
慣れ合いによる研究の質の低下予防に、他の研究機関で活躍していた人が、
教授や准教授などに納まっている例も多々あります。
(うちの研究室がそうだったのですが、教授vs准教授とか、
微妙な問題も発生するので、際どい論争に巻き込まれない様に
学生さんたちに聞けそうなら聞いてみても良いでしょうね。
親切な学生さんだと、他所のホットスポット的研究室を紹介してくれます。
入ってから巻き込まれて、痛い目にも合う例も稀にあります。)
学費に関しては、大きな大学だと奨学金以外にも、
学内で設定されている、授業料免除などが通りやすいです。
私は幸い両方もらえたので、金銭面での苦労はさほど大きくありませんでした。
後は、立地条件ですかね。
実家が青森なのに、鹿児島大学に進学、とかは帰省できなくなります。
修士過程でも博士過程でも、4回生以上は学会発表や原著論文数が
評価対象になるので、研究漬けになるところもあります。
質問者さんが将来、研究職以外の就職を考えているなら、
進学先が就職活動OKか、研究没頭を求められるかの違いも確認が要りますね。
逆に民間企業と共同研究をしていて、修了後の就職斡旋に強い所もあるでしょう。
長くなりましたが、よくよく進学先に関しては、情報集めをしてください。
基本的に修士課程以上は、研究をするために進学するわけですから。
学会デビュー・論文投稿のときには、その情報はかなり役に立ちますしね。
修士でも研究者デビューです。頑張ってください。