1988-2008年の、過去20年分のミステリーの集大成を、別冊宝島「もっとすごい!このミステリーがすごい!」でやっています。そこで、マイベストを選びました。
■ 国内
1 火車
2 ホワイトアウト
3 半落ち
4 屍鬼
5 煙か土か食い物
6 不夜城
7 ハサミ男
8 白夜行
9 黒い家
10 アラビアの夜の種族
■ 海外
1 極大射程
2 推定無罪
3 ポップ1280
4 ダ・ヴィンチ・コード
5 北壁の死闘
6 薔薇の名前
7 フリッカー、あるいは映画の魔
8 ミザリー
9 シンプル・プラン
10 Mr.クイン
そこで質問です。これを超えるような極上ミステリを、教えてください。ただし、新本格や叙述形式はおなか一杯なのでご勘弁ください。それから、これらを一冊も読んでいないような方は、比較しようがないため、回答をご遠慮ください。
この20冊の評価は、以下にまとめてあります↓
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2008/03/20_bea3.html
Dainさんの質問いつも楽しみにしています。
今回はミステリですね。嬉しいです。
…といっても「推理小説」ではなく、「謎」の解明を含むエンタテイメント小説というくくりかな、と思ったみたり。
(もともとこのミス自体そういう感じですものね)
まずちょっとだけジャブを。
宮部さんの作品は「火車」は文句なしとして、「理由」「模倣犯」「龍は眠る」も捨てがたいというか。
最近ようやく「孤宿の人」を読んで後半号泣したとかしないとか。
真保さんは「奪取」をオススメしたような記憶も。「ホワイトアウト」以前までの小役人シリーズ全体が好みです。
近作は「真夜中の~」が今ひとつだったのでちょっと手が止まってます。
横山さんの「半落ち」は、同世代の男たちがそれぞれの人生の重荷を主人公に投影してバトンしていく様が涙を誘いました。
「○○を頼む!」と心の叫びが聞こえてくるような。
ただ、私は「クライマーズ・ハイ」の方がランクインです。
といった感じで改めて国内編ですが、
敢えて↓を挙げてみます。
ミステリ・オペラ―宿命城殺人事件 (ハヤカワ・ミステリワールド)
山田正紀/「ミステリ・オペラ」
「マヂック・オペラ」まで読了済み。
本当は「オペラ三部作」が揃ってから通しで再読して伏線の拾い出しをやってみたりしてから言及したいのですが、
まだ「ファイナル・オペラ(仮題)」(だったかな)は未刊。
正直言えばミステリというよりは衒学小説。
けれど検閲図書館という設定と、膨大な装置やガジェットがこれでもか~と注ぎ込まれていて、
古典読みからのミステリファンとしてはなんとなく幸せな気分になってしまったのです。
本格ファンからは辛らつな意見も多いですが。でもこの作品の目的はそこじゃないのでは。
というわけでこの作品を推薦してみます。
ちなみにファースト・インプレッションは生頼さんの表紙。これだけで1万ペセタ。
それでは海外編へ。
ダン・ブラウンは一気読み作家として大変楽しませていただきましたが、
「ダ・ヴィンチコード」の「意外な着眼点」はあまり意外に感じなかったすれた本読みとしては、
「天使と悪魔」の方がぶっとんでいてよりエンタメでした。
終盤の教授はまさしくハリソン・フォードじゃないと無理だろ!と猛烈に突っ込みたくなるほどアクションです。
一応ブログ検索してみましたが既読でしたら申し訳ありません。
「薔薇の名前」もいわずもがなという感じですが、
今地味に「カドフェル」のシリーズを蒐集中。この世界はやはり味わい深いです。
この辺りでジャブを終了してベストを。
プリーストの「奇術師」が既に挙がっていますが、私も賛成です。
でもそれよりも更に↓の方が私は参りました。
クリストファー・プリースト/「双生児」
奇術師よりも先に出ている「魔法」の独特な酩酊感と「奇術師」の緻密な構成が混じり、
それがひどくさりげなく提示されているので、口当たりがいいのにキツいカクテルで悪酔いしたような気分になってきます。
読後「ぎゃー、も、もいっかい読まないと!」となって、
自分がどこからどう迷い込んだのか、
正誤が混乱した状態に陥り、なのにただただ哀しくもなったり。
惜しむらくはタイトルのつけ方。
三作とも日本語では原題の深さを表しきれていないように思います。
もう一冊。
ジョン・ダニング/「死の蔵書」
実は人力で質問して教えていただき読み始めた本です。
本好きの本好きによる本好きのためのハードボイルドミステリ。
時々「チャンドラーっぽいな~」と思いながら読んでいたら同じ事を思っている人が多くてやっぱりそうかと。
(Amazonではロス・マク風と言われている方もいらっしゃいましたが)
現在四作品がシリーズとしてありますが、これは一作目。
毎作本にまつわるものの、古書業、特装本、歴史書、サイン本とテーマが異なり、薀蓄量はかなり大目。
それでも一作目で主人公の人生のジェットコースターぶりを堪能しないと次に行くのはちょっともったいない気が。
以上ご参考まで。
リストアップされているミステリが、展開が派手なものが多いので、紹介しようかどうか迷ったのですが、私がお勧めするのは海堂尊の作品――。
「半落ち」の病院版といった感じ。
著者は現役医師だけあって、病院を舞台とする設定は超リアル。一方、登場人物はコミカルな人間ばかり。まったく冴えない主人公の中年医師と変人官僚の掛け合いが笑えます(映画版で美男美女の組み合わせになってしまったのは残念!)。アニメネタも盛り込まれていたりして、エンターテイメントの要素もたっぷり。
ミステリーの体裁をしていますが、各々で異なる医療問題を扱っている点がユニーク。体裁のカラーリングを替えているのも象徴的ですね。
小説中の登場人物に医療問題を語らせたノンフィクション本が下記。あのブルーバックスの1冊です。
あえて映画やコミックスへ展開したのは、おそらく医療問題に対する国民の認知度を高めるためではないか‥‥と、うがった見方をしてみたりして。
海外作品では、ちょっと古いところですが、SFの大家・アイザク・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」シリーズ(邦訳版は東京創元社から)。1972年から2003年(没後)にわたる長期連作ですが、範囲に入れてよいですか?
こちらは、失せものを探したりする地味な話ばかりで、「現場」すら出てこない。でも、登場人物が面白く、水戸黄門のように“決め”のパターンが定まっており、これはこれで楽しめる。
私も、無給でいいので、ニューヨークのミラノ・レストランで毎月開催されるという「黒後家蜘蛛の会」の給仕をしてみたい。
「春期限定いちごタルト事件」「夏期限定トロピカルパフェ事件」 米澤 穂信
人が死なないミステリー。伏線が最後にまとまっていく様はなかなか。
>岡嶋二人時代に書いた「クラインの壺」でお腹一杯ッすー
ああ、それは申し訳ないことをしました。
>「ダレカガナカニイル…」が傑作だという噂をきくのですが、どうなんでしょうね?
私はSF的ミステリとして読みました。面白かったですよ。
設定がお嫌でなければ、「クラインの壺」より読みやすいかもしれません。「オルファクトグラム」を含めて3冊のうちからどれを選ぶかと尋ねられたら、私は「オルファクトグラム」を選ぶと思います。好きずきがあると思いますので、ご参考まで。
ゴダードとディケンズと大デュマを足して3で割ったといえば良いでしょうか。
間違いなく徹夜本です!
かなりのボリューム(文庫5巻)なので、一徹では足りませんが…
なお、私のベストワンも「火車」です。半落ち、屍鬼、不夜城、白夜行、黒い家、いずれもホントに面白かったなあと。リストを見て是非読みたいと思うのは「アラビアの夜の種族」。一方、興味津津ではあるものの、しんどそうだなあと思うのが「薔薇の名前」。