物凄く長いです。難しい内容ですので、ご希望に反してURLの提示による参照を使っています。
でも、理解できると思いますので、できる限り読んでみて下さい。
栄養学等の研究について日本でも有名な組織の一つの(独立行政法人)国立健康・栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性情報」では、アスパラギン酸の「疲労回復効果」などについてはヒトについて有効かどうかの信頼できるデータは見当たらない、としています。また、動物実験や試験管内実験の評価も「調べた文献の中に見当たらない」と専門家が調べた結果が載せられています。
道理で「要は疲労回復の働きがあるみたいですが体内でどのように働いて疲労を取るのでしょうか?マグネシウムとカリウムの働きなのでしょうがネットで色々調べましたがよくわかりません」な訳です。
国立健康・栄養研究所の「『健康食品』の安全性・有効性情報」のページです。
http://hfnet.nih.go.jp/contents/
無断引用を禁じているのでページ右上辺りにある検索窓に「アスパラギン酸」と入力して検索して下さい。原文を見る事ができます。
一方で、アスパラギン酸は医薬品として使われています。
↓pdfファイルです。
http://di.mt-pharma.co.jp/file/if/f_asp_c.pdf
5枚目の「製品の特徴及び有用性」には、心臓病や肝臓病等での低カリウム状態でマグネシウム欠乏合併の疑いがある場合に、吸収が良く、ミネラルバランスを改善に関与する、と書いてあります。
カリウムとマグネシウムが欠乏すると困る事は大体こんな事です。
http://www.nutri.co.jp/dic/ch8-9/keyword6.php
「2mEq/l以下の低カリウム血症では、筋力低下や呼吸筋低下を生じ、横紋筋融解を起こすことがあるので、緊急に治療を開始する」
「低マグネシウム血症では頻脈、不整脈、振戦、テタニー、筋力低下がみられる。マグネシウム欠乏では低カルシウム血症、低リン血症、低カリウム血症などの電解質異常を合併する」
スポーツ飲料でカリウムやマグネシウムがどうの、と言われるのは、この「筋力低下」という事を気にしているからなのでしょう。
でも、専門家の意見、といっても怪しいものが沢山な昨今です。カリウムとマグネシウムが欠乏する為に薬で補給しなければならない事なんて、余程の事がない限りありません。カリウムやマグネシウムというキーワードでよく例に出される程度の食べ物を食べる機会が有れば日常生活では十分です。
そして医薬品の場合、アスパラギン酸はカリウムやマグネシウムの腸内吸収を良好にする為のお助け役として使われているに過ぎません。
また、アスパラギン酸ナトリウムでなく、アスパラギン酸カリウムやアスパラギン酸マグネシウムを使うのには理由があります。医薬品として量産体制されているので転用しやすい事。ナトリウムは化学調味料とか味の素とかと呼ばれるグルタミン酸ナトリウムや食塩を通じて日常的に大量摂取されているので、「健康」をうたい文句にする以上はナトリウムは減らした方がイメージが良さそうな事、などです。
アスパラギン酸が疲労回復に有効だと言われているのは、何と無く理由というかこじつけがあるみたいです。
http://hobab.fc2web.com/sub4-AST.htm
このページのまん中の図の下や左下辺りに「アスパラギン酸」の文字が有ります。この図は「TCA回路」とか「クエン酸回路」とかと呼ばれているものです。
「TCA回路」とははこんなものです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%83%B3%E9%85%B...
「クエン酸回路(くえんさんかいろ、Citric Acid Cycle)とは……最も重要な生化学反応回路であり、酸素呼吸を行う生物全般に見られる。……効率の良いエネルギー生産を可能にしている。またアミノ酸などの生合成に係る物質を生産するという役割もある」
「クエン酸回路の反応をになう酵素群は、真核生物の場合ミトコンドリアの基質に存在している」
アスパラギン酸は生体内でのエネルギー生産に関わる重要なTCA回路につながる物質である事から、栄養ドリンク剤の開発者はこう考えたのでしょう。
「アスパラギン酸を外から補給すると、TCA回路でのエネルギー生産効率が上がるって言ってもいいんじゃないだろうかなぁ~?……え~いっ!言っちゃえ、言っちゃえ~~!」
但し、ちょっと前まで「疲労物質」として目の敵にされていた乳酸の例もあるので、当てにはなりません。
http://www.new-3.net/
こういうのは、ジョギング中にクエン酸を摂取したら元気になった、と勘違いするのと似ています。ジョギング程度ならコーラなど、お好みの清涼飲料水を飲んでも大して変わらないのですが、「何か特別なものを体内に入れた」という充実感が体に良い効果をもたらしている、という代表的な例ですね。
すいません、しっかり読んでませんでした。
……ぶっちゃけ栄養ドリンクはアルコールとカフェインが入っていることが多いので、それで元気が出た~カッカしてくるというのがあるんですよね。往時色々物議を醸し出した例の本なんかそれを槍玉に挙げてまして、欧米ではサプリを取ってるのに何故我が国だけ割高な栄養ドリンク剤をありがたがるのか?という批判を行ってた訳ですが……
そりゃああんた、我が国には昔から『薬用酒』文化があったからだよ、と思った訳ですけれどもね。
いや、欧州にも民間で愛用され『ハネムーン』の語源になったと言われるミードや修道会などが独占的に製造していた薬効のあるリキュールなどもあったのでサプリ信仰ってのは多分アメリカ発祥なんじゃなかろか、と思ったりもした訳です。
閑話休題。
実は前回のお話(イオンの腸吸収)にも関連して、参考になりそうなサイトがありましたのでお知らせしておきます。
http://hobab.fc2web.com/sub4-ORS.htm
経口補水塩(平たく言えばアイソトニック飲料)の紹介なのですが、小腸からのイオン吸収の図解など、興味深い記述がありますのでお時間があればご参照ください。