パート雇用なのですが、最初の出勤日に「就業規則を守ります」という内容を含んだ誓約書を書くように言われました。
が、就業規則を見ていないのでサインできず提出していません。
5日勤務して、法的にグレーゾーンの作業をさせる、サービス残業をしいる、人間関係がよくない職場に嫌気がさし退職したいと申し出ました。
3か月の試用期間中なのですんなり退職できるかと思っていたのですが、事業主から「就業規則では1か月前の退職願が必要。新人といっても任されてた仕事があるなら業務の引き継ぎもしていかないのは無責任だ」と言われました。
就業規則の誓約書を書いていないのでこの事業主の言葉は無効でしょうか?
法的には2週間前に退職を申し出ればいいので、あと2週間働けばいいのでしょうか?
それとも試用期間なので即日退職できるものなのでしょうか?
正直もう1時間たりとも出勤したくはないのですが、できるだけ正当性のある行動をしたいと思っています。
アドバイスをお願いします。
まず、就業規則ですが、
雇用契約を締結した時点で、民法、労働法、その他関係法令、就業規則を含む社則に労使とも拘束されます。
(労基法15、労働契約法)
http://www.houko.com/00/01/S22/049.HTM
http://law.e-gov.go.jp/announce/H19HO128.html
ただし、就業規則(その他社則も準ずる)は労基法89条に特定の項目に関して所定の方法で作成する事が、ほぼ全ての事業所に義務付けられています。
そして、規則を守るためにはその規則の内容を知らなければ不可能であり、労基法106条、最高裁判決、労働省通達等で周知徹底が義務付けられており、具体的な方法も提示されています。
>フジ興産事件 最高裁 H15.10.10
就業規則が拘束力を生ずるためには、その適用を受ける事業所の労働者に周知させる手続きを要する。
原審は、旧就業規則を労基署長に届け出た事実を確定したのみで、その内容を労働者に周知させる手続きが取られているかどうか認定しないまま、旧就業規則に法的規範としての効力を肯定し、懲戒解雇を有効とした。
原審の判断には法令の適用を誤った違法があり、原判決を破棄し原審に差し戻す。
http://www.jil.go.jp/kikaku-qa/kyouyaku/K04.html
次に退職日ですが、試用期間が関係するのは会社による解雇の場合で、労働者からの自発的な退職については労基法に特段の規定が無いために民法が適用されます。
http://www.houko.com/00/01/M29/089B.HTM#s3.2.8
(労基法と矛盾がある条文については特別法である労基法が優先され、その部分について民法の条文は無効になります)
雇用契約の期間によって異なりますが、期間の定めがない場合は2週間前の告知で一方的に退職する事ができるものの、期間が定まっている場合はその期間での雇用契約が成立しているために、労使とも一方的な解約はできません。
ただし、628条に基づいてやむを得ない事由がある場合は即時解約も可能ですが、しかし、過失ある場合は損害賠償の責任を負います。
また、労基法5条において強制労働は禁止されており、使用者は退職したいという労働者を強制的に働かせる事はできません。
パートとしか無いのでどのような期間で契約されたか不明ですが、状況によっては即時解約も可能で、損害賠償についても使用者側に違法行為があるのであればほとんど問題はなく、また、違法行為が無いとしても実際の損害について労働者の責任ある部分のみの賠償であり、実質的にはゼロに等しいです。
(再募集費用などは認められない)
1ヶ月?
これはごく一般的な規則ですが、先の民法の規定に違反しているために法的拘束力はありません。
強いていえば単なるお願い規定。できるなら守ってあげれば良い程度。
業務の引継をしないのは無責任ですが、5日しか働いていない新人にどんな引継があるのでしょう?
本当にあるのなら、多少はしてあげても良いとは思いますが、それには使用者側の法令違反が是正される事が大前提でしょう。
という事で、退職届を提出し、その後は出社しなければいいです。
5日分の賃金がきちんと出ない可能性はありますが、それはまた別問題です。
おそらく就業規則には3ヶ月の期間契約を定めているのでしょうが、契約していない(サインしていない)のですから、法律上、拘束力はありません。
したがって、自己都合退職となり、退職日の2週間前に会社に通告します(民法第627条第1項)。通告は口頭でいいことになっています。
かりに就業規則に1ヶ月前通告と書かれていても、民法の方が優先されます。(平13年9月10日東京地裁判決)
雇用契約の発効ですが、現実に働いた以上、法的に有効な一定の範囲で契約は成立しています。
契約書のサイン云々はあまり関係しません。文書に残せば後で証明できるからそうするのであって、日本においては契約自体は双方の合意があれば口頭であっても有効です。(諾成主義)
職業選択の自由は原則論であり、一定の範囲で個別の雇用契約や民法に拘束されます。
就業規則については明示されていないし、閲覧する機会も時間もなかったでしょうから微妙ですが、1年契約という事を知っているという事はその点については事前に説明があり了承の上だと思われます。
民法の規定により、期間の定めのある雇用契約は原則として中途で破棄する事はできません。
その状況によって損害賠償責任が発生しますが、あくまで実損であり、その講習によってあなたが資格を得られたとかという程でなければ大した意味は無いと思います。
誰を雇用したところでその講習を行わなければならず、単なる操作方法程度は当然に業務の一環ですから講習が問題になる事はないと思います。
(その他についても実損とは認められないかと、、)
まして、教わっただけで他人へ教えられるわけなどないですし、勤続年数の長いベテランならともかく、5日程度で教えるのはそれ自体が問題でしょう。
業務の引継とは業務のノウハウを教える事ではありません。
使用者の要求は不合理であり、承諾する必要はないと思います。
また、引継をするならそれも業務であり賃金対象です。
残業時間については争いになるかもしれませんが、数千円になるかどうかの金額でしょうし、あえて法的に争う価値があるか疑問です。
賃金そのものが支払われない可能性もありますが、これも額が低いのでどこまでやるか、どのようにやるかで問題が出るでしょう。
労基署への通告程度で素直に払えば何の問題もないですが、開き直られた場合は訴訟や労組の団交など費用の方が上回る可能性が高いです。
http://www.zenroren.gr.jp/jp/index.html