戦争の話は立場によって見え方が随分違うものかと思います。
私自身、これという定説を持ち合わせてはいません。相対正義論者と叩かれようが、それぞれの立場がある限り、それをいくら持ち寄った所でそこに普遍的な正義……中国には中国の、タイにはタイの、日本には日本の、オーストラリアにはオーストラリアの真実と言うものがありますし、それはそれぞれの国の現在の立場とも違うものだったりもし、はっきり言ってしまえばひたすら深い、どこまで行っても行き着かない話のように思えます。
私自身は、champclairさんの仰る論も、ご家族の仰る論もどちらも正しいと思います。ただ、ご家族の『その思想は危険だ』という一言には首を傾げざるをえません。何故ならば、東南アジアなどの列強に植民地とされていた各国の独立運動に太平洋戦争というものが与えたインパクト……白人優越主義の呪縛から脱する為の一打となりえたのは事実であるかと思われるからです。もちろん、だからと言って多数のフィリピン市民を防衛戦の最中で殺害した事が正しかったとは口が避けても言えませんし、仮に彼らが日本の軍政に抵抗したからそうしたのだとしたとしても、ガタルカナルやインパールに代表される日本軍首脳部による日本兵の虐殺など、どう考えてもお前ら頭大丈夫か? という事象もある訳で、どうもその辺りを考えると頭が痛い事が多くあります。
太平洋戦争などの概略などについて、私は詳しい知識を持ち合わせておりませんので、戦争に纏わるいくつかの事柄を紹介した本をここで推薦させていただきたいと思います。
ある意味定番かも知れません。山本七平氏の文章は人を選ぶかも知れませんので、その辺りを考慮するならこの本の底本である『慮人日記』(小松真一・著/ちくま学芸文庫)を読まれるのもよろしいかも知れません。
日露戦争頃から太平洋戦争まで、その中で発生した『軍神』たちに纏わるお話です。
情報官・鈴木庫三氏に関する研究書です。
日中戦争期の『市井』に関する研究書です。
今丁度NHKで太平洋戦争に纏わる番組をやっていますが、この三冊についてはどうやってその空気と言うものが生み出されていったか、一体それはどういうものだったか、と言うものを知る一端になると思います。
226事件当時、首相だった岡田啓介氏の日記です。
日英同盟の研究書です。
この二冊については、なぜ日本が連合国と交戦状態に陥らざるをえなかったかについて語っています。
地政学に関する研究書です。
日本の戦争とは少し離れるかも知れませんが、戦争とは誰かが悪いから起きる訳ではないのだ、という辺りを読み取っていただけるかもです。
他にもいくらかご紹介したい本もあるのですが、ちょいと誘導になってしまいそうなのでこの辺に。いや、これでも充分誘導って気がしないでもないですが。
えーと、『失敗の本質』は私もお薦めです。あと、吉村昭さんの著作も勉強になるのではないか、と思います。沖縄戦に関しては『沖縄 悲遇の作戦―異端の参謀八原博通』(稲垣武・著/光文社NF文庫)と吉村昭さんの『殉国』を読むとなんとなくorzとなれますのでお勧めです。『失敗の本質』の中でも沖縄戦については触れられているのですが、稲垣氏の著作では『作戦』と言う面においてそれが大きく取り扱われており、『殉国』では『住民』や『一般兵』というあたりが大きく扱われております。
どこかの誰が言った話か良く覚えていないのですが、戦争というものを見る視点として、『個人の体験』にのみその本質を求めると悲惨なものであるという話になり、『作戦』のみに求めると英雄譚になってしまいます。で、『兵站』こそを語るべきという話になるようなのですが、これはシステム論であり、それを整えられたか否か、つまりはその『戦争』という行為に対してどれだけなりふり構わず注力できたか(もしくは戦争を遂行するだけに必要な各種資源を投入しても一般社会が揺るがないだけの国力を持ちえたか)を示すお話となりますので、それを戦争の全てととるにはあまりにも人の感情と言うものを無視しているのではないか、とも思えます。それ以前に『兵站』の研究と言うものは、目的に指向する為のお話となりますので、そもそも国家なり、集団なりを運用する上で必要なお話であり、戦争にとどまるお話ではないように思えます。……戦略論でもいいですが、例えば現在我が国は進むべき『目的』もなく、その為に注力する事もなく、とりあえず行き当たりばったりで日々に流されているだけのように見えますが、このあたりも兵站研究なり戦略論なりの上で我が国が国としての呈を示していないと言えるのかも知れません。いや、国家という権力構造体がそれを進めるのではなく、民間各企業がそれぞれの利益追求の上で様々な方策を講じ、それをして何らかの形を作っているのだとすればそれは『リバタリアニズム』上では正しい姿なのかもしれませんが、と、これは別のお話ですね。
とにもかくにも、『戦争』はそこに参加した/させられた人々の人生や、その総体たる国家の運命、そしてそれに連なる人々のそれらにも多大な影響を及ぼしますので、どれか一つをつまんだ所でわかるものでもない気がします。
という事で、戦争と言うものを知るのはものごっつ大変な作業かと思います。私も彼此20年以上色々自分なりにやっているつもりですが、多分まだ何もつかめていない気がします。