idコールをいただいたので、僭越ながら。
1. 日本での起源
sibazyun さんのご回答と同じく、1921年と考えます。
東京都水道局の 水質に関するトピック:第7回 消毒 にも、
日本における塩素消毒の歴史は、1921年(大正10年)に東京市と大阪市で始まりました。
とあります。
しかしながら、水の消毒 によれば、
戦前の水道は水源の汚染が少なく、細菌などの微生物を効果的に除去する緩速濾過がほとんど
であり、
塩素の注入は夏場や伝染病流行時に実施されることが多く、塩素の常時注入は水の味を損なうこともあってほとんど実施されていませんでした。
だそうです。
事実上は、全国に普及したのは戦後であり、1957年(昭和32年)に水道法が制定されて今に至っているわけです。
2. 世界での起源
えー、調べてみたら非常に難しい問題である事がわかったので、とりあえずアメリカでの最初は、1908年のジャージー・シティです。
http://www.doh.wa.gov/ehp/dw/publications/331-253.pdf
In 1908, Jersey City Water Works became the first system in the United States to practice large-scale chlorination on a permanent basis.
ワシントン州の公式サイト にある記事ですから信頼度は高いでしょう。
以下、トリビアな話題になります。
アメリカの前はイギリスのようですが、chinjuh さんの引用されたページにある、John Snow 説は [要出典] と思います。
確かに、ジョン・スノーは1854年のロンドンでのコレラ大流行で疫学的調査を行って、「公衆衛生の父」とまで呼ばれている人です。
しかし、この時に彼がやったのは、問題のある井戸を特定してそれを閉鎖した、という事だけではないかと思われます。
Wikipedia 日本語版の 疫学 - 歴史 はおろか、英語版の John Snow にも Broad Street cholera outbreak にも、スノーが水を塩素消毒したという記述はありません。
Chlorine water disinfectant によれば、イギリスにおける最初の例は1897年、ケント州の Maidstone という場所です。
もしご要望があればさらにリサーチして追記しますが、ご質問の趣旨から外れているといけないので、今回はこの辺で。
ご参考になれば幸いです。
-------------------------------------------------------------
追記です。(6月15日、午後0時30分)
Google books で読める White's Handbook of Chlorination and Alternative Disinfectants の 241 ページ によれば、回答#4の松永さんがご指摘のように、塩素を持続的に使用したのはベルギーが最初のようです。
ただ、Middlekerke の方は1902年で、塩素ガスではなく塩化鉄と次亜塩素酸カルシウムを混合したもの、になってます。
翌年の1903年に、同じベルギーのオステンドで塩素ガスが使用されています。
私の読解が正しければ、両方とも化学者の Maurice Duyk によるものです。
私が上で書いた Maidstone は、チフス流行期だけの一時的なものだったようで、一時的なものとしては1896年にオーストリア=ハンガリー帝国の Pola 海軍基地で使用例があるようです。
イギリスにおける最初の持続的な使用は、sibazyun さんのご回答(*1)にもある Lincoln で、1905年です。
なお、(*1)では "Lindoln" と書かれていますが、これは Lincoln(リンカン)の誤記でしょう。
英語版の方に、1904年11月~1905年8月にチフスが大流行した、という記述があります。
Westgate Water Tower の説明によれば、大流行の後、水道水に塩素を加えても水道に対する市民の信頼は回復せず、この新しい給水塔を建てた、との事です。
あの頃までは水道水が美味しかった。
都市化が進んで水源地の周囲にどぶ川が増えて、大規模な浄水施設を慌てて作ったようだ。
たぶん腹痛でクレームが付いたんだろう。
下痢腹の話を何度か聞いたような覚えがある。
最近では下水道の普及から水源の水質が良くなってきたようだ。
> chinjuh さん
あやしげなページじゃないです。
スノーが塩素消毒した、と言い切っているウェブページはいっぱいあります。
でも、UCLA の John Snow - a historical giant in epidemiology
http://www.ph.ucla.edu/epi/snow.html
とかを読んでも、裏付けになる記述が見つからないんですよね。
ちなみにスノー先生は麻酔の先駆者としても知られていて、
ビクトリア女王が出産する時に、クロロホルムで麻酔をかけた人です。