ギリシャがユーロ圏を離脱すると、元々の通貨ドラクマに戻ると仮定します。
次にユーロ加盟時のドラクマとユーロの交換比率を仮にドラクマ:ユーロ=1:1と仮定します。
貨幣の価値は国の信用力です。今、ギリシャの信用は地に落ちてしまっているんです。債務残高が嘘だったので。ユーロの信用力はドイツが入っているので割に高いんです。けれど、ギリシャがユーロ圏を離脱してしまうとどうなるかというと、ユーロ加盟時の信用力よりも低くなっているので、ドラクマ:ユーロ=0.1:1になってしまうとしましょう。昔の一割です。
そうすると、新しいドラクマの価値が大幅に下がっているので、物価が上昇します。しかも、コントロール不能なハイパーインフレが予想されます。
これが世界経済にどう影響するか、と言われると正直なところ予測はできませんが。ユーロそのものに関して言えば、問題のある小国一国を切り捨ててしまってうみを出せばいいのですが、問題は銀行です。ユーロ圏なのでフランスを中心とした別の国の銀行が多くギリシャに投資したようなのです。ギリシャ経済ががたついて、債権回収ができなくなるとこの銀行が困るのです。銀行が困るとどうなるかというと、90年代の日本を思い出していただければ良いのですが、貸し渋りが増え(貸せる金がないのです)、今までの長い付き合いのおかげで返済を待ってもらっていたような零細企業から貸しはがし(何が何でも返してもらわないと銀行がつぶれるのです)がおこなわれるわけで、景気が一気に冷え込みます。
ヨーロッパ経済は一国一国をみれば小さいのですが、ドイツは日本に次ぐ世界4番目の規模ですし、EU圏と見ると日米中と対等な規模なのです。それだけの規模の経済圏の景気が冷え込むと、すぐに想像できますね。アメリカの銀行もヨーロッパに投資しています。日本の証券会社には、倒産したアメリカの証券会社のヨーロッパの投資銀行部門を買い取った会社もあります。これらが影響を受けます。やっぱり貸ししぶり、貸しはがしを行うわけです。
さらに、アジア圏で言えば、欧州の銀行はお金がないので今後大きな成長が見込めないと踏んだ国からの撤退、つまりどこか別の銀行などにリテール部門を売ってお金に換えたり(赤字を埋めないといけませんからね)、投資銀行業務だけ残したり、投資そのものを控える(そもそも投資できるお金がありませんから)動きがすでに始まっています。投資してくれないのでやっぱりお金が回らなくなります。
景気が悪くなると買ってくれる人がいなくなるので世界の工場も操業を停止します。中国経済は打撃を受けてしまいます。なので内需拡大を必死で行おうとしているのです。世界の工場の操業が停止すると、資源を輸出することで潤ってきた国も打撃を受けます。
ただし、銀行というのは、誰かから借りて別の誰かに貸して利息をとる、というビジネスモデルです。どこかに投資していかないといけないのです。こういうときこそ、信用できる誰かを探さないといけません。いました。ユーロ安で製造業がじゃんじゃん輸出できて景気が良い国がありました。ドイツです。ドイツには今でもお金を貸したいんです。
投資家も安全な通貨にしておきたいと思うのです。そうすると、借金は多いんだけど、実は無茶苦茶人に貸しているし、しかも借金も今のところはほぼ内輪で借金しているし、それもこれまでは律儀に返済している国もありますね。日本です。一旦円に避難するのです。結果として円高です。もう一つ。赤字を垂れ流しているくせに、世界一の経済規模を誇るアメリカです。ドル高です。円高とドル高は反するのではないか、思われますか?世界の通貨は円とドルだけではありません。円とドルが他の通貨よりも高くなる、ということです。円とドルの関係はいまいち読めません。円の方が好まれるかもしれないし、ドルの方が好まれるかもしれません。
といったところでしょうか。