解像度、焦点深度、階調など、話が入り交じってややこしくなってきたので、仕切り直しします。ここでは階調の話をします。
話を単純化するために、フィルムの中の明るさの濃さを100段階で示してみます。実際にはアナログなので連続した値ですが、100段階に四捨五入したと考えてください。カラーなので実際にはカラーバランスを考慮しなければ行けないのですが、濃さだけで話します。0が真っ白、100が真っ黒です。
色紙の黒い文字の中の一番黒いところが80だったとします。色紙の文字でも実際には光の当たり加減や反射などで明るさには段階があります。文字の中の一番明るいところが70だったとします。今度は色紙の白いところの一番白いところが20だったとします。色紙の中でも強く光が当たっているところや、紙のテクスチャーなどで濃淡があります。紙の地色の一番暗いところが30だったとします。周囲に色紙を使ったとしてそれが50の明るさだったとします。
- 文字の一番黒いところ 80
- 文字の一番明るいところ 70
- カラーふち 50
- 白地のいちばん陰の部分 30
- 白地のいちばん明るい部分 20
これを50段階のプリントに焼き付けると考えてください。実際にはアナログな連続値ですが、四捨五入したと考えてください。
文字の中の一番黒いところをちょうど50の印画紙で再現できる一番黒い色にします。上記の全部から30を引きます。マイナスは0、50以上は50とします。
- 文字の一番黒いところ 50
- 文字の一番明るいところ 40
- カラーふち 20
- 白地のいちばん陰の部分 0
- 白地のいちばん明るい部分 0
ラボの補整がこの計算をしたとしたら、文字の階調は美しく再現できますが、カラーふちは明るい別の色になり、白地の時模様やテクスチャーや陰は全部白く飛んでしまいます。
今度はカラーふちの色合いを美しく出すために、100段階で50のカラーを、50段階の25にします。そのためには全部から25を引きます。マイナスは0、50以上は50とします。
- 文字の一番黒いところ 50
- 文字の一番明るいところ 45
- カラーふち 25
- 白地のいちばん陰の部分 5
- 白地のいちばん明るい部分 0
文字の階調と白地の階調が失われましたが、ふちの色合いを残すことができます。
文字をいちばんくっきり焼き付けるには、文字の中のいちばん暗いところもいちばん明るいところも真っ黒に焼き付けることです。それには20を引きます。マイナスは0、50以上は50とします。
- 文字の一番黒いところ 50
- 文字の一番明るいところ 50
- カラーふち 30
- 白地のいちばん陰の部分 10
- 白地のいちばん明るい部分 0
これで文字は真っ黒にくっきりプリントできます。カラーふちの色合いは別の色に変わります。
デジタルだとコントラスト補整を行って、文字だけくっきりさせることができますが、アナログだと基本的に上記のような調整になります。ここでは明るさだけで計算しましたが、実際にはこれを光の3原則のRGBそれぞれについて行います。これが「だわかき」さんがカラーバランスと呼ばれている行程です。
ここで計算した数字は、全体から20, 25, 30を引きましたが、これが実際の機械ではネガの上に点灯する露光ランプの点灯時間です。露光時間を調整することで、ネガからプリントに焼き付ける時の明るさや色合いを補整するのです。
ラボの機械は自動補整を行います。カラーふちがある場合には自動的にカラーふちの色合いを損なわないように計算するので、文字や白地が影響を受けます。それを手動で補整するのは「機械をだます」テクニックが必要です。そんなことをしたことの無い人が大多数でしょうから、なかなかな技が必要だし、補整できる限界もあると思いますよ。そんな調整機能のない機械もあるでしょうし。
レンズ付きフィルムですからアレですが、日光の当たり加減で、そのカメラの設定に一番合っていた条件が一番きれいに写っただけです。
逆に、もっと強い直射日光が当たっていれば、後者の方が読みやすくなるかと思います。
また、プリントアウトの場合も、明るさやコントラストをどの位に設定するかによって違ってきますが、文字だけを重視する場合と、周囲の風景も考慮する場合で異なってきます。
時によれば自動設定されてそのままでしょうから、白い壁に文字だけの場合と周囲に色々な色が入っている場合で大きく異なると思います。後者は文字は読めなくても背景がそこそこきれいに写っていませんか?逆に、前者は壁以外の背景の色がおかしかったりしませんか?
ただし、露出をシャッタースピードや絞りで調整したとしてです。
望遠レンズで多数のストロボを使えば影の調節もできて撮影は楽です。
もっと言えば、絞りを絞れるだけ絞ってやれば解像度が上がります。
その代わり、シャッタースピードを長く取る、ISO感度を上げる、ストロボを使うなどの直接的な露出補正が必要になります。
明暗差が大きいほど細部がヨク見えますから、対象物に当たっている光の量が大きいほど解像度が高くなります。
ただし、ハレーションやモアレなどが起きていない等の前提があります。
ここで問題になっているのは、実は解像度でも焦点深度でもなく、階調の問題なんです。フィルムの階調をうまく再現するためのラボの機械の露光量の問題なんですよ。
焦点深度はレンズと絞りで決まります。解像度はレンズの他にフィルムと印画紙に左右されます。階調は主に撮影時のカメラの露出と、プリント時のラボの機械の補整の組み合わせで決まります。