これだけは挙げさせて。
戦闘妖精雪風。人工知能ものって感じで読んでるんだけど、戦闘の対象は「ジャム」異世界の物体。コンタクト時の記述がほとんどないので、ファーストコンタクトというよりは、すでに戦闘が進行してしまっていましたが。
なんだかわからないけど戦わないといけないという状況と、得体のしれない敵。相手を絶対理解できないはずという前提で延々続いているのは、コンタクトものとしても秀逸です。
ファーストコンタクトなのかワーストコンタクトなのか。
最後の一行がすべてを物語る。
ファーストコンタクトって、ヨーロッパ人にとっては各地の原住民は「異世界人」。つまり、大航海時代には「ファーストコンタクト」がたくさんあったことになる。
有名ですから、ご存知の方も多いでしょう。キャプテンクックの航海。
太平洋の島々を発見(原住民がいるのだから、発見ではないのですが)し、名前を付け、原住民たちと取引をした。
ハワイ周辺の島々では、その土地の宗教での神に近い扱いを受け、歓待された。
しかし、後には島民との衝突を経て、殺されてしまう。
そのうえ、宗教上のしきたりで、島民たちはクックの遺体を食べたという。
その後、島の原住民との接触のパターンである、
見知らぬ島へ到着。
原住民に捕まる。
長老たちから、神とあがめられる。
→ 食べられそうになるが、何とか逃げる。
これは、このクック船長の事実があったればこそ。
ファーストコンタクトは、ここから始まったと言っても過言ではないでしょう
異世界の住人と、地球人との接触を描いた作品は数々ある。しかし、それらを全部「ファーストコンタクト」ものとしてしまうのには抵抗がある。その境界線を探る。
ファースト・コンタクトを、次のように定義しよう。
1 相互の知識が全くない状況が前提
2 接触時に、相互のコミュニケーションにおける共通項がほとんどない状態。
3 一方だけが、他方に対する知識を取得している状態ではない。
4 お互いにコミュニケーションを取ろうとする努力を行う。
5 生物同士の接触に限らない。
6 あらかじめ自動的な動作を設定されたもの(探査体等)による接触は含まない。
7 なんらかの知性による判断を伴う接触は含む。
さて、一方が他方に対する調査を行っていて、その調査の結果来訪する場合は、この定義のファーストコンタクトではないことになる。
・ウルトラセブンに登場する”宇宙からの侵略者”は、たいてい地球人を調査しているので、ファーストコンタクトではない。
・スーパーマンは、地球人側がスーパーマンの正体がわからないだけで、スーパーマン側がほぼ理解している状態である。これも、ファーストコンタクトとは言い難い。
・宇宙のランデヴーは、ラーマが作動しているだけであるから、ファーストコンタクトから外す。
・ETは、ET側に情報優位ではあるが、相互の心のコンタクトが存在する。そこで「”ET”はファーストコンタクトのボーダーライン」と位置付けられる。
・エイリアンはファーストコンタクトと言えるかもしれない。しかし、あの惑星で調査することが設定されているのであるから、人類の一部はエイリアンに対する情報をあらかじめ得ている。そこで、「”エイリアン”は、ファーストコンタクトに含まない境界線の作品」と言える。
・しかし、”プロメテウス”は予想外の接触があるので、ファーストコンタクトと言えそう。ファーストコンタクトで「病気になる」のはいやだなぁ。
・相互のコミュニケーションとは、意思の疎通だけではなく、捕食対象と認識することも含まれる。”アヴァロンの闇”はファーストコンタクトと言える。
・ほぼ自動的な破壊行為は含まない。”天空の劫火”は、ワーストコンタクトだが、ファーストコンタクトに含むのは抵抗がある。
・2001年は、向こうからの一方的な干渉なので、含まない。
・”前哨”は含まない。(これでもネタバレといえばネタバレ)
・へびつかい座の方から通信が来たら、ファーストコンタクトなんだろうなぁ。
・クリンゴン人とはどんなファーストコンタクトだったんでしょうか。
こんなことを踏まえて、ファーストコンタクトにコンタクト。
王道として挙げられるのは、これ
”竜の卵”
ハードさ、チーラの設定、チーラ側の歴史の壮大さ、結末。傑作です。
”惑星ソラリス”
原作より映画の方が「わけわからな度」が高い。(完成度はこのさい割愛)
”神の目の小さな塵”
接触から破綻、そして謎解き。宇宙戦争へ発展する経緯は、ファーストコンタクトもののお手本。
”夜の大海の中で”
相手の得体のしれない感じは、これを発端として次第に拡大していきます。
”サンダイバー”
太陽表面に観測された生命体の探査から始まる、普通のファーストコンタクトかと思いきや…
そして、もう一つ
”スタータイドライジング”
ファーストコンタクトの定義からは微妙に外れるんだけど、サンダイバーから始まる”知性化戦争シリーズ”は、異星人たちの生態が様々で楽しいです。そして、この作品は主人公がイルカで、イルカと異星人とのコンタクトというのも、視点が新鮮で面白いところ。
”キャプテン・スカーレット”
火星の住民との誤解を生む接触から始まった、地球人対ミステロンとの戦闘。子供向けとは思えない複雑な設定(当時、全部理解していたとは思えない。)、白い輪っか3個が映っているだけのミステロン。(懐中電灯を3こ束ねて、壁に投影して僕たちはこうつぶやいていた。”ワレワレハ、ミステロンダ”)バッドコンタクトと、悪いのはミステロンとは言えないという物語など、結構マニアックだった。
さて、これだけ挙げましたが、一押しはこれです。
いしいひさいちの傑作、「SF巨編 死斗!!地底人対最底人!」に登場する最低人。地上人たちを総攻撃して、地上の征服をたくらむ地底人たち。その地底人たちに悟られることなく、一方的に地底人に勝利する最低人。たぶん彼らは地上人の存在も知らないまま、地上人にも一方的に勝利しているに違いない。もっとも恐ろしい「ファーストコンタクト」と言えるでしょう。
付録
ファーストコンタクトが生み出したもの
1 欲望
2 病気
3 滅亡
アメリカ大陸にコレラを持ち込み、梅毒を持ち帰る。「コロンブスの交換」は、ファーストコンタクトのもたらした物。そのために、インカ帝国は黄金と引き換えに滅ぶ。クラークは言う「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない」。故に、発達した側を途上側は神と崇める。その結果、南太平洋にはカーゴ・カルトが残る。
ファインマン曰く、
カーゴ・カルトは、空港やアンテナの偽物を作るけど、飛行機は来ない。科学者も同様、形だけを真似た疑似科学は「カーゴ・カルト・サイエンス」だと。
相互理解というのは、異文化に限らず、困難を伴う。
どうして、世の中には秀逸なSFが沢山あるというのに、人生の時間は限られているのでしょう!
そして、お財布の中のお小遣いは限られているのでしょう!
死んだ後、図書館か、紀伊國屋とかの大きな本屋さんの邪魔にならないところに棲む幽霊になりたいです。ホント、マジで。
私は十代のころから図書館に憑く幽霊になると決めてます。良いポジションは譲りませんよ!
まだまだ魅力的なファーストコンタクトを熱烈募集中ですが、四次会の告知もしておきます。
(質問者のおサイフの都合で、そろそろ結びのころあいが見えてまいりました。
あとちょっとだけお付き合いくださいませ。)
次回のお題は「魅力的なマッドサイエンティスト」を予定してます。(多少、文言が変わるかも。)
本質問の終了後に開始しますので、記憶を総ざらいしておいてくださいね。
『死者の代弁者』オースン・スコット・カード
『エンダーのゲーム』の続編にあたりますが、ファースト・コンタクト・テーマの面白さではこっちのほうが上、かも。テーマの伝統的な面白さがよく出てます。泣かす感動モノでもあります。
『アレフの彼方』グレゴリイ・ベンフォード
伝統的な宇宙モノの爽快さに加えてル・グィン的な実験社会モノ、ファースト・コンタクトモノの面白み、と心躍る昔懐かしSFのモダンなヴァリエーションとして一気に読める楽しさ。
『アッチェレランド』チャールズ・ストロス
厳密に言うと「ファースト」でも「コンタクト」でもないかもですが、"知的生命体はなんだかんだの違いがあっても似てくる"って面でのアプローチが面白い。
『遠き神々の炎』『最果ての銀河船団』ヴァーナー・ヴィンジ
ストロスの先駆けかなって感じの、アタマいいクセに馬鹿話大好きなヴィンジのシリーズ作。昔懐かしな牧歌的SF手法で語られる「コンタクトされる側」の知的種族の描写が微笑ましくなるほど楽しい。
『火星の長城』より「氷河」アレステア・レナルズ
サイバーパンク以降のカッコよさと昔ながらの浪漫あふれる宇宙モノが合わさった好短篇。"人類とは異質な知的文明"系のシャープでクールなコズミック・ホラー快感。
ポイント配分作業中に自動終了してしまい、均等配分になっちゃいました。これってこういう仕様!?
配分中なら待ってくれるんじゃないの!?もう、びっくりです。
本当に申し訳ありません。学習しました。もう繰り返しません。
これぞファーストコンタクト!!と感じさせる雰囲気が伝わってきて、とても魅力的でした。
追加コメントもありがとうございます。強引すぎると思いましたが、お願いしてみて本当に良かった。
紹介してくださった本がぜひとも入手できますように(祈)
ポイントは、私の胸のトキメキメーターの針の触れ具合で、微妙に差をつける予定でしたが、こんな結果になってしまってすみません。でも今回は「これ減点!」と思うような、残念な回答はありませんでした。みなさま丁寧かつ素敵な回答をお寄せくださり、ありがとうございます。心よりお礼申し上げます。次回も引き続き回答してくださると本当に嬉しいです。よろしくお願いいたします。
今回も、SF横丁の老舗です。ご新規さんも遠慮なさらずお越しください。
http://q.hatena.ne.jp/1390574026
魅力的なマッドサイエンティストを紹介してください。
回答お待ちしております。冷やかし&雑談コメントも歓迎です。
劉慈欣『三体』早川書房