B美、D菜、F吉、J尼は、J尼家のリビングでF吉お手製のスマートボール(高校生にもなってこんな安易な自由研究!!)で遊んでいた。J尼が切り出した。
J尼「ニッポンニ、ソノ名ヲ冠スルニハ、中々ノ手間ガ掛カルノニ、ソレデイテちーぷデ庶民的ナどりんく、アリマス」
みんなは興味を持った。
B美「何なの?」
J尼「名前ノ由来ハ海外ニアリマスガ、ニッポン独自ノねーみんぐデス。
ソノどりんくトナルニハ、特別ナ製法ガ必要デ、ソレヲ怠ルト、違ウどりんくトシテ扱ワレテシマイマス。マタ、ソノどりんくノ決メ手トナル、厳正ナ審査ヲクグリ抜ケタ特別ナあいてむ(※諸説あり)ガ存在スルノデス!!」
D菜「そのアイテムって食べられるの? 材料っていうこと?」
J尼「食ベタラ危険デース!! マタ、ソレハ一般ニハ流通シナイハズノあいてむナノデス!!
安クテ庶民的ナどりんくデ、同名ノ他ノ食品モ広ク認知サレテイマス。
ニッポンノ夏ノいべんとニハ欠カセナイどりんくデモアリマス」
J尼はウィンクした。
J尼「コノどりんく、何カ、ワカリマスカ?」
※捕捉も参照
既に捨てられた工場の跡地。
ガラスがすっかりと割れてしまった低層のビルや産廃のがれきの山を、満月が静かに照らしている。
辺りに明かりがないせいで都会よりも二割増し大きく見える。
遠くの国道から、かすかに響くような音が聞こえてはくるものの、静けさが支配している打ち捨てられた世界。
その静寂の支配を破るガラスを踏み割る音と、荒い息遣い。
肉を叩いたような湿った音の後に続いて、人のものとも獣のものとも違う苦鳴が聞こえてくる。
「次から次へと…… キリがないなあ」
事務仕事を押し付けられて愚痴っているような、のんびりとした口調ではあるが、若者のシャツのあちこちは破れ、血がにじんでいる。
人気のない廃墟に血を流しながらたたずむ姿は、どう見ても普通の状況ではない。
ぎしゃあっ。
若者に飛びかかる異形のもの。
ぬらりとした体表が月明かりに浮かび上がる。
しゅっ
若者の手から、一条の銀光が異形のものの頭部を貫く。
くぐもった苦鳴が尾を引きながら、水膨れしたエイのような体がはじけ飛ぶ。
ずんぐりとしているが、動きは素早い。粘液に包まれたような体には、鋭い爪持った二本の足と、どこにあるか分からない口に備えられた牙。うろこに覆われた長い尾が、若者の体を刻んでいた。
じゃりっ。
ガラスを踏み割る音の方を向くと、満月を背に黒ずくめの体躯が浮かび上がる。
「人間のくせに、なかなかやりますねえ」
若者が打ち抜いた異形のものを手に持った人影が、月を背に浮かび上がる。
「やっぱり、飼い主がいたか」
「かわいそうに。この子たちを貫いた鋼の球。痛かったでしょうに」
むしゃり。
手にした異形のものを口にする黒い影。
むちり。むちり。
咀嚼音が静かな廃墟に染み渡る。異形のものの飼い主は、果たして人間か、それとも、それ自体が異形のものか。
「あなたの能力は、大体は分かっておりますよ。この子たちが教えてくれます」
ぎぱぁ。
月を背にした人影が軽く震えると、首のあたりが割れ、新たな口が牙をむく。
「あなたおの能力は念動力のようですが、直接、手で触れたものしか動かせない。この子たちを貫いた鋼球は、全て、あなたの手から放たれたものです」
「……」
「あなたが動かせるものの大きさか形が決まっているのではないでしょうか。このがれきの山で、つぶてとして適当な石ころがたくさんありそうなものですが、あなたが使うのは、その鋼球だけだ」
「誘い込まれてた、ってわけか。ここに」
「だから、あなたは手持ちを使い果たすと、攻撃の手段を失うのでしょう、多分。後、何匹いるのだろう。そう思っておられるのではないですか」
「化け物のくせに、冷静な分析だ」
「私も困っているのですよ。この子たちも、無限に産みだせるわけではございませんので」
さっと両手を上げると、若者を囲むように三匹の異形のものが飛びかかる。
若者の両手から放たれた鋼球は、正確に二匹を貫いたが、最後の一匹が若者の肩を食いちぎる。
次の一手で、左肩に食いついた一匹を弾き飛ばした若者は、月を背にした影に鋼球を打ち放つが、ひとつは足元へ、もうひとつは首筋をかすめるも、軽くかわされて、後のがれきにめりこむ。
「おやおや。軌道の制御は、ある程度できるものだと思っていましたが……」
すらりとあげた右手には、長い爪が月の明かりが鈍く煌めく。
「伊達に狩人の名を配しているわけではないようですが、悲しいかな人間にできることには限界があります」
「何故、その名を!」
「おっと、口が過ぎました。そろそろ終わりにしましょうか」
「くっ」
若者の右手から鋼球が放たれるが、その軌跡は、影の足元に。
「人間にしては、よくやった方だと思いますよ」
あり得ない大きさの口で、影が笑みを浮かべた瞬間。斜線
がきん。がきん。
「!」
影が若者に飛びかかろうとした刹那、後ろから頭を射抜かれ、前方の大きく弾かれる。地べたに貼りついた影はピクリとも動かない。
「ふう。ちょっと、やばかったかな。手に触れたものだけにパワーを伝えられるってのは、良い読みだったけど、それが連鎖して伝わるってところまでは考え付かなかったか。化け物の世界には、おはじきやビー玉なんかはやらないんだろうけど」
最後の鋼球を放った若者はパンツのほこりをはらう仕草をして、その場を立ち去ろうとしたが、その背を、人外の笑い声が引き止める。
「ブラボー!」
むくりと起き上った影が、後頭部からぬらりとしたものを引きはがし、地面に投げ捨てる。
「まさかとは思いましたが、念のためにこの子を貼り付けておいて正解でした。最後のコマを有効に使ったのは、私の方だったようで」
振り返ろうとした若者は、がれきの山の転がった空き瓶に足を取られて、尻もちをつく。
「ちぇっ、しつこいなあ……」
月光を背に、長い爪をきらめかせつつ近づいてくる。絶体絶命の危機に若者が取った行動は……
影と同じように、すらりと出した両手の十本の指には、緑色に煌めく瓶が刺さっている。
「さて、なんの冗談でしょうか。私を失望させないでください」
「失望じゃない。絶望するんだ、お前は」
若者が両手を向けると、瓶の底を突き破って緑色の軌跡が影を襲う
ぎしぃっ
十本の光跡に貫かれた影は、思わず片膝をつく。
「直径、二センチくらいの玉にしか念を込められない、ってのは良い分析だった。やばいなあ、と思ったよ。でも、誘い込んだ場所が悪かったね」
周りに転がっている空き瓶は、祭でよく見るラムネのものだ。その口をふさぐガラスの玉の直径は、ほぼ二センチ。ラムネの空き瓶は、がれきの山に無尽蔵に散らばっている。
「もう、弾切れになる心配は無くなったよ」
新たに若者の指から放たれた緑のひかりが、異形のものの頭部に緩やかな軌跡を描いて集中する。
ぐぎぃ
「ふう。やっと、片付いたか」
二人を照らしていた月に向かってつぶやくように、ひとりごちる。
「こっちの方が、コストがかからないかなあ。高度も十分なようだし。まさにビー玉戦士って感じ?」
「ば、ばかめ…… ラムネの瓶に使うことができない …… ものがB級品として、ビー玉と言われるようになったのだ……」
「君、しつこいよ」
若者の手から放たれた緑の軌跡が、影の頭部を貫くと、今度こそ本当に静寂が訪れた。
(了)
8月31日(日)の21時以降に締め切り解除しますが、再締め切りは翌朝ぐらいです。
小説風回答推奨。
それどころか、クイズには長々とSSを投稿するのに、かきつばたには滅多に参加しないとあるどなたかのために「かきつばた杯」にしてやろうかしら? と思ったくらいです。
なので、難易度は低いと思います。
あとは↓
クイズの回答ならという、妥協で。(すいません、lionfan2さま)
確かに、クイズの回答ならという、なんとなく正解してたら他の品質的には多少の妥協が許されるという土壌はありますね。わたしもすみません、lionfan2さま。
まずは、クイズを解かなきゃあ...
助かった。
まだ、半分もかけてない X-(
夜中か、明朝で締め切る予定です。
id:grankoyan2様の問題と、自分の回答をつなぎ合わせて、さ来年ごろ発行予定の「B美と愉快な仲間たち 5」
に収録したいのですが、よろしいでしょうか?
どちらにせよ、掲載していただけるのなら喜んで!!
「B美と愉快な仲間たち」ですが、今までおおむね300ページで一冊としています。
クイズは、ページ数が短くなりがちですので、30問くらい集めて、ようやく一冊になります。
現在のところ、「B美と愉快な仲間たち 5」の原稿は70ページくらいしかなく、300ページ貯めるには、あと2年くらいかかりそうなのです。
また、ぐずぐずして、と言われそうだが ;-)