今では当たり前となっているある概念が形成されていったプロセスを丹念に記述した本が好きです。
もし同好の士がいらっしゃれば、そういう「○○の誕生」系の本に関する情報を共有しませんか。
古典としてはやはりここらへん↓でしょうか。
・『監獄の誕生―監視と処罰―』
http://goo.gl/dzEOKP
・『〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族生活―』
小熊英二さんの一連の著作も該当します。
・『単一民族神話の起源―〈日本人〉の自画像の系譜―』
・『〈日本人〉の境界―沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮 植民地支配から復帰運動まで―』
・『〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性―』
少し変わった(?)ところでは次のような本もあります。
・『遅刻の誕生―近代日本における時間意識の形成―』
・『女子マネージャーの誕生とメディア―スポーツ文化におけるジェンダー形成―』
学問分野としては、系譜学とか、知識社会学とかになるんでしょうが、
分野は特に問いません。
「○○の誕生」系の面白い本があれば、情報を共有しましょう。
よろしくお願いいたします。
規則・規範・倫理・道徳という倫理学の領分の本を進化的に説明する最近読んでいたので、もし興味がおありでしたら、
・ジョセフ・ヒース『ルールに従う』
・クリストファー・ボーム『モラルの起源』
・フランス・ドゥ・ヴァール『道徳性の起源』
あたりが面白いのではないかと思われます。
ただ、私は一冊目だけ読み終わっていて、これ500-600P程度あって骨が折れる本だということだけはお伝えします。私は半年かかりました。
要約したものはこれですが、あくまで参考程度にお使いください。
http://d.hatena.ne.jp/inugamikoubouathangul/20150504/1430719001
http://d.hatena.ne.jp/inugamikoubouathangul/20150504/1430719002
http://d.hatena.ne.jp/inugamikoubouathangul/20150504/1430719003
「ヒトは模倣する生物で、同調性を持っていて、特にヒト特有の性質として同調しないやつを罰するというところがある。
これが互いにチェックしあう文化を成り立たせて、これが超家族的な集団的な協力=超社会性をもたらす。
家族的な協力や個人間の協力と違い、これがあってはじめてヒトは規範を持つと言える」
というのがヒースの規範の誕生に関する骨子です。
ただ、「そういう相互チェック文化が言語をも成り立たせた」ということを「言語は規範によって成り立つ」と表現しており、「えっそこまで言っていいの。それ本当に超家族的な集団的な協力なんか?」とは思うところです。
二冊目は今まさに読んでいる最中で、
「ヒトはヒト以前からの死肉漁りや小型動物の狩猟から、武器と超家族的集団によって大型動物を狩猟することを新たに行うようになった。
その際に、超家族的に全員均等に肉を分け合って全員栄養が確保されることが大型動物狩猟のために大事だったため、超家族的な集団的な平等の価値観や規範が生まれた」
という説のようです。
これは読み終わったらまたまとめるのですが、哲学者のヒースの本より人類学者のボームの本の方が人によってはマシかもしれないな、というだけでやはり重たい本なので(400-500P)、覚悟してかかってください。
なお、ヒースとは違い、
「罰の性質もヒト特有とは言えず、権力(ちから)で罰して権威(えらさ)に関する規範を守らせる、というのはヒトと近縁の霊長類の持っている性質である。
そうではなく規範の内面化=羞恥心こそがヒト特有であり、これが道徳の骨子だ」
というのがボームの立場で、ヒースと合わせて考えると面白いと思います。
個人的には、この問題は確かに哲学・倫理学の領分ではあるとはいえ、証拠として自然科学の知見を現場で扱う人類学者のボームの説を採りたいですね。自然主義的誤謬と言われたら困りますが、自然と全く関係ない倫理を説かれても「それどこの架空世界の形而上的な倫理なん?」となっちゃうので、自然科学の知見は大事だと思います。
ドゥ・ヴァールの本は買ったはいいもののまだ触れていないので、あまり無責任にお勧めはしません。多分いい本だと思うんですけどね。
「アナール学派」「ニューヒストリシズム」の本に多いですね。
アラン・コルバン「浜辺の誕生」「レジャーの誕生」
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/db1980/8800ca.htm
ジャック・ル・ゴフ「煉獄の誕生」
リュシアン・フェーヴル「書物の出現」