中国人には理解不能!日本人が一番好きな中国史上の人物は“あの人”―台湾メディア
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151205-00000011-rcdc-cn
という記事が話題になりました。ここで挙げられている調査のように「一番人気」かは微妙ですが、本場の演義では大悪役である曹操が、日本ではある種の高い評価を受けているのも確かだと思います。
なぜこうなったか、吉川英治、陳舜臣、田中芳樹、蒼天航路…などがあると思いますが、そういう疑問を持つ中国人に説明する気持ちで教えてください。
また、個人的に曹操ファンだという人の、好きになった個人的経緯でもけっこうです。
こちらの長文記事と連動。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20151209/p2
元のニュースサイトは、
中国人には理解不能!日本人が一番好きな中国史上の人物は“あの人”
http://www.recordchina.co.jp/a124479.html
↓
日本人が選ぶ一番好きな中国の歴史上の人物、中国ネットも納得?=「これは反論のしようがない」「日本人の観点は正しいと思う」
http://www.recordchina.co.jp/a124615.html
↓
日本人が一番好きな中国史上の人物は「曹操!」=納得する中国ネットに日本ネットからは「信じられない」「どんな調査やねん」と異論
http://www.recordchina.co.jp/a124663.html
というマッチポンプぶりで、「結局曹操を嫌っているのはどっちの国なんだよ」という感じなのですが、とりあえず日本での曹操の受容として言えば、やはり織田信長とオーバーラップさせているんだろうなあと思います。
Togetterであまり言及されていない点としては、KOEIの「三國志」シリーズの影響も大きいのではないでしょうか。「三國志」シリーズは、吉川英治の三国志の影響を受けており、またプレイアブルキャラクターということもあって、曹操はそれほどの悪役として描かれていません。
それと、中国における曹操が悪役だという印象は、もともと講談や京劇を通して強化されていったのではないかと思うのですが(三国志演義の成立史 - Wikipedia)、日本ではそれらに馴染みがないことも大きいでしょう。
その上で、日本では三国志演義そのものよりも吉川三国志のほうが広く流通したために、曹操のイメージがそれで固まってしまったと。そもそも多くの日本人は「悪虐な曹操」を見たこともないのでしょう。
私自身も、子供の頃に吉川三国志を読み、高校以降にゲームの三國志シリーズにハマった人間ですが(陳舜臣や横山三国志は読んでいません)、曹操がそれほどの悪役だという認識はありませんでした。
子供の頃は演義の書き方をそのままうけとって、桃園の誓とか三顧の礼、
結末の悲劇性だけに目が行くのですが、
そのうちオトナになると、いろいろな史実をつきあわせて読めるようになります。
すると妻や子を守ることもできなかった、自分ではなにもできなかった劉備よりも
一度は自分の国をつくりあげ、息子などもきちんと育てた曹操のほうが、
ずっと偉い(おなじように滅ぶ悲劇が待ち受けているとしても
レベルが大きい物語になる)のではないかと
思うようになります。
たとえていえば、天下統一の元となった信長です。
言動には小さな無礼などがあっても、
大きな目でみれば知恵と力の限りをつくして
自分の信じる天下統一を達成した人は、
日本では人気があります。
いわばツンデレ女子が「あんたのためにつくったんじゃないから!
練習したヤツが余ったんだから!勘違いしないでよね!
あっマズイとかいったら死刑だから」と
毎日弁当をつくって食べさせてくれるようなものです。
あるいは、ポケモンのようなものです。
子供の内は主人公とピカチュウだけに感情移入しますが、
青年期になると悪役側に悪役なりの論理・正義があり、
その悪役なりの考え方と主人公側の「違い」がもっと大きな
うねりのような物語を編みあげることになっているという点にも
目が行き、惹かれるようになります。
見た目の礼儀正しさ、その場だけの義理堅さだけではなく、
生涯の行い全体から判断しているのではないでしょうか。