戦前は、長男だけが借金を背負った、という言い方を聞くことがあります。これは、戦前は限定承認や相続放棄という制度がなかったということは徒然として、次男以下は、分家して逃げることができるから、ということでしょうか。戦前の戸籍では、分家するかしないか、選べました。
分家するか否かには関係なく、長男だけが債権者から追及されるのでしょうか。長男には、分家して逃れる方法はなかったのでしょうか。
今の戸籍では結婚すれば、親の戸籍から出ますから、戦前の戸籍とは違いますが、戸籍がどうなっているか、という話ではないのかもしれず、私の誤解があれば、指摘してください。
コメントとして、大変貴重なサイトの紹介を頂いております。
残念ながら、私は、第317条の意味の一部がわかりませんでした。
>第317条 相続人は相続に付き単純若しくは限定の受諾を為し
>又は抛棄を為すことを得
>但法定家督相続人は抛棄を為すことを得す
>又隠居家督相続人は限定の受諾を為すことを得す
隠居家督相続人というのが良くわかりませんでした。
戸主が隠居することによって、家督を相続した人のことでしょうか。先代の死亡ではなくて、先代の隠居によって、家督相続した人は、「限定の受諾を為すことを得ず」ということなんでしょうか。
とすると、放棄はできてしまうんでしょうか。
旧民法 財産取得編・日本近代法制史
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第13章 相続
総則
第286条 相続に二種あり家督相続及ひ遺産相続是なり
第2節 遺産相続
第312条 遺産相続とは家族の死亡に因る相続を謂ふ
第313条 家族の遺産は其家族と家を同ふする卑属親之を相続し卑属親なきときは配偶者之を相続し配偶者なきときは戸主之を相続す
第4節 相続の受諾及ひ抛棄
第317条 相続人は相続に付き単純若しくは限定の受諾を為し又は抛棄を為すことを得但法定家督相続人は抛棄を為すことを得す又隠居家督相続人は限定の受諾を為すことを得す
第2款 限定の受諾
第325条 相続人か相続財産の限度まてに非されは債務の弁償の責に任せさるときは限定の受諾とす
第3款 抛棄
第336条 相続を抛棄せんとする相続人は相続地の区裁判所に其旨を申述し裁判所は別段に備へたる帳簿に之を記載す可し
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重ねて質問するのは気が引けますが。
①「戦前は、長男が全部、貰ってしまった」と良く聞くのですが、313条を見ると、家督相続者(ふつう長男)だけが全財産を相続するというふうには読めないです。少し驚きましたが、条文をどう解釈すればよいのだろう、私の読み方がおかしいのかもしれないと思いました。
②317条をみると、「法定家督相続人は、放棄を為すことを得ず」とあります。長男は、放棄できないというふうに解釈できました。「単純な受諾」「限定の受諾」「放棄」のうち、放棄ができないだけ、「単純な受諾」と「限定の受諾」はどちらも選べるように読めました。しかし、単純な受託(負債の方が大きくとも、逃れることなく、すべてを相続)するしかない、というふうに思っておりました。これは素人解釈だったのでしょうか。当時の実態として、逃れるようなことはすべきではない、とされており、長男は殆ど例外なく「単純受諾」をするように強いられていたというだけなのでしょうか。
③313条では、「家族の遺産は其家族と家を同ふする卑属親之を相続し卑属親なきときは配偶者之を相続し配偶者なきときは戸主之を相続す」とありますから、家を同じくしていなければ、相続はありえず、借金だらけの者の死亡時に、その借金を相続することはない、という意味でしょうか。であれば、妻はさっさと離婚しておけば逃れることができ、次男三男はさっさと分家しておけば逃れることができます。しかし、長男は、分家できない(?)ので逃れることができない、ということなのであろうか、と素人解釈しておりますが、いかがでしょうか。
逆に、息子が借金まみれであれば、早々に、勘当しておけば、息子が急死しても、親兄弟に迷惑は掛からないということでしょうか。
家督相続は、原則として放棄できないが、遺産相続は、放棄も限定承認も可能である。
「質問者から」では、家督相続と遺産相続がごっちゃになってるようです。
家督相続と遺産相続は別物なのですね。
<1>家督相続とは、戸主から、次の戸主への相続で、
対象は、「家」と「財産」ということで、
<2>遺産相続とは、戸主以外から、家族への相続で、
対象は、「財産」ということだと、
一応、整理しました。
済みませんでした。
すると結局、戦前は、
戸主が死亡すれば、「家督相続」が始まり、
マイナスの財産も、家督相続者が引き継いでくれるので、
債権者としては、とりあえずは安心ですが、
「遺産相続」では、限定承認もあるので、
戸主以外が死亡したときは、その債権者は、
弁済を請求すべき債務者が消えてしまう危険がある。
ということなのだろうか、と、自分としては、少し違和感があったりします。
「戸主以外には、お金貸さない方がよい」、
「戸主以外は、独立の契約主体としては、すこし不安な存在である」
ということになります。