確率は直感とは異なることがしばしばありますが、これはその典型ですね。
ひとつずつ考えましょう。まず、生まれてくる赤ちゃんの性別は男と女の二つです。簡単のため、性別の定義については考慮しません。このとき、生まれてくる赤ちゃんが男である確率を1/2とします。これは精度の良い近似です。当然、女が生まれてくる可能性も1/2とします。両者の確率は等しく、しかも足して1になりますから、赤ちゃんを産んだ時点でその赤ちゃんは絶対に男か女であるということです。
これは何人産んだところで不変の確率です。n人の赤ちゃんを産んだところで、その赤ちゃんが男である確率は1/2のまま。女である確率も然りです。
ところで、今回の問題を抜き出してみましょう。
「ある家庭に2人の子供がいる。そのうちの1人が男の子であることが分かっているとき、もう1人も男の子である確率はいくらか?」
これは受験では「条件付き確率」と呼ばれる問題です。確か高校一年生くらいでやりますが、結構つまづく人が多いようです。特に問題のように生活を題材にした問題では、普段の感覚からズレてしまうのでしょう。
確率には、「考えうる確率を全部足したら1になる」という大前提が存在します。試しに子供が2人いるときを考えてみましょう。子供の性別の組み合わせは、上下を区別すると{男,男},{男,女},{女,男},{女,女}の4つの可能性が考えられます。漢字で表現すると「兄弟」「兄妹」「姉弟」「姉妹」です。このうちのどれかになる確率は、直感通り全て1/4になります。そして、1/4+1/4+1/4+1/4=1ですから、上の4つで全ての可能性を考えていることも確認できます。
ところが、今回の問題は「2人の子供がいる」のほかに「そのうちの1人が男の子であることが分かっている」という《条件》が付与されています。すなわち、この時点で姉妹の可能性は0になるわけです。とすると、今回考えうる可能性は{男,男},{男,女},{女,男}の3通りしかありません。言い換えると、「これで全部の可能性を考えきれている」のです。ということは、{男,男},{男,女},{女,男}である確率を全部足すと1にならなければなりません。つまり確率は全て1/3と考えるべきであり、ゆえに求める確率は単純な数え上げによって2/3にであると分かります。問題のミソは、「《条件》によって姉妹の確率が0にされている」ということです。
極端な話をすると分かりやすいかもしれないので、以下の問題を考えてみましょう。
「コインを2回投げました。そのうち2回でオモテが出たことが分かっています。このとき、2回ともオモテが出ている確率はいくらか?」
ここで1/4と答える気にはならないでしょう。どう考えたって1です。問題文で{オモテ,オモテ}であることが既に公言されていますから。もちろん、コインを2回投げて単純に2回オモテが出る確率は1/4です。子供の問題では、これと本質的に同じことが起こっています。
最後に、直感で考えていた確率1/2について述べておきます。実は、混乱を招くかもしれませんが、以下のような問題では答えが1/2になるようです。
「ある夫婦が子供を授かった。男の子だった。2人目の子供を授かったとき、その子も男の子である確率はいくらか?」
先程の問題と比較してみてください。