CJDの原因と言われる以上プリオンには
へリックス構造ではなくβシート構造が
多く含まれると聞きますが、具体的には
どのような分子構造をしているのでしょうか?
未だ正確には判明していないそうですが、
その化学的安定性がどのように実現されて
いるのか、非常に興味がありますので
さわりだけでも知りたいです。
宜しくお願いします。
http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/chem/struct/vuniv2001/s1-2.html
たんぱく質の立体構造:たんぱく質の構成単位(2)
生体化学の教科書には必ず出てきます
αへリックスはβシートとセットで覚えられ、アミノ酸の螺旋構造(DNA)が発生する理由でもあります
ここがみやすいかな?
BSEなどの以上たんぱく質は螺旋ではなく、βシート(平面構造)になってるとか
もういっこ
水素結合は化学結合の中でも強力な結合です
水素結合によって、非常に安定な性質を持つ物質は身の回りに沢山あります
水の沸点が異常に高いのも水素結合が原因ですしね^^
異常プリオンが熱変性しないのも水素結合がらみなのです
なるほど、良く解りました。
教科書では「強い」というのはよく書かれていますが
ここまで強いというのはなかなか実例を見ないと
納得しないものですね。
有り難う御座いました。
プリオンに関しては、ネット上にはあまり正しい情報が載っていないようなので一筆。
まず、多くの人が誤解しているのですが、「異常プリオン」という言葉は存在しません。プリオンという言葉は、それ自体が「伝達性蛋白質」という意味で、感染性をもったものを「プリオン」と言います。
そして、プリオンは異常型プリオン蛋白質によって構成されていると考えられています。異常型プリオン蛋白質を一分子だけ脳に注入しても、プリオン病にはなりません。ある程度の分子数が一定の規則をもって凝集したもののみが正常型プリオン蛋白質を異常型に変えれるようで、その能力を持ったものをプリオンと呼びます。正常型プリオン蛋白質は生体内で細胞膜表面に発現され、1分子で何らかの働きをしているのですが、はっきりとは分かっていない状況です。
そして、プリオンの化学的安定性に関してですが、これも異常型プリオン蛋白質1分子では説明がつかないことのようです。多数凝集してプリオンになると熱や化学薬品に対しても抵抗性となると考えられています。一般的に、ベータシート構造は凝集しやすくなると言われており、また、凝集すればどんな蛋白質も分解しにくくなるようですが、その中でもプリオンは特別のようです。
上に、一定の規則を持って凝集と書きましたが、その規則に「ジスルフィド結合」が関与していることが定説です。ジスルフィド結合はシステイン残基内の硫黄原子同士の共有結合なのですが、これは距離が近ければ分子内でも分子間でも起こることが分かっています。プリオン蛋白質にはシステイン残基が二つ含まれており、異常型プリオン蛋白質では、構造が変わることによって分子内で起こっていた結合が分子間で起こると考えられています。これがプリオン蛋白が特別に強固であることの説明の一つです。
今までの回答で出てきている図は、全てリコンビナントなんで、生体内でも同じ形をしているかは分かってません。しかし、蛋白質分子内のアルファヘリックスとベータシートの含量を調べる実験系は確立されているので、生体内でもベータシート構造リッチになるのは間違いないです。それから分子間でジスルフィド結合などの一定の規則をもって凝集し、分解抵抗性になり、なぜか感染性までもつ、というのがプリオンの大枠のようです。
100%証明されているわけではないですが、研究者の多くは以上のように認識しているようです。
非常に専門的で重要なご意見、有り難う御座いました。
ジスルフィド結合については、自分がやっている
材料についても応用したものがありますので
理解できます。そういった、いわゆる
「外乱に対し反応してさらに強固に結合する」
基が存在している、という認識でよろしいでしょうか?
また、凝集すると安定性が増す、ということですが
ゲル化するようなイメージなのでしょうか?
以上、質問の質問になりますが。
有り難う御座います。
http://www.res.titech.ac.jp/~seibutu/projects/cpn01.html
分子シャペロン - タンパク質のケアテイカー
まず、凝集に関してですが、ゲル化する凝集はコロイドが変性して粘性を増すようなイメージです。蛋白質の凝集は、多少話が違います。そもそも、蛋白質は3次元構造をとって初めて生理活性をもちます。しかし、蛋白質は作られた時点ではヒモみたいなものです。細胞内の他の蛋白の助けを借りたり、親水、疎水性残基が動いたりすることで活性のある形へと成熟します。
それで、その途中経過を乱された場合、形をなさないでカタマリになってしまいます。ヒモが絡まったような状態ですね。不可逆でランダムに凝り固まって、役に立たないゴミができるようなイメージです。
よって、安定するという表現には御幣がありましたね。分解されにくいゴミのカタマリが出来上がるような感じですか。
プリオンの場合、凝り固まるのですが、それに一定の規則があるのではないかと言われているのです。そういった意味では、凝集とは違うのかもしれないですね。(結局、よく分かってないのですが…)
そして、「外乱に対し反応し、さらに強固に結合する」基が存在するかと言えばよく分からないですね。正常型プリオン蛋白質はシステイン二つで分子内架橋を作っているのは間違いないです。ジスルフィド結合は分子間距離が重要なようなので、正常型プリオン蛋白質の構造が変わり、異常型になった場合、たとえば内を向いてた硫黄原子が外を向くような感じで分子内ではなく、分子間架橋を作るのかもしれません。
配列的な話をすれば、2つのシステイン残基は正常型プリオン蛋白質内では二つのヘリックスをつなぐような位置にあります。異常型プリオン蛋白質の構造は実はまだよく分かっていないため仮説の段階ですが、あそこまで強力に凝集しているならば分子間でジスルフィド結合をしているのだろう、と考えられているわけです。
プリオン蛋白質の構造が変化することに関しても、その機構は解明されてはいません。とにかく、異常型が凝集した形のもの(プリオン)が、正常型1分子を取り込むように形を変えて大きくなっていくというようなモデルが支持されています。
酵母を用いた研究では、この重合した形のものがある程度以上大きくなったら2つの塊に折れるようなモデルが支持されているようです。この他にも仮説はありますが、現段階ではこれを支持する研究者が多いようですね。
シュプリンガーフェアラーク東京の「分子シャペロンによる細胞機能制御」
近代出版の「人と動物のプリオン病」
などは分かりやすく書かれてあります。
紹介したHPは前者の編者の研究室のページで、蛋白質の基礎から応用までのアウトラインが書かれているため参考になるかと思います。
この道の専門家にしか頂けないような意見を
書いて頂きまして有り難う御座いました。
おかげで良く解りまして、是非今後の参考に
していきたいと思います。
どうも有り難う御座いました。
有り難う御座います、非常によくわかりました。
水素結合がらみの構造だったわけですね。
ですが単純な水素結合ですとこんなに化学的に
安定なわけはないと思うのですが、そのあたりは
まだわかってないのでしょうか・・・?