▼優秀だが貧しいA子(20歳)は、裕福な伯父のB男(61歳)から学資として百万円を借り受ける金銭消費貸借契約を△年○月×日に結んだ。B男は有望なA子の将来を思い、貸した金の返済は「A子が出世してからでよい」とした。A子はB男から金を借り、返済期日以外は法的要件をみたす内容の契約書を正副一通ずつ作成し、同日署名捺印した。しかし契約書は公正証書でなく、返済期日に「A子が出世したとき」とだけ書いてある。A子に返済、B男に貸金回収の意思がそれぞれある。この契約は贈与の事実を隠蔽するためのものではないとする。準拠法は日本法。
考慮点とキーワード:
0.公序良俗、または強行法規の規定に反するか否か
1.停止条件付契約、(条件付)贈与
2.返済期日の確定、期日の定めなき金銭消費貸借契約
3.契約の全部、または一部の有効性
4.出世しなかったときの取り扱い
5.過去の判例、法律(法律は最新のものに準拠してください)
6.無関係なURLの回答、匿名掲示板の投稿のみに依拠する回答、想像、根拠なきあなた自身のご感想やご意見の回答はおことわりします。
http://www.ilc.gr.jp/journal/000404/
契約解除権の発生要件と法律行為の付款
0公序良俗に関わる判例は私の知る限りではないです。
1民法第127条により停止条件付契約とされる
http://tokagekyo.7777.net/brush_echo/contract-ki-61.html
過去問アーカイブス・危険負担・昭和61年
2期日の定めのない消費貸借契約は相当期間経過後、債権者が督促可能とされており、債務者も督促を拒めない。
3これは、最後の書籍の解説に記載されていましたが、条件が成就不可能な場合は、停止条件が不確実性条件ではなく、確実に発生しないため、無効となります。
本件のように100万円の消費貸借であれば、100万円の支払が可能となる所得を得た時点が、停止条件成就の時期とされ、現在の所得水準であれば、女性であっても不可能な水準ではなく、停止条件の不確実性は、認められるので、無効とはならないでしょう。
4同様にコンメンタール民法で、条件成就が不可能となった場合は、条件が成就したものとされ、期限到来となります。例えば婚姻により、パートでしか就業が困難となった場合は、条件成就とされます。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4535001456/qid=11167723...
Amazon.co.jp: コンメンタール民法総則: 本: 我妻 栄,有泉 亨,清水 誠
http://www.hou-nattoku.com/mame/yougo/yougo56.php
[法律用語] 条件と期限 - 法、納得!どっとこむ
まず、「出世しないときは支払う必要がない」との合意であるのなら、停止条件付契約と解する余地はあります(「民法総則」我妻栄,岩波書店)。
しかし一般的に出世払い特約について、「出世するかしないかが分かったとき」を期限とする不確定期限と解した判例が多いようです(大審院判決明治43年10月31日,大審院判決大正4年3月23日など)。
一方、「支払える見込みが立ったとき」を不確定期限と解して、まだこれが到来していないと判断した判例もあります(東京控訴院判決明治43年6月30日、東京地裁判決平成8年10月31日など)。
こちらの場合、期限の到来としての債務者の資力は比較的客観的に判断できるものと思われます。
というわけで、
0.強行法規違反はないでしょう。
1.当事者間に返済・回収の意思あり、ということなので停止条件ではなく不確定期限かと。
2.返済期日は、“返済できる資力ができたとき”と考えられます。
3.契約は全部有効でしょう。
4.出世しなかったとしても、上記2.の期限は到来しえます。
5.法律(民法)については、本質問に関係ある範囲の改正は明治34年の民法制定以来なされていないです。
判例についてはいずれも契約している判例データベース(http://www.tkclex.ne.jp/)で検索したものです。URLを示すことができず、すみません。
ありがとうございます。
引き続き質問を継続します。
出世払い契約における債務は、出世しないときは支払う必要がないという意味であれば、停止条件付債務であるが、出世のときまで猶予され、出世しないことが確定したときに弁済期が到来するという意味であれば、不確定期限付債務である。判例は、「出世したら返してくれ、しなかったら返さなくていい」などという契約は通常はしないから、不確定期限付債務であると解している(大正4.3.24 民録21・439)。したがって、債務者が条件だと主張する場合には、当該債務が停止条件付債務であると解すべき特別の事情があることを証明しなければならない。
最終的には、契約における当事者意思の解釈の問題となるが、本問では、A子に返済、B男に貸金回収の意思がそれぞれあるので、不確定期限付債務であると解されると思われる。
ただ、実際には出世したとき、またはいつ出世が不可能と確定したかを認定することは難しく(そのとき出世の見込みがなくても、将来出世するかもしれない)、それぞれの具体的事情により裁判所が判断することになる(現実的には、返済を迫られたときに返済能力がある場合は、返済すべきと判断され、ある程度の期間が経過していれば出世しなかったものとみなされる余地はあると思う)。
「実際には出世したとき、またはいつ出世が不可能と確定したかを認定することは難しく」という指摘がご回答の中にあるようです。
意図的に回答内容を(私の誤っているかも知れない認識や疑問に沿うようには)誘導したくなかったので質問には書きませんでしたが、この点についてもう少しご説明をいただきたく思います。
この停止条件ですが、条件成就の日は、
①定収につき100万円の支払をすることで生活上支障が生じない所得水準に達した時、
②定収が得られないか、得られたとしても生活するのが手一杯で100万円の弁済が不可能であることが確定した時
②’定職を得たものの婚姻により退職し、育児のため就職が不可能であり、100万円の弁済が不可能であることが確定した時
③借入日より相当期間が経過し、債権者が弁済請求をしたとき
が該当するわけです。
要は、
①客観的に出世し債権弁済が可能であることが明確となった日
②客観的に出世が不可能となり債権弁済が事実上困難となった日
③債権者が相当期間経過後弁済請求をした日
というわけです。よってこれらの条件が明確になる可能性は相応に発生するため、条件とされるのです。
但し、債権者が61歳であり実質10年以内に確定しないと、痴呆が始まる等の可能性もありますが、10年といえば相当の期間であるため、債権者が弁済請求できる相当の期間となるため、その段階で請求をしなかった場合は問題と成るでしょう。
①②については、既出のコンメンタール民法で詳細を記述しています。
ありがとうございます。引き続き、幅広いご回答を募りたく質問を続行いたします。
http://port-system.net/legalform/kinsyo/
金銭消費貸借契約書■借金の契約書
0.公序良俗、または強行法規の規定に反するか否か
借りた相手が裕福な伯父なので反しないと思います。
1.停止条件付契約、(条件付)贈与
「出世払い」は法律で定義されていないので、裁判になったときの裁判官の判断になり、人によって違う見解になるでしょう。
2.返済期日の確定、期日の定めなき金銭消費貸借契約
10年で時効になります。
3.契約の全部、または一部の有効性
1.への回答と同文です。
4.出世しなかったときの取り扱い
出世してもしなくても、借りたお金は返す義務があり、返す意思がないのに公正証書でなくとも借用書を書いたとなると「詐欺罪」になります。
5.過去の判例、法律(法律は最新のものに準拠してください)
URLを読みになってください。
「借りた相手が裕福な伯父なので反しないと思います」とありますが、相手によって公序良俗に反したり、法律の強行規定に反したりするものでしょうか?
考慮点をふまえたご回答をいただけたことには感謝しますが、回答内容に不安があります。
(0の点について)
このような場合には民法90条の「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」という規定に違反しないか問題になると思います。
他にも、その契約の実質がいわゆる愛人契約であったような場合には、公序良俗違反で契約が無効になる可能性はあるのではないでしょうか。
ご質問にあるような状況では考えにくいと思いますが。
えっ、そんなことはない? ^^;
http://www.utp.or.jp/booksearch/cgi/jump.cgi?id=032307
お探しのページが見つかりません
(1の点について)
民法133条でしょうか? 民法133条には「1 不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。」とあります。しかし、そもそも、判例はこれを停止条件付契約ではなく、不確定期限ある契約と解していると、民法の教科書には書いてあります。(参考:内田貴『民法Ⅰ』東京大学出版会。手元の本の版が古いのでページは省略しますが、「出世払債務」で索引を引けばページは分かると思います。)
ここで、仮に、これを停止条件だと解するとします。このとき、客観的にみて、A子の出世が不可能であるような状況で、この契約が成立したとすると、契約は133条によって無効になると思います。また、この場合には、A子には不法利得として、現存利益を返還すべき債務が生じることになりますが、学費として消費したとすれば、その分はなお返還しなければならないということになると思います。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4335302258/qid=11174234...
Amazon.co.jp: 民法総則: 本: 四宮 和夫,能見 善久
http://www.yuhikaku.co.jp/bookhtml/012/012405.html
有斐閣 書籍「CD−ROM有斐閣判例六法・小六法 平成17年版」
(2の点について)
先に述べましたように判例は、これを不確定期限のある契約として理解しているようです。(大正4年3月24日大審院判決)。また、判例は不確定期限ある契約においては、その事実の到来が不発生に確定すれば、その場合も期限が到来したことになるとしています。(大正4年12月1日大審院判決)
ということで、A子が客観的に出世したと言えるほどに出世したとき、または、客観的に出世が不可能であると言えるほどにおちぶれた(?)ときには、期限が到来したことになるというのが、判例の考え方になると思います。
しかし、実際、どうやってこれを判断するのでしょうね♪
(3の点について)
上に書きました通り、ご質問に書かれていること以外に、何か特別な事情でもないかぎりは、全部有効であるという結論になると思います。また、当事者に返済の意思があるのですから、そのように考えるのが妥当だとも思います。
(4、5の点について)
前述の通りです。
(6の点について)
想像? 感想? 私のこと? ごめんなさーい。ONZ
質問にある「考慮点」は、あくまで回答の際にご考慮いただきたい点として考えられるものを例示したものです。これに縛られなくても法的思考として説得力のあるものであればかまいません。
「不確定期限ある契約」とありますが、手元の有斐閣小六法CD-ROMでは、民法127条(停止条件)のほかは、ご指摘の民法412条と、412条についての大審院判決(大正4/12/1)しか確認できませんでした。しかし、これは出世払いと関係なさそうに思えます。
★訂正:内田貴『民法I』(第2版補訂版17刷)の解説を確認しました。neye 様のご指摘の通り、出世払債務について判例は「不確定期限つきの契約」だと解しているとのこと。よく確認しておりませんでした。失礼いたしました。
しかし、neye 様ほかもご指摘の通り、「もはや出世が不可能となった」ときにも弁済期が到来する、とするには、「出世が不可能となった」ことの判断が必要であり、この点については不明なままです。
5番の回答者です。再回答します。
「相手によって公序良俗に反したり、法律の強行規定に反したりするものでしょうか?」
裕福な叔父から借金をすることが公序良俗に反するかというのは法律で厳密に決めれられていないため、裁判官によって違う判決になってしまうと思います。
実際に、逆転敗訴、逆転勝訴ということがよく起こることから明らかではないでしょうか。
http://www.tokyo-sex.com/tomato/tomaron001.html
2000.08.18 公序良俗って何?
これ以上回答がないようなので、質問を終了します。みなさま、ありがとうございます。
ありがとうございます。
ちなみに私は、この例にいう「出世したとき」は不確実な条件でないと考えています。
また、「出世したか否か」の判断(条件が成就したかどうかの判断、成就しなかったかどうかの判断)についてはこの質問の要点のひとつですので、ご意見をお伺いしたいと思います。
いずれにしても、引き続き幅広いご回答を募りたく、質問を続けます。