日本人の読者「タミコ」からヤンソンさんに送られた手紙の形式を取った小品で、読み下した現代訳のみが以下の通りに引用されています。また、作中の記述によると「昔の中国の大詩人ラン・シー・イーアン」の作で、「ワン・トゥー・イーとアルフ・ヘリクソン」によってフィンランド語に訳された事があるとか。
けだるい風にはこばれて、野鴨の啼き声がするどく響く。
朝雪がふりつもり、くもり空に空気は冷たい。
貧しいわたしには、別れの餞にあげるものもない。
あなたにどこまでもついていく青い山嶺のほかには。
こんにちは。下にコメントした者です。「ラン・シー・イーアン」のアルファベットでのスペルがわかれば、漢字で書けば誰なのかがわかるのですが、本には書いてないですよね……。
『往復書簡』が入っている短編集は『軽い手荷物の旅』:
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4480770119.html
ここに[原書名:Resa med l¨att bagage〈Jansson, Tove〉]
とあるので、この原書名(Resa med lätt bagage)で検索し、『往復書簡』の原題(Korrespondens)を得ましたが、その漢詩について書かれていそうなものは検索で見つけられません。
こういう次第で、「ラン・シー・イーアン」のスペルがわからないので、翻訳家から調べてみました。
この漢詩を翻訳した「アルフ・ヘリクソン」さんは、Alf Henrikson (1905 - 1995) だと思います。
http://sv.wikipedia.org/wiki/Alf_Henrikson (ウィキペディアのスウェーデン語版)
http://imdb.com/name/nm0377612/ (英語)
http://runeberg.org/authors/alfh.html (英語)
http://www.alfhenrikson.se/ (スウェーデン語)
この方はスウェーデン人の著述家・詩人・歴史家で、
Kinesisk historia (Chinese History)
Kinesiska tänkare (Chinese Think)
という著作がある方です。(スウェーデン語→英語の翻訳はこちらのページのInterTranというところで。)
ウィキペディアによると、トーベ・ヤンソンは「父がスウェーデン系フィンランド人、母がスウェーデン人だったため、トーベはフィンランド語よりもスウェーデン語が得意で、作品の執筆はスウェーデン語で行われた」とのことなので、『往復書簡』に引用されている漢詩も、スウェーデン語訳だった可能性が高いように思います。
Kinesiska tänkareの書名で検索してみたら、著者名が「Henrikson, Alf - Hwang Tsu-Y?」と出てきます(最後の文字は表示の段階から文字化けしていますが「uにウムラウト」のようです)。「アルフ・ヘリクソンとワン・トゥー・イー」ですね。
http://www.antikvariatet.net/bok.asp?ca_id=39
ですので、トーベ・ヤンソンの作品に出てくるのは、この本で紹介されている漢詩のどれかだと思います。
あとはこの本の目次なり何なりがわかれば「ラン・シー・イーアン」のスペルが確認できるかもしれないと思うのですが……。
コメント(8件)
ところで、私もとても興味があるので調べてみたのですが、漢文の素地がほとんどないのですぐに行き詰まってしまいました。「鴨 朝 冷 青山」で検索してみたのですが、わかりません。
調べているときにRuan Jiという人名を知りました。「ラン・シー」かどうかは微妙なところですが、遠くもない感じがします。ただ「イーアン」はまったくわかりません。
Ruan Jiは漢字で書くと「阮籍」です。竹林の七賢人のひとりで「白眼視」という表現の元になった人です。
http://en.wikipedia.org/wiki/Ruan_Ji
何かわかったら回答のほうに書き込みますね。
加えて恐らくは作家が原文をフィンランド語に意訳した上で→更に訳者(富原眞弓と云う方)が日本語訳、といったプロセスを経ているものと思われますので、原詩と用字で対応しているかどうかも覚束ないような気がしてきます。この「山がついてゆく」と云う形容自体は何処かで読んだ記憶があるようにも思うのですが…。
あと、イーアンは(イァン、リャン)かも知れませんね。どうにも雲を掴むような話で申し訳ありません。
私は逆の、朵貝楊笙(Tove Jansson)、杨笙(繁体)、姆米谷(ムーミン谷)から始めて、
「杨笙」の著作一覧(http://lib.ilccb.gov.tw/Webpac2/booklist.dll/?P=-1&S=1&Q=)と翻訳者(李俊秀)までは行き着いたのですが、底で行き詰まりました。「李俊秀」は「Hwang Tsu-Yü」とは、読めないですよねぇ。。。
そこで諦めていたのですが、nofrillsさんの回答がオープンされたのでちょっとまた触発されまして(ここまでくるとパズルを解きたい!っちゅー欲求と一緒ですね)。
Hwang Tsu-Yüはこのページ(http://www.immi.se/kultur/authors/asiater/hwang.htm)によるとスウェーデン語<>中文の翻訳者です。
訳書はほとんどがAlf Henriksonと共著で、そのなかで一番それっぽいのがkinesiska dikter(chinese poems), lyriska tolkningar (interpretation of lyrics), FJÄRRAN. Lyriska tolkiningar (far away: translated lyrics)
それぞれ探してみたのですが、古い本なのでインデックスが見つからないんですよ。(ちなみにこういう表紙らしいですhttp://www.tradera.com/auction/Skonlitteratur/aid_27825854)
もうちょっと、何かあったらまた書き込みます。
おまけ:
Swe<>Eng Dict: http://lexin.nada.kth.se/swe-eng.shtml
「昔の中国の大詩人」とあったので有名ならウィキペディアに名前ぐらい載ってるだろ、と探したのですが、音が似ている人が見つかりません。
音が4文字なので、多分、「名+字(あざな)」ですよねぇ。阮籍の字である「嗣宗」をウィクショナリーで調べたのですが、嗣は「sì」宗「zōng」(Pinyinで)。「イーアン」じゃないじゃーん!
http://en.wiktionary.org/
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Chinese_language_poets
http://zh.wikipedia.org/wiki/Category:中国诗人
確認のため、「この人の代表作」と書かれていた「詠懷詩」に目を通しましたが、それらしい編はなかったです(って、私の漢詩の素養は高校の段階から進化していませんが)。それに、boojumさんが仰っている様に4行にまとまっているので、絶句だと思うんですよね。http://www.epochtimes.com/b5/1/9/5/c5113.htm
うーん、ごめんなさい。ギブです。ウェブじゃあ、本の中身を見ることができないのであとは紙媒体で確認するっかないんじゃないでしょうか。むっちゃ気になるんで、ついでがあったら近所の本屋さんでこの本、探してみます。(たまにアマゾンで中を見られる本がありますが、この本はダメでした。http://www.amazon.com/Resa-med-l%E4tt-bagage-Noveller/dp/9100473359/ref=sr_11_1/102-9548124-6500136?ie=UTF8)
おまけ:前述の本、買えます(^ ^;)
http://www.antikvariat.net/browse/ron_h_5.htm
shimarakkyoさんのおっしゃるとおり、印刷された本(原書)で確認するしかないかもしれません。あるいは、ダメモトで日本語版の出版社に問い合わせれば、ひょっとしたら何か教えてもらえるかもしれないです。
阮籍のことは忘れてちょこちょこネット上を見てみたのですが、どうにもそれらしい漢詩が見つかりません。また、詩の展開の具合は、私の脳内の「七言絶句」のイメージ(<あまりあてになりませんが)とピッタリ一致するのですが、日本語訳の1行が「七言」ではなく「五言×2」の可能性もあるし、翻訳を重ねているので何とも言えないところですよね。
shimarakkyoさん、こんにちは。中国語からアプローチとは、私にはできない技です。
> 阮籍の字である「嗣宗」
そうなんですよー。これが「イーアン」にも「イァン」、「リャン」などそれらしい音にも合致しないのですよね。しかも『詠懷詩』にはそれらしき作品はないし、
トーベ・ヤンソンのこの作品集の英訳が書物として出ていれば、アマゾンのsearch inside的なものがどこかにありそうなのですが、なさそうですよね。2004年にフィンランド政府がエストニア語への翻訳にグラントを出しているのですが、英訳の情報はネット上にないんです。
http://dbgw.finlit.fi/fili/eng/apurahat/myontofilisy04.html
> Swe<>Eng Dict: http://lexin.nada.kth.se/swe-eng.shtml
ブックマークしておきます。
この質問、気になってときおり見ておりました。ピンインにうつしとられた中国名がさらにカタカナになっているので難しいそうですね。
英訳から詩人名を確認する、という案がでましたが、訳者でいらっしゃる富原眞弓氏はフランス語をよくされる方ですので(シモーヌ・ヴェイユ研究の一人者)、仏訳はどうだろうかとおもいあたって調べてみました。
フランス人が作成したトーベ・ヤンソンの著作一覧をみると(下を参照ください)、『軽い手荷物の旅』としてはないようですが、「往復書簡」の翻訳はあるようです。
http://tovejansson.free.fr/biblio.html
ただこの場合、その翻訳が掲載されているのが、ちょっとマイナーな雑誌なので、手軽に閲覧できるものではないですね(図書館でコピーの取り寄せを頼むほかないでしょうか)。
ところで、「往復書簡」仏訳が掲載された雑誌 Les Cahiers de Pandora は、別のサイトで調べたところ、フィンランド文化をフランスに紹介する雑誌のようです。それに気づいて思い出したのが、フィンランドのことを紹介する施設がたしか京都にはあったな、ということでした。
Google で検索をかけると、ありました。SINIVALKOINEN というそうです。私自身はここを実際におとずれたことはありませんので、なんともいえませんが、下記のサイトにメールアドレスなどの連絡先もあります、もしかしたら、調べるのに手を貸してくださるかもしれませんね。
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/s-ktsrkw/kyokailink.html
結局のところ問題の件は不明のままですが、ご参考までに書いておきます。あしからず。
この往復書簡の相手とされている「タミコさん」とは、もしかして「ビヤネール・多美子さん」という方ではないでしょうか。『スウェーデンの小さな庭から』という著作を検索でたまたま発見しただけなのですが。アマゾンの内容紹介によれば、ヤンソンと交流があったとのことです。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4775503448
この本でヤンソンとの交流にまつわるエピソードも披露されているそうですから、「往復書簡」にも触れてあるかもしれませんね。
憶測ばかりで失礼、すぐに閲覧できる場所があればすぐにでも確認しに行くのですけれども。どうぞご容赦ください。
ここまでくればあと一押しですし、何かしら折りを見付けて原書の方に渡りを付けてみようかと。
それからこれは付け足りになりますが、設問中に掲げた「往復書簡」を私はちくま書房刊、富原眞弓編訳「トーベ・ヤンソン短編集」で読んでいます。神経質な少女の空想癖と孤独趣味を損なわず、そのままに老成させて物語の域にまで洗練したような…などと云う形容で伝わるものか甚だ疑問ですが、まあとまれ大変に強固・独特なイメージを持つ良著でした。訳者の富原さんはヤンソンコレクション全8巻の邦訳も手掛けられた方で、その視点から編まれた傑作選と云う意味で大変に贅沢な一冊でもあります。ご興味を持たれた向きには強くお薦めしておきますので、蛇足迄に。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/448042119X