一般的な用語法に従って「企業」を「会社」の意味だと理解すると,
いくつか情報が不足していて適切な回答ができません。
回答すべき内容が膨大になりすぎます。
必要な情報をあげていきます。
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・ウソを言ったのは,被買収企業の誰なのでしょう?
取締役なのか被用者(日常用語でいうところの社員)なのか,
それとも株主なのか。
・どのような態様でウソをついたのか。
口頭でうまいこといったのか,
計算書類(帳簿とか決算書類)を偽造したのか。
それともその他の書面を作ったのか。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B2%89%E9%A3%BE%E6%B1%BA%E7%AE%9...
・誰の責任を問題とするのか
会社の合併という事項について,
会社それ自体が責任を取る構造になっていません。
会社合併では,会社自体は損も得もしませんので,
誰かがウソをついてもせいぜい合併無効の訴えを提起されて,
合併前の状態に戻るだけです。。
(損をしたり得をしたりするのは,両方の会社の所有者)
責任を追及するなら,
会社の内部で実際に行動した人間に対して追及することになります。
人間としては取締役,執行役,監査役,使用者くらいですが,誰を問題にしますか?
合併と書いたけれど「買収」だと微妙か…。
子会社にするだけの場合も含みますね。
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被買収企業の取締役が決算書類を偽装して買収される場合,通常は
1 決算書類の偽装
2 偽装した書類に基づき価格交渉をして株式を売却
という2つのプロセスがあるはずです。
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まず,1の問題。
取締役は故意に決算書類に虚偽の記載をしたことになりますから,
会社法429条2項1号ロにより,
取締役は第三者,今回の場合は買収会社に生じた損害について賠償義務を負うことになります。
買収価額と実際の価値との差が損害と認められるものと思われます。
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また,会社法429条と民法709条とは,
その要件が異なることから両者は重畳的に適用され,
買収会社は取締役に対して民法709条によって損害賠償請求することも可能です。
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その他,
決算書類の作成に会計参与が関わっていた場合や,
他の取締役が取締役会において決算書類を決議した場合,
監査役が監査を行っていたような場合には,
それぞれ会計参与,他の取締役,監査役が賠償責任を負う場合があります。
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次に,2の問題です。
株式の売却に際して,
その価格算定の基礎となる計算書類が偽装されていたのですから
株主が計算書類の偽装をしっていて告げなかったような場合には
民法上の詐欺(民法96条)が成立し,
買収会社は株式の売買契約が取り消して
代金の返還(民法703条)を求めることができます。
仮に株主が計算書類の偽装について知らなかった場合でも,
買い主が計算書類の偽装について知らず,
行われた偽装の程度が,
もしそれを知っていたならば株式を購入しなかったであろう
という程度に至っていれば
株式の売買を錯誤取消(民法95条)して代金の返還を求めることができます。
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株主が,決算書類の偽装について知っていた
または,知っているべきであったにもかかわらず漫然と
株式の売買契約を締結した場合には,
買収会社は契約により生じた損害について
株主に対して不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)をすることができます。
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なお,以上の各責任はいずれも同一の損害に対するものですから
いずれかの手段によって回復されれば
他の請求をすることはできなくなります。
ありがとうございました。役に立ちました。また、宜しくお願い致します。
被買収企業の取締役が決算書類を偽装したとします。