「せんせ、あのね」リエちゃんがわたしに話しかける。どうしたの。わたしは、しゃがんで目線を合わせて、そして、リエちゃんの両手を握る。こうすると、リエちゃんは本当に安心した表情になる。リエちゃんはいわゆるシングルマザーの一人っ子。いつも朝早くに登園して、延長保育で暗くなるまで預かっている。でもリエちゃんは明るくて、がんばりやさんだ。ときどき、ふっとさみしそうな目をするけれど、いつも周りに気配りの出来る、ほんとうにしっかりとした子だ。「あのね、せんせ」わたしのエプロンのテントウムシをちらっと見ながら、すこしはにかんでいる。「創作はてな」です。よろしければ続きをお願いします。

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  • 終了:2006/11/03 17:28:07
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id:threecloudjp No.6

回答回数139ベストアンサー獲得回数6

ポイント100pt

リエちゃんは身体を左右にくねらせながら、もじもじとはにかんでいる。

かわいいなぁ。

わたしは単純にそう思った。

リエちゃんがことばで自分の思いを表現しだすまで、そのまま待っている。

延長保育は子どもの数が少ない分、こうしてひとりひとりの子どものペースに合わせて振る舞うことができる。

と、おもむろにリエちゃんが発したことばが

「おそら」

長い付き合いから察するに、これは、いっしょに空を見よう、ということだ。


わたしはリエちゃんの手を引いて窓際に連れてゆき、床に座ってリエちゃんを膝の上に抱っこして、ふたりでほのかに暗い夜空を見上げた。

リエちゃんは振り返って、ちょっと恥ずかしそうに、でも嬉しそうに、わたしの顔を見上げた。

わたしはそっとリエちゃんに微笑みかけた。

「ねえ、せんせ」

「なぁに?」

「パパはあのお星様」

宵の明星がひとつ輝いている。

「そうなの?」

「うん、ママがね、パパはあそこにいるのよ、って」

「そっかぁ」

「リエね、おおきくなったら飛行機に乗りたい」

「パパに会いにいけるから?」

「うん」

自殺らしい、と以前聞いた。

少し考えて、わたしは声をかけた。

「リエちゃん」

リエちゃんの身体を持ち上げて、自分のほうに向かせた。

リエちゃんは、きょとんとしてわたしを見上げている。

「リエちゃん、自分のここ、ぎゅっとさわってみてごらん」

わたしは目を閉じて、左胸の上に両手を置くしぐさをしてみせた。

リエちゃんはまじめな顔をして、ぎゅーっと目を閉じて小さな手で自分の右胸を押さえつけた。

そっと左に誘導する。

「どき、どき、って、してる?」

リエちゃんはしばし首をかしげていたが、ほどなくして

「あっ、してる」

と、驚いたように目を見開いた。

「どき、どき、どき、どき」

リエちゃんは、自分の鼓動を声に出して繰り返す。

「それがリエちゃんのハート」

「はーと」

「リエちゃんは、いつでもパパに会えるよ」

「えっ?」

「パパはね、その中にいるんだよ」

「えー、いないよ」

「いるんだってば」

「どうしてせんせいが知ってるの?」

「リエちゃんのハートは、パパとママが一生懸命動かしてくれているものなんだよ」

「ママも?」

「うん。どちらかひとりでは、動かせないの。ふたりいっしょじゃないと、動かせないんだよ。

リエちゃんのハートは、今動いてる?」

「うん」

「それなら、リエちゃんのハートの中には、パパとママがいるよ」

「でも、リエ、パパのお顔見えないよ」

「そうだね。見えないよね。だから、ハートを動かしてくれているパパと、お話してあげてね」

「どんなお話?」

「なんでも。リエちゃんが楽しかったこと、悲しかったこと、なんでも」

「じゃぁリエ、たっくんのお話する」

「あら、たっくんがどうかしたの?」

「たっくんね、今日ね、にんじんさんを残してたんだよ。

 だからね、リエが怒ったの。『好き嫌いはだめよ!』ってね。

 そしたらたっくんがね…」

リエちゃんは、いきいきとした様子で話に没頭しはじめた。

たっくんとリエちゃんは仲良しだ。仲が良いから、いつもこんな調子だ。

聞いてくれていますか、お父さん。

少しのジェラシーとともに、うんうん、と苦笑しながらうなづいているのかもしれないな、と思った。

空にはもう三日月が高く昇り、すべてをやわらかい光で包み込んでくれているようだ。

一時しのぎなのかな。

そうも思ったが、でも、少なくとも今の彼女には必要なことだと思った。

これから成長してゆく彼女に、ずっと、必要なことをあげられ続けたらいいのにな。

そんなことを考えた。

id:aoi_ringo

今回もすばらしい読み応えでした。

本当にありがとうございました。

2006/11/03 17:19:49

その他の回答9件)

id:kurupira No.1

回答回数2369ベストアンサー獲得回数10

ポイント15pt

「てんとう虫にはお父さんいるの?」

私は質問にどきっとした。

あわてて

「そうね~いるかもしれないけど・・・お母さんだけのてんとう虫もきっといるかもしれないわね」

「そうなんだ~」

私は少し悲しくなった。

id:aoi_ringo

テントウムシに注目してくださって

ありがとうございました。

2006/11/03 17:12:44
id:ElekiBrain No.2

回答回数255ベストアンサー獲得回数15

ポイント15pt

 とても寒い季節がやってきた。外には木枯らしがぴゅーぴゅーと吹き荒れ、枝ばかりになったポプラの木が、寂しそうに庭に佇んでいる。ベージュの庭には真っ黒な木の葉が時々舞い上がり、空には灰色の雲が不安そうに横切っている。リエは、窓に小さな手をぺったりと張り付かせ、白い息でガラスを曇らせる。後ろから母と父の怒鳴り声が聞こえていたが、リエはまるで、何も聞こえないかのような表情で、荒涼とした世界に溶け込んでいた。山にはどこまでも薄黒い茶色が広がり、延々と遠くまで連なってた。遙か下の平地に田んぼが見える。刈り入れは既に終え、その田んぼにすら黄金色はない。リエは目玉だけになり、その世界をいつも遠くまで飛んでゆくのだ。




 園長先生がリエに言った。もっとみんなと遊びなさい。そんな内容だったと思う。だけど、リエは聞いているのか、聞いていないのか、園長先生の前を通り過ぎると、廊下をてててっと走り、グランドの際にあるフェンス越しに顔を押し当て、しっかりと網を握ると、そのまま外をぼんやり眺めた。ここの光景もそんなに変わらない。黒い連山がどこまでも連なり、所々に見える高い山が邪魔して、遠くの空を遮った。今日も空は灰色で、車が退屈そうに保育園の門の前を通り過ぎる。砂山では子供達が小さい権力を発揮して、いくつかのグループに分かれてトンネルを作る。時々開通して、手前の園児が開通したトンネルから手を突っ込むと、向こうから別の園児がトンネルに手を入れて、手前の園児の手を確かめる。キャッキャッ、という声がリエの表層に届いたが、それでもリエの心には届いていなかった。

 リエの背後でサッカーのまねごとをした球技が催されて、小さなリーダーが偉そうに他の子供達を指揮していた。




 佳枝は今日、別れた夫との事を思い出していた。

 二人の喧噪が鍋の中身を冷やし、つまらなそうに糸こんにゃくが浮いている。醤油とタバコのにおいと、薄汚れたキッチンに、顔を真っ赤にした夫が右手で指さして、何かを言っている。今や、何を言われれたのか、何を言っていたのかも分からない。佳枝は呆然としながら流れる水の音でふと我に返った。湯気が顔を湿らせ、やっと自分が洗い物の途中で指を止めていたのに気づく。何となく放心状態のまま、佳枝は食器に洗剤を無造作にかけ、ところどころが薄黒くなったスポンジで撫でてゆく。いくつもの食器が積み重なり、佳枝は延々とその作業を繰り返した。

 ずっと、この時が止まったような場所が続けばいいのに。

 佳枝はどこを眺めるでもなく、ひたすら食器を撫で続けた。




 あれから妻と別れて何年にもなる。遠く離れた場所へ越し、敏夫はセーターを深く着こんで、自らの身体を抱きかかえるかのように、震えながら寝室のカーテンを開けた。

林立するビルの中、ミニチュアのような自然環境がぽつんと見える。そのミニチュア――公園――を遙か上空から見下ろしながら、遠くの田舎を思い浮かべようとした。しかし、それはあまりにもおもちゃのようで、ぽつぽつと、時々動く人々でさえ、小さなアブラムシのようにしか見えない。敏夫はミニチュアから目をそらすと、寝室から連結したキッチンの、ぐつぐつと湯気を立てて煮立つ小さな鍋の前へと向かった。そこには、既にぐったりとしたシイタケや、伸びきった糸こんにゃく、春菊が鍋の中で、沸騰するがままに泳がされていた。

 敏夫は携帯を手に取ると、封印していたあの電話番号を打ち込んだ。




 このテレビには何も写らない。佳枝はそう思った。きっと、テレビからは世界を見ることはできないのだろう。テレビのチャンネルを次々と変えながら、佳枝はこたつのテーブルに肘を立て、頬に手のひらを当てて考えた。頬の肉が上部へ上がり、眼はつり上がったようになる。だけど、佳枝の心はどこか別の世界を見ていた。チャンネルには何も写らない。時々、極彩色のコマーシャルが眼にいたいほど飛び込んでくるけど、佳枝はそのたびにチャンネルを入れ替えた。タートルネックのセーターの上のエプロンもそのままに、佳枝はただ、うすぼんやりと箱の中の人形達を流れゆくまま見続けた。

 今日は珍しく晴れているようだった。窓から柔らかな黄色が差し込んで、食器を金色に染め上げた。佳枝がテレビを消すと、金色の円盤達が、テレビに映りこむ。

 突然、遠くからリエの足音が聞こえた。リエは佳枝の名前を呼びながら、ドタバタと慌てた様子で、家の中を走っているようだった。。

 佳枝はふと我に返ると、しわくちゃになったエプロンをパッパッと手で払い、皺を伸ばしつつ立ち上がった。振り返ると、リエが向こうの部屋の扉を開け放したまま、走ってくる。佳枝は再びしゃがみ込んで、リエが近づいてくるのを待った。

 リエはよほど急いでいるのか、廊下でつまずきそうになり、両手で小さな身体を支えると、再び起き上がって、ガラスの扉から差し込む陽光の中、キッチンへと入ってきた。

 リエは、呼吸を整えるまもなく、手についたベタベタの汗をそのままにして、私の前に、携帯を差し出した。

 君のお父さんの代わりになってあげる。

 そう、電話の向こうの人物は言ったという。私はそっと携帯を開いて、長く忘れていた微笑みを浮かべた。

 キッチンの石けんを置いてある棚に、ガーベラが置いてあった。それは赤く咲いて、黄金の光に当たってうっすら透けて見える。

 そういえば、キッチンにはいつからあの花が置いてあったのだろう。

 佳枝は携帯を持ったまま、ガーベラを見つめ続けた。








おわり

id:aoi_ringo

今回も描写が細かいですね。

ありがとうございました。

2006/11/03 17:16:02
id:ksfsa5 No.3

回答回数385ベストアンサー獲得回数5

ポイント15pt

「あのね、せんせ。リカね、パパが欲しいの。

でもね。リカにはね、パパが居ないんだって。

何でだろう。

皆にはいるのに、リカにだけ、パパね、居ないの。

リカが悪い子だからかな?

もっといい子にしたら、パパ来るのかな。」

先生は困った。

言葉が出なかった。

ただ、リカちゃんをギュっと抱きしめた。

「先生、あったかい。」

リカチャンはつぶやいた。

id:aoi_ringo

いいですね。

ありがとうございました。

2006/11/03 17:16:41
id:takeshi825 No.4

回答回数246ベストアンサー獲得回数5

ポイント15pt

あのね、せんせい、わたし将来やさしい

お嫁さんになることが夢なの。それでね

優しいだんなさんと子供がいて幸せな

暮らしをするの。それがわたしのちっちゃな

夢なの。

id:aoi_ringo

そっとした雰囲気がすてきです。

ありがとうございました。

2006/11/03 17:17:27
id:tarou4649 No.5

回答回数132ベストアンサー獲得回数0

ポイント15pt

「そこにてんとう虫ついてるよ!」うれしそうにいいました。私は「ホントだ、よくわかったね」といい、リエちゃんのあたまをなでてあげました。こうして私のいつもの一日はすぎていくのでした

id:aoi_ringo

ありがとうございました。

2006/11/03 17:17:58
id:threecloudjp No.6

回答回数139ベストアンサー獲得回数6ここでベストアンサー

ポイント100pt

リエちゃんは身体を左右にくねらせながら、もじもじとはにかんでいる。

かわいいなぁ。

わたしは単純にそう思った。

リエちゃんがことばで自分の思いを表現しだすまで、そのまま待っている。

延長保育は子どもの数が少ない分、こうしてひとりひとりの子どものペースに合わせて振る舞うことができる。

と、おもむろにリエちゃんが発したことばが

「おそら」

長い付き合いから察するに、これは、いっしょに空を見よう、ということだ。


わたしはリエちゃんの手を引いて窓際に連れてゆき、床に座ってリエちゃんを膝の上に抱っこして、ふたりでほのかに暗い夜空を見上げた。

リエちゃんは振り返って、ちょっと恥ずかしそうに、でも嬉しそうに、わたしの顔を見上げた。

わたしはそっとリエちゃんに微笑みかけた。

「ねえ、せんせ」

「なぁに?」

「パパはあのお星様」

宵の明星がひとつ輝いている。

「そうなの?」

「うん、ママがね、パパはあそこにいるのよ、って」

「そっかぁ」

「リエね、おおきくなったら飛行機に乗りたい」

「パパに会いにいけるから?」

「うん」

自殺らしい、と以前聞いた。

少し考えて、わたしは声をかけた。

「リエちゃん」

リエちゃんの身体を持ち上げて、自分のほうに向かせた。

リエちゃんは、きょとんとしてわたしを見上げている。

「リエちゃん、自分のここ、ぎゅっとさわってみてごらん」

わたしは目を閉じて、左胸の上に両手を置くしぐさをしてみせた。

リエちゃんはまじめな顔をして、ぎゅーっと目を閉じて小さな手で自分の右胸を押さえつけた。

そっと左に誘導する。

「どき、どき、って、してる?」

リエちゃんはしばし首をかしげていたが、ほどなくして

「あっ、してる」

と、驚いたように目を見開いた。

「どき、どき、どき、どき」

リエちゃんは、自分の鼓動を声に出して繰り返す。

「それがリエちゃんのハート」

「はーと」

「リエちゃんは、いつでもパパに会えるよ」

「えっ?」

「パパはね、その中にいるんだよ」

「えー、いないよ」

「いるんだってば」

「どうしてせんせいが知ってるの?」

「リエちゃんのハートは、パパとママが一生懸命動かしてくれているものなんだよ」

「ママも?」

「うん。どちらかひとりでは、動かせないの。ふたりいっしょじゃないと、動かせないんだよ。

リエちゃんのハートは、今動いてる?」

「うん」

「それなら、リエちゃんのハートの中には、パパとママがいるよ」

「でも、リエ、パパのお顔見えないよ」

「そうだね。見えないよね。だから、ハートを動かしてくれているパパと、お話してあげてね」

「どんなお話?」

「なんでも。リエちゃんが楽しかったこと、悲しかったこと、なんでも」

「じゃぁリエ、たっくんのお話する」

「あら、たっくんがどうかしたの?」

「たっくんね、今日ね、にんじんさんを残してたんだよ。

 だからね、リエが怒ったの。『好き嫌いはだめよ!』ってね。

 そしたらたっくんがね…」

リエちゃんは、いきいきとした様子で話に没頭しはじめた。

たっくんとリエちゃんは仲良しだ。仲が良いから、いつもこんな調子だ。

聞いてくれていますか、お父さん。

少しのジェラシーとともに、うんうん、と苦笑しながらうなづいているのかもしれないな、と思った。

空にはもう三日月が高く昇り、すべてをやわらかい光で包み込んでくれているようだ。

一時しのぎなのかな。

そうも思ったが、でも、少なくとも今の彼女には必要なことだと思った。

これから成長してゆく彼女に、ずっと、必要なことをあげられ続けたらいいのにな。

そんなことを考えた。

id:aoi_ringo

今回もすばらしい読み応えでした。

本当にありがとうございました。

2006/11/03 17:19:49
id:miyahiko No.7

回答回数36ベストアンサー獲得回数7

ポイント50pt

「あのね、せんせ。」

リエちゃんは私のエプロンのテントウムシをチラッとみながら、すこしはにかんでいる。

「ん?どうしたの?なんだか嬉しそうね。」

リエちゃんのあどけない笑顔と目線を合わせて、

両手を握ってあげる。

「せんせ、あのね。」

「なーに?」

私も笑顔でそう答える。

「おとうさんになって。」

「・・・・・・。」

私は笑顔のまま固まる。リエちゃんはうれしそう。

どう答えたらいいんだろう?

「・・先生もリエちゃん好きよ?」

リエちゃんはうれしそうにぴょんぴょん跳ねる。

両手が私の手と一緒にリズミカルに上下に揺れて

わーいわーいと無邪気に喜ぶ。

「でも、私は女だからお父さんにはなれないよ?」

すると、不貞腐れたようにぷうっとほおを膨らませると、

「・・・ちがうよ。」

と一言いうと、私の手を離した。両手を広げ飛行機のまねをして

おとうさんになってーーと言いながら走り去ってしまった。

私はうれしいようなかなしいような。

なついてくれるのはうれしいんだけど、私は断じて男じゃない。

ご近所では鉄筋美人ママというとおり名が在るくらい

人気者なんだから。

普通の女性よりはタフにできているけど。

まあ、リエちゃんもふざけて言ってたんだろう。

と私は思っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

太陽が傾いて、茜色に色ずくと途端に寒くなる。

園児達がポツリポツリと帰り始め、いつものように

リエちゃん一人になる。

だいたいこの時間になると寂しそうなリエちゃんはまだ上機嫌だ。

今日は、楽しく一日過ごせたのだろう。

私は特別に、リエちゃんを膝の上に乗せて、縁側に座ると

抱きかかえてあっためてあげる。

リエちゃんはうれしそうに自由な両足をばたばたさせた。

さむくなったねーと言いながら、一緒に夕焼けを眺めていると、

おとうさん・おとうさん・と歌いだしたので、私も一緒に

おとうさん・おとうさん・おとうさんと合唱してあげた。

後ろ頭しか見えないが、メトロノームのように左右に

振っているのを見るとよほどうれしいと見える。

まあ、園内だったらお父さんでもいいか。

リエちゃんの寂しそうな顔を見るよりは。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

太陽も完全に沈んで暗くなってきた。

私は、通気の為に空けていた窓をしめようとリエちゃんを

教室において立ち上がる。

カラカラカラ・・・

とスライド式の玄関を閉めていると、

りえちゃんが笑顔で

「おとーさーん」と言いながら走ってきた。

「なーに?」

と言いながら私が振り向くのと、

「お世話になっています。」

とリエちゃんのお母さんの声が重なった。

私は玄関を開けなおすと、リエちゃんは一目散に

お母さんに抱きつく。そこには知らない男の人もいた。

私はまさかと思いつつ、

「もしかしてリエちゃんのお父さんですか?」

男の人に聞いてみる。

「はい?」

リエちゃんのお母さんが紹介してないのに何で知ってるんだろう?

といった顔をしている。

私は園内で、おとうさんと言いながら嬉しそうだった今日の

リエちゃんの様子を話した。

お母さんと、新しいお父さんはお互いにこやかに笑うと、リエちゃんの

頭をなでてあげる。リエちゃんも凄く嬉しそうに、ぴょんぴょんリズミカルに

跳ねる。

「私ったら、自分のことをお父さんといっているものだと。」

私は顔を赤くしながら、本当のことを話すと、両親は楽しそうに笑った。

笑った顔がとても良い人そうだったので、私もリエちゃんのことを思うと安心できた。

本当は「おとうさんになるって」と言いたかったのだろう。

正式な入籍は再来週になるらしい。

よかったね、リエちゃん。

私がお父さんじゃなかったのは残念だけど。

id:aoi_ringo

うまいですね。すーっと世界にとけ込みました。

またぜひお願いします。

ありがとうございました。

2006/11/03 17:21:53
id:sokyo No.8

回答回数1377ベストアンサー獲得回数97

ポイント30pt

おひるごはんの「いただきます」をしたそのとき、

リエちゃんは私のところにやってきて、くるみの実を見せてくれた。

私がくるみさん、どうしたの? と聞くと、

リエちゃんは、くるみさん、まいごなの、と答えた。

私は、そう、とかって言ったんだと思うけれど、

でもほら、ごはんも食べなきゃ、とつれないことも言った気がする。

とにかく、そのときにはあまり気にも留めていなかった。

 

ところが、おひるねの時間になっても、

リエちゃんはそのくるみをずっとためつすがめつしていた。

私が、くるみさん、どうしたの? ときくと、

リエちゃんは、くるみさん、おにわにいたの、と答えた。

でもお庭にはくるみの木なんてないし、お庭の近くにもやっぱりない。

結局リエちゃんは、今日は少しも眠らなかった。

 

おやつの時間、リエちゃんのおかあさんから電話があって、

帰りが夜になる、と聞いた。

リエちゃんのおかあさんはときどきこういうコトがあるけれど、

でもその話し方とか、しぐさとかに私はすごくいいなと思う。

 

おやつの時間、リエちゃんはそれを聞いて、

じゃあそのときにかえでやまにいきたい、と言った。

かえで山は本当は小さな丘で、おさんぽのコースだ。

リエちゃんがそんなわがままを言うなんて、めずらしいなと思う。

 

日が傾いてきて、みんなぽつりぽつりと帰り始めて、

本当にリエちゃんとふたりっきりになってしまった。

リエちゃんはまだかえで山を主張していて、

私はそれにちょっとだけ困ってしまっていて、

でもそこを通りすがった園長先生が、行ってもいいですよ、と言ってくれた。

 

  *  *  

 

リエちゃんは、小さい足を交互に前に出して、

私よりもずっと先を歩く。

 

リエちゃんの小さい手の中には、

見えないけれどたぶん、まだあのくるみがいる。

 

かえで山の頂上に来ると、リエちゃんは熱心に、くるみさんのおうちを探した。

私も一緒に探した。

「あっ」

リエちゃんが見つけたのは、今まで全然 気づかなかった大きな石の上で、

そこにはふぞろいのくるみの実が2つならんでいて、

その上には別の木が覆いかぶさっていて、

小枝とか葉っぱとかが落ちていて、

雨のたまるくぼみもあって、

そこはなんだかステージみたいだった。

リエちゃんはそこに、今まで持っていたくるみの実を、

ていねいに、ていねいに、並べた。

気がついたら、もう真っ暗だ。

 

「今日だけだよ?」

と私は言う。リエちゃんが神妙にうなずく。

だからおんぶしてあげた。

 

「あのね、リエのね、パパの、えんぴつ、チッチちゃんが、ついててね、」

リエちゃんは、ゆっくり、話す。

「パパがチッチちゃんおすと、ちっ、ちっ、っていって、かけるようになるの。」

私は、ゆっくり、ゆっくり聞く。

 

なんだか私と同じように、リエちゃんにもおうちがあって、

毎日ごはんを食べたり、眠ったりして暮らしていて、

思い出だって持っていて、

いろんなことを考えているってことが、

私にはすごく、よくわかった。

私は背中にいるリエちゃんを、

そっと、そっと、揺らした。

私の背中は、リエちゃんのおなかとつながっている。

 

静かだ思ったら、背中でリエちゃんは眠ってしまっていた。

そりゃそうだよね、おひるだって寝てないし、

おさんぽだって2回も行ったんだもん。

 

遠くに、園の明かりが見えてくる。

ぼんやり、でも確かに。

id:aoi_ringo

後半が少し難しかったですがとてもいい世界でした。

ありがとうございました。

2006/11/03 17:24:26
id:hanatomi No.9

回答回数853ベストアンサー獲得回数36

ポイント20pt

「そのてんとう虫が欲しいの。おとうさんがね、キャンプに連れて行ってくれたとき、リエのスカートにね、つけてくれたの。」

「判った!」

私はそういって安全ピンで留めていたてんとう虫を彼女に上げた。





あれからもう15年以上たったんだ。

そんな彼女ももう子供がいるんだね。早いもんだなあ。

彼女を見かけてそう思った。街で見かけた彼女の右手には小さい子供の手がつながれていて、その手の先には黄色い帽子をかぶって元気に歩く二つくくりの女の子が見える。



あ!

彼女のランドセルに、てんとう虫のワッペンが見えた。



うふふ。




なんだか元気をもらったみたい。

今日はシチューでも作ろうかな。

帰ってだんなにこの話をしようと思って、ちょっとスキップ気分になった私でした。

id:aoi_ringo

すてきですね。

ありがとうございました。

2006/11/03 17:25:28
id:kennet No.10

回答回数17ベストアンサー獲得回数0

ポイント15pt

「どうしたのリエちゃん?」と私は微笑みかける。

リエちゃんは必至に言葉を選びながら私に伝える。

「あのね今度お父さんができるの。とっても優しいお兄ちゃんなの。ママもお兄ちゃんのことが好きなの。リエも好きだよ、お兄ちゃんのこと。でもねお父さんは・・・」

私はリエちゃんのやわらかい栗色の髪をなでながら彼女を抱き寄せた。

「何にも心配しなくて良いのよ、リエちゃん。お兄ちゃんは新しい家族になるだけなの。リエちゃんの新しい家族よ。そしてお兄ちゃんはママのこともリエちゃんのことも愛してくれるわ。でもねリエちゃんのお父さんはいつまでもお父さんなのよ。いつもお父さんはリエちゃんを応援してるのよ。お父さんはいつまでもお父さんなのよ。だからリエちゃんは泣いちゃダメよ。ほら拭いて。可愛い顔をみせなくちゃ」

 リエちゃんは涙を拭きながら何とか今自分が置かれている状況を理解しようとしていた。私はぎゅっと抱き寄せる。

 「大丈夫よリエちゃん。きっとうまくいくわ」

返事はなかった。

 私だって同じだった。ようやくそれが分かったのは私にも子供ができたときだったから。

id:aoi_ringo

ありがとうございました。

2006/11/03 17:26:17
  • id:aoi_ringo
    ご協力ありがとうございました。
    本日、夜に開封いたします。
    お待ち下さい。
    その際、「創作はてな」を掲載しますので、
    よろしければまたお願いします。
  • id:ElekiBrain
    ElekiBrain 2006/11/03 17:38:00
    実は、最近表現描写に注力し、どうにかして、人の心情だけで読ませる作品にならないものか、と思いながら制作しています。
    あえて最初にこのコメントを書き込まなかったのは、評価にプレッシャーを与えてはいけないとの配慮です。
    しばらくは分かりづらくて一見おもしろみのないものが続くかも知れません。何卒ご容赦を(『ドリーム・クレジット』等、コメディはコメディで続けます)。
    そのうち、人の心を静かに、それでいて激しく揺さぶるエピソードが書けたらいいな、と思っています。
    ストーリーテリングはその後の課題にします。
  • id:aoi_ringo
    私自身の「読み」はとても浅いと思います。わたしの読み取りは、「直木賞」的であり、「芥川賞」的ではないと、自分でも思います。また、芥川賞でも、「蛇にピアス」より「インストール」的な評価になってしまいます。

    しかしながら、ElekiBrainさんはその独特の世界を突き進んで頂きたいと切に思います。これからもおつきあいよろしくお願いします。
  • id:sokyo
    おはようございます♪
     
    フィクションを書いたのって実は初めてなのです。
    今 読んでみたらあれこれだめだなあと思うところがあってちょっとへこんでますが、
    今後もきっと書きますのでよろしくお願いしますね。
  • id:aoi_ringo
    おはようございます。

    とてもすてきな作品でしたよ。
    わたし自身、「書けるか」って言われたら、出だしは書けても、
    みなさんのようにこんなうまくストーリー展開出来ません。
    このシリーズは当分、週末企画として続けていきたいと
    思っていますので、またお時間がありましたら、
    ぜひ楽しいお話聞かせてください。
    ありがとうございました。

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