ドリンク剤。元気になるのは気のせいです。心拍や神経を興奮させる成分を摂取することによって、元気になった、効果があったと脳が勘違いするのです。元気になったという気分になっているだけで、実際の肉体の疲労が消えているわけではありません。だから、仕事をしたらすぐに疲れます。むしろ、興奮することによって肉体的には疲労が蓄積していきます。人によっては危険な状態に陥ることもあります。アルコール成分によって判断力が衰えることもあります。
『買ってはいけない』 大正製薬 ファイトも出ないスタミナ・ドリンク剤 リポビタンD
「ご主人が疲れていたら、どうします?」。主婦たちへの、あるアンケート調査。答えの第一位は「ドリンク剤を飲ませる」であった。「ゆっくり、休ませる」でもなく「ドリンク剤を飲ませる」。これはスゴイことだ。
「これでも飲んで、トットと働きにいきナッ」。光景まで見えてきそうな気がする。このドリンク剤市場は「『医薬品』だけで1800億円。『清涼飲料』も、それくらい」(大正製薬)と言う。あわせておよそ3600億円!
ドリンク剤といえば「ファイトーッ、いっぱぁーつ!!」リポビタンDのテレビCM。山の頂上を駆け巡ったり、崖っぷちにぶら下がったり、逆巻く渓流をこぐ下ったり…とにかくうるさい2人連れである。だから、だれでもリポビタンDを飲めば、ファイトが一発出て、荒野渓流を跋渉し、ひき締まった筋肉隆々のからだになれる…と、無意識のうちに思い込んでしまう。
ところが、そもそも厚生省ですら「ファイトを飲もう!」などの広告を「好ましくない字句」ととっくに実質禁止。各都道府県に取締りを要請しているのだ。(「食品衛生課長通知」'68年9月21日)。さらに「疲労回復」という“効能”も禁止。「でも、疲れがとれるけどナ…」と首をひねるあなた。それは添加物カフェインの覚醒作用。さらにひそかにアルコールが添付されいた。なかには12%も配合の銘柄も。フーッ疲れがとれた…は、たんに酔っ払っただけ。“1%以上含むものは酒類”(酒税法)、つまり酒屋で売られるべきものなのだ。
悲劇も起こっている。ほんらい下戸の深夜トラック運転手が、眠気ざましにドリンク剤を3本飲んで名神高速を疾走するうちに激突…。前後5台ほど炎上する惨劇に。即死した彼のからだからアルコール検出、警察は酒気帯び運転と断定した。同僚らが抗議してドリンク剤のアルコールが原因であることが判明した。
さらに厚生省の禁止表現に「二日酔いに」がある。「ソルマック」(大鵬薬品工業)などのテレビCMはもろ違反広告。摘発ものだ。「強精強壮」「スタミナ活力」「精がつく」などもダメなので「赤まむしドリンク」愛用派はガックリだろう。さらに「タウリン、ジオウ…」などは「添加、表示ともに好ましくない」。「リポビタンD」の「滋養強壮」「タウリン配合」なども違反となる。「皇漢成分」「元気が出る」などもダメ。タモリの「ユンケル黄帝液」(佐藤製薬)や「元気はつらつ『オロナミンC』」(大塚製薬)もひっかかりそう。
“スタミナ効果”も日本大学・田村豊幸博士がラット実験で否定している。市販ドリンク剤を飲ませ、水槽のなかでどれだけ泳げるか測定。比較対照の水道水は18分(5匹平均、以下同)も泳いでいるのに、「リポビタンD」は14.5分でゴボゴボ溺れている。「ローヤルゼロントB」(ゼリア新薬工業)なる商品は9.8分と水の約半分でギブアップ。アンプル(内服)タイプは、すべて水道水以下でギブアップ。水より劣るのだからあきれる。(『薬は毒だ』農文協より)
ある製薬会社の社員は「じつはドリンク剤の原価は約3円」と耳元でささやいた。なのに3000円(!)もするドリンク剤も売られている。「リポビタンD」も高いものは500円。これほど消費者をなめた商品もない。これらはビタミンやミネラルなど「栄養を補給する」と言う。「なら錠剤で飲めばいい」と田村博士。外国人は「日本人はなぜビタミンを水に溶かして飲むのか」と笑っている。錠剤にすれば市販ドリンク剤の数十分の一の価格で“栄養補給”できる。これほど高い“栄養剤”をサギCMで売りつけられて…コッケイな日本人の姿がここにもある。
ドリンク剤。元気になるのは気のせいです。心拍や神経を興奮させる成分を摂取することによって、元気になった、効果があったと脳が勘違いするのです。元気になったという気分になっているだけで、実際の肉体の疲労が消えているわけではありません。だから、仕事をしたらすぐに疲れます。むしろ、興奮することによって肉体的には疲労が蓄積していきます。人によっては危険な状態に陥ることもあります。アルコール成分によって判断力が衰えることもあります。