曝露から症例の発生を見るか、症例の有無から過去の曝露を見るか、という基本的な差異は本に書いてありました。
しかし、こういうのはどうでしょう:
2007年における農薬の使用と2009年時点での植物の枯死の関係を2009年に調べるとします。
農薬使用の有無、枯死の有無についてのデータはすでに手元にあるとします(対象全体はある植物集団)。
この場合、農薬使用の有無に着目すれば後向きコホートになり、枯死の有無からさかのぼれば症例対照研究になりそうな気がします。
ここからが質問ですが、同じデータをコホートと症例対照の両方で使えるものなのか、それとも自分の推論にどこかで間違いがあるのか、知りたく思います。
疫学・統計に明るい方、ご教示願えませんでしょうか。
非常に良い質問ですね。考え方は、paraflagaさんのおっしゃる通りです。
一般的には、コホート研究の方が症例対照研究よりも質の高い研究とされます。
では、実際に研究をしようと思ったとき、どちらが簡単でしょうか?
コホート研究をするためには、paraflagaさんの例の場合には2007年よりも前に、研究のデザインを組んで、
(少なくともどのデータをちゃんと集め続けるかというレベルの研究デザインは決まっている必要があります。)
危険因子やアウトカムの情報を2年以上に渡って蓄積していかなければ出来ません。
ところが、症例対照研究であれば、2009年に研究デザインを考えても実行可能です。
ただし、データは過去にさかのぼって探すので、データが無いかもしれませんし、あってもデータの信憑性は低くなります。
paraflagaさんの例の場合、どのように捉えるかで、コホート研究にも症例対照研究にもなり得ますが、
どちらも実施可能な質のデータがあるならば、後ろ向きコホート研究とする方が良くなります。
また、細かい点ですが、非常に重要な点は、一般的な症例対照研究では、Risk Ratioは計算できません。
どうしてかと言うと、症例対照研究は症例と対照を自由に選べ、その症例(あるいは対照)が
どの大きさの母集団から選ばれたかということは問題にしないからです。
そのため、症例対照研究ではRisk RatioではなくOdds比を結果の指標として使います。
一方、コホート研究は事象の発症前の母集団をフォローするので、事象の発症率を計算することが出来ます。
また、コホート研究のデータを使った症例対照研究にはnested case control studyというものもあります。
非常に良い質問ですね。考え方は、paraflagaさんのおっしゃる通りです。
一般的には、コホート研究の方が症例対照研究よりも質の高い研究とされます。
では、実際に研究をしようと思ったとき、どちらが簡単でしょうか?
コホート研究をするためには、paraflagaさんの例の場合には2007年よりも前に、研究のデザインを組んで、
(少なくともどのデータをちゃんと集め続けるかというレベルの研究デザインは決まっている必要があります。)
危険因子やアウトカムの情報を2年以上に渡って蓄積していかなければ出来ません。
ところが、症例対照研究であれば、2009年に研究デザインを考えても実行可能です。
ただし、データは過去にさかのぼって探すので、データが無いかもしれませんし、あってもデータの信憑性は低くなります。
paraflagaさんの例の場合、どのように捉えるかで、コホート研究にも症例対照研究にもなり得ますが、
どちらも実施可能な質のデータがあるならば、後ろ向きコホート研究とする方が良くなります。
また、細かい点ですが、非常に重要な点は、一般的な症例対照研究では、Risk Ratioは計算できません。
どうしてかと言うと、症例対照研究は症例と対照を自由に選べ、その症例(あるいは対照)が
どの大きさの母集団から選ばれたかということは問題にしないからです。
そのため、症例対照研究ではRisk RatioではなくOdds比を結果の指標として使います。
一方、コホート研究は事象の発症前の母集団をフォローするので、事象の発症率を計算することが出来ます。
また、コホート研究のデータを使った症例対照研究にはnested case control studyというものもあります。
うまくまとめていただき、ありがとうございます。分かりやすかったです。
過去のデータ(曝露、アウトカム、その他基本属性)がパーフェクトに揃っている理想的なデータがあれば、(1)後向きコホートでも症例対照でも実施可能、(2)しかし後向きコホートを用いるほうがより良い、と理解しました。(違っていたらご指摘ください。)
症例対照研究と後ろ向きコホート研究の違いが本に載っていました。
症例対照研究 後ろ向きコホート研究
対象の規模 小 大
調査期間 短 短縮できる
費用・労力 小 中間
希少疾患の研究 適 特殊な集団で可能(特別な暴露を受けた職業集団)
人口移動の大きい集団 可能 できることもある
暴露情報の信頼性 低い(記憶にたよるため) 低いこともある(既存の記録に依存)
疾病発生情報の信頼性 高い 情報収集の方法によっては低い
暴露と発生の時間関係 明確でないことあり 明確
罹患率・死亡率の測定 できない(母集団の罹患率) できる
対象の偏り ときにあり(致命率の高い疾患) ときにあり
他疾患の評価 できない できる
他要因の評価 できる できない
両者の違いはこのようです。
過去のデータが完璧にそろっているからと言って一概に症例対照研究よりコホート研究がいいとは言えないのではないでしょうか?
求める項目で考えるべきだと私は思います。
信頼性に関してもっと突っ込んだ記述はありませんでした。(まだ全部読んでないのでよく読んだらあるかも。。)
出典
公衆衛生マニュアル2009 南山堂 編集 柳川 洋、中村好一
ありがとうございます。
いくつかの論文を見ると、症例対照研究よりもコホート研究が上位という雰囲気は強いようですが、それぞれに適不適があるので確かに優劣はないのかなと思います。paro65さんのおっしゃるように、研究内容に応じてデザインを選ぶべきですね。
お答えのとおり、稀な疾患を相手にする場合は症例対照研究が優位ですが、(1)過去の曝露情報があまりバイアスなく把握できており、(2)すでに過去のデータが確定している(追加調査ができない)ときには、わざわざ症例対照研究を使う意味はないように思います。今回の質問ではすでにデータが確定してしまっていますので、やはり後向きコホートとするのが妥当ではないでしょうか。
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(追記)
お二人の方、ご回答ありがとうございました。たいへん参考になりました。
うまくまとめていただき、ありがとうございます。分かりやすかったです。
過去のデータ(曝露、アウトカム、その他基本属性)がパーフェクトに揃っている理想的なデータがあれば、(1)後向きコホートでも症例対照でも実施可能、(2)しかし後向きコホートを用いるほうがより良い、と理解しました。(違っていたらご指摘ください。)