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春宵一刻値千金
tough2010/01/31 11:45:111pt
これは諺というより名言と言った方がいいでしょうか。北宋の詩人・蘇軾の「春夜」の中の言葉です。
春宵一刻値千金
花有淸香月有陰
歌管樓臺聲細細
鞦韆院落夜沈沈
春の夜のひとときは値千金
花は清らに香り月あかりに影を落とす(※)
楼台(御殿)の楽の音がひそやかに聞こえ
院落(中庭)の鞦韆(少女が腰掛けて遊ぶブランコのようなもの)にも夜は深まっていく
なんと美しい描写でしょう。私はこの詩を読んだ時、子供のころに見たある風景を思い出しました。それは春の夜に見た、菜の花畑でした。その日の夜は春は名のみの風の寒さで震えるような夜でしたが、その日私は法事か何かで親の田舎に滞在していて、勝手に出歩いた挙げ句に迷子になっていたのです。今自分がどこにいるのかも分からず途方に暮れていると、長い坂道を降りた所でパァッと視界が開け、そこには一面の菜の花畑がありました。その夜は満月。明るい月明かりに照らされた満開の菜の花は、むせかえるような香りを伴って、まるでこの世とは思えない幻想的な世界に見えました。私は迷子になっていた心細さも忘れて、その景色に見入っていました。遠くから、春祭りの準備なのか、お囃子を練習しているような音が聞こえました。その楽の音と菜の花畑の美しい景色に、いったいどのくらい我を忘れて見入っていたことでしょう。後ろから名前を呼ばれてハッと気が付くと、父が「このバカタレが心配かけて」と泣き笑いしながら私の頭を張り飛ばす寸前でした。
父と帰る道も、それは美しいものでした。家々の庭先に所々花が咲き、満月に照らされた道は、夜とは思えない影を落としていました。
あれはたしかに、値千金の夜でした。あの夜の菜の花の香りを今でも思い出します。春の宵、私はそんなことを思い出しながら、ちょっと遠回りして帰ることがあります。家に帰るとそんな夜は約八割の確率で父が庭に出て月を眺めていて、あの夜と同じような顔をしながら、遅いじゃないか、晩飯これからだから早く上がれ、と声をかけてくれます。父もまたあの夜のことを思いだしてくれているのかもしれません。
皆さんも、こんな値千金の夜を探してみませんか。
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※「月有陰」は同じく蘇軾の「水調歌頭」に「月有陰晴圓缺」とあることから、それと同じ解釈をすると「陰」は「晴」との対比で曇りの意と読め、ここでも「花有淸香」とは分けて「月に霞みあり」と独立した意味に理解すべきかもしれませんが、私は上に書いたような思い出もあり、1行を連続した意味に捉えて、月明かりに照らされて影を落とす花をイメージしました。
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春の夜のひとときは値千金
花は清らに香り月あかりに影を落とす(※)
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なんと美しい描写でしょう。私はこの詩を読んだ時、子供のころに見たある風景を思い出しました。それは春の夜に見た、菜の花畑でした。その日の夜は春は名のみの風の寒さで震えるような夜でしたが、その日私は法事か何かで親の田舎に滞在していて、勝手に出歩いた挙げ句に迷子になっていたのです。今自分がどこにいるのかも分からず途方に暮れていると、長い坂道を降りた所でパァッと視界が開け、そこには一面の菜の花畑がありました。その夜は満月。明るい月明かりに照らされた満開の菜の花は、むせかえるような香りを伴って、まるでこの世とは思えない幻想的な世界に見えました。私は迷子になっていた心細さも忘れて、その景色に見入っていました。遠くから、春祭りの準備なのか、お囃子を練習しているような音が聞こえました。その楽の音と菜の花畑の美しい景色に、いったいどのくらい我を忘れて見入っていたことでしょう。後ろから名前を呼ばれてハッと気が付くと、父が「このバカタレが心配かけて」と泣き笑いしながら私の頭を張り飛ばす寸前でした。
父と帰る道も、それは美しいものでした。家々の庭先に所々花が咲き、満月に照らされた道は、夜とは思えない影を落としていました。
あれはたしかに、値千金の夜でした。あの夜の菜の花の香りを今でも思い出します。春の宵、私はそんなことを思い出しながら、ちょっと遠回りして帰ることがあります。家に帰るとそんな夜は約八割の確率で父が庭に出て月を眺めていて、あの夜と同じような顔をしながら、遅いじゃないか、晩飯これからだから早く上がれ、と声をかけてくれます。父もまたあの夜のことを思いだしてくれているのかもしれません。
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