お待たせしました。かきつばた杯を開催します。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5
お題:さらば愛しき※※
「※※」の箇所は特に拘りはないので、別の何かに置き換えOKです。
いちおう前回と探偵つながりってことですが、探偵物にする必要はありません。
補足事項:
※予告編への投稿はポイント対象外です。ポイントはこの質問への回答のみを対象とします。(自作品に限りコピペも可)
※キーワードをタイトルや本文に使う縛りはありませんが、関連性がどうしてもわからない作品は都度確認するようにします。
※締め切りは 2012/3/31(土)23時~翌日10時 (質問者の都合により変動)
※ポイントは均等配分……にはしません。加点/減点要素両方の積算で+が出れば基本点に乗せます。
※何度編集してもOK。編集履歴は一切気にしません。締め切り時点の内容で評価します。
※講評/コメントは、希望者のみにします。ご希望の方は投稿後にご希望の辛さ(辛口/中辛/甘口)をコメント欄にお願いします。
『さらば愛しき鳩サブレ―』
鎌倉生まれ鎌倉育ちのおじいちゃんは、後から身につけた関西弁でその話をする。
弱気を助け、弱気をくじく、鳩サブレーの騎士の話を。
おじいちゃんがまだ20になる前、菓子職人を目指して修行していた頃に、おじいちゃんは恋をした。相手はお金持ちのお嬢様。おじいちゃんにとっては高嶺すぎる花。
「その夜、雨の中、おれは傘もささずに歩いとった。芙沙子が許婚と結婚すると聞いた夜や。芙沙子の親父さんはおれに言った。『お前に芙沙子を幸せにできるのか?』ありふれた言葉や。でも、おれは何も言えんかったよ」
「目の前が真っ暗になるってのはほんまにあることなんや。どこまで行っても何も見えへん真っ黒な泥の中。そして、目の見えへんおれは何かにぶちあたって、鼻先をしたたかにぶつけた。そこでやっと前を見た。そこに鳩サブレーの騎士が居った」
おじいちゃんがぶつかったのは、鳩サブレーの騎士が乗っていたサ~ブレッド(おじいちゃんは、~のところを「ラ」と「ア」の中間くらいで発音した)の側面だった。サ~ブレッドは、小さい子供が遊ぶ木馬を大きくしたようなもので、ただし形は馬ではなくデフォルメした鳥、鳩サブレーの形をしている。それに跨っているのは、ガチガチの西洋甲冑を着たいわゆる騎士の男。
「理由を聞こう!」
よく通る声で鳩サブレーの騎士は言った。
おじいちゃんは虚無感で感情が冷えていたからすぐに問い返した。
「何の話だ?」
「お前が下を向く理由だ! 若者よ!」
鳩サブレーの騎士の声は良く響き、張りがあった。
おじいちゃんはそれに反射的に怒りを覚えた。おじいちゃんの心の奥底に溜め込まれていた何かが出口を見つけて解き放たれて、おじいちゃんの枯れていた感情を燃え上がらせた。おれが人生で一番へこんでいるときに、なんでこんな変態がおれに話しかけてくるのか。変態のくせに、えらそうに!
目の前真っ暗状態の副作用だ。おじいちゃんは人を殺しそうな声音で言った。
「何でお前に……って問答するのも面倒だな。おれが下を向くのは、好きな女ひとりを幸せにできないからだ。おれは金も実力もない職人見習い。おれの幸せにあいつは必要だが、あいつの幸せにおれは邪魔なだけ。ほんと嫌になるほど、よくある話だな。これでいいか? なら失せろ!」
「うむ。了解した! 乗れ!」
そして騎士が伸ばした腕は若きおじいちゃんをかっさらうとサ~ブレッドの後ろに乗せた。
「な、何を」
「花嫁を迎えに行く!」
そして、サ~ブレッドは飛び上がった。鎌倉の街が一瞬で小さくなった。
おじいちゃんの勤めているお菓子屋が豆粒みたいに小さく見えた。その小さな厨房で自分があくせく働いていて叱られてへこんだり、喜んだりしていることを思うと、おじいちゃんは状況を忘れて、何だか愉快な気持ちになった。
サ~ブレッドは空中を旋回しながら方向を決めると、一気に空を駆け下りた。その先には大きな屋敷。おじいちゃんは叫んだ。
「やめろ!」
「何故だ!」
「あいつはそこで幸せになるんだ。それを邪魔する必要はない」
「何故だ!」
「何故? だから、おれはあいつを幸せになって欲しいんだ!」
「なら、お前が幸せにしろ! 大馬鹿者め!」
サ~ブレッドが加速した。空気の壁のようなものに一瞬おじいちゃんは弾かれそうになったが何とか鳩サブレーの騎士にしがみついた。
「若者よ、勇気を!」
鳩サブレーの騎士は高らかに叫んだ。
「そんで?」
「サ~ブレッドは屋敷の中庭に下りた。おれはそのまま芙沙子の部屋に行って、芙沙子を連れて逃げた。あそこには住み込みの人間もたくさんおったから、そいつらがみんな追いかけてくるのをかわしながらな」
「鳩サブレーの騎士は?」
「さあ……たぶん追っ手を止めてくれてたんちゃうかな」
「かっこええな」
「サムライよ。あいつは」
そうして、鎌倉を出たおじいちゃんは芙沙子さん(おばあちゃん)と一緒に大阪に出て、そこでもう一度菓子職人の修行をして一人前になり自分の店を持って子供が生まれ、その子が成長して電気メーカーに就職して結婚して、その長女として私が生まれたころにおじいちゃんは自分の店を閉めた。
「人生は単純やない。でも、おれは、悔いのない人生やったわ。鳩サブレーの騎士のおかげよ」
「何で、鳩サブレーやったんやろね」
その疑問には、おじいちゃんが亡くなってから、おばあちゃんが答えてくれた。
「おじいちゃんは鎌倉の豊島堂、鳩サブレーのお店で修行してたんよ。おじいちゃんもわたしもあのお菓子が大好きで、それが縁で知り合ったんやもの」
そこで、おばあちゃんはくすくすひとり笑い出して、
「鎌倉を出るときに、あの人が汽車の窓を見ながら泣いてたんよ。住んでいた街を突然離れるんよ。寂しいし怖い。だから、わたしも一緒に泣いた。そしたら、あの人、汽車が出るときにまじめな顔で『さらば、愛しき鳩サブレー』って言ったの。え、そこ? そこなん? って。もう可笑しくって。わたしその場で笑ってしもうたわ」
それを聞いてわたしも笑う。おじいちゃんおもろいな。
「そんで、それからもずっと、笑いっぱなしの人生やったよ」
そういっておばあちゃんは微笑んだ。おじいちゃん、おばあちゃんも悔いはなさそうよ。
と、そんなことを久しぶりに思い出していた。
実家に続く道、わたしの前には幼馴染の崇がいる。腐れ縁の京子に詩織、高峯先輩に、井野倉さんもいる。先生、料理長、師匠、そしてやっぱり家族。お父さんお母さん、美雪に聡史。なんとおばあちゃんとおじいちゃんもいる。シロまでそろってる。さらに、その後ろにも人がずらーっと並んでいる。
彼らは皆西洋甲冑を着て、サ~ブレッドに乗っている。
わたしにとっての鳩サブレ―の騎士。考えたこともなくはなかったが、すぐにやめたんだった。心当たりが多すぎるから。
この人たちがわたしの大事なもの。そして、これから……今更だけど、おじいちゃん、鳩サブレ―だけなんて、面白すぎる。
「薫! 答えい!」
おじいちゃんの声。じじい、ちょっと調子に乗ってるな。
わたしはおおきく息を吸ってから吐き、彼らにこたえる。
「わたし、フランス行きます! 料理が好きだから! ほんとに一人前になったら帰ってくるよ! だから、それまで」
『応!』
騎士たちのユニゾン。わたしの身体が本当にびりびりと揺れる。そして、その力がわたしの中からも湧いていることを知る。
むげん探偵シリーズとは……
名探偵・無籐限(むとう げん)が登場する推理小説である。
メソィスト賞受賞作である『1万と1番目の真実』では、探偵である無籐が、助手の更場井に対して、思いつく限りの仮説を述べる場面が作品中の大半以上を占める独特の作風と、実際に1000を超える犯行手段の実行の可否を作中で論じたことで話題となった。
同様の構成は後のシリーズでも踏襲され、数十作にも及ぶ続編が刊行されている。
39作目となる最新巻『1万と39の可能性の向こうに』でその長いシリーズの歴史に幕を閉じた。
なお、『1万と39の可能性の向こうに』の解決編は2とおり用意されており、文庫版に収録されたものが、正典であるとの意見が多い。
「先生どうします? 更場井俊樹シリーズ。やります?」
「いや、やらない。浮かんだ。アイデアが。推理やめるわ。
美少女たちの格闘小説、次作はこれで行く」
『さらば愛しき推理小説よ』
「いや、待て、文庫版の原稿の改定まだ間に合うな……。それなら……」
「さらば、愛しき我が助手よ」
助手と言われたのか、名前を呼ばれたのかは、私にとってはどうでもいいことだった。これで、長い長い探偵助手生活も終わりを告げる。
探偵自身のその才覚、悪意によって。
「ま、まさか……探偵助手が犯人なんて……」
声を漏らしたのは、若い刑事だった。
探偵は言う。
「すべての可能性を消去して、残るのが真実なのです」
探偵の推理発表が行われようとしていたその時……
「ちょっと失礼」
懐から携帯を取り出し話始める歳かさの刑事。
「鑑識の結果が出た? なに? そうか……わかった……」
電話を終えた警部に探偵が聞く。
「今のは……?」
「DNA鑑定の結果です。被害者の爪から採取された皮膚の鑑定が終わりました。それによると……」
探偵が割って入る。
「聞くまでもないことですね。容疑者の誰とも一致しない。そして、血液型A型の女性なんでしょう」
刑事の顔に驚きが浮かんだ。
「ど、どうしてそれを……」
「簡単なことです。助手の……性別、血液型を言ったまで。そう、犯人は決まっているのですから」
「し、しかし女性というのは……」
探偵助手が言う。
「ええ、皆さんには黙っていましたが、私は遺伝子上は女性なのです。さすがですね。無籐さんにも隠していたつもりだったのに」
「推理だよ」
「その、名推理がこれで聞き納めになると考えると寂しいですね」
「ほう、では犯行を認める気かい? そもそもDNA鑑定をすればいずれ事実は明らかになると思うが」
探偵の余裕はなくならない。
探偵助手は言う。
「いいえ、ここで言わせて貰いましょう。あなたの台詞を」
探偵助手は、静かにあたりを見回す。そして、言う。
「私は数多の仮説を乗り越え見ました。この中に存在するたった一人の犯人を」
周囲がざわめく。何を今更……。何が始まるのか……。
探偵助手は続ける。
「1万と39とおりの可能性、そのもうひとつ向こう側に真実はある。わたしと同じく犯行機会を得られた人物が……たった一人だけ……」
にわかに探偵の表情が曇る。探偵助手は続ける。
「それは……あなたです。
無籐限!!」
刑事の誰かの声だろう。
「し、しかし……。犯人は女性だと……」
探偵助手は補足する。
「おそらく、DNA鑑定をすれば、私のものと一致するでしょう。しかしそれは当然のこと。ですよね? 無籐さん。いや、あえて姉さんと呼んだほうがよいのかな? あなたの言うことなら誰もが信用するでしょう。この私の言う事などたわごととして、処理される。それを目論んでいることもわかっています。しかし思い通りにはならない。あなたの双子の片割れである私にも、あなたと同等の推理能力がある。そして、ついに真実に辿り着いたのです」
探偵は狼狽する。
「何を……馬鹿なことを。刑事さん、とりあえずこいつを、こいつを黙らして、連行してください。謎解きはそれからゆっくりと……」
「私には動機がない。だけどあなたにはそれがある。どうです、刑事さん、今ここではっきりさせませんか?」
探偵助手は、年かさの刑事を見つめて言った。
「聞こうじゃないか、その動機とやらを。判断するのはそれからだ……」
探偵助手は語る。二人が生き別れとなった顛末を。そして再びめぐり合った偶然を。
そして……探偵に存在する確固たる動機を……。
「さらば愛しき名探偵か」
誰とも無く、そう呟いた声が静寂をほんの一瞬だけ引き裂いた。
で、本題。
また差し替えて来るとは…… さては貴方が無籐限ですね?
差し替えはルール通りなので何度でもやっちゃって下さい。
でも、こっちの方が断然良いですよ。
お疲れ様でした。
今回はぐらむす。さんが貢献度1位なのですが、勝負は勝負ということでご了承ください。
さて講評です。
アイデアは面白いですし、文章もこなれていて読みやすいです。
ただ、ちょっと気になるのは、所々の文章がちょっと笑ってるんですよね。
確か本多勝一だったと思いますが、「人を笑わすのに自分が先に笑っちゃってる」ような感じです。
うまく表現できなくて申し訳ないです。
あと、動機について具体的に書いてくれてたらなお良し、というところでしょうか。
今後ともよろしくお願いします。
hommage to "Farewell, My Lovely" of hommage
「いつ来ても工事中じゃのう、新宿の南口は」
そろそろ春物の服装に装いもあらためようかという3月のある日の昼下がり、時代遅れを感じさせる膝丈のトレンチコートをはおった男が、人通りも激しい駅の出口で呟いた。
トレンチコートと同色のソフト帽の下からは、昭和の匂いを感じさせる男臭い人相が覗いている。甲州街道が目の前を走る南口の改札前は、常に人通りが激しく、待ち合わせに使われることも多いため、そんな風貌の男が一人、用も無さそうななのに立ちつくしていても、繁々と目に留めるものもおらず、注意を集めることもない。
予告タイトル(リンク先音声注意)
「この格好は暑くて、かなわんな。さっさと、不心得者にお灸を据えにいくとするかな」
春の陽気に悪態をつきながら、それでもトレンチコートを羽織り、男は駅前の交差点を渡ろうと踵を返した。
不意に、膝から下にクッションが押し当てられたような軽い衝撃があたる。とっさに視線を泳がせた先に、地面に転がりそうになる小さな人影を認めた。
慌ててトレンチコートのポケットから両手を抜いて、人影をすくい上げる。
年のころなら、10歳くらいだろうか。差し出した右手に抱かれているのは、地味な服装をした華奢な体格の女の子だ。
「すまん、すまん・・・?」
怪我はなさそうだ、だが、女の子は視線が定まらない様子できょろきょろとしている。そもそもトレンチの男に抱かれている状態だというのに彼が視界に入っていない様子だ。
それもすぐに合点がついた。彼女の右手には、視覚障害者が使う白杖が握られている。
慌ててトレンチコートは彼女を細心の注意をもって地面に降り立たせた。
「大丈夫かな? えーと、のぞみちゃん?」
彼女の白杖には名前と思しき"のぞみ"という記述と、所属する施設とおぼしき団体名が記載されていた。名称からして新宿からは相当な距離がある場所の施設だ。
「あ、ありがとうございます。おじさま? でいいのかしら。道が分からなくて迷っていたの」
見かけの年齢よりも随分と大人びた話しぶりにトレンチコートは文字通り襟を正した。
「おじさま、でオーケーじゃよ。ところでワシは刑事でもあるからして、道案内なら喜んでやらせてもらうがの」
「え、ほんとう? じゃあ私の行きたいところはね・・・」
彼女が口にした名称に、トレンチはわずかに頬をひくつかせた。自分がこれから向かおうとしていた場所と同じ、ということもあるが、その場所が"のぞみ"ちゃんのような子供と接点が無い場所でもあったからだ。
いつの間にか甲州街道から自動車の音が消えていた。信号機が青に変わり、信号灯の脇のスピーカから流れるカゴメカゴメの音楽が、昨日まで意識していた以上の音量で聞こえた。
【JAR東方日本 本社ビル】
それだけで小さな家の玄関サイズはありそうなビルの礎石の横を、トレンチはのぞみちゃんの手を引きながら通り過ぎる。
全面ガラス張りの入口を通り、受付に向かう。
・・・彼女、のぞみちゃんの話はこうだった。
発端は彼女の施設の若い女先生が3日前から帰ってこなくなったことだった。女先生は電車が好きでのぞみちゃんにも色々とその方面のことを教えてくれた一番懐いていた先生だった。施設にはお金があまりなく、古い鉄道雑誌などを使って教えてくれていたが、今月中旬、彼女の名前と同じ" 新幹線のぞみ"が退役したというニュースを知った。そこで彼女に一目、動いている新幹線のぞみを見せてやろうと、先生は「大丈夫お姉ちゃんに任せて!」と新宿南口に行くと言い残したまま、行方がわからなくなってしまった。そもそもどうやって、誰に頼んで「退役した新幹線のぞみ」を見せてもらうのか、も分からず、悪い人に捕まったのではないかと、心配になったのぞみちゃんは施設から一人抜け出し、"新宿南口にある鉄道会社"のキーワードを便りにここまで来たのだという。
警察手帳を持った自分ならともかく、彼女のような女の子が一人で訪れても門前払いがいいところだったろうに、と、トレンチコートは思わず洟を啜った。
のぞみちゃんの手を引きながら、横十mはある受付カウンターのど真ん中に取り付く。
「電話いただいたICPOの者だが、社長に取り次いでいただけますかな」
胸の内ポケットからさり気なく見せた身分証明書は予想以上に効果的だった。受付嬢はのぞみちゃんには目もくれず、水飲み鳥のように首を上下させ、内線電話の受話器を持ち上げた。
「社長、これは脅迫状ではないですか」
JAR東方日本、社長の中山田から渡された紙は、電子メールをプリントアウトしたものだったが、内容は明白な「企業強請り」だった。署名には世間を騒がしている有名な窃盗グループ名が記載されている。
「今どき、脅迫状はEメールか。それにしてもこれは偽物ですな」
「偽物? メールが?ということですか」と、社長。
「いやいやそうではなくて、あの窃盗グループがこんなチンケな企業強請りをするわけがない、という意味の偽物です」
Eメールの内容は≪今月退役した300系新幹線の運転席の部品がオークションに流れているぞ、黙ってて欲しければ・・・≫という脅しだった。どうせ、横流ししたのもこの一味で、JAR東方日本が騒いでくれれば、出品した商品の信憑性が上がり、更に値が吊りあがるということを期待してのことだろう。そもそも300系のぞみは東方日本の車両ではなく、主にJAR東海林の車両である。こいつらは強請る相手を間違えている。
「放っておいてよいでしょうな。有名な窃盗グループの名前を騙っているだけの小物でしょうし。そもそもやつらなら強請り先を間違えるなんていうミスはしませんよ」
社長から随分泥棒の肩を持つのだな、と突っ込まれたが、そこは無視した。
話が一段落したのを察したのか、一緒についてきた のぞみちゃんが、トレンチの袖を引っ張った。邪魔にはならんだろうし誰も突っ込まないので、そのまま社長室まで連れてきたのだが、流石に居心地が悪くなったのだろうか。と思いきや、のぞみちゃんはしっかりした声で社長に自分の話をぶつけた。
「社長さん。社長さんの名前、私の先生と同じ名前なんです。実は3日前に先生が、動いている『新幹線のぞみ』を見させて欲しいってお願いしにきたはずなんです。もしかしてお願いしにきたのって、社長さんじゃありませんか? だとしたら私の先生の行方をご存じありませんか?」
社長の両目が僅かに見開いた。
「そ、その、先生って名前は?」
「中山田悠里先生(CV島本須美)です」
「し、知らんぞ悠里(CV島本須美)なんていう名前は」
括弧書きの中まで即答で鸚鵡返しする、不自然な返答をトレンチは聞き逃さなかった。
さっそく頭の中に叩きこんだ過去十数年分の新聞記事を咄嗟に呼び起こし・・・・思いだせないので昭和風情の慣れない指捌きを駆使してスマートフォンで検索した。
・・・検索中・・・・
5年ほどまえの記事に、
【JAR東方日本社長の一人娘、失踪。父親との確執か】
という見出しを見つけた。
ははーん、そういうことか。
「のぞみちゃん、一旦帰ろう。少なくともこのビルにキミの先生(CV島本須美)はおらんようだ」
括弧書きの注記を知って、トレンチの中身が俄然やる気になったのは内緒だ。
二人は建物を後にした。
「ねえ、おじさん。悠里先生の場所、知ってるんですか?」
その夜、二人は新宿を離れ、豪邸の建ち並ぶ街並みを歩いていた。車の往来も少なく、水銀灯の明かり以外に二人を照らすものもない。
行方知れずだった娘がひょっこり戻ってきて、男親のすることと言えば一つだ。
無理やりにでも家に連れ帰り可能な限り逃げ出さないよう監視することだろう。そしてそんなことができる環境があの社長にはある。社長室から専用のエレベータで自分のハイヤーに乗せれば誰の目にも付くまい。自宅は豪邸で絶対服従の使用人が何十人も詰めている。
「まず間違いなくこの先の豪邸にいるだろうと思う。それにしても、悠里先生だって鉄道に詳しいなら自分の親父の会社に無い車両を動かしてくれって頼んでも駄目なことくらい気づきそうなもんだけどなあ」
素朴な疑問にのぞみちゃんが反論する。
「悠里先生もそんなことは知っていたそうです。でも頼れるツテは新宿にしか無いからって・・・」
会社に直接おもむけば、いくら父親とはいえ、無茶はしないだろうと踏んだのだろう。心根の優しさと甘さ加減はさすが(CV島本須美)なだけのことはある。
何度目かの路地を曲がったところで、ざっと百m以上続く万年塀が二人の先に現れた。その中からはドーベルマンらしき犬種の唸り声がひっきりなしに聞こえ、一般家庭には考えられないほどの堅牢な家屋が塀からかなり離れた場所に聳え立っている。
のぞみちゃんをこんなところに一人残していくのは気が引けるが、仕方がない。
「のぞみちゃん。15分だけでいいから、ここで待っててなさい。大丈夫、すぐ先生を助けてくるからね」
その言葉にコクリ、と頷くと、のぞみちゃんの前にいたトレンチの刑事の気配が不意に消える。
つづいて、塀の向こうに軽い着地音が聞こえ、さらに音はなく気配だけが遠ざかっていくのが感じ取れた。
「ほんとに刑事さんなのかなあ・・・」
トレンチは15分という約束を正確に守ったようだ。暫くして塀の向こう側から軽い飛翔音と、塀のこちら側への着地音が聞こえた。それに続いて、少しもたついたようなそしてどこか懐かしいような気配が・・・、
「悠里先生!」
すぐにおじさんの声で「しーっ!」と窘められる。
でもすぐに「のぞみちゃん!」(CV島本須美)という叫び声が道に響きわたり、おじさんが頭を抱えるのが分かった。
「刑事さんありがとう。でも、刑事さんなのにどうしてこんなに"のぞみ"のこと助けてくれるの?」
のぞみちゃん、その質問は野暮だよ。ヒロインが囚われの身の(CV島本須美)と知って助けにいかない主人公がどこにいるのさ?
それにそろそろ三千字を越えてきたからかきつばた的には展開を急がないと。
「きゃ、きゃあー」(CV島本須美)
ブレーキ音を響かせながら急停車したFIAT 500の助手席にが開き、そこから出た赤ジャケットの男の手に絡め取られるようにして、悠里先生が車内に吸い込まれる。
立ち去る車の運転席から窃盗グループの男の声が響き渡った。
「中山田社長に伝えとけ! お前の娘の命が惜しかったらお宝物の300系の車両をすぐに用意しろってな」
(Aパート終了)
翌日、新聞各社の一面はネタに事欠かなかった
【JAR西方日本に残った300系"のぞみ"車両に爆弾を仕掛けた、との脅迫状届く】
【犯人はJAR東方日本の社長の親族を誘拐中との憶測】
【世界的窃盗グループの犯行声明? ICPOから専属対策班、緊急来日】
小田急ロマンスカーの展望車両に、のぞみと男は並んで二人で腰かけている。のぞみちゃんは持参していたスマートフォンのラジオ放送から事件の情報をしっかり聞き取っていた。
「ねえ刑事さん、たいへんなことになっちゃったね。悠里先生、大丈夫かなあ」
刑事は弁当をかきこみながら、不敵な笑みを浮かべる。
「大丈夫大丈夫、ちゃあんと悠里先生は無事に助け出すし、のぞみちゃんに"のぞみ"も見せてあげるよ。それとさあ、このロマンスカーもこの3月に退役した車両があってね、HiSE(10000形)、RSE(20000形)っていうハイデッカー車両なんだけどさあ」
「ええ、知っています。でもバリアフリー化の波に押されて退役っていう話も聞きました。なんだか私には申し訳ない感じです」
そんな会話を繋ぎながら、男は脳裏で別なことを考えていた。
どこのどいつだかしらないが俺様の目の前で、やってくれたからには必ず落し前つけてやるよ。
窃盗団一味のアジトにて
恐らくは剣道の羽織袴を着衣した男が他の二人に愚痴る。頭はパンチパーマなのが不似合い極まりない。
「なあなあ、車両に爆弾仕掛けた、とか報道されてるたり、俺たちのやってないことまで騒ぎたてられてるんだけど大丈夫なのかなあ」
派手な赤ジャケットの男が言い返す。
「なーに。こっちには人質がいるんだからびびるこたあねえよ。それより、300系のレア部品を大量にいただくチャンスじゃねーか。こっちには裏オークションで好事家が億単位の金を積んでくれるっていってんだ」
長い顎髭のスーツ男も続く。
「こういうことじゃねえか? 300系に爆弾騒ぎとなったら、こっそりと車両工場に移動させるしかねえ。西方日本の車両ってことなら浜松の基地にもってくるしかないだろう。そこで人質と交換しようじゃねえか」
「でもなんで爆弾を仕掛けたなんていうガセ情報が流れたんだ?」
「JARが自分で流したんじゃないのか。この状況なら西方日本から残ってる車両を関東方面に回してもらう大義名分が立つし、部品を分解して俺らと取引しようとしたら、どうしてもどっかの車両基地に入れなきゃなんねえし。よく考えりゃ一石二鳥じゃねえか。」
「どっちにしろ、俺らにも運が回ってきたってことだよな」
浜名湖インターを降りた一味のFIAT500は、ありえないくらい何か鋭利な刃物で縦横一刀両断にされ、インター脇の路肩に転がっているのが発見された。3人はロープでぐるぐる巻きに縛られた上、ご丁寧に「犯人です」というビラまで額に貼られているという念の入れようだった。
朝靄の残る東海道線、浜名湖大橋の上に、その日、あり得ない光景が現れた。もし事前に告知されていれば、その筋のマニアが垂涎だらだらで眩しいばかりにシャッターを切ったであろう。
退役したはずの300系車両が浜名湖大橋を1両目のみの単量編成で走っている。
「なあ、のぞみちゃん、本当に音だけでいいのか?」
線路を望む土手の一角で、300系のぞみが奏でる走行音にじっと耳を澄ませていたのは、のぞみちゃんだった。
その彼女は男に声を出すなというジェスチャーで手の平を向ける。
煩いぞ、ということなのだろう。
完全に車両が彼らの傍を通りすぎ、さらに数分が経過するまで、のぞみちゃんは直立不動のまま耳を澄ませていた。
「ふうっ! あれが私の名前と同じ300系なんですね。もう動いている音は聞こえないものとばっかり思っていたから。ほんとにありがとうございます!」
車両基地内で実物を触らせてあげようと思っての爆弾騒ぎを起こしたのだが、それを首を振って拒絶したのはのぞみちゃんだった。動いている300系の声を聞かせてください、と逆にせがまれたのだ。
土手の下から上がってくる複数の人気配がある。
「のぞみちゃん、300系”視られて”よかったねえ。まさか私もこんな手段で300系のぞみの実車走行見られるなんて思ってなかった。せいぜいどこかで廃車手続きするときの運行スケジュールでも父に聞ければ、と思ってたの」(CV島本須美)
悠里先生の声に続いて妙に色っぽい女性の脅し文句が続く。
「この貸しは高いわよ。確かにお姫様は届けたからね」
そして2サイクルエンジンのバイク音がけたたましく鳴ったかと思うと、女性の気配も遠のいた。
全てが上手くいったのだ、大変なことになった、と思ってからわずか1500文字ほどでこのハッピーエンド。オマージュ元も真っ青なこの展開は、本来どれだけの長さのプロットを詰め込んだというのだろう!
「ところでおじさん。聞きたかったのだけど、おじさんはホントに刑事さんなの? 社長さんのお屋敷から出てきたシーンからこっち、トレンチコートは脱いだままジャケットか何か着てるでしょう?」
男はやれやれ、見破られてたか、と溜息をついた。確かに読み返して見ると、その場面からトレンチコートの記述が無い。よく”観ていた”もんだと感心した。
どこからか近づくガソリンエンジンの音。
続いた急ブレーキの音はすぐ近くで止まった。
アイドリングしたままのFAIT500は何故かとてもワクワクするエンジン音のフレーズを奏でている。
緑色の派手なジャケットを羽織っている男が、ゆっくりと屋根に手を掛け軽くジャンプすると、ルーフから車内に乗りこんだ。
運転席の鬚の男の声は渋く、煙草を加えたまま器用に喋っているのが、見えていないのぞみにも分かった。
「いい雰囲気のところ悪いんだが、とっつあんの本物がこっちに向かってるんでな、急ぐぜ」
イエローのFAIT500は土手の斜面を張り付くように走り去る。
ルーフから頭を出しているのだろう、偽刑事を名乗っていた男の声がこだまして響いて彼女らに届く。
「またなー、元気でくらせよ~」
数分後、お約束のように反対側の土手下からパトカーのサイレンが近づいてきた。そのうち一台が彼女たちの傍に停車し、トレンチコートに同色のソフト帽の男が立った。
「もう行ってしまいましたわ」(CV島本須美)
トレンチコートは弾む息を押さえながら、のぞみと悠里先生に問いただした。
「あの男たちは有名な泥棒なんですが、貴方たちから何か大事なものを盗んでいきませんでしたか?」
のぞみは悠里の袖を引き、小声で耳打ちをする。悠里は目を見開いて驚いた顔を、そしてにこにこと笑みをこぼした。そしてやわらかな声音で最後の台詞を口にした。
「ええ、とっても特別な、そして今日しか存在しない宝石を盗んでいきました。”ダイヤ”です」
<fin>
講評/コメントはお任せします。お好きなように。
講評コメントありがとうございます。
>う~んそんな堅苦しい話をするつもりではなかったのですが・・・。
>そもそも色々誤解がありはしませんか。
時間差やいろんな温度差がある状態で議論するとどうしても、行き違いや誤解といったものがでてくるのはしょうがないことです。でもそういうのも含めて議論するのは嫌いじゃないですよ。
でも今回は議論は並行線状態が続くだけだと思います。
かきつばた主催者お疲れ様でした。こんな面倒な回答者のコメント欄に長々とお付き合いいただいて恐縮です。
正直、開催もとびとびになってきている状況で、新しい主催者の登場は喜ばしいことですし、主催者が変わればやり方も変わると思います。そこは尊重したいと思います。
色々、生意気を申しましてすみませんでした。
今後ともよろしくお願い致します。
『さらば愛しき鳩サブレ―』
鎌倉生まれ鎌倉育ちのおじいちゃんは、後から身につけた関西弁でその話をする。
弱気を助け、弱気をくじく、鳩サブレーの騎士の話を。
おじいちゃんがまだ20になる前、菓子職人を目指して修行していた頃に、おじいちゃんは恋をした。相手はお金持ちのお嬢様。おじいちゃんにとっては高嶺すぎる花。
「その夜、雨の中、おれは傘もささずに歩いとった。芙沙子が許婚と結婚すると聞いた夜や。芙沙子の親父さんはおれに言った。『お前に芙沙子を幸せにできるのか?』ありふれた言葉や。でも、おれは何も言えんかったよ」
「目の前が真っ暗になるってのはほんまにあることなんや。どこまで行っても何も見えへん真っ黒な泥の中。そして、目の見えへんおれは何かにぶちあたって、鼻先をしたたかにぶつけた。そこでやっと前を見た。そこに鳩サブレーの騎士が居った」
おじいちゃんがぶつかったのは、鳩サブレーの騎士が乗っていたサ~ブレッド(おじいちゃんは、~のところを「ラ」と「ア」の中間くらいで発音した)の側面だった。サ~ブレッドは、小さい子供が遊ぶ木馬を大きくしたようなもので、ただし形は馬ではなくデフォルメした鳥、鳩サブレーの形をしている。それに跨っているのは、ガチガチの西洋甲冑を着たいわゆる騎士の男。
「理由を聞こう!」
よく通る声で鳩サブレーの騎士は言った。
おじいちゃんは虚無感で感情が冷えていたからすぐに問い返した。
「何の話だ?」
「お前が下を向く理由だ! 若者よ!」
鳩サブレーの騎士の声は良く響き、張りがあった。
おじいちゃんはそれに反射的に怒りを覚えた。おじいちゃんの心の奥底に溜め込まれていた何かが出口を見つけて解き放たれて、おじいちゃんの枯れていた感情を燃え上がらせた。おれが人生で一番へこんでいるときに、なんでこんな変態がおれに話しかけてくるのか。変態のくせに、えらそうに!
目の前真っ暗状態の副作用だ。おじいちゃんは人を殺しそうな声音で言った。
「何でお前に……って問答するのも面倒だな。おれが下を向くのは、好きな女ひとりを幸せにできないからだ。おれは金も実力もない職人見習い。おれの幸せにあいつは必要だが、あいつの幸せにおれは邪魔なだけ。ほんと嫌になるほど、よくある話だな。これでいいか? なら失せろ!」
「うむ。了解した! 乗れ!」
そして騎士が伸ばした腕は若きおじいちゃんをかっさらうとサ~ブレッドの後ろに乗せた。
「な、何を」
「花嫁を迎えに行く!」
そして、サ~ブレッドは飛び上がった。鎌倉の街が一瞬で小さくなった。
おじいちゃんの勤めているお菓子屋が豆粒みたいに小さく見えた。その小さな厨房で自分があくせく働いていて叱られてへこんだり、喜んだりしていることを思うと、おじいちゃんは状況を忘れて、何だか愉快な気持ちになった。
サ~ブレッドは空中を旋回しながら方向を決めると、一気に空を駆け下りた。その先には大きな屋敷。おじいちゃんは叫んだ。
「やめろ!」
「何故だ!」
「あいつはそこで幸せになるんだ。それを邪魔する必要はない」
「何故だ!」
「何故? だから、おれはあいつを幸せになって欲しいんだ!」
「なら、お前が幸せにしろ! 大馬鹿者め!」
サ~ブレッドが加速した。空気の壁のようなものに一瞬おじいちゃんは弾かれそうになったが何とか鳩サブレーの騎士にしがみついた。
「若者よ、勇気を!」
鳩サブレーの騎士は高らかに叫んだ。
「そんで?」
「サ~ブレッドは屋敷の中庭に下りた。おれはそのまま芙沙子の部屋に行って、芙沙子を連れて逃げた。あそこには住み込みの人間もたくさんおったから、そいつらがみんな追いかけてくるのをかわしながらな」
「鳩サブレーの騎士は?」
「さあ……たぶん追っ手を止めてくれてたんちゃうかな」
「かっこええな」
「サムライよ。あいつは」
そうして、鎌倉を出たおじいちゃんは芙沙子さん(おばあちゃん)と一緒に大阪に出て、そこでもう一度菓子職人の修行をして一人前になり自分の店を持って子供が生まれ、その子が成長して電気メーカーに就職して結婚して、その長女として私が生まれたころにおじいちゃんは自分の店を閉めた。
「人生は単純やない。でも、おれは、悔いのない人生やったわ。鳩サブレーの騎士のおかげよ」
「何で、鳩サブレーやったんやろね」
その疑問には、おじいちゃんが亡くなってから、おばあちゃんが答えてくれた。
「おじいちゃんは鎌倉の豊島堂、鳩サブレーのお店で修行してたんよ。おじいちゃんもわたしもあのお菓子が大好きで、それが縁で知り合ったんやもの」
そこで、おばあちゃんはくすくすひとり笑い出して、
「鎌倉を出るときに、あの人が汽車の窓を見ながら泣いてたんよ。住んでいた街を突然離れるんよ。寂しいし怖い。だから、わたしも一緒に泣いた。そしたら、あの人、汽車が出るときにまじめな顔で『さらば、愛しき鳩サブレー』って言ったの。え、そこ? そこなん? って。もう可笑しくって。わたしその場で笑ってしもうたわ」
それを聞いてわたしも笑う。おじいちゃんおもろいな。
「そんで、それからもずっと、笑いっぱなしの人生やったよ」
そういっておばあちゃんは微笑んだ。おじいちゃん、おばあちゃんも悔いはなさそうよ。
と、そんなことを久しぶりに思い出していた。
実家に続く道、わたしの前には幼馴染の崇がいる。腐れ縁の京子に詩織、高峯先輩に、井野倉さんもいる。先生、料理長、師匠、そしてやっぱり家族。お父さんお母さん、美雪に聡史。なんとおばあちゃんとおじいちゃんもいる。シロまでそろってる。さらに、その後ろにも人がずらーっと並んでいる。
彼らは皆西洋甲冑を着て、サ~ブレッドに乗っている。
わたしにとっての鳩サブレ―の騎士。考えたこともなくはなかったが、すぐにやめたんだった。心当たりが多すぎるから。
この人たちがわたしの大事なもの。そして、これから……今更だけど、おじいちゃん、鳩サブレ―だけなんて、面白すぎる。
「薫! 答えい!」
おじいちゃんの声。じじい、ちょっと調子に乗ってるな。
わたしはおおきく息を吸ってから吐き、彼らにこたえる。
「わたし、フランス行きます! 料理が好きだから! ほんとに一人前になったら帰ってくるよ! だから、それまで」
『応!』
騎士たちのユニゾン。わたしの身体が本当にびりびりと揺れる。そして、その力がわたしの中からも湧いていることを知る。
BAおめでとうございます。
講評です。
…と言ってもあらかた書いちゃったので補足だけ。
・短い文章で、奥行きのあるストーリーを感じさせるのが評価大。
説明台詞やモノローグが簡潔で的確だと思います。
・もう一つのポイントは、「登場人物の視点が定まっている」ところです。
例えば、鳩騎士を「変態」と断じつつも、その行動を「かっこいい」「サムライよ」と素直に評価するあたり。
内容や文体は浅田次郎っぽい感じかなと思いましたが、この作品を読んだ後で思い出したのは「じゃリン子チエ」です。
「じゃりんこチエ」は意外でしたが、狙ってた関西弁による地元リアリティとしては、同じ系譜だったのかもしれません。あくまではるか先の目標ですが……。
丁寧で嬉しい講評に加えて、ベストアンサーまでいただけて、とても楽しく満足できました。
ありがとうございました!
月の船に、少年は乗っていた。
気付いた時にはもう地上から飛び立ったあとで、周りには星の魚たちがさらさらと泳いでいた。
船には彼とダレカが乗っていた。
ダレカは船から手を伸ばし、魚の背を撫でているだけだった。
無音の世界、群青の海の中をただひたすら船は進んでいく。
少年はダレカのように、魚に触れてみようかと手を伸ばす。
魚は少年の手に驚き、遠くへと流れてしまった。
指先がうっすらと光っているのに、少年はようやく気付く。
胸のあたりから青白い光が生まれ、海の中にするりと潜っていった。
指先の光もそれにつられて、後ろへと流れて見えなくなる。
魚たちが、光らなくなった指先に尾ひれを掠めて泳いでいった。
「光は魚になるの。」
ダレカの声に、少年は驚いて目を丸くした。
小川のせせらぎのような、細く綺麗な女の子の声だった。
光は魚になる。
先程海に潜っていったあの光のことだろうか。
「あなたのはどこに行くのかしら。」
ダレカは海の中から一匹の魚をすくいあげた。
少年は差し出された魚を手に取る。
青白い、眩い光を纏った魚。
見覚えがある。
「これはリゲル?」
オリオンの足の、明るい星。
それよりも明るく光っているようにも見える魚は、掌からはねあがり海へとすべっていった。
遠くまで行ってしまっても、明るくてよく見える魚。
「残念、シリウスの魚ね。」
ダレカは銀の髪をなびかせて笑った。
瞳は、少し悲しそうな色をしていた。
見覚えのある顔だったが、少年はダレカが誰かは分からなかった。
月の船は静かに水面をすべる。
星の魚は底の方に沈んでしまって、水面にはクラゲが浮いている。
白い傘は銀河のように渦巻いていて、その下に彗星のような触手を垂らしていた。
「海の中、宇宙みたいだね。」
水をすくってみたが、あの潮の匂いはしなかった。
冷たくやわらかい雫が零れていく。
口に含んでみたが、何の味もせず、ただ冷たさが沁みただけだった。
「ここって、天国なの?」
少年はダレカに訊く。
ダレカの手が少年の頬を撫でた。
冷たい手だった。
淋しさがこみ上げて、涙が溢れてくる。
けれど、それは今までのように温かくはなかった。
少年は静かに泣き続け、ダレカは少年を優しく抱きしめ、頭を撫でてやった。
「あなたは、ずっとずっと遠くまで、船で旅をするの。私も居る。」
ダレカは静かに言うと、少年の手を握りしめる。
少年の手も、また冷たかった。
涙が海に沈み、尾を引いて流れていく。
群青色の世界は、海の底の明りで月の船を照らした。
「怖くない。淋しくない。いなくなったりしないから、大丈夫。」
ダレカの優しい声に、少年は顔をあげ、涙を拭いて頷いた。
二人は顔を見合わせる。
ダレカが笑って見せる。
少年も笑ってみる。
不安は消えていた。
「行こう、ずっと、ずっと一緒に。」
古い、赤レンガの橋。
川には桜の花びらが浮かんでいた。
白いワンピースを着た女性が、赤い髪をなびかせて立っている。
蒼い瞳には何も映っておらず、意識は遠い昔にあった。
初恋、そして悲しい事故。
好きだった男の子。
女性は橋から身を乗り出した。
過去に囚われるのも、今日で終いにしよう。
「さらば愛しき日々。」
水の音がした。
『弥演琉ワールド』ってこれから使って大丈夫ですか←
というのは冗談で。
世界観がぶっ飛んでるというかぶっ沈んでる感じなので、
よく分からなくなっているのは私の方だったり。
尊重してもらえて嬉しいですが、
読者に合わせたストーリー作りも出来るようになりたいと思いました、まる。
弥演琉ワールド、使う度に使用料として1ポイント…冗談です。
くどいですが、何度でも言います。
決して読者に媚びるなかれ。お主はお主の道を往け。
です。
※※&%sjdkduf这
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D@@章」「|没づ$有DE读EE的Cdjdg价
djづg
【值:*けけけkすぞふ】
し、しまった~。
各話に登場する5~6人の少女達。それぞれが大事な何かを捨てるところでストーリは終わる。
で、最後に少女たちのバトルトーナメント開催って、プロットにしとけば良かった。
暇があれば書いちゃいますので、暇があったら見に来てくださいな。
かきつばた開催してくださって本当に感謝しています。
基本的に、無責任な文章を書くのが好き。そのうっぷんが溜まってたので、
予告から数えて7、8本分の回答に相当する文章をいろいろ書かせてもらいました。
後悔はしていません。やっぱり、わたしの才能って限りある資源のようで。
頑張っても良いのが書けない時はかけない。でも楽しく書いているので満足なのです。
個人的には予告編のが一番良かった気がするし、あれで自分のハードルをあげちゃって
後戻りできなくなった感もあったり。
次は、真剣勝負に挑戦しちゃいましょう。なにかが降りてきたら……。
じゃあアレですね。もっと降りて来るように今すぐお百度参りとか…
「各話に登場する5~6人の少女達。それぞれが大事な何かを捨てるところでストーリは終わる。で、最後に少女たちのバトルトーナメント開催」
例えばそういうことです。
でもまあ、直接対決じゃなくても、世界観が共通してるとかくらいでもOKかも。
「さらば愛しき※※」
「えーっと。もう解散したんだっけ?」
「いつの話だよ。前世紀の話だろ」
「俺やっぱ一番最初に浮かぶのは、あれだ。フジヤマとかゲイシャ出てくるやつ」
「とことんバカにしてるよね。 ニヤニヤしながら相手を馬鹿にして、馬鹿にされてる自分達を笑うシニカルな所がいいよね」
「セメテ(以下繰り返し)ヤメテ(以下繰り返し)」
「いったい何と戦っとんや」
「楽しければいいんじゃない?wikiみたら『音楽的には、ファンクやニュー・ロマンティック、落語、ロック、歌謡曲、フォークなど、雑多な要素を融合したもの』……『落語』って何やねん~音楽ジャンルとちゃうやん!落語好きのおれは問い詰めたい。小1時間問い詰めたい」
「雑誌などで注目してもらうため※※○○○ってと名づけたが『○○○○○』と誤表記されてしまった」のが名前の由来らしい。
「「例えば」ってのもいいね」
「わかる気がする。ってか、そいつが微笑んでくれるなら、全世界を敵に回しても本望って気になることもたまにあるよね」
「全てを投げ捨ててトランク一つで旅に出たいってこともあるよね」
「俺はしょっちゅうだ。会社に行くときに右に曲がる道を左に曲がってそのまま九州一周旅行に行ったこともあるで。最後は警察から家に連絡が行って帰ったけど」
「警察も親切やな」
「廃棄ガスを車窓から入れるときはちゃんと目張りせんとあかんでって忠告してくれた」
「次からはその経験を生かそうな」
「経験生かしとったら、次はあるかい!」
一本目です。
講評は酷評でお願いします。
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『街の灯』
都市機能は沈黙していた。真っ暗な市街地は、街の死骸を思わせる。市街地のインフラである電気・水・ガスと交通制御や 電車などの交通が、頭脳を失ったためだ。
その頭脳とは俺の傍らにある、スーパーコンピュータを中心とするシステムだ。そして、俺はそのシステムを統括するエンジニア。俺は、このインフラ制御のシステムと格闘し、その制御機能の変換作業をしていた。その最中に、隣のコントロールルームにテロリストが潜入し、占拠した。テロリストは市街地のスイッチをOFFにしてしまった。
「我々は、政治犯の釈放を要求する。この都市の市民の生活を、我々は掌握している。市民の生活と引き換えに、我々の仲間を返してもらおう。いつでもこの都市を死の街にできることを忘れるな。」
彼らの声明は的を得ている。この街は、あのコントロールルームから全てを牛耳られる設計だ。手も足も出ない。
だが、彼らはこの街のシステム構成を全て把握しているわけではない。俺の存在に気づいていないようだ。というより、俺自身とシステムの関係を知らないのだろう。この街のシステムと俺の脳は、直結しているのだ。
この街のシステムを構築するとき、俺は最先端の技術を使うことにした。それは人の脳を模倣する技術だった。そのためには、土台となる脳が必要だった。当然のように俺の脳をモデルとして使う事にした。
脳の模倣のためには、脳以外の体の大部分を極低温にして、脳の機能だけを呼び出して接続する。遮断して常温に戻せば、普通の生活に戻る。毎日装置に入り、接続し、再びよみがえる日々を過ごし、俺の脳の機能は、システムに移植されていった。
そんなある日、技術者のスイッチの入れ間違いで、俺は首から下の機能を失った。低温維持状態から戻ってこれなくなってしまったのだ。その日以来、俺は街のシステムに接続されたままだ。
それは、人間としての未来を失ったことに等しい。
事故の一週間後、現実を受け入れた俺は、街を経由して、恋人のユミにメールを送信した。
「もう会えない。俺のことは忘れてくれ。遠い所へ行ってくる。帰れないと思う。」
さらば、愛しき人よ。もう俺は人じゃない。
それから俺は、街へ自分を移植することに専念した。街の処理機能を、俺の無意識の処理機能に変換する。人間の無意識領域の処理能力は、正確無比で短時間演算なのが知られている。その能力を使わない手はない。すでに人間の体を使えない俺は、街に身体機能を求めていた。
俺の無意識は、意識に上らない所で作業している「識閾下複合分散処理機構」のことで、いま呟いているこの「俺」はその中の「統合意識候補」の一つになる。それぞれの無意識は、個別に役割を担っている。隣のスーパーコンピュータに分身を移植するのに、一年近く費やした。
実際の処理は、この分散した機能(自分の分身だ)、がさらに分身を作って街の各作業箇所に住み着く。個々の処理はこの分身にまかせて、まとめだけをスーパーコンピュータでやるシステムを組み上げた。このシステムを開始すれば、街はコントロールルームの制御から解放されることになる。
俺の体もまだここ存在しているが、脳を保持するためだけの役目だ。そして、ここで考えているのも、「統合意識候補」の最後の一分身。この「俺」であるこの分身はシステムには移植しない。この体と最期まで一緒だ。
なぜなら、この分身が担っている役割は、「ユミへの思い」だったからだ。街にこの処理はいらない。そう思って、ここに残ることにした。そして最後に、俺の体と脳を街から切り離す分身が、一人は必要なためだ。
街中の使える回線を繋いで、ユミのコミュニケータに接続できた。ユミはまだ眠ったままだ。街が凍り付いていることもわかってはいまい。
テロリストが、スパコンと俺に気づいたようだ。扉を壊す音がしている。だが、システムを経由して、街中にばらまいた俺の分身には気づかないだろう。
俺は分身たちにコマンドを送った。
「街の灯をともせ。俺を遮断しろ。」
コントロールルームを遮断して、都市を回復させるの だ、と。
じきに俺の体を維持する装置も、俺を街に接続する装置も止まる。
この部屋になだれ込んできたテロリストたちは、低温維持装置からあふれ出た液体窒素に触れて、凍り付くだろう。すでに センサが切れていて、俺には様子がわからないが。
俺は人間としての最後のコマンドを送り出す。
「楽しかったよ。ユミ。元気で。 bye」というメールを。
接続が切れそうだ。もう、意識を維持することができなくなっている。ユミの返信が届いたようだな。
「ねぇ、ケン。なんでなの?何で今更?Bye?」
-------------------------------------------------------------
ライナーノーツは終了後に。
2本目が間に合わなければ、これで。
指摘があっても修正はしない予定です。一応校了ということで。
いつも言っているんだけど、「BA狙ってません」
読者がいるなら、書きます。読者が一人でも、その姿勢は変えたくない。
それだけです。かきつばたが開かれれば、必ず読んでくれる開催者がいるわけで、その事実だけで書いています。
かきつばたを主催していただいただけで、もう、ほんとに感謝です。
まあBAは狙って取れるもんじゃないですしね。メンバにも左右されますし。
「読者がいるなら、書きます。」確かにそうですね。
(弥演琉氏が言いたいのもそういうことか。)
二本目です。ふぅ。
---------------------------------
『大いなる眠り』
よく寝たな。寝ざめがいいのはなんともい えと、なんで寝覚めが良い? 今何時だっけ。10時25分と。ここに吊るしてあるのはスーツだな。 今日は面接だね。そうだね、面接だね。最終面接だね。10時5分に面接だね。終わってるね。終わってる。なんで起きてないんだ。目覚ましは、3こ転がってる。そんなことより電話しな 目覚ましになにかしなかったっけ。 ビデオ。 ビデオォォォ 落ち着け。落ち着け。落ち着け。 セットしたのは7時だから、もう3時間以上経って る ね 。うん。上書きされちゃったよね。ね。 なんで、そんな目覚ましかけるかなぁ。 一世一代の目覚めが必要だったか 電話電話 もう遅いか ってビデオォォ なんで、ダイターンの最終回なんてかけたかなぁ。 一番の宝も 自分に嘘つけばよかったなぁ それじゃ起きないし 宝物でも起きないし。 くそ、電話電話。まてまて。状況を整理しよう。昨日の夜に、起きられないとやばいから、非常手段の目覚ましをかけたんだよな。ダイターンの最終回のビデオテープ入れて、7時に録画予約して、起きないとビデオに上書きしちゃうっての。 この間はおきられたよな。安心してゲームしたのが悪かったんだよな。面接の前だってのに。んで、7時に起きて9時半までに丸の内に着くという予定で。スーツ吊るして、目覚まし3個掛けたんだよな。な。ダイターンの最終回。ぉぉぉぉファーストの予告編が入ってんだよ。βⅠだよ。本放送だよ。なんで俺、いまだにβⅠ再生できる機械持ってんだよ。なんなんだ。面接なんて。就職なんて。 ダイターンがぁぁ。 そうだ、テープテープ。上書きされてんのか? 巻きし戻しっと。 時間かかるんだよな。テープってだめだよな。 電話しなき もうだめだな。いいよ、もう就職なんてしないし。45になってもフリータでいいって。死なない死なな オヤジはダメか。くそ、俺死ななくても、オヤジもオフクロも歳だよな。こんなダンボールがあるようじゃダメだよなぁ。 っと再生再生。 みのだよなんで朝っぱらからみのなんだよ。テープ、全部みの。あああ、さらば愛しきコロス うわー1時間、しっかりみのだよ。なんでこんなテープ作ったかなぁ。 起きればいいんだって。普通はみの見て会社行ってんだよ。なにやってんだよ、俺。くそ、ダイターンがぁ。コロスの最後もなくなっちゃったのか。ギャリソンの鼻歌も。 出てきたよ、テープ。みのでいっぱいの。あーあ、ロゴもダイターンの絵もなんだかな あ あれ、このシールってずいぶんずれて る な これ、ボトムズじゃねーか。DVDあるからいいんだよこんなの。なんでこのシールがここ あそこか。それ。 カバーと入れ違ってるな。入れ違えたの 再生再生 をを、万丈、バンジョォォォ「俺は 嫌だ」だよ。テープ生きてるよ。なんだよ。希望わいてきたよ ありがとう破嵐万丈 ありがとうコロス すばらしいぞサン・アタック さらばだ愛しくもなんともないキリコよ 電話だ。電話。 えと、担当者だれだっけ。 大場さんね。 あ、すみません、本日最終面接の予定だった武田健です。はい、すみません、火星から、いえ、乗っていたタクシーが事故に あ、そうですそうです。家出てすぐだったんで。はい、怪我ありません、向かってますんで。あ、そうですか、ありがとうございます。急ぎます。よろしくお願いいたしますっ!! 日輪の力を借りて、いざっ
-------------------
未校了です。誤字ありそう。とりあえず置いておきます。しばらく離脱するので、このままかも。
ネタと展開は面白いですが、時間不足ですかね。
もう少し細部を練りこむと、SSとしての面白さが増したと思います。
ちなみに私がリアルタイムで覚えているのはG7以降です。(^^;
トライダーでしたか。ダイターン路線の少年化ともいえる作品でしたね。
もう少し本気で作ってくれたらなぁって感じでした。
時間切れなのは承知で投稿しました。
ま、勢いで書かないとダメで、時間をおいて推敲すると勢いが消えちゃうのもあって、そのまま出してます。
ねぇ、何で「さらば」なの?
「愛しき」ものならずっと手放さなくても良いんじゃない?
何で手放す必要があるの?
自分の物にしちゃえば良いじゃんか。
「違うよ、愛しきものに別れを告げなければいけない運命っていうのがまた良いんだって。バッドエンドだったらなおよし。俺はそういうの好きだな。」
馬鹿じゃないの?
そんなこと言ってるから何時まで経っても大人になれないんだよ。
中二病ってやつなんじゃないの?
「お前は独占欲が強すぎて逆にヤンデレ呼ばわりされるパターンだろ、人の事言えるかっつーの。うるせーな。」
何だよ、別に病んでなんかないもんねーだ。
つーかお前、さっきから何それ、キモすぎるんだけど。
相変わらずブラインドタッチとかいうの?
自慢してんだろお前うっぜー!
「お前がうっぜー。耳元でキャンキャン言ってんじゃねーよ馬鹿。別にかきつばたくらい答えたって良いだろ、暇なんだし。」
キャンキャンなんて言ってねーよ耳鼻科行ってこい。
だいたい内容おかしんだよ、何そのラノベ展開。
空から少女なんか降って来ないだろウケるんですけどwww
「空から女落としたつもりないんだけど。お前の方がオタクじゃねーかキモ。」
お前そうやって知らない女に助けられて変な世界に導かれるの好きだよな。
「そんな話書いてないから黙れ。」
からかってるだけだっての、気付けよ馬鹿。
…でさ、何で遺書なんか書いてんの?
「遺書じゃねーよ。しょーとすとーりーだろ。よく読め馬鹿。」
だってそれ主人公の名前お前じゃん、緋指じゃん。
ひさしくんはなんでしのうとしてるのかな?
ん?
「それは死神との契約を破ったからだろ。」
その死神の名前はひょっとするとキルアだったり?
「だったり?」
後ろでキャンキャン言ってるキルアだったりするわけか。
んで、この後は?
「今打ってるの見りゃ分かるだろ。」
やーだなぁ、あたしあんたの事殺したいくらい好きって言ったじゃん。
自殺したらやだかんね。
あたしが殺す。
「そうかい、じゃあこの後の事はお前と俺で考える事にしてさ。」
何、続き書かないわけ?
「こっちはいったんオチつけとかないと、つまらないわけよ。」
理由は?
「お前のせいだろ。」
何で?
「お前がずっとさ、俺の事好きでいたのがいけないんだろ。」
あたしに惚れたわけ?
「そうだと言ったらお前は俺を殺すだろ?」
何だ、分かってるじゃんか。
最後に何か言ってみたらどう?
「じゃあさ…」
あたしも追っかけるの、知ってて逝ったくせに。
馬鹿。
おっかなびっくり書いているような印象を受けました。
幅を広げようとしているのならば、「殺」「死」を使わない〆め方にトライして欲しい。
今後に期待してます。
すみません、これ趣味に走りそうになったやつです。
バッドエンドとか死ぬのがどうも好きすぎてテンションがおかしかったです。
とりあえず進化してヨノワールになろうと思いまs←
小さい頃からサッカーが好きだった。よく近所の友達とこの公園で遊んでいた。
いつも門限を忘れてしまうくらい夢中でやって、お母さんに怒られることもしばしばあった。
中学では、先輩が卒部した後にサッカー部のキャプテンをやらされそうになった。
俺はリーダーとか、なんとか長とか、そういうのは向いていないと思っていたし、無論、友達も向いていると思っていた奴なんて一人もいないと思う。
ただ『この中で一番上手いから』とかなんとかで先生から無理やり押し付けられた。
普通そんなことでは決めないだろ。ましてや対象が俺なんだぞ。キャプテンだと??無理無理ww←
当時は何の迷いもなく、断った。
ちゃんとやれる自信ないし。メンバーの皆だって俺がキャプテンなんて嫌に決まっている。
俺はいつかプロのサッカー選手になって、世界中の強いチームと戦うんだ。キャプテンはその時にすればいい。
中学の卒業アルバムには、堂々としたでっかい字で『将来の夢…サッカー選手』と書いてあった。
だが今は、あの時断らなければよかった…と後悔している。
そんなこんなを思い出しながら、俺は開いていた卒業アルバムをゆっくりと閉じた。
俺の座っているベンチの上で、桜の木が静かに揺れている。桜の花びらはすでに散ってしまっていて、青々とした葉が太陽に照らされて光っている。
そういえば、あの日の桜も、こんな感じだったな。
もう10年位前になる、中3の夏休み。卒部する前にある最後の大会。
そして俺が人生最後のサッカーをした日…。
あの頃はどの部活も、その最後の大会に向けて一段とハードな練習をこなしていた。もちろん、サッカー部も対象外ではなかった。
暑く力強い夏の日差しで、熱中症になる人も少なくなかった。まあ、俺はそんなこと気にせずに練習していたのだが。
俺たちの間では『中総体』と呼ばれていたその最後の大会は、サッカー部の名誉回復のための最後のチャンスだった。
俺たちが最上級生になってからのサッカー部は、参加したどの大会でも良い成績を残せていない。いつからか、『弱小サッカー部』と他の部活から後ろ指をさされるようになっていた。
俺はそんなことは気にしていなかった。楽しくサッカーができればそれでよかった。でも他のメンバーはそのことをかなり気にしており、良い成績を残そうと必死だった。
そんな皆の姿を見ているうちに、俺も本気で練習に臨むようになっていた。‘良い成績を残したい’その一心で。
大会当日、俺たちのチームは、今までの成績からは考えられないほどにトーナメントをのぼりつめていった。正直、自分でも考えられなかった。
試合が長引き、その日は決勝戦が行われなかった。俺たちのチームは、決勝まで勝ち残っていた。
決勝戦は、次の日に行われることになった。決着がつくのは明日だというのに、ミーティングの時間はまるで全国大会で優勝したかのように盛り上がっていた。そういう俺も、かなりのハイテンションだったのだが。
なんやかんやで反省をし、明日に向けての意気込みを語り、いつもより帰るのが遅くなってしまった。
夏だったから日が落ちるのは遅かったのだが、部室を出る頃にはもう空がオレンジ色に染まっていた。多分、午後の6:30位だったと思う。
寝るのもいつもよりかなり遅かったな。というかいつも寝るのが早いから。
……
あれ、アラームが鳴らない。ちゃんと6:00で設定したはずだ。いつもはちゃんと鳴るのに。…てか今何時だ?
携帯を開いた。‘午前7時12分’ 俺はベッドから跳ね起きた。集合まであと18分しかないじゃないか!!
急いでパンを食べながら着替えを済ませ、時計を見るともう7:23になっていた。
あわてて家を飛び出し、俺は自転車を飛ばした。最後の大会の日に、しかも決勝戦の日に寝坊するなんてどういうことなんだよ!!?
顧問の先生に叱られるのは承知していた。時間までに間に合うだろうか。
目の前の信号が点滅している。ヤバい。早く渡らなくては。
俺は自転車のスピードをさらに速めた。
…一瞬、信号が赤に変わるのが見えた気がした…。
…ここはどこだ?俺は何をしていたんだ??
確か今朝起きたら時間ぎりぎりで、慌てて自転車を飛ばし…て…とば……し…て…
そうだ!!!試合は!!?試合はどうなった!!!?
俺は跳ね起き…ようとした。 体が動かない。なんでだ?早くスタジアムに行かなきゃいけないのに。
「気がついたかね。」
低くて少し野太い声が俺の頭の方で聞こえた。
「ここは…それより試合はどうなったんですか!!?」
「決勝戦の事かね。それなら今、試合の最中のはずだよ。」
まだ終わってないのか。今ならまだ間に合うかも知れない。…でもやっぱり体が動かない。
「ここは病院だよ」
病院…か。どおりで俺の嫌いな臭いがすると思ったぜ。……え?病院??
「信号無視は感心しないな。大型トラックと衝突して、命が助かっただけでもありがたいと思いなさい。」
交通事故だって!?ふざけるな!!俺には大事な試合が…と、ぶつかったのは俺なのか。
誰のせいでもない、この事故が起こったのは自分の責任だ。そんなことはわかってるのに。どこにぶつけていいかわからない怒りと、自分に対しての情けなさが余計に俺の頭の中を混乱させた。
この状況が、理解できなかった。…理解したくなかった。
結局俺は、決勝に出ることができなかった。それどころかひどい全身打撲で、全治3カ月。退院した後も、車いすでしか移動できない体になっていた。
決勝戦は、3-1で負けたらしい。まあ、エースストライカーの俺がいないんじゃ当たり前か。
病室で見た青々と茂っている大きな桜の木が、不思議なほど俺の頭の中に焼き付いている。まるで、こんなカッコ悪い形で決勝戦に出られなかった俺を嘲笑っているかのように見えた。
…まあ、仕方ないか。ホントにカッコ悪いよ、俺。
あの後、チームの皆に責められず、逆にすごく心配されて、「助かってよかったね」なんて声をかけられたのが妙に不愉快だった。
「なんで来なかったんだよ」「お前ホントに役立たずだな」なんて怒鳴り上げてくれた方が、どんなに良かっただろう。その時俺はなんでそう思ったのか、今でもよくわからない。
現在、俺はまだ車いすで生活している。
公園でサッカーをしている子供なんかを見ると、無性にサッカーがやりたくなる。
「俺も混ぜてくれよ」
この一言が言えないのがすごく歯がゆい。
そろそろ帰ろうか。俺はアルバムをケースにしまった。生温かい風が、桜の木を揺らしている。
後ろから、ゴールシュートを決めたホイッスルが聞こえた。やけに本格的だな。
俺はゆっくりと車輪をまわした。
「さらば愛しきサッカー」
幼い内容でごめんなさい(-_-;)
あ、いや、そんな肩肘張らずにもっと気楽に。(^^;
要は「自分で読んでみて面白いかどうか」だと思います。
空白行とかも、ぶっちゃけ「改行入れまくって白くするのが俺のスタイル」てんならそれでもOK。ただ、使い方に一貫性が無いように見受けられたので、もし、書いた後で体裁整えをしていないのであれば、今後は気をつけた方がいいですよ。くらいの話です。
幼稚どころか文才があると思いますので今後もよろしくお願いします。
はい、ありがとうございます!!
こちらこそよろしくお願いします。
『さらば愛しき※※』
おお。甘口にしておいて良かったです。伏字の部分に喰いついたのは、私だけだと思って書き始めたのですが、発想がカブっていて焦りました。
くしくも、この小説の行間解説みたいなモノを書いていたので、よろしければ、以下からどうぞ。
ラブプラス小説の行間解説。 - 病むに病まれてビラの裏 - 文投げ部
お暇な時に。
拝見しました。なるほど。
恋愛ゲーってその昔、例の青ディスクのやつで挫折しっぱなしなんですっかり疎くなっていました。ちょっとググって見た程度ですが、最近はこういうのもあるんですね。
『さらば愛しき“イエロウバルーン”』
- 五弁花のジンクス:
- さくら文学賞におけるジンクスの一種。さくら文学賞において大賞を5度受賞した作家がその後まったく受賞できなくなるのを、五弁花になぞらえたもの。
この言葉が脳裏をよぎったのは、僕がまさに“イエロウバルーン”に大賞を授与しようと思ったときでした。気になってその受賞歴を調べてみた僕は…
大変なことを知ってしまった、と思いました。
今回初めてさくら文学賞を開催するにあたって、僕は改めてこの文学賞のことを研究し直しました。もちろん投稿だけしているときから調査はしていましたが、今回はオフィシャルの情報以外にもきちんと当たりました。過去の参加者のブログを調べ、自分なりに咀嚼しまとめ直し、質問サイトで情報を募りました。
その過程で、このジンクスを知りました。
あの時の衝撃は、今も忘れません。僕はさくら文学賞のこれまでの膨大なアーカイヴの全てを念入りに調べ直し、大賞を受賞した作家のその後の経歴を調べました。5度の大賞を受賞した作家は現役時代、その誰もが親しみやすい平易さと、決して一筋縄に行かない深遠さを併せ持っていたものでした。めいめいにはっきりした個性があり、それでいてテーマに合わせて変幻自在に姿を変えました。
しかし、5度目の大賞を取るとみなぱったりと受賞できなくなっていました。ひとつの例外もなく。
いったいなぜ。僕は調査に夢中になりました。文字通り調査に明け暮れ、文字通り寝食を忘れた僕は、すぐに重要なことを突き止めるに至りました。
5度目の大賞を“与えた側”の人は、直後から受賞側の常連になっている、ということに。
そのとき初めて、僕にあなたが舞い降りました。最初はアイデアというかたちでした。野球場に魔物が棲むように、さくら文学賞にも神のような存在がいるのだとしたらどうだろう。さくら文学の頂点に神が君臨し、慕う者たちを愛でるのだとしたらどうだろう。
しかし、当の神に近づきすぎた者は粛正されていくのだとしたら…。
そして、粛正に協力した者が神から新たに愛されるのだとしたら…。
あなたは僕に最初の耳打ちをしました。
「そうだとすると、あらゆることの辻褄がきれいに合うだろう?」
* *
今、僕の目の前のディスプレイには確認画面が表示されています。並んだ参加者のリスト。ポイントを振り分ける棒グラフ。大賞を選択するためのラジオボタン。残りわずかで、今回のさくら文学賞は終わります。
黄色い風船のアイコンは、不思議といつもより目を惹くように見えました。このユーザはいつもテーマにきちんと向き合う作品を書きます。殊にエンディングは秀逸で、僕の好むところでした。今回「天井と魔法瓶」を最も鮮やかに描いたのは、ひいき目を差し引いても彼女です。だから大賞を付与しようと思います。その選択に迷いも躊躇もありませんでした。
件のジンクスを思い出すまでは。
彼女の受賞回数は4回だと、すぐに分かりました。今回大賞を取れば5度目です。もちろんあのジンクスに触れるでしょう。ジンクス通りなら神は–あなたは–彼女を始末するでしょう。二度と顧みられることのない、枯れて腐った花になるでしょう。
翻って僕は、自分自身のことを考えました。この文学賞で大賞の取れずにいた日々のことを考えました。大賞は実は誰かの采配で、内容と関係なく決まっているのではないかと勘繰ったこともありました。その日々が、いよいよ終わります。今ここで正しい選択をすれば、彼女は消され、僕はあなたの元へ上り詰めます。
ラジオボタンからひとつを選ぶ、その所作は、神聖な儀式のように思われました。引き金を引きましょう。「この内容で終了する」をしましょう。今が始まりの時です。あなたの存在に気付いた人間は僕が初めてだからです。とても素晴らしい気持ちです。
あなたは彼女に最期の耳打ちしました。
「さらば愛しき“イエロウバルーン”。 お 前 の 時 代 は 終 わ っ た。」
なるほどー!
しつこい葛藤と思い詰めない主人公で、今度のかきつばた賞いただきですね☆
どうもありがとうございました。楽しかった♪
その貪欲さに乾杯
次回も期待しています。
BAおめでとうございます。
2012/04/03 01:49:20講評です。
…と言ってもあらかた書いちゃったので補足だけ。
・短い文章で、奥行きのあるストーリーを感じさせるのが評価大。
説明台詞やモノローグが簡潔で的確だと思います。
・もう一つのポイントは、「登場人物の視点が定まっている」ところです。
例えば、鳩騎士を「変態」と断じつつも、その行動を「かっこいい」「サムライよ」と素直に評価するあたり。
内容や文体は浅田次郎っぽい感じかなと思いましたが、この作品を読んだ後で思い出したのは「じゃリン子チエ」です。
「じゃりんこチエ」は意外でしたが、狙ってた関西弁による地元リアリティとしては、同じ系譜だったのかもしれません。あくまではるか先の目標ですが……。
2012/04/03 19:10:04丁寧で嬉しい講評に加えて、ベストアンサーまでいただけて、とても楽しく満足できました。
ありがとうございました!