予告編なんでこんなもんですかね。あと10日もあったら、逆にアイデアが練りきれそうもないので小出しで連投ってことになると思います。推敲せねば。
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グラ娘。 ベストアンサー |
『1万と39の可能性の向こうに』
探偵は静かに語り始めた。既にこの場所には、助手である私を通して容疑者や警察等が集められている。
「第一の密室。これのトリックは比較的早くから検討がついていました」
そういって彼は広間に集められた面々を見回す。刑事達は、一斉にメモを取りだしたりICレコーダを起動させたりと、また他の人々も一斉にざわつき始める。
探偵は続けた。
「これは、心理的な密室です。いや、正確には密室と呼べる代物では無かった。単に後から錠が掛けられていたのに、それに気付くことができなかったのです。あの時の私も含めてですが……」
令嬢が言う。
「でも……。書斎でお父様を発見した時、確かにあの時はドアの鍵は掛っていましたわ。わたくしも、それにあなた自身も確認したはずでは……」
「そう、あの時ドアは開かなかった。しかし、それは真犯人が開かないように細工していたのですよ。それも至極簡単な方法で。あのドアの鍵は内側から留め金をするだけの単純な仕組みですよね。そして、あのドアは外へ向けて開くタイプであった。まあ、それについては後々説明しましょう」
周囲に沈黙が流れる。皆、彼の言葉の続きを待ちかねている。
「そして、第二の密室。書斎へ通ずるニ階の階段は、私と、助手とで交互に見張っていました。もちろん誰も二階には上がっていないことは確認済みです」
「それでは、やはり犯人は、殺人の機会が与えられなかったということではないのですかな? それに、窓や、その他にも侵入の形跡は見られませんでした」
今度は、この事件の発端から捜査に加わっていた刑事の一人が口を挟む。
探偵はそれにも、ごく簡単に答えただけだった。
「そうでしょう。私と助手の目を盗んで書斎へ侵入することは不可能です」
探偵は室内を歩きながら、核心へ迫っていく。
「それがこの事件を複雑にしました。関係者の誰にも動機があり、――だからこそ、我々に警護の依頼が来たのですが――またアリバイを証明できたものはごくわずか。これでは犯人を絞り込むことはできません。そこで、わたしは、容疑者を調べることを早々に諦め、犯行に至る可能性を網羅しては消去していくという地道な作業を続けることになったのです。そして、浮かび上がった仮説は……」
探偵はそこで言葉を切り、私に向き直る。
「ええと、1万と39通りとのことでした」
私の返答に皆一様に息を呑む。
「一万通りだって? 馬鹿げている。まさかそんな……。いくらあなたがこれまで数々の難事件を解決した名探偵だからって……」
驚きの声をそのまま口にしたのは、被害者の長男だ。
しかし、その言葉も探偵は軽く受け流す。
「いつものことですよ。むしろ少ないと言ってもいいくらいです。なにせ、第三の密室は検討範囲外だったのですから」
その言葉に若い刑事が疑問を差し挟む。
「第三の密室、被害者の周囲に撒き散らされていたガラス片ですね。ですが、あれは死亡推定時刻より前から存在していたことが明らかです。雪の密室ではないですが、あのガラス片に痕跡を残さずに、被害者へ近づくことは不可能だと鑑識も……」
探偵は動じない。
「だからこそですよ。そこにひとつの盲点があった。その盲点を第一、第二の密室へとリンクさせていくと、可能性は一気に一万通りほど消えうせ、残る仮説は……」
探偵は再び私に目を向ける。
「25通りになります」
「そう、たったの25通りです。そこからさらに推理を進め、今では4つの仮説に絞られています」
そうなのだ。私はこの話を既に探偵から聞かされている。たった4通りとはいえ、そこから突破口を見つけるのに苦労していると。
「では、犯人の検討がついたのでは無かったのですか?」
年嵩の警部が探偵に尋ねる。
「いえ、それはすでに判明しています。だからこうして皆さんに集まってもらったのです」
これは、私にとっても初耳だ。次第に動悸が速くなる。
探偵の言葉は続く。
「犯行の手段は4とおり考えられる。しかし、それを為しえる人物はたった一人しかいません。お前が私の元を離れる日がこんな形で来るとは思わなかった。非常に残念だ。しかし、私の倫理から、お前を見過ごすことはできない」
次の言葉は私にだけ向けられたものだったのだろう。全ての謎解きと真犯人の告発を前にしたさりげない一言。私を長い長い悪夢へ誘う前に見せたほんの少しの優しさなのか。
「さらば、愛しき※※よ」
助手と言われたのか、名前を呼ばれたのかは、私にとってはどうでもいいことだった。これで、長い長い探偵助手生活も終わりを告げる。
探偵自身のその才覚、正義によって。
「水野さん、おぉぉぉい」
「なんだよ」
「最近ご無沙汰じゃないですか」
「何言ってんの。望月君が来なかっただけじゃないか。ご無沙汰も何もあるもんか。」
「をを、そうかも」
「そうかもじゃないよ。で?」
「で?って、はてなみてます?」
「実は見てたりして。かきつばただろ?」
「そうですよ。かきつばた」
「主催者が増えるのは大歓迎だよな」
「そうですね、水野さんやらないの?」
「仕事が忙しくて、投稿の講評とか、うっかり締切に間に合わなくてBAつけられなかったり、ポイント配分できなかったりするとダメだろ?」
「はなから言い訳ですか。だから脚本もギリギリなんですよねぇ」
「じゃあ、暇な望月君が」
「僕は暇じゃないっす」
「なんでよ、ここに来るぐらい暇なんでしょ」
「いや、ここは必然ですから」
「何しにくるんだよ」
「次回の舞台の打ち合わせ」
「そんなのめったにしないじゃない」
「まあそういわずに」
「家でなにしてんだよ」
「いやまあ、家業の手伝いっていうか、アルバイトに行ってるっていうか」
「何してんだろうね、望月君」
「で、お題なんですけど」
「『さらば愛しき××』ね」
「やはり、日々ですか」
「漫画とか、映画とか舞台とか」
「ぶ、舞台って、脚本降りるわけじゃ」
「あ、そういう手もあるねぇ。いいかも」
「み、水野さん、それなし。それはダメですよ。今度沖縄行くんで、お土産持ってきますから。ね」
「君は沖縄に何しに行くんだ」
「一身上の都合です。家業といいますか、まあいいでしょ。」
「お土産見てから考えるよ」
「またまた、そんなこと言って、本書くの好きなくせに」
「じゃ、お題はこうだな。”さらば愛しき望月”」
「え゙」
「いや、望月君とは限らない。藤原道長かもよ」
「もう、水野さん、とにかく脚本優先でかきつばたもよろしくね」
「なんで、君にかきつばたも頼まれなきゃならないのかわかんないんだけど」
「僕もかいてみますから、どっちか投稿しましょう」
「まあいいか。やってみますか」
「じゃあ、お土産もってきますから。」
「さらば愛しき望月君、ってとこか。また嵐のように去って行ったなぁ」