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【人力検索かきつばた杯】
かきつばた杯を開催いたします。

お題:ホラーなホラ話

ホラーは苦手なので、めちゃくちゃ怖いと思わせて笑える話をお願いします。
5/5締め切り予定です。

かきつばた杯については以下を参照願います。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%CE%CF%B8%A1%BA%F7%A4%AB%A4%AD%A4%C4%A4%D0%A4%BF%C7%D5

●質問者: garyo
●カテゴリ:ネタ・ジョーク 書籍・音楽・映画
○ 状態 :終了
└ 回答数 : 4/4件

▽最新の回答へ

1 ● しをこ
●250ポイント ベストアンサー

漂白された死体


「被害者は矢田佑二、28歳独身。都内の会社員です。死因は水に沈められた事による溺死」

俺は窓のない地下室の部屋で、部下の説明を聞き流していた。目はじっとバスタブの水に沈んだままの被害者に向けている。彼は水の中で目を見開いたまま、虚空を見ていた。

異様だ。

この部屋に入った瞬間そう感じた。被害者の両親から通報があり、彼らに解錠してもらい地下室に一番に踏み入ったのは自分である。部下が電灯のスイッチを入れるとそこは、壁も床も真っ白に塗られた、純白の部屋だった。


この部屋を目にした被害者の両親は驚きの声をあげていた。
2日前、最後にこの地下室で息子と会ったときには部屋は普通だったと言う。
普通とはどんな様子かを尋ねたところ、壁は塗装なしのコンクリート打ちっぱなし、床には焦げ茶色のオフィスマット、部屋は本棚やパソコンで物がたくさんあふれていた、と。

現在この部屋は純白に染められ、黒いコートの俺たち警察の方が異質である。そして部屋に置かれたのは白いバスタブ、その中には死んだ青年、それだけである。

「こりゃひどい…部屋を白く塗装したり、バスタブを持ち込んだり、やはり犯人の仕業ですかね?」

部下の山本の質問に応えず、俺は白塗りされた壁に沿って部屋をぐるり一周すると、部屋の中央の被害者に近づいた。バスタブの中のこの部屋の元、主を見つめる。すると、死体の横に何か四角い紙の様なものを見つけた。俺は手袋をすると水の中からその紙をそっと引き上げた。

「先輩、何ですかそれ?なんかの厚紙ですね」

山本が近づいて来て横でその紙を眺めた。そしてそれをじっと観察すると、
「先輩、これ英検の合格証書です。おれも同じ3級持ってるからわかります」

「合格証書だと」

紙は濡れて文字がほとんど消えかかっていた。確かによく見ると、英語検定、の文字が見える。しかし水に浸したくらいでなぜ印字された文字が消えかかる?

「なんかこの辺、プールのにおいがしますねえ。なーんか懐かしいなあ」

山本がのん気に不謹慎な発言をするので、俺は無言で顔面に一撃くれてやった。やつは奇声を上げると大人しくなった。

しかしプールか…。

俺はいまだ水に浸かったままの死体に顔を近づけた。部下たちは何事かと俺の行動を見守っている。

「この水、ただの水じゃない。薄い塩酸だ」

俺は続けた。
「犯人は、被害者とこの合格証書を漂白していやがる」

部下たちの戦慄した声が聞こえたが、俺はそれを無視するとその気色悪い部屋をあとにしたのだった。


-------


なーんて感じのデキる先輩刑事の独白を妄想してくらいには俺(矢田佑二28歳独身)は現実逃避していた。

現在社内の大会議室。19名、38個の目がそれぞれ冷や汗を滝の様に流す俺を見つめている。

そもそもあれがいけなかった。

今日の会議では最近話題になっているコンピュータ・ウィルスについての説明を、おっさんばかりの職場のため、俺が担当することになり、自宅にあったわかりやすいウィルスについての映像DVDを持参したのである。

そして我が社が誇る大会議室の210インチスクリーンに大写しにされたのはバイ菌に見立てたウィルスに感染して弱り果てたパソコンのイラストではなく、一糸まとわぬ裸の金髪の女性だった。

女性は官能的なポーズでスクリーンを肌色で埋め尽くし、高性能スピーカーからは彼女のあられもない声が響いてくる。


「……………」×20


間違えた。

Virus(ウィルス)とVenus(ヴィーナス)、スペルが似てるから間違えたああああああああ!! 寝坊して慌ててたから!

DVDの透明ケースに手書で「俺のVenus☆」というラベルを張った俺死ねむしろ死ね。
もう白いバスタブで溺れ死にたい。英検3級が無理に英語とか使うからこういう事になるんだ(妄想の中の)先輩刑事たすけて。


俺に突き刺さる重役のおっちゃん共の目線が痛い。

「や、矢田君これは…?」

直属の上司である部長が困惑顔で俺に問いかけてくる。ですよね困惑ですよね俺もです。


「これはコンピュータ・ウィルスを顕微鏡で10万倍に拡大した映像です。この画面を見ることによってウィルスが目から侵入、男性達を誘惑し、クリックを誘ういわゆる”フィッシング詐欺”の手口です」

「おお?これがビールス!」「人間にも感染するんか?」「風邪みたいなもんやな」

俺のトンデモな説明におっちゃん達は感心したようで、ウィルスについてさらに詳しい説明を求められた。



その後30分に渡ってコンピュータ・ウィルスについてのDVDを全員で鑑賞したことは、ここだけの話にしてもらいたい。


garyoさんのコメント
ありがとうございます。 最初の謎の部分が引き込まれました。途中で場面が変わった時は被害者の独白になったのかと思いました。

2 ● ぐらんこ。
●250ポイント

ヒタ・ヒタ・ヒタ。

足音が聞こえる。
どうしてだろう。
この家には誰も居ないはずなのに。

留守番を頼まれたんだ。お婆ちゃんに。
お婆ちゃんが親戚の法事に行くからって。

どうして?
どうして、留守番を頼まれたのだろう?
犬でも飼っているんだったのだろうか。
いや、違う。

それならば犬の足音が聞こえたということだ。
水に濡れたような、裸足で歩くような足音は到底犬には思えないけれど。
犬など飼っていない。

お爺ちゃんのご飯を用意するための留守番だっただろうか。
そうだ、お爺ちゃんは寝たきりなのかもしれない。
ならば説明はつく。
寝たきりのお爺ちゃんの世話をするために留守番を頼まれたのだ。
もちろん寝たきりだから歩けない。
それならば留守番を頼まれたのも、聞こえるはずのない足音に恐怖していることも説明が付く。

いや……。
違う…………。

お爺ちゃんは一昨年に亡くなっている。
仏間に飾られているのはお爺ちゃんの写真だ。
今朝も位牌に手を合わせたところだ。

ならば……、何故留守番を頼まれた?
どうして足音が聞こえる?

ああ、そうか。
これは自分の足音なのだ。

僕の背後から僕が歩いて来ているのだ。
それならば納得がいく。

僕は僕の足音に怯えていたのだ。



いや、それも違う。
僕には足が無い。
それどころか、この世での生もない。
僕は死んだのだ。ずいぶんと前の話だ。
お爺ちゃんが死んだのと今との間のどこかで。

だから足の無い幽霊の僕が、足音を立てられるはずがない。

トン・トン・トン。

ノックの音が聞こえる。

ノック。

誰かがドアを叩く音。
もちろん、自分で叩いているのではない。
僕にはドアに触れることが出来ないのだから。

だとしたらお婆ちゃんだろうか?

お婆ちゃん。

僕がここに居るの……。
気づいてくれているの?

お婆ちゃんも、僕の居る世界に来てくれるの?

お婆ちゃん。お婆ちゃん。

「良成……。そこにいるのかい?」

お婆ちゃん。僕はここだよ。

「それとも、お爺さんなのかねえ」

違うよ。お婆ちゃん、お爺ちゃんは居ないよ。
お爺ちゃんは死んだんだ。お爺ちゃんは天国に行ったんだ。
でも僕は心残りがあって天国には行けなかった。

だから、寂しいんだ。
抱きしめてよ、お婆ちゃん。

一緒に行こうよ、お婆ちゃん。

「良成……、やっぱり良成かい?」

「お婆ちゃん、僕が、僕が見えるの?」

「ああ、見える……見える。
見えるよ、聞こえるよ」

「お婆ちゃん、僕に、足はある?」

「足? 足は無いねえ。足なんて飾りだからねえ」

「お婆ちゃん、僕に腕はついている?
頭はある?」

「腕は片っぽだけだねえ。
片っぽでも、問題ないねえ。
頭なんてないさ。
たかがメインカメラをやられただけだろう?」

「お婆ちゃん? 何を言ってるの?」

「お前は嘘をついている。
さっさと家に帰りなさい」

かつれつきっか「4、3、2、1、ゼロー!!」

「ああ、まだ僕にも帰るところがあったんだ……」

? fin ?


garyoさんのコメント
ありがとうございます。 GWで誰も居ない会社の寮で夜中に一人タバコを吸っていると何か足音がしないか不気味になります。 前半の謎の部分が面白くて誰の足音だろうと思いました。

3 ● sokyo
●250ポイント

『就活中の電車内で見た怖い夢の話』

就活中でなにが一番怖いって、なんつっても自分自身だ。

いやもちろん面接はビビるよ?
けど、最近は下手するとネットですぐ拡散するし、面接官のほうだって
圧迫面接になんないようにとか気を遣ってるわけですよ。
おっさんたちがんばってると思うよ。

実際恐れてたよりも恐怖だった面接なんて俺は経験ないし、
要は予想のほうがずっと怖いってこと。

あとまぁ、怖いといえば財布の中身だけど、
増税前に吉野家に行きまくってクーポンめっちゃもらって、
金券ショップで買ったジェフグルメカード(おつり出る)とコラボって破格で牛丼食ってた話する?

あ、それとも3年からキャンパス移ったのを言い訳に、
すげえ遠回りの経路で通学するていで親から多額の定期代を巻き上げたときの話する?

需要ないっしょ。知ってる。

いやまぁだからそんなわけで、恐怖なのは自分自身よ。
前にすげえ遠くの会社に面接に行ったことがあるんだけど、それが片道3時間とか余裕でかかるわけ。
当然家出るの早くなるじゃん? もう、完全に通勤時間なわけですよ。
通勤ヤバい。モッシュとかヤバい。
なんだけど、地下鉄がなんかの電車と繋がって地上に出るあたりから、電車が急に空くわけよ。
座れるわけよ。
まぁ座るよね。
まぁ寝るよね。
まぁ夢の世界よね。



夢の中で俺、なんか面接受けてんだわ。
遅刻気味でたどりつくと、そこにいたのは絵に描いたようなバーコードハゲなのよ。昭和かよ。
でも、こっちだって内定欲しくてわざわざ6時起きでスーツ着てここ来てるわけだし、
いい顔してやるわけよ。
名前とか出身校とか言うわけ。世間話するわけ。

なんだけどどうしてもあのまばゆい頭上に目がいくわけ。
美しいものと醜いものに目が行くのは人として自然なことじゃん? 本能じゃん?
で、ちらちら見てたら、あっちもなんか異変に気づくのな。で、
「眩しいですか?」
とかって言ってくんの。
で、立ち上がって、背後のブラインドを下ろそうとするわけ。
ブラインドかー違うんだよなぁ惜しいんだよなぁ。
でハゲが後ろ向くじゃん? 後頭部がまた、光り輝くわけですよ。
まだ10時ですよ? 午前中ですよ?
一般的な成人男性なら22時を過ぎたぐらいでやっと見られる光沢に、
午前中からもう到達しているわけよ。
もうね、完全にホワイトホールな。
なんだけど、俺が笑いをこらえてたら、突如ハゲが振り向くのさ。
目が合うのさ。

もう、恐怖な。ハゲは笑ってないの。
相変わらずトークは進んでいるのに、
俺はなにしゃべってんだか、自分でもよくわかんなくなってるわけ。
もはや就活とかじゃないから。これはもう生きるか死ぬかだから。

ヤベぇなと思って、ハンカチ(就活必須アイテムな)で額の汗を拭くじゃん?
そうすると、なんか視界にどさっと黒い何かが落ちんのよ。鳥の巣みたいなの。
何かと思ったら、髪の毛のなのね、自分の。
額から前髪が落ちていくのな。俺がなぞったとこだけ、バリカンかよ。

ぞっとしたよね。
鳥肌が立って、あいつのほうを見たら、なんか笑ってんの。
ブラインドが下りて部屋が急に暗くなって、もう不気味なシチュエーションでさ。
光るのはあいつの頭上だけ。
で、ハゲが俺を指差して叫ぶのな。
「お前の頭もだ!」
って。

は? って思うじゃん?

俺慌てて、頭に手をやるじゃん?

落ち着け。
本来、てか、一般論な。
ほら、髪の毛って、触ると普通は音するじゃん。がさがさ、みたいな。
あれがねえの。
頭に手をやるじゃん? べたっ、っていうのな。
脂ぎった肌が、べたべたくっつく音な。

髪の毛、ないわけ。

ハゲのこと笑ってたはずの俺がハゲになってんの。

気づくと俺は叫んだよね。

「俺のほうもかよぉぉぉぉぉ!」



で、目を覚ましたよね。
平日の電車の中でさ。
クーラー効いてるのに、俺めっちゃ汗かいてんの。
汗だくの後頭部が、窓ガラスに当たってべたべたしてんのな。
さっきの感覚はこれだったんだわ。
で、ポケットからハンカチ取り出すじゃん。
恐る恐る額に手をやるじゃん。
髪の毛、あるわけ。しかも抜けないの。

もう、歓喜したよ俺は。

髪があるって素晴らしいって、こんなに思ったことないよ。
頭上にも手をやったよ。髪あったよ。
ヤバいね。
フサフサってほんと素晴らしいよね。

となりに座ってたニイちゃんとか、前に立ってたJKとかと、
このフサフサの喜びを分かち合いたいって俺は強く願ったよ。

生きることは生えることだ。
思わず心の中で熱唱したからね。310

「生えている」の響きだけで生きていける気がしたよ?。

全人類に告ぐ! フサフサは最高だ!
もう一度告ぐ! フサフサは最高だ!



俺はありあまる毛髪の下で、窓の外を見ながら多幸感に包まれていたよね。
下りるはずの駅を、電車が発車していくのを見たよね。

で、ある意味ほんとに怖い話はこっからだけど、聞く?


garyoさんのコメント
ありがとうございます。文章も読みやすく引き込まれました。 えっと、そこで引きますか。最後で引きが入るとは思いませんでした。

4 ● たけじん
●250ポイント

私の住んでいる町には、隣町との境に切り立った崖がある。うっそうとした森に覆われた崖には、細長い洞窟が穿たれていた。その洞窟は、崖の反対側に通じていて、隣町の駅からの近道だった。洞窟は、日が昇っている間は町の人が良く使っていた。でも、夜になると誰も通らなかった。

この町に越してきたとき、隣の部屋に女性が住んでいた。引っ越しのあいさつの時に、色白の美人だったからときめいたのを覚えている。

ある冬の雨の夕方だった。私が部屋に入ろうとすると、隣の部屋の前に彼女が立っていることに気が付いた。
「どうしたんです?」
「か、鍵を忘れてしまって。届けてもらってるところなんですけど」
「おや、それは大変ですね」
ちょっと何かを期待した私が、そこにいたのは確かだった。
「よかったら、私の部屋でお待ちになりませんか?隣ですし、様子もわかりますよ」
一瞬躊躇した彼女は、頷いて
「では、お言葉に甘えて、お邪魔させていただきます」
こんな時のために、部屋はきれいにしておくものだと痛感した。もちろん、私の部屋はきれいなのだが。
お茶を入れていると、しきりと彼女は窓から見える森を気にしている。
「夜になりますね」
私がお茶を置くと、彼女はこう言った。
「怖くないですか?」
唐突な話で戸惑いながら、私は反対に尋ねた。
「何がですか?」
再び彼女は顔だけ後ろを振り向きながら、こう言った。
「洞窟です」
私は良くわからないので、素直に聞いてみた。
「洞窟が怖いんですか?」
彼女は私の方へ向き直り、少し目を大きく開けて私を見つめた。
「ご存じないんですか。あの洞窟を」
「いえ、見えてますから」
「そうではなくて、なぜ夜は誰も通らないのか、です」
私は、そんなことは考えたこともなかったので、
「暗くなるからじゃないんですか?通ったことないですが、夜は」
「よかった。通ってないんですね。」
「通ってませんが、何があるんですか?」
彼女は窓を気にしながらこう言った。
「あの洞窟は、雨の夜に、あの世に通じるって言われてるんです。」
「あの世って」
「こんな雨の夜に、あの洞窟を通ると、あの世からやってきた霊に憑りつかれると」
「え、憑りつかれるって」
「この世の物とは思えない物に、化けてしまうんですって」
私はにわかには信じられなかった。

雨はだんだん激しくなっていく。

彼女の携帯が鳴った。
「はい、そうです。崖の反対側です。え、ちょっと待っ」
「どうしたんですか?」
電話を持って震えている彼女に、なにか恐ろしいことが起こったのは明らかだった。
「鍵を、届けてくれるって友達、洞窟を通って来るって」
「え」
「もう、入っちゃっていて、電波が切れて」
真っ青な彼女は、電話を見つめている。
私は、窓越しに森の奥の崖にに黒く開いている洞窟の出口を睨み付けた。
「ま、あの世に通じない日もあるんじゃないですか」
「だといいんですけど」

窓の外は、雨が激しくなっていく。

さっきの電話から、すでに一時間以上経っている。昼間洞窟を抜けるなら、15分でここに着く。
「時間かかり過ぎだわ」
「雨だし。迷ってるかもしれないですよね」

雷が鳴り、雨音はうるさいくらいになっていく。

彼女は、上の空で私の話を半分も聞いていない。
「音、しませんか?なにか変な」
「え」
私は耳を澄ませた。雨脚が激しく、窓や屋根を雨粒が打つ音しか聞こえない。
「ほら、ペチャとかプチャとか」
「水滴が落ちてるんじゃないでしょうか」
「もっと、重い物が濡れて」
彼女は、窓際に近づいた。顔を窓に付けて、左側の様子をうかがう。
「私の部屋のベランダの方から」
私も、窓に近づく。彼女の隣から左側を覗く。耳を窓に付けると、確かに雨音の間にペチャという音が聞こえてくる。
強い雨で窓の向こうは歪んでいる。歪んだ画の中、隣のベランダの観葉植物が揺れているのが見える。
「あ」
彼女が小さくささやき、青白い顔で観葉植物を指差している。
稲妻が光り、観葉植物を照らす。
観葉植物に見えていたのは、ありえない方向に顔がねじれた人間だった。ボロボロの服は雨を含んでおり、ねじまがった手が、隣の部屋の窓を叩いていた。
その手が窓に当たるたびに、
ペチャ
と、鈍い音を立てている。
「こ、これは」
私は、窓を開け激しい雨の中に顔を出した。
ベランダの異形の物は、こちらを向き、大きく手を振った。
雷が大きく轟くのと、何かが私の顔に張り付くのが一緒だった。
顔に張り付いた何かは、雨で見る間に溶け、ベランダに何かが落ちた。
気が付くと、隣のベランダの異形の者は消えていた。
私は窓から乗り出して、ベランダに落ちていたものを拾うと、部屋に体を戻した。


「だ、大丈夫ですか?」
心配そうに尋ねる彼女は、なぜだか赤い顔をしていた。
「何かいましたか?」
私は手にしたものを確認して、こういった。
「あの世から、鍵が届けられましたよ」
彼女の手に、スワロフスキーでデコられたキーホルダーを置いた。
「怖くありませんでした?幽霊ですよね、あれ」
「そうかも知れません。」

私は、タオルで頭を拭きながらコーヒーを入れた。
「あの。」
彼女の前にコーヒーを置き、私は尋ねた。
「目的は何ですか?」
固まった彼女に、ゆっくり私は話しかけた。
「あの世からの死者の憑依と、鍵を届ける話と、私の帰ってくる時間に合わせるのと、手の込んだ幽霊。あれはどなたですか。この雨、そんなに激しくなるとは思ってなかったんでしょう?目的は何です?お隣とは言え、それほど親しい間柄ではないですよね。」
彼女は、うつむき加減で黙っている。ふと見ると、ケイタイをいじっているようだ。

トントン

ドアがノックされている。覗いてみると、彼女と同い年くらいの女性だった。
「どなたです?」
「あの、隣の山本の友人です」
良く見なくても、彼女の髪の毛が濡れているのがわかった。
「あ、開けます開けます」
急いでドアを開け、友人をリビングに入れ、大量のバスタオルをあてがった。
「すみませんでした」
急に、友人が頭を下げ、隣の彼女もその友人に促されて頭を下げている。
「どうしたんです?」
隣の彼女は赤い顔をしている。友人が早口で話し出した。
「あの、この、ユミ、いや山本ユミがですね、あなたを好きになったらしいんですよ」
唐突な話で、私はコーヒーを吹き出しそうになった。
「え?なんですって?」
隣のユミという彼女は、うつむいている。彼女の友人は続ける。
「普通に好きって言うのが恥ずかしくてできないって、私、相談されて。」
友人は私を睨む。
「いつの間にか、オカルトで告白することになっちゃったんですよ」


「な、なんで」
「この子、オカルト大好きで、あなたがオカルト好きか、オカルトに耐えられるかも知りたいって。だったら、幽霊のでるようなところで、一緒にいてみたいって。もう、バカバカしいんですけど」
彼女は、顔を上げで、小さな声で言った。
「あの、私、変ですけど」
「なんだか、そのようですね」
「つきあってくれますか?」
私は、意地悪をしてやろうかとも思ったが、友人の頑張りと、彼女の美人度に負けてしまった。
「いいですよ。よろこんで。」

ほっとした顔の二人に、私はニヤリと微笑んで、こう付け足した。

「一度、この世と呼ばれる世界の人たちと付き合ってみたかったんですよ。」


garyoさんのコメント
ありがとうございます。「オカルトで告白」ここで吹いてしまいました。 最後の行もヒヤッとしました。
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