序:風土と年代
小むずかしく聞かせるため、漢字コンプレックスが生みだした並立語。
1970年代の漫才ブーム前後に出現、1980年代の漫才ブームで定着した
とみられる。1990年代に絶滅するかに見えたが、わずかに残存する。
誰が最初に云ったか、という推論では、関西の気配が濃厚である。
古くは、エンタツ・アチャコの可能性もある。
おそらく、第一の候補は“しゃべくり漫才”の横山やすしであろう。
東京と大阪の芸人は、ビート・たけしと横山やすしが対照的である。
たけしには、ジキルとハイドのような二面性がある(北野 武 を別称)。
やすしには、表裏の見さかいがなく一本調子を“粋”だと信じている。
ここでは、ビート・たけしではない、という理由をあげておく。
彼は、当時の漫才師としては例外的な高学歴(明治大学中退)である。
西の、桂 米朝とならぶ読書家だから“独断と偏見”とは卑下しない。
読書家の習性として、かつて読んだことのない熟語は、むしろ避ける。
聞きかじった熟語は、辞書で確かめてからでないと使いたがらない。
彼らが好むのは、使い古された四字熟語のダジャレである。
破:偶然の創唱
横山やすしが創唱したとすれば、つぎの状況が空想される。
酒場か競輪場で、誰かが云ったのを小耳にはさんだのではないか。
それはたぶん、若い女性だったのではないか。
小むずかしい事を云って、やすしに面白いと思わせたのである。
「おまえ、つぎのレースどうするねん?」「やっぱし3-6やわさ」
「誰ぞに騙されたんちゃうか」「ウチの独断と偏見で決めたんや」
レースの結果はともかく、やすしが何気なく高座でブチかましたら、
ドッと受けたのではないか。もちろん台本にないアドリブである。
西川きよしが、受けそこなって絶句しても、とにかく受けたのだ。
「女ちょなもんは、やっぱし男には勝てへんで」「ほんまか?」
「男女平等とは云うけど、女男平等とは云わんやろ」「誰が云うかいな」
「わいの、独断と偏見やけどな」「何じゃそれ?」(意味不明)
これを聞いたアナウンサーが、アルバイトに司会を引きうけた結婚式
でやってみると、なぜか受けた。何だか分らないまま他でもやった。
ついには、誰もが分らないまま、一対の慣用句となってしまったのだ。
急:源流と支流
第二の候補は“ぼやき漫才”の人生幸朗(&生恵幸子)である。
「また、いちゃもんかいな」「えぇかげんにせぇよ、わしは許さん!」
「お巡りさん来はるで」「あやまったらえぇんやろ」
「不肖わたくしめの独断と偏見によりまして、いささか昨今の歌謡曲に、
苦言を呈する次第であります。♪着ては貰えぬセーターを、涙こらえて
編んでます。そんなもん編んで、どないすねん。責任者呼んで来い!」
第三の候補は、十八歳の島田紳助が電撃的に弟子入りした“天才漫才”
島田洋七である。家なし、学歴なし、屈託なし、何を云っても虚々実々
だから、聞きかじりの“独断と偏見”創唱者たる資格は十分にある。
第四の候補は“ツッパリ漫才”の島田神助である。
「あのな、おれの独断と偏見やけど、ここだけの話やで」
「いまのトーク、残念やけどディレクターの独断と偏見によりカット!」
── 《試論“独断と偏見”考》(未完)
私のせいにするには独断だけでは弱いのでしょう。
1.独断
自分の思い込みで、公正を欠いた判断
2.独断+偏見
自分の思い込みで、公正を欠き客観的根拠のない判断
Yahoo辞書検索
=====================================================
独断:
1 自分ひとりで物事を決断すること。また、その決断。「社長の―」「取引の開始を―する」
2 自分の思い込みだけで、公正を欠いた判断をすること。また、その判断。「結論が―に陥る」「―と偏見」
http://dic.yahoo.co.jp/bin/dsearch?p=%C6%C8%C3%C7&stype=0&dtype=...
=====================================================
偏見:
3. かたよった見方・考え方。ある集団や個人に対して、客観的な根拠なしにいだかれる非好意的な先入観や判断。「―を持つ」「人種的―」
http://dic.yahoo.co.jp/bin/dsearch?p=%CA%D0%B8%AB&stype=0&dtype=...
回答ありがとうございます。
上岡龍太郎さんが使ったのではないですか?
独断で決めるのは、たいていのものはそうですが、偏見かどうかは主観のものですので、後で文句を言いたい人がいるのを承知の上で、ということを前置きしているわけですね
上岡さんですか! そんなに最近?
序:風土と年代
小むずかしく聞かせるため、漢字コンプレックスが生みだした並立語。
1970年代の漫才ブーム前後に出現、1980年代の漫才ブームで定着した
とみられる。1990年代に絶滅するかに見えたが、わずかに残存する。
誰が最初に云ったか、という推論では、関西の気配が濃厚である。
古くは、エンタツ・アチャコの可能性もある。
おそらく、第一の候補は“しゃべくり漫才”の横山やすしであろう。
東京と大阪の芸人は、ビート・たけしと横山やすしが対照的である。
たけしには、ジキルとハイドのような二面性がある(北野 武 を別称)。
やすしには、表裏の見さかいがなく一本調子を“粋”だと信じている。
ここでは、ビート・たけしではない、という理由をあげておく。
彼は、当時の漫才師としては例外的な高学歴(明治大学中退)である。
西の、桂 米朝とならぶ読書家だから“独断と偏見”とは卑下しない。
読書家の習性として、かつて読んだことのない熟語は、むしろ避ける。
聞きかじった熟語は、辞書で確かめてからでないと使いたがらない。
彼らが好むのは、使い古された四字熟語のダジャレである。
破:偶然の創唱
横山やすしが創唱したとすれば、つぎの状況が空想される。
酒場か競輪場で、誰かが云ったのを小耳にはさんだのではないか。
それはたぶん、若い女性だったのではないか。
小むずかしい事を云って、やすしに面白いと思わせたのである。
「おまえ、つぎのレースどうするねん?」「やっぱし3-6やわさ」
「誰ぞに騙されたんちゃうか」「ウチの独断と偏見で決めたんや」
レースの結果はともかく、やすしが何気なく高座でブチかましたら、
ドッと受けたのではないか。もちろん台本にないアドリブである。
西川きよしが、受けそこなって絶句しても、とにかく受けたのだ。
「女ちょなもんは、やっぱし男には勝てへんで」「ほんまか?」
「男女平等とは云うけど、女男平等とは云わんやろ」「誰が云うかいな」
「わいの、独断と偏見やけどな」「何じゃそれ?」(意味不明)
これを聞いたアナウンサーが、アルバイトに司会を引きうけた結婚式
でやってみると、なぜか受けた。何だか分らないまま他でもやった。
ついには、誰もが分らないまま、一対の慣用句となってしまったのだ。
急:源流と支流
第二の候補は“ぼやき漫才”の人生幸朗(&生恵幸子)である。
「また、いちゃもんかいな」「えぇかげんにせぇよ、わしは許さん!」
「お巡りさん来はるで」「あやまったらえぇんやろ」
「不肖わたくしめの独断と偏見によりまして、いささか昨今の歌謡曲に、
苦言を呈する次第であります。♪着ては貰えぬセーターを、涙こらえて
編んでます。そんなもん編んで、どないすねん。責任者呼んで来い!」
第三の候補は、十八歳の島田紳助が電撃的に弟子入りした“天才漫才”
島田洋七である。家なし、学歴なし、屈託なし、何を云っても虚々実々
だから、聞きかじりの“独断と偏見”創唱者たる資格は十分にある。
第四の候補は“ツッパリ漫才”の島田神助である。
「あのな、おれの独断と偏見やけど、ここだけの話やで」
「いまのトーク、残念やけどディレクターの独断と偏見によりカット!」
── 《試論“独断と偏見”考》(未完)
充実した考察ありがとうございます。お笑いルーツというのはあるような気がします。『絶滅するかに見えたが、わずかに残存する』とありますが、そうではなく完全に定着した『慣用句』として一般に普及してしまっていますね。使い古された言い回しであり、頻繁に耳にするのはとても気持ちが悪いと考えていましたが、お笑いルーツの『流行り言葉』として考えれば許せる気がしてきました。どうもありがとうございました。
充実した考察ありがとうございます。お笑いルーツというのはあるような気がします。『絶滅するかに見えたが、わずかに残存する』とありますが、そうではなく完全に定着した『慣用句』として一般に普及してしまっていますね。使い古された言い回しであり、頻繁に耳にするのはとても気持ちが悪いと考えていましたが、お笑いルーツの『流行り言葉』として考えれば許せる気がしてきました。どうもありがとうございました。