注意点:
(1)小説風ですので、多少は脚色されても構いませんが、完全フィクションはご遠慮ください。
(2)何回か回数に分けて回答されても構いません。
(3)別サイトにエピソードを掲載する、あるいは別人が書いたURLを載せないでください。
2番のように、連続小説にすることによって解決してください。
(4)男女問いません。
『淡き香りのロンド』
「今日はペース速いね。大丈夫」
「実は、ショックなことがあったんですよ」
その人の笑顔は儚げだった。
学生時代のコンパの席で、宴席の喧騒から閉じこもるように、彼女が、恋人にふられたという話を聴いた。
そんなことになったのは、僕の風貌が、同年齢の皆より、落ち着いて見えたからかもしれないし、酒が飲めないから、騒ぎ立てずに話を聴いてくれる相手に思われたのかもしれない。
だが、恋愛というものにあまり免疫の無かったその頃の僕には、彼女の赤く色づいた頬と、カクテルの、淡く甘い香りは、刺激が強すぎた。
弱みに付け込む、という発想が無かったわけじゃない。だから、声をかけたり、食事を誘ったり、病気のお見舞いというアプローチは、あくまで、友人として……のつもりだった。
けれどある夏の夜、上弦の月が、薄笑いを浮かべている夜。
僕は、口にしなければよかったことを、告げた。彼女は、困った様子で、それでも言ってくれた。
「今は、そういうこと、考えられないから……」
そりゃそうだ。始めから知っていたのに。彼女から直接聴いていたのに。
僕はまだ若かった。あのときの細い月と同じように。
そしてまた、友人との宴。
「お前、酒飲めたっけ?」
「おう! ガンガンいっちゃうよ!」
今日だけは、今夜だけは、酒精と踊り明かしたい。ロンドで踊り続けたい。
彼女の手はとれないけれど。
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あとがき
オチらしいオチにならなかったです。うーん。
ふられて自棄酒飲んだ、いい思い出です。
校舎と校舎をつなぐ渡り廊下を歩いていると、やわらかな風に襲われました。
中庭の桜の花びらが風に押されて、渡り廊下に吸い込まれる、そんな季節の記憶です。
しばらく桜をながめてから校舎に入り、二階に上がる階段に足をかけたとき、頭上から声をかけられました。
頭を上げると、クラスメイトの女の子が立っていました。背がスラリと高く、肌の白い女の子で、かわいいという形容詞よりも、きれいということばがにあう女の子でした。思春期のぼくにはすこし近寄りがたい存在でした。
「きれいですよ。中庭の桜が」
「そう、ありがとう」
彼女と目があうと、さっきまで見ていた花びらと、彼女の肌が頭の中で溶けあい、ふしぎな、なんとも言えない色になりました。
すれちがうときにながめた彼女の横顔は、たいへんうつくしかった。桜の季節によく似合っていた。
お久しぶりです、bijyouさん。
うーむ。もう少しエピソードが欲しいです。彼女とはどうなったのか、彼女との初対面など、数回通してお話いただくと、より臨場感があったかもしれません。
ビジュアル的にはスッキリしていていいと思います。
もし宜しければ、リベンジ回答を書き込んでください。お待ちしています。
窓から見える校庭には木枯らしが吹いていた。
私は急に寒気を感じてセーラー服の上からコートを羽織った。
教室の鍵を閉めて誰も入ってこないようにすると、石油ストーブの前に机と椅子を引きずりながら運んで、そこで顔を伏せた。
全校集会で体育館へ行っていたらもっと寒かったんだろうなと思うと、サボって良かったのかもしれない。
額を触るとなんとなく熱っぽくて、まぶたが重い。
体がだるかったせいもあって、私はそのまま居眠りした。
どれくらい寝ていたか分からないけれど、なんとなく、人の気配がした。
ゆっくり目を開けてみると、見たことの無い男子が私を見上げて、机の横でしゃがみこんでいた。
「だ・・・誰!?」
鍵をかけた教室に見知らぬ男子がいる。
驚いて思わず言った。
男子は上級生の生活委員の部長で、私のクラスメートの生活委員を探しに来たのだと言った。
「アイツどこでサボってんだか」
「それよりもどうやって教室に入ってきたんですか?」
上級生はにやっと笑って、後ろのドアを指差した。
「鍵は掛かってたみたいだけどドアずれてて開いちゃったよ」
「すいません」
上級生ということもあって、私は訳も分からず謝った。
上級生はずっとしゃがんだまま私を見上げていた。
部活には男子の先輩はいないし、知り合いも居ないから、男子の先輩に緊張してなんとなく気まずかった。
熱でぼーっとしていたけれど、何か言わなきゃと思っていたら
「あのさあ、好きな奴とか、いる?」
「・・・・・」
「いるの?いないの?」
その時、校内にチャイムが鳴り響いた。
「体育館戻らないと」
上級生はそういって教室から出て行った。
あとで、その上級生の名前を知った。
その上級生はマラソン大会で3位になって、春の体育祭で別のチームの応援団の副団長をしていた。
クラスメートの女の子達が、「一番じゃないけどかっこいい」と大騒ぎしていた。
割ともてる先輩だったのに、私は教室で話すまで全然知らなかった。
「好きな奴とか、いる?」って聞かれたときのことを思い出すと、ものすごくドキドキした。
これは、彼の気持ちというか、本心はどうだったんですかねー。やっぱり興味がないとそんなこと聞かないわけで・・・・・・。
『じゃんけん』
あほらしいと思えることも、あの頃の俺には大切だった。
中等部校舎の廊下で、小等部から一緒の、あの娘が向こうから歩いてくる。目があう。どちらからともなく片手を揚げる。
「じゃんけん、ぽん」
相手がチョキ、こっちがグー。
「勝ち」
と言いながら、握った拳をそのまま掲げる。
相手は、声では返さず、桃色の舌を突き出して、振り返らずに去っていく。
「何してんの、お前たち」
彼女に気がつくまで、一緒に立ち話していたやつが、俺に訊く。
「六十四戦、二十九勝、三十二敗、三引き分け」
と、戦績を応える。
「くだらねえ~」
「いいんだよ、因縁の勝負なんだ」
「引き分けが少なすぎないか」
「決着がつくまでやるもん」
「なるほど。それにしたって、くだらねえ」
「うっせ」
しょうがなかった。幼稚な俺は、女の子と話すなんて、気恥ずかしくて出来なかったから。
今思えばあほらしい、顔をあわせたときだけの、じゃんけんコミュニケーション。でもだからこそ、大切だったと思える。
殆ど理由なんてどうでもいいんですよね。なんか、情景が浮かんでくるようで、甘酸っぱいですね。
※そろそろ長編がこないかなぁ……皆さんお願いします!
それは夢のような1週間だった。おりしも錦秋、空はあくまで澄みわたり、風は透きとおって、存在するすべての景色と景物の輪郭を鮮明にしている。通り過ぎる道端の草が金色にさざめいている。空は高く澄みわたり、上空はるかかなたに、さっと一筆で描いたような雲が白い。
日程の半分を消化したその日は、宇治方面の寺院を訪ねる予定が組まれていた。午前に禅定寺、午後は平等院を訪ねる。
翠子は、この旅行に気がすすまなかった。同級生は、ひ弱な体格の男子が多く、気の会う女友達もいない。皆、言葉とうらはらに野心を隠しているような気がしてならず、そうでない学生もオタクのように思えてならない。唯一同じアトリエに属する唐沢には気が許せるが、体格のわりに気が弱そうに見え、しかも将来は研究者になると、指導教官にべったり張り付いている。授業の大半を占める実習科目で、翠子だけ、単独で他科に籍をおいているせいもあって共通の話題が少ないせいがあったが、小さな群れから離れてしまった存在であった。
小日向がこの研修旅行に参加しているのは、宿舎についてはじめて知ったことだった。卒業して大学院の浪人をしているのに、なぜこんなところにいるのかと最初いぶかった。それとほぼ同時に、この退屈だと思っていた研修のあいだ、懐かしい人といっしょにいられるという喜びが湧き上がってきた。
昨年の春、新入性歓迎のコンパの二次会、大学の外の居酒屋の個室に入ろうとした瞬間、翠子の目は、奥の真正面に座った人物に釘付けになった。その場だけが明るく輝いているように見えた。小日向の周りをまるでオーラが取り囲んでいるようだった。最初の出会いは、それほどに衝撃的だった。あまり多くは話さないが、話す内容は気さくであり、こんな下半身の話までするのかと驚かされたことがある。内容は、痒い病気になった程度のものだったが、事実を淡々と話し、少し恥ずかしそうにするのも新鮮だった。トイレの小水の音を、流水音で隠すのが当たり前になっているような、そんな高校時代を送ってきた翠子にとって、平気で自分の弱点を話してしまう小日向はいつしか注目の存在となっていった。しかし、学生間のうわさでは、一年上の朝倉という学生と付き合っているという。朝倉は、均整は取れているが、特に目をひくところもない女子学生である。自分が望むものは手に入れるという意志の強さがあり、将来への計画を着実に実行するタイプで、翠子には高飛車にみえた。必要がないことは話さず、女同士で徒党を組まないことを是としている様子があり、話しかけることさえ躊躇された。
ひそかな思慕がありながらも、小日向の美しさと、うわさの朝倉の関係は、翠子を萎縮させるのに十分だった。
続きます。
おお! 力作ありがとうございます。
続きが楽しみです。
研修旅行の集合時間は午後5時、学生と参加者がそれぞれに別の交通手段であつまってくる。一部屋8人のカイコ棚のベッドの場所決めをしたり、施設がどのような間取りになっているのかを探検したりするものもいる。荷物整理が終わり、新しく到着した者に、どんな交通手段を使ってきたかと話し込んだりしている。先週、教室で顔をあわせていたはずなのに、はじめて同級生と2週間の寝起きをともにする合宿のような生活に、程度の差はあれ、浮き足立っている。特に、現役合格者組はにぎやかで、笑い声がやまないほどはしゃいでいる。
夜の帳の訪れとともに一通りの入所の儀式が終わり、邂逅の騒ぎも落ち着きをとりもどしてきていた。地下の食堂に集合し、厨房設備の検分や、食事当番を決める。日曜以外の食事は、当番制の自炊である。
厨房のざわめきが一瞬静かになり、妙な雰囲気に翠子が気づくと、女子学生の目がある方向に集中している。その沈黙は、わずかな時間だった。
「どうしてこんなところにいるんですか。」
それとなくグループができて談笑してはいるが、女子学生の意識は話しかけている自分に集中していることが、翠子にはいたいほどに感じられる。
「あぁ・・・」
はにかむように小日向が笑う。その後から、ひょっこり大沢が姿を見せた。
「大沢さんも、来たんですか。」
「OBは原則として参加自由って、知らないの。」
「専攻の人が来るのは知っていたけど、古美術を専攻していましたっけ。」
「いいものを見るということは、こやしになるんです。こんな機会は利用しなくてはね。」
そう話し、傍らにいた大沢とうなずきあっている。狐につままれたような気分になりながらも、翠子は、二人の存在に安らぎを見出しはじめていた。
小日向が、大学に訪れるのは、月に1回か2回、調べ物をするついでに必ず実習室に顔を出す。もっぱら穏やか性格の大沢と話しをするのが目的のようだった。それを、傍らで聞いていて、時々口を挟む。翠子の質問に、じっくり考えて返事をするのが、二人の共通点ではあるが、親友というわけでもないらしい。ただ黙々と粘土を触ったり、イタリア人の彫刻家の話をしたりするだけで、なんとなく聞いてはいるが内容はさっぱり分からない。どうしてこんな頼りなさそうな人と話しが会うのかと、翠子は不思議な気持ちになる。
翌日から、修学旅行でまわるような名刹に加え、観光客は少ないが好事家好みの寺院を巡りはじめる。メンバーはおおむね三通りのグループに分かれる。必修科目として参加する者たち、論文を書くことを前提とするグループ、その他である。小日向と大沢は、その他のグループにはいり、二人だけ、つかず離れず行動している。翠子は、もともとは最初のグループだが、同級生よりなじみの深い、小日向たちとくっついて歩くことを自然に選択していた。時々、少し前に出て、論文グループに入り込むこともあるが、それは、小日向への思慕を悟られまいとする計算である。秋明菊や紫式部を見ながらも、心は小日向の背を追い、早い歩調にあわせようとしてしまう。
ありがとうございます。
続きをお待ちしています。
あるある、っていう思い出ですね。
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