昨日、安倍総理がきわめて斬新かつハイパーな見解(http://www.asahi.com/politics/update/0105/007.html)を表明されました。
それはともかく、この制度のデメリットについては方々で耳にいたしますが、導入によるメリットやポジティブな展望についてはあまり聴く機会がないように思います。
というわけで、皆様、もしこの制度にメリット、あるいはポジティブな要素・可能性があるとしたら、それはどのようなものでしょうか?
1)ホワイトカラー正社員からの視点
2)企業側からの視点
3)日本政治および経済・景気動向からの視点
以上の三つの観点から、お答えください。
*長期的視点と短期的視点、双方から分析をしてくださると、とてもありがたいです。
*なるべく論拠となるソースを提示してください。
1)ホワイトカラー正社員からの視点
仕事が時間ではなくアウトプットで評価されるようになるため時間に縛られない働き方ができるというのが一番のメリットでしょう。子育てをしながら仕事をするとか、在宅勤務によって通勤時間を削減するなどといったことも可能になるかもしれません。
ただし、これには条件があって、勤務先のシステムや風土がそういった働き方にあっていないといけません。どこでも仕事ができるITシステムとか、出勤時間が少なくてもしっかりとコミュニケーションがとれる工夫とか、無駄な会議を削減するようなプロジェクトマネージメントなどといった働く人をバックアップする仕組みがなくては実行は難しいでしょう。
もっとも難しいのが、業務の価値や負荷の見積りと結果に対する評価です。ホワイトカラーの仕事の価値は労働時間ではないというのが、この考え方の基本にありますが、日本企業は戦略立案とか業務評価とかがとても苦手なので、理想の形にすることができる企業がどれだけあるかは疑問です。
2)企業側からの視点
企業側からすると魅力的な仕組みです。計画さえ立ててしまえば、その計画が良かろうが悪かろうが企業の損失は最小限に抑えられます。見積もりよりも大変な業務があったとしても、その辺は働く側が無給の労働によって調整してくれますから企業としては損害は出ません。
その逆の場合は、遊んでいる人(能力が高く規定の業務を終了した人)を見つけて、新たな業務を追加することも可能です。同じプロジェクトで業務多忙で苦しんでいる人がいる場合、それは自分の仕事ではないと切り捨てられる人は少ないでしょうし、プラスアルファの報酬を要求できるほどの強い立場の人もいないでしょう。
契約社員や請負の場合は、契約書によって業務の期間や報酬がはっきりしていますが、正社員の場合はプロジェクトの進行途中で計画自体の見直しがあったりすることが頻繁にあるでしょうから、業務負荷と報酬の関係は曖昧になりがちです。
3)日本政治および経済・景気動向からの視点
短期的には日本企業の国際競争力があがる方向にいくかもしれません。基本的に人件費を抑制することが可能な仕組みですから、企業の国際競争力はあがるでしょう。ただし、中長期的に見た場合、働く人が自分の評価に繋がらない業務したがらないとか、基礎研究のように結果がでるまで長期間かかる仕事が疎んじられるなどの懸念があり、企業力が低下する可能性も十分あるかと思います。
人材の流動性は以前よりも高まったので、ひとつの企業にしがみつく必要はないのかもしれませんが、一旦正社員の地位を失った場合、再び正社員になることは以前より難しくなっているので、将来に対する不安は大きくなっていると思いますので、個人消費にお金がまわらなくなる可能性は高いでしょう。
この法律が生産性や(特に)創造性を高める方向に働くのであれば、日本の経済も上向きになるかもしれませんが、生産性の向上には限界があり(コストはゼロ以下になりようがない)、創造性がアップされないのであれば日本の将来は暗いでしょう。
日本のホワイトカラーの生産性は世界的には低いと言われています。その原因が働く側にあるのかマネージメントにあるかによって、この施策がうまくいくかどうかが決まると思います。前者にあるのなら旨く行くでしょうし、後者にあるのならひどいことになると思います。
参考
ホワイトカラー生産性測定の課題
http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~fukuda/research/fukuda/2000_05.h...
ホワイトカラーの生産性測定は難しいと言う例です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%8...
リンク先の導入を肯定する意見の欄ですが、
(1)ホワイトカラー正社員からの視点
>・広い裁量が認められるホワイトカラーは、労働時間が長いことではなく、成果による評価・処遇を行うべき
>・労働者間の公平・意欲創出・生産性向上・企業の国際競争力の確保という効果がある
・一応前向きにとらえれば「今は労働時間でほとんど給料の評価をしているけど、この制度を入れれば成果主義の給与体系の浸透が進むんだよ。労働者の方々が時間じゃなくしっかりと成果を出しているのであればそっちの方が給与も上がるでしょ?
それに、今は単に仕事せずだらだら残っているようなやつにも残業代出しているけど、そういう奴らには残業代出さないんだよ。そっちの方が頑張っている方々は意欲が沸くでしょ?」
という意味合いを込めているような気が。
ま、実行されたところで400万まで範囲を含めると言っている今の状況では上がる人間は少数で格差は広がるだけでしょうし、ほとんどの人間が残業代がカットされ給料が下がるだけでむしろ次に挙げる企業側のメリットの方が大きいのでしょう。
(2)企業側からの視点
>企業側としては残業や休日出勤の割増賃金を払わなくて済み、試算では11兆5,851億円もの人件費が削減できるので競争が激化するグローバル資本主義化が進む未来においても競争力を維持することが可能になる。また達成すべき成果をもとに時間という概念を考えないで人員配置などの経営計画をたてやすくなるという点が挙げられる。残業の多寡による給与変動がなくなることも指摘できる。対象従業員の健康管理義務が無くなることも挙げられる。
・これは分かりやすい。合法的に残業代をカットして人件費削減。企業側はウハウハ。
(3)日本政治および経済・景気動向からの視点
(2)と絡んで企業が人件費をカットされることによって収益が上がる→法人税増収→政府・景気としてはウハウハ
ただ、今現在景気が上向いたと言っても我々労働者の給料が上がらず景気が上向いている実感がないのと一緒で経済白書や景気見通しには景気のいい言葉が並ぶのでしょうが、一般人には実感のもてない今の状態がずっと続くと考えればよいでしょう。
反論を述べたい制度のメリットについて述べるというのは難しいですね(笑)。
2,3については企業、政府、景気についてはいいことばかりだと思います。合法的に人件費がカットでき、収益が上向き、法人税が増え、景気は上向きと発表できるのですから。
1は言いたいことは分かるのですが、実現はできんだろう、と。現在の実態に即していない現場の状況を全く無視して理想論ばかり述べているから反論ばかり出てくるんでしょうね。
いやぁ、ご丁寧な回答、ありがとうございます!
>今は単に仕事せずだらだら残っているようなやつにも残業代出しているけど、そういう奴らには残業代出さないんだよ。そっちの方が頑張っている方々は意欲が沸くでしょ?
なるほど、確かにこういう考え方も出来ますね。
それにしても、やはり「斬り捨て」による業績・景気改善という意味合いが強いのですね。
日本における導入については、「ホワイトカラー」の定義、制度の適用条件がカギになるのかなという気がしました。年収400万円以上というのは、なかなか素敵な釣りですよね。
回答ありがとうございます。
とても参考になるサイトでしたが、少し質問の主旨とずれていますね。
1)ホワイトカラー正社員からの視点
仕事が時間ではなくアウトプットで評価されるようになるため時間に縛られない働き方ができるというのが一番のメリットでしょう。子育てをしながら仕事をするとか、在宅勤務によって通勤時間を削減するなどといったことも可能になるかもしれません。
ただし、これには条件があって、勤務先のシステムや風土がそういった働き方にあっていないといけません。どこでも仕事ができるITシステムとか、出勤時間が少なくてもしっかりとコミュニケーションがとれる工夫とか、無駄な会議を削減するようなプロジェクトマネージメントなどといった働く人をバックアップする仕組みがなくては実行は難しいでしょう。
もっとも難しいのが、業務の価値や負荷の見積りと結果に対する評価です。ホワイトカラーの仕事の価値は労働時間ではないというのが、この考え方の基本にありますが、日本企業は戦略立案とか業務評価とかがとても苦手なので、理想の形にすることができる企業がどれだけあるかは疑問です。
2)企業側からの視点
企業側からすると魅力的な仕組みです。計画さえ立ててしまえば、その計画が良かろうが悪かろうが企業の損失は最小限に抑えられます。見積もりよりも大変な業務があったとしても、その辺は働く側が無給の労働によって調整してくれますから企業としては損害は出ません。
その逆の場合は、遊んでいる人(能力が高く規定の業務を終了した人)を見つけて、新たな業務を追加することも可能です。同じプロジェクトで業務多忙で苦しんでいる人がいる場合、それは自分の仕事ではないと切り捨てられる人は少ないでしょうし、プラスアルファの報酬を要求できるほどの強い立場の人もいないでしょう。
契約社員や請負の場合は、契約書によって業務の期間や報酬がはっきりしていますが、正社員の場合はプロジェクトの進行途中で計画自体の見直しがあったりすることが頻繁にあるでしょうから、業務負荷と報酬の関係は曖昧になりがちです。
3)日本政治および経済・景気動向からの視点
短期的には日本企業の国際競争力があがる方向にいくかもしれません。基本的に人件費を抑制することが可能な仕組みですから、企業の国際競争力はあがるでしょう。ただし、中長期的に見た場合、働く人が自分の評価に繋がらない業務したがらないとか、基礎研究のように結果がでるまで長期間かかる仕事が疎んじられるなどの懸念があり、企業力が低下する可能性も十分あるかと思います。
人材の流動性は以前よりも高まったので、ひとつの企業にしがみつく必要はないのかもしれませんが、一旦正社員の地位を失った場合、再び正社員になることは以前より難しくなっているので、将来に対する不安は大きくなっていると思いますので、個人消費にお金がまわらなくなる可能性は高いでしょう。
この法律が生産性や(特に)創造性を高める方向に働くのであれば、日本の経済も上向きになるかもしれませんが、生産性の向上には限界があり(コストはゼロ以下になりようがない)、創造性がアップされないのであれば日本の将来は暗いでしょう。
日本のホワイトカラーの生産性は世界的には低いと言われています。その原因が働く側にあるのかマネージメントにあるかによって、この施策がうまくいくかどうかが決まると思います。前者にあるのなら旨く行くでしょうし、後者にあるのならひどいことになると思います。
参考
ホワイトカラー生産性測定の課題
http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~fukuda/research/fukuda/2000_05.h...
ホワイトカラーの生産性測定は難しいと言う例です。
素晴らしいです!
とても勉強になりました。ありがとうございます。
成果主義を生産的に活用できる制度や風土が造成されなくてはならないのですね。
おそらく、適切な人事考査の指標やシステムをいかにつくるかが最大の課題なのではないかなと思いました。
あと、あれですね。雇用の流動化が進む中で、こうした制度が導入されますと、ますますハイ・パフォーマーによって選ばれる企業とそうでない企業とに二極化されていくのかもしれませんね。
ありがとうございました。
素晴らしいです!
とても勉強になりました。ありがとうございます。
成果主義を生産的に活用できる制度や風土が造成されなくてはならないのですね。
おそらく、適切な人事考査の指標やシステムをいかにつくるかが最大の課題なのではないかなと思いました。
あと、あれですね。雇用の流動化が進む中で、こうした制度が導入されますと、ますますハイ・パフォーマーによって選ばれる企業とそうでない企業とに二極化されていくのかもしれませんね。
ありがとうございました。