最近、野党やマスコミが言うところの『強行採決』が起こると、野党が委員長解任決議案や、大臣不信任案を出すというお決まりのイベントが続いています。

さて、衆議院及び参議院で、各委員会の委員長は、委員から動議が提出された場合、これを必ずその場で諮らないといけないのでしょうか?
それとも保留したり、拒否したり、後で理事会で諮ったりとか出来るのでしょうか?
もし、動議をすぐにその場で諮らなければならないとすれば、それを持って委員長を解任するというのは、筋が通らないと思うのですが。

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  • 終了:2007/06/04 00:45:03
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倫理は法よりも上位にあるという言葉があります。国会ではまさにこの言葉通りに秩序が決定されています。

ルールを作り国民に秩序を強制させる立場の議員が、ルールに縛られなければ秩序を維持することができないなどという事態は、そもそも想定されていないのです。

国会議員は立法権を行使しルールを決定する国民の代表者であるため、国会議員はルールによって拘束されるまでも無く自らの内にある高い倫理規範によってあるべき秩序を行動で示すものであるという建前から、国会運営については、国会法や議院規則という最低限のルールのほかは、細かいルールを設けず、国会議員の行動や合意そのものがルールであり規範として成立するということになっています。

とはいっても、どのような行動が議院として、あるいは委員会として規範たるべきかについては多くの見解が存在することから、先例主義といって、一度職権で決定され示された規範はそれ自体がルールとして以降も従うことにしようという合意があります。

その合意をまとめたものが、議院先例集というもので、これが国会における不文法(制定文として作られていない拘束力のある規範)となっています。

 

委員長解任の議事手続きについては、下記法令の通りであり、議事順序については、衆議院においては衆議院先例第199号により一般法案よりも優先議題設定がなされる先例になっています。

ですから、委員長解任動議が発議された時点で、委員長解任動議よりも優先されるべき議題(たとえば議長、副議長の選挙など)が存在しない場合は、委員長解任動議が自動的に最優先議題となり、他の議事に先立って審議されねばなりません。

 

国会法

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO079.html

第三十条の二  各議院において特に必要があるときは、その院の議決をもつて、常任委員長を解任することができる。

第四十八条  委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持する。

衆議院規則

http://www.asahi-net.or.jp/~JC8Y-KMZK/rules.html

第二十八条の二 議員が議長若しくは副議長の信任又は不信任に関する動議若しくは決議案を発議するときは、その案を具え理由を附し、五十人以上の賛成者と連署して、これを議長に提出しなければならない。

 仮議長の信任又は不信任に関する動議若しくは決議案の発議については、前項の例による。

 常任委員長の解任に関する動議又は決議案の発議については、第一項の例による。

第百九条 議事日程には、開議の日時及び会議に付する案件並びにその順序を記載する。

議事日程記載はおおむね次の順序によっている。1議院の構成に関するもの ■議長、副議長の選挙 ■議席の指定 ■会期の件及び会期延長の件 ■常任委員の選任 ■常任委員長の選挙及びその辞任 ■事務総長の選挙 ■政治倫理審査会委員の選任 ■特別委員会設置の件 ■常任委員長解任決議案 ■懲罰事犯の件 ■議員の逮捕について許諾を求めるの件 ■両院協議会協議委員の選挙 2内閣総理大臣の指名その他 ■内閣総理大臣の指名 ■内閣不信任決議案、国務大臣不信任決議案 3国務大臣の演説及びこれに対する質疑、議案の趣旨の説明及びこれに対する質疑 4議案 ■予算 ■両院協議会成案、回付案 ■決議案 ■条約、法律案、決算、予備費の使用等について承諾を求める議案、国会の承認を求めるの件、その他の議案(これらの議案は、委員会の報告の順序により委員会別に記載する。)(衆先199)

第六十六条 委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持し、委員会を代表する。

 

委員長には議事整理権があり、議事整理の都合上、たとえば委員長解任決議案の発議者が委員会規則上の定足数を満たしているかどうかを確認するなどのために、休憩を宣言することはできます。

しかし、委員長職権は議事整理権までであって、議事整理を超える議題の保留、拒否の権限は委員長にはありません。休憩が終われば、委員長は委員長解任決議案について審議を続行し、討論が無ければ採決を求めなければなりません。休憩を長引かせれば長引かせるほど閣案の審議は滞り、政権運営は困難になっていきますので、委員長は与党に迷惑をかけないためにも、迅速な議事運営をしなければならない立場にあります。

多くの場合、委員長の職にある議員は自分は委員長たる資格があると思っており、委員長解任決議案が委員によって否決されることを望むため、委員長は委員長解任決議案の審議を意図的に遅延させるようなことはせず、むしろさっさと否決して解任案が誤りであることを示すそうとする例が多いです。

つまり、動議をその場で諮ろうとするケースの多くは、解任させたい側がその場で諮ることを望んでいるのではなく、解任される委員長の側がその場で諮ることを望んでいるからです。

政府としても、動議審議の遅延によって閣案審議に遅延を生じては政権運営に支障が生じることから、解任動議はできるだけさっさと終わらせるのが政権運営のセオリーです。結果的に解任が成立したとしても、早く議事が進むことによって法律案が会期内に成立すれば政権運営は安定します。

逆に解任案を提出する側は、できるだけ審議を長引かせれば会期制によりそれだけ政権を追い込むことができますので、動議の審議ができるだけ長引き、法律案審議に影響が出るようなタイミングで提出することがセオリーとなっています。

 

こうした与野党の議会運営における攻防は、一見ムダな手続きや作業のようにみえますが、こうした議会運営の攻防の裏では、政府が提出した法律案の修正や政策の変更をめぐって表裏での交渉が同時平行的に進行しており、それが結果的に少数者の利益を多数者によって実現するという民主主義を実現することになります。

多数者だけの意思が反映される議会はそもそも民主的ではありません。多数者による少数者の利益の実現(多数党による少数政党の利益の実現)という議会制民主主義を実現するという意味では、いわゆる解任決議案の動議提出などの議会対策の存在は、たとえばナチス政権時代のドイツ帝国議会のように多数派がすべての決定権を独占する国家社会主義的議会運営よりも、現代的かつ民主主義的であるといえます。

id:tatsu___kun

ありがとうございます。

大変勉強になりました。

・・・が、知りたいことは

「各委員会において、各種動議に対して、委員長はすぐに諮らなければならないか?」ということです。

即ち、例えば誰かが「質疑をここで終了し、討論を省略して採決することを望む」とか「休憩にはいることを望む」とか動議をした場合、その動議の可否をすぐに採決する義務があるか否かということです。

2007/05/29 22:46:17

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