国内市場、海外市場別にあなたの考えを教えてください。
戦略を描くに当たっては、国内市場、国際市場の別も重要ですが、それ以上に個人向け、企業向けの別も重要でしょう。
日本では、改革の動きが加速していますが、銀行と証券の分離が大原則ですし、また大きな市場と見られる米国でも同様の政策を採っていますので、ここでは、銀行が投資業務等に従事できないという原則で議論をしましょう。
1. 国際市場
(1)リテール
まず、国際市場で日本の銀行が個人向けの業務をこれから立ち上げるというのは現実的ではありません。リテールの分野は地域性が大きく、海外の銀行が攻めにくい分野といえます。仮に国際市場でリテール業務を行いたいと考えるのであれば、現地の銀行を買収するより他にないでしょう。
(2)企業向け
国際市場での本命は、やはり企業向け金融の世界です。東京に進出している海外の銀行(チェース、ドイチェ、バイエルン・ヒポ・フェラインス等)を見てみると、彼らは、やはり企業とのつながりが日本の銀行ほど深くありません。リソースや力の入れ方からして、食い込めていない、というのが現状でしょう。その彼らが行っている一つが、日本の銀行があまり手がけない融資だと思います。例えば、最近は日本の銀行も手がけ始めていますが、企業のキャッシュフローを担保にしたストラクチャードファイナンス等です。彼らは、これらの債権を将来的にはローンのセカンダリー市場で売却することにより収益を上げることを考えています。また、彼らは本国の顧客の日本法人等に対するサービスも提供しています。
日本の銀行が国際市場で活躍できるとすれば、基本的にはこれら海外の銀行が日本で行っているのと同様の戦略をとらざるを得ないでしょう。具体的には、一つは、日本企業の海外法人に対する融資その他の金融サービスの提供、日本で培ったストラクチャードファイナンスに関するノウハウを用いて、これらがまだ十分に発展していない国での貸出を積み上げる等ということになります。
例えば油田開発や電源開発その他のプロジェクトファイナンスについてのシンジケートローン取引では、現時点でも比較的日本の銀行は貸出を行っていると思います。金利コストの安さを武器に、この面でのさらなる深堀りを図るというのも手でしょう。
2. 国内市場
国内市場でも、個人に対する分野と企業金融分野を分けて考える必要があります。
(1)リテール
リテールでは、消費者金融分野と住宅ローン分野が大きな柱になるのではないかと思いますが、前者は現在、法改正や相次ぐ消費者寄りの最高裁判決で全体的にダウンラウンドに入っています。この傾向はある程度長期的に続くでしょうから、数年前と違い、消費者金融に力を入れろ、というアドバイスは必ずしも的を射ていない可能性があります。とはいえ、一定率の貸し倒れを前提としたリスクマネジメントのノウハウの蓄積は、銀行にとっても必要だと思われますので、数年前に提携又は買収した消費者金融業者を通じたこの分野での注力は、必要だと思います。
住宅ローンも、多分に市況に左右されるところがありますが、現在のところ不動産市況は好調なので、この分野を引続き伸ばしていくべきでしょう。
日本の銀行があまり力を入れておらず、まだ伸びる余地があるリテール分野は、富裕者向けのサービスでしょう。この分野は、日本は他の国特に米国系の銀行に比べて相当遅れているように思います。確かに、富裕者向けサービス分野で鍵を握る信託の法制がかつては米国と日本では大分異なり、これが日本での富裕者向けビジネスの商品開発の大きな足かせになっていた部分はあると思います。けれども、これも近時の一連の法改正で大分改善されました。富裕者サービスの基本は、いかにして課税を減らして利殖を図るかという点にあると思います。これは海外の法制度や税制度を熟知することなくよいサービスを提供することは困難です。ノウハウの集積が待たれます。
(2)企業向け
企業向け金融では、やはりリスクに見合った利率の設定というのが必ずしも日本の銀行は得意でないように思います。企業単体への融資もそうですが、プロジェクトファイナンス、ストラクチャードファイナンス等の分野で、よりきめ細かなリスク判定と、リスクの高い事業に対しても高利率であれば貸出を行うという態度が必要だと思います。
最近では、仕組み金融のアレンジメントによって儲けるというのが一つのやり方になっています。この分野は引続き伸ばしていくべきでしょう。
最後に、最近しばしばビジネスマッチングによる収益機会を探る銀行が増えているように思います。確かに銀行は会社の財務情報について深く理解しており、また事業についての評価もある程度していると思いますが、事業の将来性やマーケティング力、収益力の評価が得意だとはどうも思えません。これらを専門とする業者や部門との提携による、能力の強化が必要だと思います。
3. 結語
色々と述べましたが、実はどれも問題は一つだと思います。人材が不足しているのです。柔軟で国際経験豊かな人材と、それをマネージすることができる強靭なマネジメントが必要不可欠です。これを実現するためには、やはり従来から日本で普及している雇用慣行を帰る必要があるでしょう。とても難しい問題です。
by sumomodaifuku
個人と企業に分けることも必要でしたか。
住宅ローンは確かに好調に思えるので柱にすべき点ではあると思います。
日本の金融機関の問題は、人材確保・評価基準の問題だと思います。バブルの頃に銀行の金で留学させた人間のほとんどが、外資系金融機関や外資系コンサルティング会社に高額で移籍したと聞きます。バブルの頃の経営者は既に淘汰され、合併によりある程度整理されたものの、より合理的な組織を作る必要があります。
このためには、人材を幹部候補と一般行員と明確に差別した待遇をとらせ、幹部候補には、徹底的に語学と金融理論を学ばせる必要があります。国内のMBA留学コースも良いかもしれません。
業務面では、国内市場において、消費者金融業務の買収を通じ、金貸し本来のビジネスを強化すること。多少の軋轢があってもドライに取立てができる人が偉くなるべきでしょう。一方で、これまでのように、大口の預金者や投資信託購入者の囲い込みができる人間を取り立てることも重要。なにしろ、現在のように、国内で磐石の基盤を持った上で、選択的に海外に展開していくことが正しい選択だと思います。
ところが、国際市場において、現在、進出企業に対する融資業務以外に海外市場で通用している業務に何があるのでしょうか?もし海外で通用する業務がなければ、さっさと撤退すべきです。理想を言えば、ビザ&マスターカードと対抗しうるクレジットカードを作って欲しい。JCBでは通用する店が限られる。
確かに、人材不足という事実はありますよね。
一番の問題はこれなんだろうか。
国内市場
特定の1つか2つのどこにも負けないアピールポイントで、顧客を大量に獲得するという作戦はどうでしょうか?
例えば、ATM手数料や、振込手数料が、常に無料の新生銀行のように。
あのような銀行スタートまでのいきさつがありましたから、新生銀行が、このように早く大量の顧客や預金残高を獲得することは、難しいと予想されたわけですが、そのハードルを越えつつありますよね。
海外市場
特定のアピールポイントに力を入れるという点で、
海外市場は、一切狙わないというのもひとつの選択肢だと思います。
http://www.hotelschool.cornell.edu/industry/executive/pdp/Professional Development Program (PDP)
Hospitality Management
むしろ国外では、銀行は純然たるサービス業。
Hospitality Managementのために積極的に投資し、ブランド価値を上げつつ
スタッフの業務をコントロールしなくてはならない。
業務分野よりももっと大きな話ですみませんが。
投資信託や保険商品の販売等の手数料ビジネスを含めたフルラインのリテール業務と大企業向けの貸出業務に替わる投資銀行業務。
国際業務の分野では、日系企業ビジネスから脱皮して現地化が必要だと思います。
ありがとうございます。