次 の客は、高校生のH井だった。
H井「えーと、そろそろ彼女が欲しいんだよね」
B美は半眼で宣言した。
B美「これからあな たに3つの質問をします。その答えで未来を占い、3つのアドバイスを授けましょう」
H井「よ、よろしくお願いします」
B美「夜外 出することはありますか?」
H井「うん。部活が毎日遅くまであるからね」
B美「正義感が強いですか?」
H井「うん。曲がったこと とか嫌いだし」
B美「昼食は食べますか?」
H井「うん。毎日食べてるね」
B美はうなずいた。
B美「条件はかなり 良いです。それでは、アドバイスをしましょう。
今までどおりの生活を送って下さい。ただし、昼食は食べないように」
H井「昼食を食 べないって、弁当を持っていくのも学食もダメってこと?」
B美「そうです。購買もモチロン禁止です」
H井「はあ」
部屋を 後にした後、呟いた。
H井「よくわかんないアドバイスだったけど、やってみるかなぁ」
※小説風回答を歓迎。締切は26日(水) 22:00。野間丈弘さんの作問です。(自分も正解を知りません)
トントン
俺は、肩を叩かれているのに気がついて目が覚めた。
「水野さん、なぁにしてんですか。あ、またなんか小説書いてる。脚本はどうしたんですか。今度の本読みまでに、間に合わせてくださいよ。」
「急になにしてんだ。望月君。君と俺とのやり取りを覚えてる人なんて、もういないよ。回答として失格になっちゃうよ。」
「いいんじゃないですか、”小説”形式なら。これなら立派に”実験小説”なりますって。」
「まあいいや。はてなの回答を小説にしていたんだよ。」
「今度はどんな問題です?ああ、お約束か。」
「これ難しい、ちょっと枠が大きい気がするんだ。」
「じゃあ、自分で好きなこと詰め込んじゃいましょう。私も書きますよ。それ、水野さんのでしょ?望月は次に。」
*************************
回答 水野編 【思い出ののレシピ】
この匂いは・・・。
「えー、またカレーなの?」
私は、帰ってきてドアを開けて叫ぶ。
ママが、キッチンから叫び返す。
「そうよ、今日は12日だからね。」
リビングから、キッチンのママに
「特に12日のカレーは、まずいから嫌いなの。」
と悪態を付く私。ちょっと、機嫌が悪いんだ、今日の私。
「あら、まずいのは仕方ないわよ。」
と微笑むママ。
え、怒らないの?
「ねえ、なんで12日はカレーなの。しかも、このレシピ。」
ママはリビングのソファに座り、ふくれっ面の私を手招きする。
「ちょっと、秘密を教えてあげるわ。」
今日のママは、なんだか怪しい。
「私が高校2年生、つまり由美子と同じくらいだった頃の話。」
あら、思い出話なの。
「24年前の今日、ママは部活で、帰りが遅くなっちゃったの。」
「何の部活?」
「合唱部。発表会の練習をしてたら、日が暮れちゃったのね。」
「ふうん。」
「帰りに買い物もしたから、商店街を出るのが結構遅くなっちゃったのよ。」
「あ、あそこ暗いわよね。」
「そうなの。で、近所の不良に絡まれちゃったのよ。」
「ええ、なんでぇ。」
「今時いないような不良がね、昔は沢山いたのよ。で、女の子にちょっかい出したり、喧嘩したりしてね。」
「で、どうしたの」
「そしたらね、手を掴まれたの。」
「誰に?」
「かっこいい男の子によ。手を掴んで、走ってくわけ。」
「・・・」
「つられて、私も走るわけ。で、不良が追いかけてくる」
「そりゃそうだわ」
「で、彼、ゴミ箱蹴飛ばしたり、路地に駆け込んだりして逃げるのよ。」
「映画みたいじゃない」
「そうなの。でも、公園の脇で、不良のボスみたいなのに捕まりそうになっちゃったの。」
「えええ。」
「でも、その辺の枝持って、彼ボスやっつけちゃったの。」
「すごい。」
「剣道やってたんだって。」
あれ、パパ剣道三段だわ。ふううん、そんな話。
「それが、パパなんだ。」
「あら、良くわかったわね。」
「だって、剣道」
「あら、そうね。バレバレだったわね。」
え、でもまずいカレー・・・
「でね、送ってくれたのよ。家まで。」
「おばあちゃんちでしょ?すぐじゃん。」
「まあ、そうだけど。帰ろうとしたらね。ふふ」
「なに。変よ。」
「お腹が鳴ったのよ。グルルーって。大きな音で。」
「・・・」
「おかあさんとママで、顔見合わせて。夕飯でもいかがですか?って、言ったのよ。」
「おばあちゃんのカレーならおいしいよね。」
「でもね、その日はおかあさん、手を怪我してて作れなかったのよ。だから、カレーの材料買って、ママが作ろうとしてたのね。」
「もしかして、初めて作るとか」
「その通り。」
「それ食べてけって言うの、結構大胆じゃ」
「まあ、がんばって作ったのよ。」
パパかわいそ。
「で、食べてもらったら。」
「うん。」
「おいしい、おいしいっておかわりまでして。」
「ええー、それで帰ったわけ。」
「そう。」
「それがきっかけで付き合って、最終的には結婚したの。」
「そういうこと。そのときの作り方で作ってるの。わかった?」
はあ、そうなの。ママ、意外にロマンチスト?
「へええ、すっごい。ママってかわいいんだ。」
「ママが話したの、秘密よ。いい?」
「はあい。」誰が黙ってるかよぅ。
あ、パパが帰ってきた。ふふふ、今日は私が有利ね。
「パーパ、聞いたわよ。ママと初めて会った時のこと」
ママがキッチンからにらむ。
「あ、由美子。違反だよ」
私は気にしない。
「パパ知ってた?そのときのカレーとおんなじなんだって。このまずいカレー」
「ああ。知ってるよ。」
「でも、このまずいカレー、本気でおいしかったの?おかわりしたんだって?」
「ああ、うまかった。というか、味良く覚えてないんだ。」
「え。」
「いや、昼飯食ってなかったから、めちゃくちゃ腹減っててさ。よく言うじゃない。空腹は最良のスパイスってね。」
「・・・」
「・・・」
パパ、核地雷踏んだと思う。
*******************
回答 望月編 【夜の道】
「今日はショートカット」
思わず独り言をつぶやく。蒸し暑い夏の夜だ。
部活で遅くなった俺は、急いでいるときだけ通るルートにした。
そこは、墓地の中を抜ける道だ。
幽霊が怖いわけじゃないが、
「やっぱり好きになれないからな。」
と、思わずなにかつぶやく。
「ここを、曲がって。と」
墓地を抜ける道は、途中で大きく曲がる。角に小さな街灯が立っているが、その柱の周りがぼんやり照らされる程度だ。今日は月もでていないから、真っ暗に近い。
「あ、ごめんなさい」
急に正面から、女の子がやってきてすれ違った。道が狭いから、手が触れてしまう。
「あ、いえ。」
と女の子は、俺の来た方へ小走りに行ってしまう。振り向くと、彼女の持った懐中電灯が、もう遠くて揺れている。
と、
懐中電灯が大きく揺らいで
消えた。
消えたあたりから、か細い悲鳴の様なものが聞こえてくる。
俺は、走った。足元が見えないから、何かに滑ったりつまづきかけたが、なんとか懐中電灯の消えたあたりにたどり着いた。
「おい、どこにいる?大丈夫か?」
答えが無い。
耳を澄ますと、
ズルッ ズル ズズズ
と何かを引きずる音が聞こえてきた。
音を頼りに、手探りで藪の中を探す。
!
手があった。思わず、その女の子の手を思われるものを、引っ張った。一瞬、手繰り寄せられた感触があったが、次の瞬間、すごい力で反対側に引っ張られた。俺も、引きずられて、藪の中に体半分入ってしまう。
渾身の力を込めて、また手を引っ張る。藪の奥のそのまた奥の方で、ザワザワと何かが蠢いている気配がある。俺は、近くにほおってあったカバンを、その気配に向かって投げた。
ぐぐぐぐ
怪しい気配のあったあたりから、くぐもった声の様なものが聞こえ、女の子の手を引く力が弱くなった。俺は、一気にその手を引き寄せた。
藪の中から、セーラー服の女の子が出てきた。
俺は、その子を背負い、藪の中のカバンを拾った。そして、急いで墓地から外に出た。
公園のベンチ女の子を座らせ、俺は息をついた。
「あ、あの。」
女の子は、目を開けていた。
「大丈夫か?なにがあった?」
「あ、あの、私どうなって・・・」
覚えてないのかな?ちょっと、難しい立場か?もしかして。
この子のセーラー服はドロドロで、俺もそうだし。彼女、すり傷も結構ありそうだな。
「怪我はないか?痛いところは?」
「あ、あの」
説明しないとな。
「さっき、墓地で、なんだか得体の知れないものに、引っ張られてたんだよ。わかる?」
「はあ、なんとなく。・・・」
「大丈夫?」
「え、じゃあ助けてくださったんですね。」
「あ、いや、そんな、まあ、そうだな。」
「ありがとうございます。助かりました。怪我は大丈夫です、痛いところもあまりありま いっ」
「あ、無理しない。結構すり傷とかあるし、いろいろぶつけてたりするでしょ。でも、歩ける?」
ゆっくり立ち上がって、
「歩けます。大丈夫です。」
「じゃあ、歩こう。もう大丈夫だろうけど、帰った方がいい。」
「はい。」
公園の水道で、手や顔を洗い、俺たちは歩き出した。
「家どこ。送るから」
「あ、・・・すぐそこです。すみません。」
しばらく無言で歩く。
「あ、あの。名前。名前を聞いてませんでした。」
「いや、別に名乗るような」
「私、智美、佐藤智美と言います。」
「俺、H井。」
「H井さんですか。よろしくおね」
ぐぐーっ
急に、俺のお腹が鳴った。それも盛大に
「あ、H井さん、お腹すいてます?」
彼女は、カバンの中をごそごそと探り
「これ食べてください。今日、調理実習で作ったんです。」
と包みを差し出した。
「いや、いいよ。悪いから」
「お礼です。受け取ってください。」
俺は、包みを受け取った。
「ありがとうございました。ここが家です。」
「じゃあな。ドロドロだから、挨拶しないで行くよ」
「はい。ありがとうございました。」
俺は、近くのバス停からバスに乗った。
包みを開こうとして、右手のひじが目に入った。
そこには、
ちいさな手の痕が、無数に付いていた。
そういえば、彼女が手を洗ってるとき、手に模様が付いてたな。
これか。
手の痕は、見る間に薄くなっていく。
ねがわくば、これを彼女が見ないことを祈る。
包みを開けると、サンドイッチが入っている。
「いただきます。」
すきっ腹に、おいしいサンドイッチは、しみる。
ふと見ると、小さな紙が一枚床に落ちている。
拾うと、メールアドレスの走り書きが。
「これって、彼女ができたってこと?」
俺は一人つぶやいて、バスを降りた。
走り去ったバスの座席には、焼けてボロボロになったお守り袋が、カバンからちぎれて落ちていた。
**********************
「水野さん、できたよ」
「俺も」
「これ、だめですね。水野さんのもだけど」
「そうだなぁ。素人にもわかるわな」
「あ、誰が素人ですか、立派な演出家に向かって何を言う。」
「伏線使い切ってないし、課題以外の部分が多すぎて、ストーリーが薄まってるし。」
「人物設定もあやふやだし」
「そうなんだよ、占いの提案が彼女を作る決定打になってないんだよね。」
「まあ、いいじゃないですか。三題噺で。」
「それじゃ、ポイントはもらえないぞ」
「いいって、いいって。ノーポイント上等。」
「こいつ、小説書いただけだな。」
「水野さんだって。」
「えー、というわけで、回答になってないです。思いつき三題噺として、勝手な小説を書きました。適当に読み飛ばしてください。」
「長文失礼いたしました。」
そして、午前の授業が終わりその時間がきた。
H井、「……なにがあるんだろう……?」
腹の音がなり続いているが、H井は昼食を食べる気配はなかった。
その時だった。
ふらふら歩いていたら誰かと肩が当たって相手が転んだ。すかさずH井は、
H井「だ、大丈夫?」
?「は、はい。大丈夫です。あの、スイマセン……」
その子はH井よりは少し小柄でなによりH井の好みのタイプに結構近かった。その子が、
?「あの、私はS子と言います。実は、今日昼ご飯忘れちゃって……」
H井「ふ~ん…あ、そうだ。俺、今日の昼飯余っているからそれあげる よ。さっきぶつかったことだし…な?」
S子「え、ほ、本当にいいんですか?」
H井「ああ、いいっていいって、気にすんなよ。」
不思議だ。S子ちゃんといるとどうもおもしろい。
……ま、ま、まさかだと思ったんだけど、B美の占いの相手って………
tomoki2009様、ありがとうございます。
「昼を食べない」→「弁当が余るので誰かにあげられる」というのは、着眼がすばらしいと思いました。
が、問題文からは「弁当を持っていくのもダメ」ですので、ちょっと苦しい解答かと・・・。
情報が少ない分、勝手にかけましたが、果たしてこんな回答でよいのでしょうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺は、B美の言うとおり、昼食も食べずに部活で柔道の練習をしていた。
B美のアドバイスを鵜呑みにして、部活もサボらず1ヶ月。
いい加減、騙されたかとも思うが、どうしても彼女が欲しいので、やめるにやめられないよなぁ~。
今度の試合は、階級を2つぐらいは落とさないと、体重が合わないかもしれない。
そんなことを考えながら、漸く、部活が終了。
帰り道、いつものコンビニの前を通りかかると、不良達に絡まれている可愛い女子高生が!!
制服は、同じ高校だ。
これが、B美の行っていた夜の外出と正義感か。
ついに来たぞ!!
"おい、やめろ"
"なんだ、てめー。邪魔したら、やっちまうぞ"
"やれるものならやってみろ。お前らみたいな不良にやられるほど、やわじゃねーぞ。"
結局ぼこぼこにされ、女の子の助けを求める声でお店の人が警察を呼んでくれたお陰で、不良は逃げて終わり。
俺はその後、病院で診察を受けて骨も折れていないし大事は無いが明日はゆっくりと寝ているようにと言われて、家に帰った。
B美の占いのお陰で、酷い目にあってしまった。
一日休んで、学校に行くと、
"いつもお昼を食べていないんだって。そんなことじゃ、また、やられちゃうよ。"
あの子が、お弁当を渡してくれた。
suppadv様、ありがとうございます。これでおおむねOKだと思います。
自分的には、やはりケンカに負けるというのは情けないので、
勝つ → お腹グー → ごはんをいっしょに コースのほうが自然だと思いますがいかがでしょう。
H井「あー、昼飯抜きでこの時間までの部活はさすがにきついなぁ。」
いつの間にか日も沈んでいた。
毎日同じこの家路。
暗くなった夜道に街路灯の明りが、
まるでH井の帰りを待っていたかのように道を照らしてくれる。
昼間にはいつも騒がしいこの道も、夜になると嘘のような静かさで。
いつもそうだった、だから今日もそうだと思っていたがどうもこの日は違っていた。
遠くから何やら言い争いの声が聞こえてる。
ずっとさきの街路灯、その光の下に二人の人影が見えた。
声からして男女、最初は恋人同士の口げんかか何かだと思っていた。
しかし段々と、それはただ事ではないことにH井は気付いた。
H井は二人のもとに走りよる。
女性の方はH井に助けを求めるように視線を送った。
H井「事情は知りませんが、女性の方が嫌がってるじゃないですか」
チンピラ「ああ、おめぇに関係ねーだろがよ、ただこの子を遊びに誘ってるだけで何が悪い」
明らかに女性はおびえていた。
正義感が強いH井はその女性をほってはおけなかった。
女性の手を引きその場を立ち去ろうとしたその時だった。
チンピラがH井に殴りかかってきた。
H井は部活では空手部だったのでとっさに受け身を取った。
チンピラはにやりと不敵な笑みを浮かべる。
H井にとって素人のパンチなど簡単に受け止められるものだった、
受け取るはずだった。
しかし、H井はいつも食べている昼食をずっと抜いて
遅くまで部活動に励む日々が続いていた。
空腹と疲れのあまりH井はフラッと体制を崩す。
しまった、とH井は思った。
しかしそれはチンピラにとっても予想外の動きだった。
チンピラは、H井が正義感満々な雰囲気を醸し出し
受けの型を取ってることからすっかり受けるものと思っていた為、勢いよく突っ込んでいた。
H井がフラッとよろけると後ろにはコンクリートブロック。
コンクリートの壁に、チンピラは勢いよく頭からぶつかった。
チンピラはそのまま倒れた。
その時、バタンという音と共にキーンと甲高い音がその場に響いた。
それは、チンピラが右手に隠し持っていたナイフだった。
あのまま受け止めていたら、そう思うとH井ゾクッとした。
チンピラは、というとのびて気を失っていた。
H井は持っていた携帯で警察を呼び、チンピラはつかまり事なきを得た。
女性「あの、えっと危ないところを助けていただきありがとうございました」
H井「あ、いや、そのなんつーか偶然というか…」
女性「なにより助けようとしてくれたその気持ちが、とっても嬉しかったんです、ありがとう」
その時の女性の笑顔は、とても素敵な笑顔だった。
それから二人は交流を重ね、後に付き合う事となった。
【謎解き・お約束占い・彼女が欲しい】終わり
※たぶんまったく検討外れの回答だったと思います。
ただ、どうしても忍たま乱太郎のとべ先生の設定が頭に浮かんでしまったので(^^ゞ
(お腹がすくとふらふらになって、何故かそのフラフラな動きで危ない攻撃をよけて危機を脱してしまうというあの設定が)
Zelda様、すごくよくできた小説、ありがとうございます。
実は自分も「お腹がすいてたら力も出ないだろう?」というのが、今回はすごく悩んだところでした。
その日もいつものように部活が終わった夜遅くにH井は家路についていました。
H井「あー、今日も部活疲れたな。早く帰って休もう。でも、正義感が強いか、とか昼食を食べるかとか、何か変なこと聞かれたなぁ」
そう思いながら今日あったことを振り返っているとふと聞こえてくる悲鳴。
その声の聞こえる方に急いでみるとそこには痴漢に襲われようとしている女性が。
日頃から正義感の強いH井がそれを見逃すはずもなく、助けに入るH井。部活で鍛え体力が十分にあるH井は痴漢を退治し、そのまま帰りました。
翌日の昼休み、前日言われたことを守り、H井は昼食を食べず、教室にいました。次の日もその次の日も。空腹に耐えながら。
すると、その翌日、顔だけはどこかで見た記憶があるものの名前も知らず、もちろん話したこともない女子が突然、弁当を持ってきます。
H井「これ、俺にくれるの?でも、何で?」
I子「数日前、痴漢に襲われそうになったとき、助けてくれたこと覚えてる?あれは私なの。あのとき、痴漢を退治した後、あなたは何も話さずにそのまま去っていってしまったからお礼も言えなくて。
でも、どこかで顔を見た記憶はあったし、うちの制服だったから同じ校内にいるんだろうなと思ってここ数日探していたの。そしたらあなただってことが分かって。
で、昨日お礼を言おうと思ってきたんだけど、あなたは昼食も食べずに教室にずっといて。で、同じクラスの私の友達に聞いてみたらあなたは最近昼食を食べていないって聞いて。
これくらいで私の感謝を全て表すことはできないけど、だったら私がこれから毎日あなたのためにお弁当を作ってあげようかなと思って」
そんな出来事があり、毎日昼食を共にする内にH井とI子は付き合うようになりました。
数日後、H井とB美。
B美「ね、言ったとおりでしょ。あなたが夜遅く帰らなかったら、あなたの正義感が強くなかったら、あなたが昼食を食べていたら、I子から声をかけられることやお弁当を作ってきてくれることはなかったのよ。私の占いは外れたことがないんだから」
sylphid666様、ありがとうございます。
自分的の解答は、いままでオープンした中ではsylphid666様の解答にいちばん近いです。
(自分の答えは、ケンカ直後にメシをおごってもらう、というものでした)
トントン
俺は、肩を叩かれているのに気がついて目が覚めた。
「水野さん、なぁにしてんですか。あ、またなんか小説書いてる。脚本はどうしたんですか。今度の本読みまでに、間に合わせてくださいよ。」
「急になにしてんだ。望月君。君と俺とのやり取りを覚えてる人なんて、もういないよ。回答として失格になっちゃうよ。」
「いいんじゃないですか、”小説”形式なら。これなら立派に”実験小説”なりますって。」
「まあいいや。はてなの回答を小説にしていたんだよ。」
「今度はどんな問題です?ああ、お約束か。」
「これ難しい、ちょっと枠が大きい気がするんだ。」
「じゃあ、自分で好きなこと詰め込んじゃいましょう。私も書きますよ。それ、水野さんのでしょ?望月は次に。」
*************************
回答 水野編 【思い出ののレシピ】
この匂いは・・・。
「えー、またカレーなの?」
私は、帰ってきてドアを開けて叫ぶ。
ママが、キッチンから叫び返す。
「そうよ、今日は12日だからね。」
リビングから、キッチンのママに
「特に12日のカレーは、まずいから嫌いなの。」
と悪態を付く私。ちょっと、機嫌が悪いんだ、今日の私。
「あら、まずいのは仕方ないわよ。」
と微笑むママ。
え、怒らないの?
「ねえ、なんで12日はカレーなの。しかも、このレシピ。」
ママはリビングのソファに座り、ふくれっ面の私を手招きする。
「ちょっと、秘密を教えてあげるわ。」
今日のママは、なんだか怪しい。
「私が高校2年生、つまり由美子と同じくらいだった頃の話。」
あら、思い出話なの。
「24年前の今日、ママは部活で、帰りが遅くなっちゃったの。」
「何の部活?」
「合唱部。発表会の練習をしてたら、日が暮れちゃったのね。」
「ふうん。」
「帰りに買い物もしたから、商店街を出るのが結構遅くなっちゃったのよ。」
「あ、あそこ暗いわよね。」
「そうなの。で、近所の不良に絡まれちゃったのよ。」
「ええ、なんでぇ。」
「今時いないような不良がね、昔は沢山いたのよ。で、女の子にちょっかい出したり、喧嘩したりしてね。」
「で、どうしたの」
「そしたらね、手を掴まれたの。」
「誰に?」
「かっこいい男の子によ。手を掴んで、走ってくわけ。」
「・・・」
「つられて、私も走るわけ。で、不良が追いかけてくる」
「そりゃそうだわ」
「で、彼、ゴミ箱蹴飛ばしたり、路地に駆け込んだりして逃げるのよ。」
「映画みたいじゃない」
「そうなの。でも、公園の脇で、不良のボスみたいなのに捕まりそうになっちゃったの。」
「えええ。」
「でも、その辺の枝持って、彼ボスやっつけちゃったの。」
「すごい。」
「剣道やってたんだって。」
あれ、パパ剣道三段だわ。ふううん、そんな話。
「それが、パパなんだ。」
「あら、良くわかったわね。」
「だって、剣道」
「あら、そうね。バレバレだったわね。」
え、でもまずいカレー・・・
「でね、送ってくれたのよ。家まで。」
「おばあちゃんちでしょ?すぐじゃん。」
「まあ、そうだけど。帰ろうとしたらね。ふふ」
「なに。変よ。」
「お腹が鳴ったのよ。グルルーって。大きな音で。」
「・・・」
「おかあさんとママで、顔見合わせて。夕飯でもいかがですか?って、言ったのよ。」
「おばあちゃんのカレーならおいしいよね。」
「でもね、その日はおかあさん、手を怪我してて作れなかったのよ。だから、カレーの材料買って、ママが作ろうとしてたのね。」
「もしかして、初めて作るとか」
「その通り。」
「それ食べてけって言うの、結構大胆じゃ」
「まあ、がんばって作ったのよ。」
パパかわいそ。
「で、食べてもらったら。」
「うん。」
「おいしい、おいしいっておかわりまでして。」
「ええー、それで帰ったわけ。」
「そう。」
「それがきっかけで付き合って、最終的には結婚したの。」
「そういうこと。そのときの作り方で作ってるの。わかった?」
はあ、そうなの。ママ、意外にロマンチスト?
「へええ、すっごい。ママってかわいいんだ。」
「ママが話したの、秘密よ。いい?」
「はあい。」誰が黙ってるかよぅ。
あ、パパが帰ってきた。ふふふ、今日は私が有利ね。
「パーパ、聞いたわよ。ママと初めて会った時のこと」
ママがキッチンからにらむ。
「あ、由美子。違反だよ」
私は気にしない。
「パパ知ってた?そのときのカレーとおんなじなんだって。このまずいカレー」
「ああ。知ってるよ。」
「でも、このまずいカレー、本気でおいしかったの?おかわりしたんだって?」
「ああ、うまかった。というか、味良く覚えてないんだ。」
「え。」
「いや、昼飯食ってなかったから、めちゃくちゃ腹減っててさ。よく言うじゃない。空腹は最良のスパイスってね。」
「・・・」
「・・・」
パパ、核地雷踏んだと思う。
*******************
回答 望月編 【夜の道】
「今日はショートカット」
思わず独り言をつぶやく。蒸し暑い夏の夜だ。
部活で遅くなった俺は、急いでいるときだけ通るルートにした。
そこは、墓地の中を抜ける道だ。
幽霊が怖いわけじゃないが、
「やっぱり好きになれないからな。」
と、思わずなにかつぶやく。
「ここを、曲がって。と」
墓地を抜ける道は、途中で大きく曲がる。角に小さな街灯が立っているが、その柱の周りがぼんやり照らされる程度だ。今日は月もでていないから、真っ暗に近い。
「あ、ごめんなさい」
急に正面から、女の子がやってきてすれ違った。道が狭いから、手が触れてしまう。
「あ、いえ。」
と女の子は、俺の来た方へ小走りに行ってしまう。振り向くと、彼女の持った懐中電灯が、もう遠くて揺れている。
と、
懐中電灯が大きく揺らいで
消えた。
消えたあたりから、か細い悲鳴の様なものが聞こえてくる。
俺は、走った。足元が見えないから、何かに滑ったりつまづきかけたが、なんとか懐中電灯の消えたあたりにたどり着いた。
「おい、どこにいる?大丈夫か?」
答えが無い。
耳を澄ますと、
ズルッ ズル ズズズ
と何かを引きずる音が聞こえてきた。
音を頼りに、手探りで藪の中を探す。
!
手があった。思わず、その女の子の手を思われるものを、引っ張った。一瞬、手繰り寄せられた感触があったが、次の瞬間、すごい力で反対側に引っ張られた。俺も、引きずられて、藪の中に体半分入ってしまう。
渾身の力を込めて、また手を引っ張る。藪の奥のそのまた奥の方で、ザワザワと何かが蠢いている気配がある。俺は、近くにほおってあったカバンを、その気配に向かって投げた。
ぐぐぐぐ
怪しい気配のあったあたりから、くぐもった声の様なものが聞こえ、女の子の手を引く力が弱くなった。俺は、一気にその手を引き寄せた。
藪の中から、セーラー服の女の子が出てきた。
俺は、その子を背負い、藪の中のカバンを拾った。そして、急いで墓地から外に出た。
公園のベンチ女の子を座らせ、俺は息をついた。
「あ、あの。」
女の子は、目を開けていた。
「大丈夫か?なにがあった?」
「あ、あの、私どうなって・・・」
覚えてないのかな?ちょっと、難しい立場か?もしかして。
この子のセーラー服はドロドロで、俺もそうだし。彼女、すり傷も結構ありそうだな。
「怪我はないか?痛いところは?」
「あ、あの」
説明しないとな。
「さっき、墓地で、なんだか得体の知れないものに、引っ張られてたんだよ。わかる?」
「はあ、なんとなく。・・・」
「大丈夫?」
「え、じゃあ助けてくださったんですね。」
「あ、いや、そんな、まあ、そうだな。」
「ありがとうございます。助かりました。怪我は大丈夫です、痛いところもあまりありま いっ」
「あ、無理しない。結構すり傷とかあるし、いろいろぶつけてたりするでしょ。でも、歩ける?」
ゆっくり立ち上がって、
「歩けます。大丈夫です。」
「じゃあ、歩こう。もう大丈夫だろうけど、帰った方がいい。」
「はい。」
公園の水道で、手や顔を洗い、俺たちは歩き出した。
「家どこ。送るから」
「あ、・・・すぐそこです。すみません。」
しばらく無言で歩く。
「あ、あの。名前。名前を聞いてませんでした。」
「いや、別に名乗るような」
「私、智美、佐藤智美と言います。」
「俺、H井。」
「H井さんですか。よろしくおね」
ぐぐーっ
急に、俺のお腹が鳴った。それも盛大に
「あ、H井さん、お腹すいてます?」
彼女は、カバンの中をごそごそと探り
「これ食べてください。今日、調理実習で作ったんです。」
と包みを差し出した。
「いや、いいよ。悪いから」
「お礼です。受け取ってください。」
俺は、包みを受け取った。
「ありがとうございました。ここが家です。」
「じゃあな。ドロドロだから、挨拶しないで行くよ」
「はい。ありがとうございました。」
俺は、近くのバス停からバスに乗った。
包みを開こうとして、右手のひじが目に入った。
そこには、
ちいさな手の痕が、無数に付いていた。
そういえば、彼女が手を洗ってるとき、手に模様が付いてたな。
これか。
手の痕は、見る間に薄くなっていく。
ねがわくば、これを彼女が見ないことを祈る。
包みを開けると、サンドイッチが入っている。
「いただきます。」
すきっ腹に、おいしいサンドイッチは、しみる。
ふと見ると、小さな紙が一枚床に落ちている。
拾うと、メールアドレスの走り書きが。
「これって、彼女ができたってこと?」
俺は一人つぶやいて、バスを降りた。
走り去ったバスの座席には、焼けてボロボロになったお守り袋が、カバンからちぎれて落ちていた。
**********************
「水野さん、できたよ」
「俺も」
「これ、だめですね。水野さんのもだけど」
「そうだなぁ。素人にもわかるわな」
「あ、誰が素人ですか、立派な演出家に向かって何を言う。」
「伏線使い切ってないし、課題以外の部分が多すぎて、ストーリーが薄まってるし。」
「人物設定もあやふやだし」
「そうなんだよ、占いの提案が彼女を作る決定打になってないんだよね。」
「まあ、いいじゃないですか。三題噺で。」
「それじゃ、ポイントはもらえないぞ」
「いいって、いいって。ノーポイント上等。」
「こいつ、小説書いただけだな。」
「水野さんだって。」
「えー、というわけで、回答になってないです。思いつき三題噺として、勝手な小説を書きました。適当に読み飛ばしてください。」
「長文失礼いたしました。」
超力作ありがとうございます!!
水野&望月さんの作品ですが、まず水野作品の方は、こちらの想定通り+十数年後の娘からの視点、というのが、すごくほのぼのしてて良かったです。
望月作品の方は、ホラーが入っていて読ませました。どちらもたいへん楽しみました。
ぜひいるかを差し上げたいと思います・・・が、some1様の作品を読むまで、もう少しお待ちください。
超力作ありがとうございます!!
水野&望月さんの作品ですが、まず水野作品の方は、こちらの想定通り+十数年後の娘からの視点、というのが、すごくほのぼのしてて良かったです。
望月作品の方は、ホラーが入っていて読ませました。どちらもたいへん楽しみました。
ぜひいるかを差し上げたいと思います・・・が、some1様の作品を読むまで、もう少しお待ちください。