黄色と緑と赤の三色というと、どこかの国旗の配色みたいですが、わが家の場合はなんと「ヘビイチゴ」の色なんです。花の黄色、葉の緑、そして実の赤。わが家の庭でこのかわいい植物を見つけたのは、まだ私が小学生のころだったと思います。庭いじりをしていた母に呼ばれて行ってみると、ブロック塀の下に、小さな赤い実を付けたこの草が生えていたんです。
「見て見て、かわいいちっちゃなイチゴ」
「えー、でもそれって毒イチゴなんじゃないの?」
「毒じゃない…と思うんだけど、お父さんが帰ってきたら聞いてみましょう」
その夜、帰ってきた父をつかまえて、懐中電灯を持って庭に出ました。
「ほらこれ」
「おー、これはヤブヘビイチゴっていう種類だと思うよ。ヘビイチゴと同じ種類だけど、こういう日陰になりやすい所を好んで生えるのと、花と実が一緒に見られる特徴がある」
「普通のヘビイチゴと違うの?」
「ヤブが付かないヘビイチゴはお日様がよく当たる所に生えるし、全ての花が終わってから一斉に実を付けるんだ。それに、実はヤブが付くヘビイチゴの方がツヤツヤしてきれいなんだよ」
「へぇ~」
「お父さんは山の生まれだから、こっちの方がお馴染みだったな。山は木が多くて地面は日陰のことが多いから」
そのあと部屋に入って、ヘビイチゴや様々な植物にまつわる思い出を聞かせてもらいました。
「毒はないの?」
「毒はないね、というか逆に毒消しになる。昔はヘビイチゴの実を集めて焼酎に漬けて、それを虫さされの薬として塗ったんだよ」
「へぇぇぇ」
やっぱり毒はないとわかって、母は「ほらやっぱり」と、ちょっと偉そうでした(笑)。
母もヘビイチゴには色々思い出があるようで、泥で作った小さなケーキの上に飾っておままごとをした話などを、楽しそうに聞かせてくれました。
わが家のヤブヘビイチゴは、翌年もまた花を咲かせ、実を付けました。この種類の草は多年草で、旺盛に匍匐茎を出して広がっていくんです。放っておくとどんどん広がるし、かといって摘んでしまうのも残念なので、匍匐茎の広がりを止める柵を作って、庭の一区画をヤブヘビイチゴ専用スペースにすることにしました。匍匐茎止めの柵は、子供の私がレンガで作りました。
以来毎年ヤブヘビイチゴは元気に花を咲かせて実を付けました。そのうちヤブヘビイチゴスペースが過密になってきたので、少し場所を広げてやることにしました。すると、広げた分だけ、どんどんヤブヘビイチゴは広がっていきます。そこで母が提案。これってグランドカバーになるんじゃない?と。あ、それいいかも、というわけで、背の低い地を這うような植物ですから、花壇の中で好き勝手に繁殖できるようにしてみました。きっと実生もあるんでしょうね。今は花壇の表面をきれいに緑に埋めて、わが家の庭の色を決める大切な存在に昇格しています。
ヘビイチゴの仲間には地域変種が多く、同じ種類でも場所が違うと微妙に違うという話を聞きました。自然に生えてきてわが家の庭に居座ったこのヤブヘビイチゴは、もしかするとわが家がここに住み始める以前からこの地にあった、伝統ある遺伝子を持った種なのかもしれません。それを思うと、この庭から絶やしてはいけないと、妙な使命感に駆られたりします。
わが家は親子三人、みな庭いじりが好きで、庭が家族のコミュニケーション空間になっています。そんな家族の交流をずっと見守り続けてきてくれた黄色と緑と赤のかわいい植物、ヤブヘビイチゴ。これからもずっとわが家の庭で、私達を見守り続けてほしいと思っています。
黄色と緑と赤の三色というと、どこかの国旗の配色みたいですが、わが家の場合はなんと「ヘビイチゴ」の色なんです。花の黄色、葉の緑、そして実の赤。わが家の庭でこのかわいい植物を見つけたのは、まだ私が小学生のころだったと思います。庭いじりをしていた母に呼ばれて行ってみると、ブロック塀の下に、小さな赤い実を付けたこの草が生えていたんです。
「見て見て、かわいいちっちゃなイチゴ」
「えー、でもそれって毒イチゴなんじゃないの?」
「毒じゃない…と思うんだけど、お父さんが帰ってきたら聞いてみましょう」
その夜、帰ってきた父をつかまえて、懐中電灯を持って庭に出ました。
「ほらこれ」
「おー、これはヤブヘビイチゴっていう種類だと思うよ。ヘビイチゴと同じ種類だけど、こういう日陰になりやすい所を好んで生えるのと、花と実が一緒に見られる特徴がある」
「普通のヘビイチゴと違うの?」
「ヤブが付かないヘビイチゴはお日様がよく当たる所に生えるし、全ての花が終わってから一斉に実を付けるんだ。それに、実はヤブが付くヘビイチゴの方がツヤツヤしてきれいなんだよ」
「へぇ~」
「お父さんは山の生まれだから、こっちの方がお馴染みだったな。山は木が多くて地面は日陰のことが多いから」
そのあと部屋に入って、ヘビイチゴや様々な植物にまつわる思い出を聞かせてもらいました。
「毒はないの?」
「毒はないね、というか逆に毒消しになる。昔はヘビイチゴの実を集めて焼酎に漬けて、それを虫さされの薬として塗ったんだよ」
「へぇぇぇ」
やっぱり毒はないとわかって、母は「ほらやっぱり」と、ちょっと偉そうでした(笑)。
母もヘビイチゴには色々思い出があるようで、泥で作った小さなケーキの上に飾っておままごとをした話などを、楽しそうに聞かせてくれました。
わが家のヤブヘビイチゴは、翌年もまた花を咲かせ、実を付けました。この種類の草は多年草で、旺盛に匍匐茎を出して広がっていくんです。放っておくとどんどん広がるし、かといって摘んでしまうのも残念なので、匍匐茎の広がりを止める柵を作って、庭の一区画をヤブヘビイチゴ専用スペースにすることにしました。匍匐茎止めの柵は、子供の私がレンガで作りました。
以来毎年ヤブヘビイチゴは元気に花を咲かせて実を付けました。そのうちヤブヘビイチゴスペースが過密になってきたので、少し場所を広げてやることにしました。すると、広げた分だけ、どんどんヤブヘビイチゴは広がっていきます。そこで母が提案。これってグランドカバーになるんじゃない?と。あ、それいいかも、というわけで、背の低い地を這うような植物ですから、花壇の中で好き勝手に繁殖できるようにしてみました。きっと実生もあるんでしょうね。今は花壇の表面をきれいに緑に埋めて、わが家の庭の色を決める大切な存在に昇格しています。
ヘビイチゴの仲間には地域変種が多く、同じ種類でも場所が違うと微妙に違うという話を聞きました。自然に生えてきてわが家の庭に居座ったこのヤブヘビイチゴは、もしかするとわが家がここに住み始める以前からこの地にあった、伝統ある遺伝子を持った種なのかもしれません。それを思うと、この庭から絶やしてはいけないと、妙な使命感に駆られたりします。
わが家は親子三人、みな庭いじりが好きで、庭が家族のコミュニケーション空間になっています。そんな家族の交流をずっと見守り続けてきてくれた黄色と緑と赤のかわいい植物、ヤブヘビイチゴ。これからもずっとわが家の庭で、私達を見守り続けてほしいと思っています。