ささらさや
- 作者: 加納 朋子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- メディア: 単行本
クレイグ・ライスのミステリから『眠りをむさぼりすぎた男』と『大はずれ殺人事件』を持ってきました。
前者では、ある人物がとても怪しげに見えるのですが実は……という側面を持っています。ネタバレにならないように書くのは難しいのですが、この作品のテーマとして“善意”“相手への気遣い”ということがあると思います。最初のうちは暗い印象を抱きながら読んでいったところが、読み終えてみれば……という味わいも良くて印象に残っている作品。bk1の書評に拙文が載っているので、よかったら読んでみてください。
後者『大はずれ殺人事件』にも、一見怪しげな人物が出てきます。しかしその人物は……というところと、その人物のキャラがなかなか印象的でした。bk1ではハヤカワ・ミステリ文庫本のISBNが表示されていなかったので、参考URLの欄に、この作品を紹介したサイトを挙げておきました。私が言いたかった“ある人物”の名前が、その内容紹介で出てくるので、本筋とは関係ありませんが、もしまっさらな気持ちで作品を読んでみたいということなら、そこは見ないほうがいいかもしれません。作品自体のネタバレはされていないので、その点は大丈夫なんですが。
もうひとつだけ。加納朋子さんの『ささら さや』は如何でしょう。連作短編集の話の途中から出てくる人間が「主人公側の味方だった」ということで、この作品を挙げてみました。愛する夫を失った気持ちから抜け出せずにいる“さや”の背中をぽんと叩いて後押しするような、そういう人たちが出てくる。主人公サイドにあるその人たちのキャラと、彼らが出てくることによって俄然話が生き生きとしてくるところが良かった。登場人物に託した作者の意図が前面に出過ぎているところ気がするので、読む人によって好き嫌いがはっきり分かれる作品かもしれません。私にとっては、主人公の“さや”よりも、むしろ彼女の周囲の人たちのキャラが魅力的だと思ったミステリでした。