グリム童話でも日本の民話でも、兄弟姉妹が出てくる話で
兄(姉)の方が「負け組」となり、
弟(妹)の方が「勝ち組」となる傾向が広く存在するのは何故なのでしょうか?
●ほぼ、同性同士の兄弟の物語おいてのみ、そうした傾向がありますね。自分で思い付くのは、土地など財産分与で長子の方が得する慣習があって、そのアンチテーゼみたいなものか?みたいな。
●「若い方がモテる」といった思いつき的な説明でなく、論理的な合理的な説明を求めています。
●読んだ本のご紹介の場合も、明後日に参考にしたいので、本でどう説明されていたか書いて頂けませんか。
●URLはなるべくですが、ダミーでないものをお願いします。
一番上のお兄ちゃんを元気づけたいので、よろしくお願いします。(子ブタで言うと藁の家!)
たしかに世の中には、弱い立場である弟や妹が
成功をおさめて、めでたしめでたし、
となるお話が多いようですが、
これは要するに、世の中勤勉実直な者が報われる、
ということを分かりやすく強調するために、
弱い立場からのサクセスストーリーに仕立ててある、
ということなんだろうと思うんです。
ちょうど「うさぎとかめ」のお話と同じです。
努力家のウサギさんと怠け者のカメさんが競争して
ウサギさんが勝ったのでは当たり前すぎて
どうにもなりませんから、
ここは着実に努力を重ねるカメさんが
相手を見くびって途中で寝てしまうウサギさんに勝る、
というストーリーに仕立てているわけです。
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でも、宮沢賢治の「クンねずみ」などを見てみると、
これはもうひとひねりした面白い筋立てになっています。
主人公はネズミ。
いつも威張りまくっているネズミです。
これが子猫たちの先生役を務めることになります。
でも、子猫たちの前でまで
エヘンエヘンと威張ってしまいましたので、
「何だい。ねずめ。人をそねみやがったな。」
と子猫たちを怒らせてしまい、
よってたかってぺろりと食べられてしまうのです。
クンねずみの立場は、小さな弱い動物ですから
明らかに弱者です。
そして、生まれたばかりとはいえ、
鋭いキバを持った肉食獣である子猫たちは
どう考えても強者の役回りです。
でも、威張りまくりのクンねずみは、
結局それが災いして、えらいことになってしまうのです。
ここで学ぶべきことは、威張ると損だね、
ということであって、
弱い立場の者でも努力すれば・・・・
といった寓意は全く含まれていませんから、
強者と弱者の立場はそのままなんです。
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ここで「三匹の子豚」のお話を、
ちょっと別立てのストーリーにアレンジしてみましょう。
強者弱者の関係や勤勉怠惰の色分けをしなくても、
こんなお話が作れます。
三匹の子豚たちは、兄弟とても仲良しでした。
弟思いのお兄さんは一生懸命働いて、
そのお金で弟たちを学校に通わせて、
立派な子豚にするために尽くしました。
でも、長男子豚は弟たちのために働き続けていたので、
自分は学校に通う事など出来ません。
いつも弟たちが勉強を教え合っているのを
とてもうらやましそうに見ていました。
そして、自分がその輪に入っていけないことを
少し悲しくも思っていました。
と、そんなある日、恐いオオカミが、
子豚たちの家を破壊して食べちゃうぞーと
暴れ込みにきたのです。
きゃーーーーーー!!
弟たちは逃げまどいます。
でも、働いて働いて強い体を作っていた兄さん子豚は、
勇敢に弟たちを守り抜きました。
これにはオオカミさんもビックリです。
うわわわわ、こんな強い子豚は見たことがない、
ひゃぁぁぁぁ、と遠くに逃げていきました。
「兄さん、すごいや」
「ほんとだ、こんなにたくましい兄さんはぼくらの誇りだ」
弟たちは、いつの間にかすっかり強く男らしくなっていた
兄さん子豚に目を見張りました。
理系の知的な末の子豚、
文学的才能に溢れた真ん中の子豚、
そしてたくましい肉体派の兄さん子豚は、
それからも兄弟三人力を合わせて、
仲良く暮らしていきましたとさ。
めでたし、めでたし。
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勤勉さや実直さを教えていくとするならば、
こんな筋立てにしていったっていいわけです。
要は、兄・弟の立場の強弱の逆転で聞き手を惹き付けるか、
他の要素のどんでん返しで聞き手を惹き付けるか、
という視点の置き方次第、ということですね。
そんなわけです。
弟だって、お兄さんだって、
それぞれにより良い成長を目指していけば、
それぞれに素晴らしい輝きを発することができるんです。
ただ、弱い立場の弟が成功をおさめたり、
足の遅いカメさんがレースに勝ったりした方が、
お話として面白くなる。
そういうことなんだろうと思います。
同性同士の兄弟姉妹の物語おいてのみそうした傾向がある、
との点については、対比を明確にしてお話の中心をブレさせない、
といった単純な理由であると思われます。
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民話や昔話について言えば、
こういうものはほとんどが口伝文学で、
特定の作者を持たず、人から人へと
話し言葉で伝えられてきたものですから、
あまり細かい伏線を張ったり、
巧妙なトリックを使ったりして
お話の面白さを強調してみても、
そうしたものは口から口へ伝えられていく間に
どんどん削り落とされてしまいます。
ですから、どうしても、お話としての面白さは、
極めて単純な対比などを用いた筋立てで
表すことになってきます。
言い換えれば、あらすじだけで伝わってきたストーリー。
それが民話や昔話というものなんですよね。
したがって、弱者が強者をしのぐ、弟や妹が兄姉に勝っていく
という筋立てのお話が多いとするならば、
それはそのシチュエーションの単純さゆえ、
と考えることが出来ると思います。
なんだか趣旨が散漫で申し訳ありませんが、
そんなことで、お兄ちゃんを励まして上げてくださいね o(^-^)o