TKC法律情報データベース(LEX DB)を探しましたが「貨幣法」または「自救」で本件に相当する判例はありませんでした。
もし判例がないとすると、学説に依拠するしかないのですが、
法益侵害があった場合、国家機関の手を通じて救済されるのが原則→でも現実には、国家機関による救済を期待しがたい場面もある→そんな場合は、被害者自身による権利回復行為を容認せざるを得ない→「自救行為」。刑法は自救行為につき明文の規定をおいていないので、学説に依拠するしかないのですが、学説では、違法性の本質は法益侵害のみならず社会倫理規範違反にもある→明文の規定がなくても社会的に相当な行為は、超法規的(法律に基づくことなく)に違法性が阻却される→でも例外だから要件は厳格→
①法益に対する違法な侵害がなされたこと →相手の不法行為ですからOKですね。
②侵害された法益の回復を国家の救済機関に委ねると、回復が事実上不可能になる、または、著しく困難になる明白な事態にあること →ここは事案次第
③主観的正当化要素としての自救の意思 →報復目的だとここで引っかかりますね。
④自救のためになされた行為が、その事態における直接的な侵害回復行為として、社会通念上、相当なものであること →お金取られてペイントボールならOKでは?
というわけでご質問の盗難の被害者の取り戻し行為は「自救行為」として行為が相当性の範囲にあれば、違法性が阻却されることがありますが、報復という加害の意思で行った相手に対する暴行(有形力の行使)や貨幣棄損は違法性が阻却されないと考えます。
でもやっぱり判例がほしい所ですが、判例となると貨幣法は特別刑法だからこれに「違反した」って起訴されることが必要なわけで・・・うーん。警察もそんなに鬼じゃないでしょうから、類似の事案で起訴したことないのでは?