昭和27年、オランダのフィリップス社と合弁で松下電子工業が設立されたが、当初の数年間は苦しい経営が続いていた。その頃の新聞記者会見の席上でのことである。
ある記者が創業者に聞いた。「あなたは通産省や銀行、社内でも必ずしも賛成でなかったオランダのフィリップス社と技術提携し、たくさんの資本を投下して立派な工場をおつくりになった。けれでも、経営成績はどうですか。聞くところによると、もうひとつ成果があがっていないということですが・・・・・」
すると創業者は、正直に「その通りです。不景気ということもあったのですが、もうひとつ成果があがっていません」
「将来はどうですか。あなたの技術提携は失敗ですか」
「いえ、私は絶対に失敗だとは思いません。私も、何度となく失敗ではないかと思って反省しました。しかし、必ず成功する。そう私は信じています。なぜなら、私がフィリップス社と技術提携をしたのは、松下電器が発展するためでも、松下幸之助という名前を世間に広めるためでもない。日本のエレクトロニクス工業を世界の水準に早くもっていきたい、という一念からです。決して私心で提携したのではありません。だから私は、必ず成功すると思うのです」
記者は沈黙した。
http://panasonic.co.jp/rekishikan/tokubetsuten/2008/cnr03/cnr03_...