世の中に、病原体や特定蛋白を取り込む結果の疾病が多数あります。そうした発症・重篤者の増加、パンデミック終息のメカニズムを知りたいのです。
ペストや黒死病などは大流行しても自然終息する。これまで何度かのパンデミックがあって、地域で終息したり、グローバルになっても終息したのはなぜでしょうか。「流行して終息する生理学?的な説明」を知りたいのです。
台風や火山噴火、地震、津波などなら発生も終息もわかります。
人間は1000人いれば、この病原菌やウイルスには強いという生命力抵抗力免疫力の強い人が数百人いて、またその病原菌やウイルスに弱い人が数百人いる。その人間のバラツキが他の偶然と重なって流行と終息になるのでしょうか。
パンデミックが収まるのは、残っている人間が強くてその病原体のパワーでは圧倒できないからでしょうか。
あるいは、感染源が自らアポトーシスあるいは弱化してしまうからでしょうか。
参考図書を教えていただくのでも結構です。webサイトなどがあればよろしくお願いします。
http://www.isl.or.jp/service/influenza-jp1918.html
公衆衛生の方には、致死的な流行性疾患は広がりにくく、死なない疾患は広がる、というのがあるそうです。これは、病原体を広める感染者がそれほどの移動を起こす前に死んでしまうからその病気が伝播しない、という話です。一方、鼻水が出るというような流行性疾患であれば、それでも死亡例はあってもさほど危機的状況にも陥らず、感染者がうろうろ歩き回るので世間中に伝播してしまう、というものです。
つまり、伝染病の終息とは、その伝播が止まり、新規の患者発生数が落ち着くという状況をさすのだろうと考えます。もしくは、その疾患に免疫を持つ人が増え、その病原体による致死性が低下した場合をさすと考えてよいのではないでしょうか。これには、人為的な病原体封じ込めやワクチン接種なども含みます。
また、致死性の高いウイルスなどはその伝播の過程で変異して弱毒化するという論もあります。
インフルエンザに関しては、飛沫感染ですから、冬が終わり湿度が高くなると感染が収まるようです。
牛海綿状脳症に関しては、「肉骨粉」と話題になった飼料による伝染が有力なようですから、これを規制したことによって終息に向かっているようです。
ペストに関しては諸説あるようですが、公衆衛生に関する事柄が大きいようです。
1727 年、ドブネズミRattus norvegicus がロシアのボルガ川を東から西へ大集団で移動しているのが観察されている。この後、ヨーロッパにドブネズミがひろがり、200 年後の20 世紀前半までに先住ネズミであったクマネズミがほとんど追い出されてしまった。このとき以来、ヨーロッパではペストは大きな流行病でなくなった。というのは、ドブネズミは下水や屋外に住み、ヒトと密接な接触を持たないからである*8。なお、日本へのドブネズミの侵入も江戸時代である。
http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM1002_03.pdf
つまり、ネズミの大規模な移動か、交易などによりヒトの手によって運ばれる個々のネズミのいずれかにによってペストは引き起こされてきた。
しかしもっとも大きな要因は、この時代にイギリスの東インド会社によって木綿が輸入されたことであろう。
http://books.google.co.jp/books?id=5odi39ElPcoC&pg=PA166&lpg=PA166&#v=onepage&q&f=false
主に感染経路が断たれることによって流行は終息しているようです。
とりあえずこのあたりの話は週末にザラーッとやらせてもらってよろしいですか?
多分、けっこう長文になるものですから。
とりあえず、細胞性/体液性免疫は、早い話が白血球(食細胞)と抗原系があるのだ、というあたりをつかんでおけば良いかと思います。食細胞は体内に侵入した異物を取り込むもの、抗原系は病原体や物質に対しそれを無害化するための機構です。
参考書としては……私は学校でサラッとならって、その後仕事で覚えた口なのでこれというものを思いつかないのですが、『脅威の小宇宙 人体 6』あたりを見るとザックリはわかるんじゃないかなぁ、とも。個人的知識になってしまいますが、免疫の基礎あたりもちょっと週末に腰すえて書きます。
自分で文章を組もうかどうしようか悩んだんですが、こちらのサイトを参照していただきましょうか。
細胞性/体液性の話してたのに自然/獲得になってる! というご批判は甘んじて受けるとして、この獲得免疫……私はここで体液性免疫の話をしたいと思うのですが、新種の病原体にヒトが晒された場合、まずは食細胞などがともかく喰い尽くせ! という勢いで展開するのですが、その結果重篤な状態に陥らず、つまり体内に致命的な損害を受ける前にその病原体をある程度駆逐できた場合、凡そ6~8週でその病原体に対する抗体を組み上げることが可能となります。これはヘルパーT細胞やB細胞が担う仕事なのですが、これが成りますとその人は再びその病原体に晒されても生命の危機を迎えずにすむという状況となります。
では次にパンデミックという現象を考えて見ましょう。
これが起きるにはまず、病原体に感染した人が移動してどこかの集団にその新規病原体をばら撒くという事から始まります。『致命的な疾患~』という分はこのあたりに絡んでくるのですが、その人がその病気に感染し、劇的な転帰をとり死にいたった場合、まずこの病原体の拡散が押さえ込まれるということになります。特にウイルスなどの場合、これは生体内でしか増える事はできませんのでそのウイルスが劇的であれば劇的であるほど再生産されるウイルス量は少なくなる訳で、劇的でなければ逆にウイルス量は増える訳です。
また、致命的な転帰を辿ってしまった人は凡そ移動できませんので別の集団への病原体拡散は抑止されます。嫌な言い方ですけどね。
で、パンデミックの恐ろしい所は、爆発的に患者が発生するために医療リソースが不足し、平時であれば助かる人も手当を受ける事ができず死んでしまう可能性が高まるということです。この場合も、その感染者は移動することができなくなりますし、平時よりも短期間で死んでしまうので、病原体の拡散が減ります。
この2点より、ある地域においてある一定の期間で集団感染が落ち着くというのは、
1)外入の患者(キャリア)がある地域に病原体を持ち込む
事から始まり、
2)初期の患者発生で医療リソースが消耗し
3)中期の患者は手当を受ける事ができず死亡し
4)生き残った患者/病原体に低度の露曝をした無症状者は免疫を獲得し
5)ある時点において、その地域ではその病原体によって死ぬ人がいなくなる
ことから集団感染が収束します。
ちなみに、パンデミックというのは新規病原体による世界的な死亡患者の断続発生というものであって、毎冬起きるインフルエンザの流行はパンデミックとは言えません。アレはああくまでも『流行』です。いやま、千とか万単位で人は死んでいるはずなのですけれどもね。
書物というお話ですが、パンデミックに関してということであれば、岩波科学ライブラリーの『新型インフルエンザH5N1』が私は読みやすいかと思います。これは、いわゆる『鳥インフルエンザ』の話なのですけれども、いつか来る可能性があるH5N1によるパンデミックについての研究書です。