私の拙い英語力ですと、peer(男性)の配偶者(女性)は、Peeress として扱われ、それから、驚いたのですが、夫と離婚した後も、夫に先立たれた後も、Peeressと扱われるとのことです。
だとすれば、ダイアナ妃が、離婚後も、Prince of Walesの名乗りを要求したのは当然だと思いました。夫のPrince of Walesは、儀礼上の名乗りではなく、His own right だからです( His own right でないのなら、彼女の要求は、貴族世界の常識から外れていたということだと思います)。ただ、HRHは放棄して、王族を離れましたが、王族の地位をも継続できる筈だったともいえます。こう考えると、ダイアナ妃は、エジプトの方と再婚しても、「貴族界の慣習に従うなら、私は今でも英国王族の一員の筈だったはずなのだ」と主張できることになってきます。
それとも、peerage と Royal family はルールが違ったのでしょうか。ご意見をおねがいします。
http://q.hatena.ne.jp/1443006466
Courtesy titles in the United Kingdom - Wikipedia, the free encyclopedia
1. 離婚後のダイアナ妃の地位
「Prince of Wales は、チャールズ皇太子の His own right としてのタイトル」という認識で良いと思います。
従って、離婚後もダイアナ妃は Princess of Wales というタイトルを保持できます。
ただ、HRH の放棄と王族からの離脱はイコールではないと考えます。
離婚交渉に当たってダイアナ側は HRH の維持を重視していたようです。
(この敬称を維持することで今後も国事に関わることや未来の国王の母であることを示すことができた)
最終的に HRH は放棄しましたが、王子二人の養育権は夫妻が平等に持つこととなり、彼女はケンジントン宮殿に住み続け、セント・ジェームス宮殿にある執務室も運営し続ける事ができました(運営費はチャールズ皇太子の拠出)。
ダイアナ妃サイドから言えば、敬称を捨てて実を取ったというところでしょうか。
The Royal Family というサイトがあります。
ドメイン名に gov.uk を含むことからお分かりのように、英国政府の公式サイトです。(日本で言えば宮内庁でしょうか)
ここのチャールズ皇太子のページを見ると、離婚後もダイアナ妃は「ロイヤルファミリーの一員として」ケンジントン宮殿に住みチャリティーなどの公務を行っていたという記述になっています。
The marriage was dissolved on 28 August, 1996. The Princess was still regarded as a member of the Royal Family. She continued to live at Kensington Palace and to carry out her public work for a number of charities.
The Royal Family - The Prince of Wales
従って、エリザベス女王などの王族個人の見解はともあれ、少なくとも公式的には、ダイアナ妃は死ぬまでロイヤルファミリーの一員だったという事になっていると言えるでしょう。
ちなみに、HRH の放棄は、1996年8月21日付けでエリザベス女王が公布した勅許状 (letters patent) によるものです。
ダイアナ妃の離婚は1996年8月28日でしたが、ヨーク公爵アンドルー王子の妻だったセーラ妃の離婚はそれより前の1996年5月30日で、セーラ妃は同年の8月21日まで Her Royal Highness Sarah, Duchess of York だったわけです。(離婚前は Her Royal Highness The Duchess of York で、勅許状後は Sarah, Duchess of York)
2. ダイアナ妃が再婚していたら
ダイアナ妃が事故死せず再婚したとして、その後も Princess of Wales のタイトルを保持できるかという問題ですが、これについては1901年の判例があり、保持する事も可能だったろうと考えられます。
この判例は貴族院も承認しているものです。(Courtesy titles in the United Kingdom - Divorced wives and widows who remarry)
ただし100年以上前の判例ですから、実際に再婚してタイトルの保持を主張していたら、それなりの論議が巻き起こっていた事でしょう。
また、チャールズ皇太子が再婚した時点で、結婚相手が Princess of Wales のタイトルを得る事になります。
現在の Princess of Wales のタイトルホルダーは、2005年4月に再婚した カミラ妃 です。
ただし、カミラ妃はダイアナ妃に配慮してこのタイトルを使わず、コーンウォール公爵夫人 (Duchess of Cornwall) を使用しています。
ダイアナ妃が存命だったとして、カミラ妃が所有しているタイトルを使い続けたいと考えたかどうかは謎ですが、そもそもダイアナ妃が存命だったらカミラ妃との再婚自体が生じなかったという可能性もあるかなと思っています。
Prince of Wales は、チャールズ皇太子の His own right としてのタイトルだと考えております。儀礼上のタイトルではないと理解している次第です。
私としては、貴族のタイトルに関する配偶者の権利ですと、先日のURL「
Courtesy titles in the United Kingdom - Wikipedia, the free encyclopedia 」
を読んだ感触としては、Peerageの長子の妻は、離婚すれば、夫の持っていた儀礼上のタイトルの配偶者版は失うし、まだ一度もPeeress になっていない以上、将来Peerage になる可能性も失うと考えております。義父が死亡し、夫が爵位を継いだあとに離婚するならば、引き続き、Peerageとして、爵位(女性形=配偶者版)を維持することになる(*)と理解しております。
この場合、Her Own Right と呼ぶべきなのか、なんと呼ぶのか、皆目わからないところです。
質問文を編集しました。詳細はこちら。
どっちがエライカ ~ 妻は弱し、されど母は強し ~
雅子さまは皇后になれるが、紀子さまは天皇の母になれる。
美智子さまは皇后であり、二人の天皇の母にもなれる。
ダイアナは皇太子妃でなくなっても、国王の母でありつづける。
…… 秋篠宮ご夫妻そろって「こふのとり」とは、すわ壬申の乱か?
── 新春恒例の宮中行事《歌会始 20060112 10:30-11:45 NHK》
http://d.hatena.ne.jp/adlib/20060114 与太郎の歌はじめ
最初の質問文の中に、
「夫のPrince of Walesは、儀礼上の名乗りではなく、His own right だからです( His own right でないのなら、彼女の要求は、貴族世界の常識から外れていたということだと思います)」と書いたのですが、この意味がわかりにくいかもしれないので、本日、補足いたします。
理由は、どなたかが、偶然、この質問回答を見つけられたとき、意味が分かりにくいと懸念されるからです。
私が、His Own Right と書いたのは、そのタイトルを正式に保有するのが、彼の父親や母親であって、彼自身は、儀礼上でそのタイトルを名乗っているに過ぎない(イギリスでは、貴族は複数のタイトルを持ち、通常、その長子は、貴族当主本人の持つタイトルのうち、二番目のタイトルを、儀礼上で名乗ることが多いことを踏まえております)のではなく、チャールズ皇太子の場合は、本人のOwn Rightのタイトルとして、「ウエールズのプリンス」である、ということを指しています。
このタイトルは、母親のエリザベス女王のもの(その場合は、Princessになるでしょうが)で、チャールズ皇太子は儀礼上で、ウエールズ公ならば、話は変わってくるということを含んでいます。