~萌理賞開催~

未発表オリジナルの創作小説・イラストを募集します。テーマは「萌え」モチーフは「夏」で、200~800字程度の日本語文章、またはラフな一枚絵を、回答で見せてください。
他人の創作物の紹介ではなく、完全書き下ろしでお願いします。誰かのコピペはポイント0&回答拒否のペナルティ。なお、投稿作品は私のブログへ転載することを予めご了承ください。
選考の基準として、少なくとも一人は美少女キャラが登場するのが最低条件です。
もちろん、回答にポイントを均等割振などというぬるいことはしません。最も優れた作品には少なくとも200ptを差し上げます。
その他の詳細はトラックバックの「萌え理論Blog」からご覧ください。

回答の条件
  • 1人1回まで
  • 登録:
  • 終了:2006/07/01 21:32:11
※ 有料アンケート・ポイント付き質問機能は2023年2月28日に終了しました。

ベストアンサー

id:mageia No.2

回答回数6ベストアンサー獲得回数1

ポイント200pt

タイトル抜きで、本文800字くらい。



「夏とカキ氷と俺とセミ」

夏。セミが俺の部屋に飛んできた。

「カキ氷でも出すセミ」

あいにく昆虫の知り合いなどいない。

追い出そうと窓を開けると、セミは俺の背中に飛びついた。

「待つセミ! 分かった、萌えだな。萌えが足りないんだな? 人間界のことは勉強したセミ。ばっちり任せるセミ」

そう言って、くるくる飛び回ると、小さな女の子に変身した。

「どうだセミ?」

「や、どうだと言われても」

茶色のタキシードみたいな服を着て、なかなか可愛い。

けれどいったい俺にどうしろと言うのか?

「すこしの間、泊めてほしいセミ。長い地下生活が終わって、やっと出てきた地上セミ」


とりあえず服を着替えさせ、まあ俺も暇なので、しばらく置いておくことにした。

セミはカキ氷が好きだった。

朝から出かけると、道端に金が落ちていないかと下を向いて歩き、百円ほど見つけると駄菓子屋でイチゴのカキ氷を買ってくる。

「至福セミ、至福セミ」

つくづく安いやつだった。


八月も終わりに近づくと、セミの死骸が目立つようになった。

狂ったように飛び回る断末魔があちこちで見られる。

うちのセミもだんだん様子がおかしくなってきた。

ぜいぜい息を切らしながら、そこらじゅうの壁に身体をぶつける。

つんざくような声で叫びながら、動かなくなることもしばしばだった。

「カキ氷が食べたいセミ」

ついに熱を出して寝込んだセミに、俺はカキ氷を持ってきてやる。

「おいしいセミ」

そうつぶやいて、セミは息を引き取った。


俺は屋根の上にいた。

となりにセミの姿をした仲間がいる。

「? 死んでないセミ?」

新参者の仲間らしく、自分がどうなったのか覚えていない。

俺はそいつの手を引き、夜空に一歩を踏み出した。

「死んだんだよ。だからこれからはずっといっしょだ」

「どういうことセミ?」

「俺もな、ひからびて死んだんだよ、あの部屋で。お前が来るずっと前に」

まずこの身体で、どうやってカキ氷をちょろまかしてくるか、教えてやらねばなるまい。

id:sirouto2

ヒネリがあり、オチもついている、投稿作の中では貴重な作品ですね。ただ、最後があまり明快ではない。登場人物は俺とセミだけですよね。「新参者」とか「そいつ」とかいうから人物(セミ物)が増えているように感じます。あと細かいけど結末部分は、「俺もな~」のセリフだけで余韻を残さず終わらせるのが掌編の呼吸でしょう。カキ氷がキーワードなのは分かるけど。ちなみに、生島治郎『暗い海暗い声』が似たような構図ですが伏線もあるし鮮やかです。まあ「シックスセンス」の方が有名ですね。

たぶん「俺」はセミだと思うけど、その場合は「あいにく昆虫の知り合いなどいない」は「昆虫の知り合いなんていたっけ」とか、「朝から出かけるとセミがうるさく鳴いていて、思わず俺まで釣られて鳴きそうになってしまった」とか、ユーモア描写のふりをして伏線を貼ってほしいですね。セミ(俺)の死体も部屋に欲しい。

もう一つの問題は、セミが女の子になったら萌えるのだろうかという根本的問題。ゴキ○○の擬人化がある位ですから全然OKかもしれませんが…。トンボが銀髪でスマートでクールな女の子になったらとか、他にも可能性がありますね。それとタキシードという外見的特徴を示すのはいいですが、語尾の「セミ」は単調ですね。「~ミン」「~カナ」「ジー」とか使い分けて欲しい。例えば「至福カナ、カナ」とか。あと題名の語呂が悪いのと、冒頭二行で題名の要素が全部出ちゃうのはどうか。例えば七五調で「セミと至福のカキ氷」とか。

でも、全体的に殺伐とした話の中で、「すこしの間、泊めて~」のセリフがとても光ります。なぜなら、自分が生きるのが「すこしの間」なのが分かっているという風にも読めるから。あと冒頭とか、「夜空に一歩を踏み出した」とか、ゴチャゴチャ書かないところにセンスを感じました。

2006/07/01 18:58:46

その他の回答19件)

id:kumaimizuki No.1

回答回数614ベストアンサー獲得回数31

ポイント5pt

2作品応募したいのですが、よろしいでしょうか?

一応、両方とも書いておきます。

もし「1作品で」というのであれば、先に書きます「海の家」でお願いします。



作品タイトル:海の家

暑い夏。いつも通りの海水浴場。

そして、いつも通りに海の家の手伝いをしている俺。

相変わらず、海水浴客はまばら。

そんな海水浴場に天使が舞い降りた。

髪は長いストレート。色はちょっと茶色がかっている。

白いワンピースに白い帽子、そして何より白い肌・・・。

彼女は、海水浴を楽しむわけでもなく、ただただ海を眺めていた。

何となく。

俺は彼女に話しかけようと思った。

近づいていくと、彼女が俺の存在に気付いた。

「昨日、このあたりに引っ越してきたの」

彼女は見た目に負けないくらい、かわいい声で答えた。

俺は、手伝いに来ているだけ。夏が終われば帰らなければならない。

そう告げると、彼女はかわいらしい声でこう言った。

「じゃあ、夏が終わるまで一緒にいよう。ね?」

それから、毎日俺と彼女は毎日のように会って、海を眺めながらいろいろ話した。

家族のこと、友達のこと、今までのことやこれからの夢・・・。

そして、夏が終わる日、彼女は別れ際にこう言った。

「また、来年の夏、会えるよね?」

今思えば、名前も連絡先も聴いていなかった。

しかし、俺は思った。

また、来年の夏、あの海水浴場で会えると。




そして季節は巡り、再び夏が来た。

暑い夏。いつも通りの海水浴場。

そして、いつも通りに海の家の手伝いをしている俺。

相変わらず、海水浴客はまばら。

そんな海水浴場に再び天使が舞い降りた。

髪は長いストレート。色はちょっと茶色がかっている。

白いワンピースに白い帽子、そして何より白い肌・・・。

「また、会えたね」

俺の短くて最高な夏が今、始まろうとしていた・・・。


(『海の家』・終)




作品タイトル:幼馴染のプール開き

 「今度の日曜日、一緒にプール行くわよ?」

 幼馴染である、谷口裕子からたった今、電話越しにこう告げられた。

 「プール? 何で急に・・・」

 「いいじゃないのよ。行きたいんだから。それ以外に理由は必要?」

 裕子は相変わらず、ちょっと強い口調で言ってくる。

 それにしても、何で急にプールなんか行きたがるんだ?

 去年もおととしも、今まで一度たりとも、一緒にプールになんか行ったことないのに。

 そう思いながら、俺は裕子の申し出に「いいよ」と答えた。


 そして、日曜日。

 待ち合わせ場所で合流し、近くのプールへと向かった。

 プールと言えば、当然ながら水着という方程式が成り立つのだが・・・

 「何でお前、Tシャツなんて着てるんだよ」

 「い・・・いいじゃないのよ。それよりも、行くわよっ!」

 裕子はちょっと恥ずかしそうな、でもいつも通りの強い口調で答えた。

 「行くってどこにさ?」

 「決まってるじゃない・・・プールに行くのよ」

 「お前、Tシャツを着たまま入るのか?」

 俺の素朴な問い掛けに、裕子は少し戸惑いながら

 「分かったわよ・・・。脱げばいいんでしょ。脱げば」

 と言いながら、Tシャツを脱いだ。

 すると・・・俺は、思わず裕子の水着に視線が釘付けになった。

 てっきり、スクール水着かと思ったのだが・・・まさか、ビキニとは・・・。

 しかも、成長するところは成長しているし・・・。

 「な・・・ちょっと。そんなに見ないでよ・・・恥ずかしいじゃない」

 裕子はあからさまに照れながら言った。そして・・・

 「べっ・・・別に、アンタにこの水着を見せたかったから、誘ったんじゃないんだからね!?」

 この時、ようやく裕子の思惑が分かった。

 このビキニの水着を俺に見せたかったんだな。そして、俺と一緒にプールで遊びたかったんだと。

 「よし、Tシャツも脱いだことだし、いっちょ遊びますか!」

 「ちょ・・・ちょっと・・・!!」

 俺は裕子の手を引っ張りながら、プールへと向かったのだった。


(『幼馴染のプール開き』・終)

id:sirouto2

これより選考作業に入ります。

各作品の講評はこのコメントで、総評はトラックバック先の「萌え理論Blog」で行います。

最初の作品。オーソドックスで破綻はないですが、意外性に欠けますね。ほとんどの投稿作に言えることですが、800字なのに冗長です。『海の家』で「暑い夏~白い肌」が完全にリピートしてますが、それが効果を発揮するのは長編で、800字だと単なる重複に見えます。あと細かい話ですが「・・・」が15回繰り返されると、800字中45字も占めます。もったいない。

そんなこんなで薄い印象です。両作とも「そして季節は巡り~」「そして、日曜日。」から始める位で構いません。クーンツが、スチューカが急降下爆撃を仕掛けてくるところから書き出す感じで。800字なのでテレフォンパンチでタメを作るとパンチが届く前に終わっていまうんですよね。都筑道夫の、ショートショートは切り口を見せるんだという話ですね。

水着が白いのは天使だからですか。でも「(俺の)天使が舞い降りた」ってちょっと赤面フレーズですよね。サリンジャーは『バナナフィッシュにうってつけの日』で、肩甲骨を天使の羽にたとえますが、同じように例えば、夜に花火を振り回して天使の輪に見せるとか、背景の波が天使の羽に見えるとか、何かこう、紋切り型のイメージをリサイクルするための工夫が欲しいですね。

あと二作投稿するなら文体を変えないとダブって見えますね。そこで最初の作品だけ、参考に私が200字以内でお手本を書きます。例えば阿部和重『シンセミア』の文体の豊かさに比べたら、あまりに陳腐で馬鹿馬鹿しい代物ですけど。

――Halo――

そして夏が終わる夜、少女は別れを告げる。

光の残像で頭上に向日葵のような輪を描く。

波打ち際の彼女が見せた、花火のさよなら。

十二の星座は一周し、織姫と彦星が再会した後。

あの海岸に一人佇む。砂浜の足跡は遠い後想曲。

光芒に溶ける人影が現れる。紛れもない彼女。

麦藁帽子から流れる黒髪、白い水着と淡い肌。

太陽を背に受けた彼女は、光暈を纏っていた。

   ――END――

『幼馴染、夜のプール開き』

「あっもしもし、裕子だけど。今度一緒にプール行くわよ、夜。い…いいじゃないのよ? べっ…別に、アンタにこの水着を見せたかったから、誘ったんじゃないんだからね!? ちょ…ちょっと…!! スクール水着の上に濡れTシャツを羽織った格好、ってバッカじゃないのあんた!? だいたい。あんたが雲を落としたおかげで、一年中晴れになっちゃって、雪女のわたしは夜しか行けないんだから責任取りなさいよ!」

   (終)

2006/07/01 18:55:39
id:mageia No.2

回答回数6ベストアンサー獲得回数1ここでベストアンサー

ポイント200pt

タイトル抜きで、本文800字くらい。



「夏とカキ氷と俺とセミ」

夏。セミが俺の部屋に飛んできた。

「カキ氷でも出すセミ」

あいにく昆虫の知り合いなどいない。

追い出そうと窓を開けると、セミは俺の背中に飛びついた。

「待つセミ! 分かった、萌えだな。萌えが足りないんだな? 人間界のことは勉強したセミ。ばっちり任せるセミ」

そう言って、くるくる飛び回ると、小さな女の子に変身した。

「どうだセミ?」

「や、どうだと言われても」

茶色のタキシードみたいな服を着て、なかなか可愛い。

けれどいったい俺にどうしろと言うのか?

「すこしの間、泊めてほしいセミ。長い地下生活が終わって、やっと出てきた地上セミ」


とりあえず服を着替えさせ、まあ俺も暇なので、しばらく置いておくことにした。

セミはカキ氷が好きだった。

朝から出かけると、道端に金が落ちていないかと下を向いて歩き、百円ほど見つけると駄菓子屋でイチゴのカキ氷を買ってくる。

「至福セミ、至福セミ」

つくづく安いやつだった。


八月も終わりに近づくと、セミの死骸が目立つようになった。

狂ったように飛び回る断末魔があちこちで見られる。

うちのセミもだんだん様子がおかしくなってきた。

ぜいぜい息を切らしながら、そこらじゅうの壁に身体をぶつける。

つんざくような声で叫びながら、動かなくなることもしばしばだった。

「カキ氷が食べたいセミ」

ついに熱を出して寝込んだセミに、俺はカキ氷を持ってきてやる。

「おいしいセミ」

そうつぶやいて、セミは息を引き取った。


俺は屋根の上にいた。

となりにセミの姿をした仲間がいる。

「? 死んでないセミ?」

新参者の仲間らしく、自分がどうなったのか覚えていない。

俺はそいつの手を引き、夜空に一歩を踏み出した。

「死んだんだよ。だからこれからはずっといっしょだ」

「どういうことセミ?」

「俺もな、ひからびて死んだんだよ、あの部屋で。お前が来るずっと前に」

まずこの身体で、どうやってカキ氷をちょろまかしてくるか、教えてやらねばなるまい。

id:sirouto2

ヒネリがあり、オチもついている、投稿作の中では貴重な作品ですね。ただ、最後があまり明快ではない。登場人物は俺とセミだけですよね。「新参者」とか「そいつ」とかいうから人物(セミ物)が増えているように感じます。あと細かいけど結末部分は、「俺もな~」のセリフだけで余韻を残さず終わらせるのが掌編の呼吸でしょう。カキ氷がキーワードなのは分かるけど。ちなみに、生島治郎『暗い海暗い声』が似たような構図ですが伏線もあるし鮮やかです。まあ「シックスセンス」の方が有名ですね。

たぶん「俺」はセミだと思うけど、その場合は「あいにく昆虫の知り合いなどいない」は「昆虫の知り合いなんていたっけ」とか、「朝から出かけるとセミがうるさく鳴いていて、思わず俺まで釣られて鳴きそうになってしまった」とか、ユーモア描写のふりをして伏線を貼ってほしいですね。セミ(俺)の死体も部屋に欲しい。

もう一つの問題は、セミが女の子になったら萌えるのだろうかという根本的問題。ゴキ○○の擬人化がある位ですから全然OKかもしれませんが…。トンボが銀髪でスマートでクールな女の子になったらとか、他にも可能性がありますね。それとタキシードという外見的特徴を示すのはいいですが、語尾の「セミ」は単調ですね。「~ミン」「~カナ」「ジー」とか使い分けて欲しい。例えば「至福カナ、カナ」とか。あと題名の語呂が悪いのと、冒頭二行で題名の要素が全部出ちゃうのはどうか。例えば七五調で「セミと至福のカキ氷」とか。

でも、全体的に殺伐とした話の中で、「すこしの間、泊めて~」のセリフがとても光ります。なぜなら、自分が生きるのが「すこしの間」なのが分かっているという風にも読めるから。あと冒頭とか、「夜空に一歩を踏み出した」とか、ゴチャゴチャ書かないところにセンスを感じました。

2006/07/01 18:58:46
id:xx-internet No.3

回答回数9ベストアンサー獲得回数1

ポイント1pt

およそ 200 字(400byte)です。


花火の夜、少女が宇宙飛行士の伯父に想いを打ち明ける。

「藍ちゃん、俺は遠い星に行っちゃうんだよ?」

「忘れません」

「忘れるよ」

「絶対忘れません」

「その気持ちは花火と一緒だ。綺麗だけど消えちゃうんだよ」

「忘れてあげません」

少女は一人宇宙船を見送る。夏はロケット。ようよう遠くなりゆく。

38年経つ。

「忘れませんでした」

「藍ちゃん」

「こんなお婆ちゃんを捕まえて藍ちゃんはないでしょう」

id:sirouto2

発表の都合上、無題の作品はこちらで仮の題名をつけて扱います。例えばこの作品の場合、「無題(夏はロケット)」と呼びます。

う~ん…、憧れの同級生が久しぶりに再会すると中高年になっちゃってたりする、ということは現実でもありますが、それって萌えじゃなくて萎えに近いんじゃないでしょうか。あと「忘れ」が繰り返されて単調なので、何か言い換えて欲しいですね。「この想い出は~」とか。

『ほしのこえ』の場合女の子は年を取らないので、萌えは損なわれないどころか、まるで永遠の思い出のように機能するわけです。どうしてもお婆ちゃんを出すにしても、芥川の『舞踏会』のラストのように、ロマンを残してください。

2006/07/01 01:51:40
id:screammachine No.4

回答回数13ベストアンサー獲得回数0

ポイント10pt

タイトル『風のない島』

「空の高いとこにさ、でっけー雲みてーのがあるがよ?あれがよ、落ちてきたんさ、むかし」

 バイクの後ろにこの娘を乗せたのは、よこしまな気持ちが半分。

 娘は無造作に伸ばした黒い髪をゆらして、よこしまなぼくに微笑んだ。

「犯人は見つかってねーがよ」

 浮かんでいるのは雲じゃない。

 この世界が常夏になった原因は、ぼく以外に誰も知らない。

「やしが、見つけるばよ、犯人」

 少女の細い腕がぼくの体に巻きつく。ぼくは涙をこらえた。

id:sirouto2

中長編の書き出しみたいに思わせぶりで、単体で完結していない作品です。しかし、作品の提示するイメージや世界観は、謎が残るもののとても魅力的です。方言を喋るのも短いセリフでキャラを立たせる一手法でしょう。想像の余地がある作品です。それから題名もすっきりしていいですね。「AのないB」はSF的な反実仮想の世界のタイトルに合っていると思います。

…タイトルでは「風がない」んだけど、バイクに乗っていることによって風が生じて、髪が揺れているというのはいいですね。ただバイクに載っている感じが全くしないので、流れる景色が欲しいですね。島なら海があるはずなんですが、そこに雲(みたいなもの)が落ちているのを、海沿いに走るバイクからスペクタクルで描写していたら最高ですね。

2006/07/01 18:13:34
id:nekoprotocol No.5

回答回数9ベストアンサー獲得回数0

ポイント5pt

真っ白なワンピ、エスパドリーユ、リボンのついたストローハットに手を添えて、木漏れ日の中を歩いてくる少女。さっきまでの蝉時雨が遠くのさざなみみたいに、小さくなる。まるで彼女の回りだけ空気が変わったみたいだ。

「ちがうよ」

え?

「みたい、じゃなくてホントに変わるの」

ポツリ。雨粒がほほにあたる。それがましろとの出会いだった。

 * * *

ましろは雪女だった。

「ううん」

そうだったな。低血圧ならぬ低気圧少女。

「そうそう」

ましろの親族は冬には雪女と呼ばれ、夏には雨女と呼ばれていた。フロリダでは大きな被害を生む。

「あっちの娘らはちょっとやりすぎなだけ。まわりのこと考えてないの。空気読めてないっていうか」

空気読みはこのさい関係ないと思うけど、とにかくあの日。ましろに会ったあの夏。いきなり降りだした雨の中、僕はましろの手を引いて駆け出していた。大きな木の下で雨宿りする間、いつまでもやまない雨に毒づきながらましろのことをちらちら横目でみてた。

「雨嫌い?」

そんなにね。そういうとましろの顔が曇った。鈍感な僕はわけもわからず、ただバカなことを言ってはましろを笑わせようとしてた。ましろの顔がパァッと晴れる。外の雨とは対照的だった。

 * * *

夏休みも終わりのころ、僕の青白い肌を見てましろが言う。

「やっぱりダメだよね。多分私じゃダメなんだ」

そういって急にいなくなった。自分が低気圧であること、僕に迷惑をかけて申し訳ないと思っていること、そんなことがつづられた一通の手紙。外は晴れていた。今年の梅雨は9月まで続きましたね。異常気象でした。ブラウン管の向こうでアナウンサーが梅雨明けを宣言した。

 * * *

彼女がいなくなってもう何年だろう。いつかまた彼女に会えると信じて。彼女が現れたら一番に彼女を見つけたくて、僕は今の仕事についた。

「ましろ・・・また会えるかな」

「そうだね。きっと会えるよ。まってて。よしずみ」

id:sirouto2

「(無題)低気圧少女ましろ」としておきます。

雪女がいつもいるパターンは『ぬ~べ~』とかですが、ここでは冬には雪女、夏には雨女というキャラ造形です。「ましろ」という名前で、とにかく肌が白いだろうなとイメージを喚起する時点で既に、萌えノベルでは大きなアドバンテージになりますね。あと真っ白なワンピ~の出だしとか、夏と雪女の衝突の効果も良いでしょう。

しかし、長編で戦記でも書くならともかく、超短編を断章で小分けにするのはどうか。これは一行空けでも同じことですが、そこで何年も場面を飛ばすのは、字数の少なさとバランスが悪く、結果的に全体の印象が薄くなります。

800字だから一つのシーンを描いた方が印象深く、どうしても飛び飛びにする場合、髪が伸びたり日焼けしたりと時間処理を上手くやるか、飛ばした先を対照的なシーンにするかの工夫が欲しいですね。

この問題に関して最初のお手本『Halo』では、三流のセンチなポエムみたいでいかにも頭が悪そうですが、いちおう夜の花火→星座と映像を継承した上で、「一年が過ぎた」という時系列を円が一周する空間のイメージに変換して、その上で夜の波→流れる黒髪と場面転換をつないで、夜と昼を対照的に(ちなみに向日葵は太陽という言葉を引き寄せる)配置しています。意外なオチで勝負しない場合は、そういうイメージの響きあい、和音がないと印象が弱いですね。

2006/07/01 18:25:33
id:nitino No.6

回答回数5ベストアンサー獲得回数0

ポイント10pt

イラストの応募です。どの程度までのラフを描けばいいのか解らなかったのと、絵のサイズがちょっと解りませんでした。自分である程度調整したのですが、質問者様のご期待にそえてなかったら申し訳ありません。

http://marie.saiin.net/~nitino/kitchen/image/moeri.gif

よろしくお願いいたします。

id:sirouto2

イラストにもタイトルがあるといいですね。

「無題(猫耳座敷わらし)」としておきます。

イラストの投稿は貴重でありがたいですが、やや仕事が雑ですね。もう少し丁寧に描けるだけの画力があるはずです。というかその丁寧バージョンはトラックバック先にあって、これは文句ないんですが、追風参考記録というか、選考には含まないことにします。

猫耳で座敷わらしのキャラが面白そうですが、メインキャラとの関係がさりげなく示されているといいですね。暑い上に座敷わらしがチョロチョロしてうざいという表情でしょうけど、見えていないというにも解釈できるので、もし旧知の知り合いの場合、手をつなぐとか頭を撫でるとか、何かの工夫がいるでしょう。

2006/07/01 18:27:07
id:objectO No.7

回答回数8ベストアンサー獲得回数0

ポイント1pt

タイトル抜きで219文字です。

『自動人形』

風がでてきた。風鈴が音を立てる。

人形の修理を終えて手についたグリスをぬぐう。

人形には蝋缶が仕掛けられていて、発条を巻くと歌いだす。所有者を転々としたらしく、蝋には何人もの少女の声で歌の断片が刻まれている。

「…の岸を離れ…翼が欲し…」

裸の人形が歌う。彼女が投げつけたときに壊れた人形から飛び散ったグリスで紅く染まった服は脱がせた。

彼女は出て行った。


「ごめんなさい」

人形が彼女の声で言う。

今すぐ彼女を迎えにいこう。



「…謝るから…殴らな…殺…」




あれ、萌え?

id:sirouto2

雰囲気はいいんですが、セミよりもっと分かりにくいオチ。誰か(彼女? 主人公?)が死んだ・既に死んでいた・これから死ぬというオチなのかと思いますが、説明不足でイマイチよく分からない。よく分かんないんですけど、録音できる人形とかそういうギミックはいいですね。グリスが血のように赤いとかも。ただ風鈴に大した意味がなく、夏らしさが弱いですけど。

「あれ、萌え?」が大蛇足。「蝋缶」「発条」とかちょっと難解な言葉で雰囲気を出した後で、照れて弁解するように自己突っ込みするのって、それが一番萌えないと思います。

2006/07/01 18:53:16
id:sorasemi No.8

回答回数6ベストアンサー獲得回数0

ポイント1pt

応募いたします。

いつも四百字詰め原稿用紙二枚という自分規定で、短編小説を書いていますので、ぴったりでした。


タイトル「寒天の2

 この晴天だと、外はきっと目玉焼きが焼けてしまうのだろう。ガラス一枚隔てたこちらは、クーラーによって凍えるほど寒い。

「はい。……マイナス1です」

 冷静すぎるお隣さんの正確な解答は、場を盛り上げる気なんてさらさらなかった。

「塾なんかに通ってるから、学年トップがとれるのか?」受験から解放されたばかりの夏休みに夏季講習に来る暇人、鈴村に訊ねる。

「通ってないわよ。それに学年トップでもない」同族には興味ないようだった。

「でも、クラスじゃ一番だったろう?」

「学年では二番だった」

 学校以上に退屈な空間。唯一の知りあいである彼女と席を取るようになったのは、終業式の次の日。一週間経っても僕らは梅雨空のまま。

「お前も、誘ってくれるやつとかいねーのかよ。毎日ここ来て」

 欠伸をかみ殺している時に、何か言われたような気がしたが、特に向き直らなかった。寒さが眠気を誘ってきた頃に、腕を突っつかれる。

「一緒に、う……み……」

「はぁ、なに?」

 授業中よりもさらに小さな声を、うまく聞き取る事ができなかった。鈴村は真っ赤になってノートにシャーペンを走らせる。半ズボン姿で彼女の前に現れた事はなかったが、指差すところを見ると、どうやら僕を描いたらしい。

「あー……」

 僕は外に視線を逃がした。「な、何よ。何がおかしいの」鈴村は反対側の窓を見つめる。

 学年トップがとれなかったのは、美術のせいか——。

 むずがゆくて鼻を掻く。誰となく、休みの間会えなくなるカップルを笑い飛ばしてやりたかった。寒過ぎるこの教室の、二つの席だけは、熱く固まっている。

id:sirouto2

ラノベの場合イラストが付きますからいいんですが、ここでは鈴村さんの外見の描写が欲しいですね。まあ優等生キャラなら大体見当はつきますが、そのイメージを少しずらすような描写で光ってくると思います。

あと短編を書いているということで、手馴れている印象はあるものの、描写する対象が学校の成績とかではあまり有り難味がないですね。どうせなら海に行って欲しいし、教室にいても携帯から海の画像を見るとか、何かエスケープする方法があると思います。

ユニークなタイトルで遊ぶのは面白いんですけど、全体と結びつかないと単発の思いつきに過ぎません。ダウンタウンで「正義の見方」というのがあったけど、美術を入れるなら「寒天」が「観点」になるとか、あと数字で遊ぶなら、まず『ウィンドウ』みたいに作品内で際立たせた上で、記号的な使い方から段々「二つの瞳」のように有機的になって、しかもその熱を帯びた視線は窓の外の「目玉」焼きが焼ける直射日光のまぶしさにつながるとか、もっと工夫してください。

2006/07/01 18:49:30
id:hanhans No.9

回答回数11ベストアンサー獲得回数0

ポイント1pt

428文字。

題「メロン」

夏の冷房と言えば僕は扇風機だと思うが、今日からはクーラーに趣旨替えだ。

設定温度は20度。そして冷蔵庫にはスポーツドリンクの大きいやつを冷やしておく。

水枕はあるけど氷嚢を作る程氷は無かったから、湿らしたタオルで代用。

これでいい。

「ごめん」

「いいよ別に。暇だしさ」

「ごめん」

それでもあやまる彼女に、額のタオルを換えながら僕は諭すように言った。

「あのさ、別に気にしなくていいんだって。僕としては君みたいな女傑タイプが病気とかで気弱になったら萌えるかな~、とか思って来ただけだからさ。興味本位だから、その、なんだ」

「ごめん」

「あーもう、調子狂うなぁ」

「ごめん」

それでもあやまる彼女に、額のタオルを換えながら僕はバカにするように言った。

「古人曰く、夏風はバカしかひかない」

「ごめん」

「……。君の知り合いのバカ一号が何を勘違いしたんだか、フルーツバスケットなんか僕に持たせやがったんだけれど、なにか、食べる?」

「メロン」

「即答かよ」

僕は台所に向かいながら、そう答えた。

id:sirouto2

基本的にタイトルでもう結末がネタバレしてて驚きがないですよね。読者は「即答かよ」とは驚かない。そこら辺で主人公と読者が解離してしまいます。『姉はきっと水平線~』『毎日ひとりごと』の場合は後で意味付けが加わるからいいわけです。

タイトルを『夏風邪』とかにするか、メロンは高くて買えないので、メロンのカキ氷とかメロンパンとかメロンソーダにするとかずらして、その上で更に幼い頃はよく食べてて~と回想するみたいな、それ位の工夫があるとよかったですね。あるいは「夏期限定メロンソーダ事件」位に派手な題名にするとか。

コミカルなタッチで描きたいのなら踊るだけの体力がいりますよ。中途半端だと単にユルイ話に見えます。例えば「ごめん」を五回「バカ」を三回繰り返すのは芸がないですね。「ごめん」「めんご」「めろん」みたいにずれていくか、「おバカさん号」(ちょうど三人)とか、ナンシー関は嫌がると思うけど、何か言葉遊びをしてみるとか。

2006/07/01 18:51:49
id:duke565 No.10

回答回数2ベストアンサー獲得回数0

ポイント1pt

 題名が恥ずかしくって気に入ってます。260文字ぐらいです。

 『たぶんあの子はヴァンパイア』

「血を吸うのはメスの蚊だけだそうです」

「ふ~ん。でも女って本来そういうバイオレンスな生き物なのよ。そうやって生きていくウ・ン・メ・イなの」

「なるほど。では一人で花火を見た後に家に帰ってソーメンを食べて寝ようと思ってた俺が、こうして花火も見ずに川原で貴方と二人で大量発生した蚊に血を貪られてるのもウ・ン・メ・イということですか?」

「そ。運命。そして君は私とこれからキスする運命」

「・・・」

「何よ。嫌?」

「いいえ。いつもよりバイオレンスな貴方にちょっと驚いてるだけです」

「血は吸わないから、安心して」

「・・そうですね」

(おしまい) 

id:sirouto2

蚊とヴァンパイアの結びつきが薄いですね。「もともとヴァンパイアは蚊から進化した」位の大法螺を吹いてもいいと思いますね。あとまるで蚊が血を吸うように舌が長くて何かを吸い取るようなキスをするとか、そうやってモチーフを絡ませてやらないと、設定が萌えにまでつながっていかないですね。

あと会話だけでつなぐと対等の立場になって、ヴァンパイアの存在感が出ないですね。新伝綺にする必要はないけど、基本的に異能者なんでそれなりの雰囲気作りが必要ですね。これはありがちですが、八重歯が長いとかマントを被っている位の外見的特長に触れて欲しいですね。コミカルな掛け合いだけにするにしても、ネギまのエヴァが「下僕は足を舐めろ」とかあれ位のキャラ立ちを。

2006/07/01 04:52:51
id:desoeuvrement No.11

回答回数1ベストアンサー獲得回数0

ポイント1pt

図書館

 ハローワークも涼しかったが、図書館はもっと涼しかった。漫画喫茶が一番涼しい上に椅子が後ろに傾くというサプライズ付きなのだと承知していたが、Fには解せないことに有料だったので行かれなかった。

 際限無く集まってくる年寄りに混じって陽の当たらない席に座っている内に、若い女が行き来しているのに気付いた。

 何のあてもないのか本を探すのに余程不慣れなのか、書架の隙間から幾度も顔を覗かせた。二十歳前後のようだが一見して顔色が悪い。歩き回っていて平気だろうかと心配になったFは、後を尾けることにした。

 女はせわしなく周囲に視線を送りながら、しかし書名に目を通す気配もなく、ただ足早に歩き回っていた。その様子は面白いものではなかったので、Fは主に身体の方を見ることにしたが、角を曲がり続けながら付かず離れずの距離を保って視姦を試みるのは思いの外困難で、程なく疲れて立ち止まってしまった。

 何気なく手を伸ばして本を一冊引き抜いてみると、聞いたことのない作家のハードカバーの小説だった。それを手に先程とはまた別の陽の当たらない席に着き、Fは時折視界の隅に現れる女に気を取られながらも読み進めていった。

 偶然知り合った言動の不自然な美少女に徐々に惹かれていく物語を引き抜くのは、偶然と呼ぶにしてはありふれた出来事であったかもしれない。

 Fは顔色の悪い女が大好きだったのだが、女のしていることがまるで理解できなかった為に、今から接点を持つことなどできないように感じられた。

 夕暮れ時の窓の外には、制服姿の高校生も、サングラスをかけた謎めいた雰囲気の女もいる。何でもいいとは言わないが、女のありふれているの対して、涼しいところのなんと少ないことか。

 一冊読み終える頃には顔色の悪い女の姿は無くどこかほっとしたものの、いざ帰ろうとすると本をどの書架から取ってきたのかFにはどうしても思い出せなかった。

id:sirouto2

「F」というから、スパイ小説のような仕掛けがあるかと思いましたが、図書館で女を見てただけですか。「エヌ氏」とかやっていいのは星新一くらいですね。どうしてもやるなら、『すべてがFになる』みたいに符号に意味があるとか。会話がないのも寂しいですね。

テーマが萌えなので、主人公の感想よりヒロインに注目が行くようお願いします。「図書館や顔色の悪い女は世間の人間にとって大したことはないかもしれないが、F(作者)にとっては~」という内面の特権化は退屈ですね。客観的なアクションなしで、自意識だけを描いても仕方がありません。『箱男』の安部公房くらい、屈折した意識で視姦するならいいですけど、ニートの主人公だけならありふれています。

顔色の悪い女は男の庇護意識をくすぐるというか、萌えになりうるのは分かるので、そこをもっと掘り下げたい。例えば気分が悪くて倒れて、他の人は関わり合いになりたくなくて避けるけど、ニートの主人公だけが助けたみたいな、そういう展開なら設定にも意味が出てきます。登場人物同士は接点を持ってください。

2006/07/01 18:47:23
id:comnnocom No.12

回答回数14ベストアンサー獲得回数3

ポイント1pt

なんとなく丁度900バイト。


『あついなつ』


うだるように暑い夏休みの午後、僕は早坂の家に行った。

「いま、お茶いれるから座ってて。」

「うん。」

「あついよね?」

そう言いつつ台所からカップを二つ持ってきて、テーブルに置く早坂。

「ああ、そうだな。暑いな。早坂の呼出しがなかったら、こんな汗だくになることもなかったんだけどな。」

と軽く毒づきながらカップを手に取り、口に運ぶ。

「熱っ! なんだよこれ!」

「さっき、熱いよね? って聞いたら、熱いなって言ったから、分かってるもんだと思ったんだけど?」

早坂は意地悪な笑みを浮かべてそう言う。

「帰る。」

そう言って立ち上がると、早坂は慌てて

「あっ、ごめんごめんてば。ねぇ、ここ教えて。」

そういって俺に見せるのは、連立二次方程式の単元。これ、去年の教科書じゃねえか。

「早坂って頭いいのか悪いのかわかんないよな。」

「へへ、数学は日本語じゃないから時間がかかるんだよね。」

そんな早坂を見返しながら、自分の顔が火照っているのを感じていた。

夏の暑さのせいか、お茶の熱さのせいか分からないけれど。

(了)

id:sirouto2

夏が暑いとか、お茶が熱いとか、みんな常識的なことなので、ひねりが欲しいですね。顔が火照るという風につながるのは分かるんですけど。例えばお茶にしても、なぜジュースではなくわざわざ熱いお茶を出すのかに理由があるとか。例えばダイエットするためにジュースは禁止しているとか、そこでさらにお腹がぷにぷにしているか確かめるとか、何でもいいですけど、そういう風に単発の記述がコンボで連携していくと、小説的な空間の拡がりが出てきます。

「数学は日本語じゃないから~」に凄く深い意味があるのかとも思ったけど、結局よく分かりませんでした。20作全部読まないといけないので、仕掛けが微妙すぎると分からないですね。

2006/07/01 18:46:52
id:bachihebi No.13

回答回数6ベストアンサー獲得回数0

ポイント1pt

『毎日ひとりごと』

蝉が啼く季節になってからも彼女は毎朝僕を起こしに来る。

僕も毎日目覚まし時計をかけるのだが、彼女は設定時刻より早くやってきて勝手に止める。

「だって私が起こしたいじゃない」

「いや、自分で起きられるし」

「嘘ばっかり。目覚まし止めたらまた寝ちゃうくせに」

「それに夏休みなんだからそんなに早起きしなくても」

「もう明るいんだから起きないと勿体ないよ?」

「起きたって何にもすることないよ」

「宿題、沢山あるんでしょ?」

「僕は追い詰められてからやる気を出すタイプなんだ」

「そんなこと言って、毎年やらないじゃない。しょうがないなあ」

「うん、しょうがないな。じゃ、おやすみ」

「おやすみじゃない!じゃあさ、どこか行こうよ。今日は暑くなりそうだから、プールなんてどう?」


この子は何でこんなに元気なんだろう。

春先に事故で死んだというのに全然幽霊らしくない。

結局その日は一緒にプールに行った。

id:sirouto2

題名とオチが結びついていて良いですが、夏→怪談→幽霊はそれほど意外ではないので、鍵を閉めているのに部屋に入ってくるとか、鏡に映らないとか何かの伏線を設けたり、会話だけでなく一工夫欲しいところです。下は映像での叙述トリックの例。

http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20060630#p1

あと妹とか第三者が「お兄ちゃん最近毎日ひとりごとばっかり言って~」とする設定もできて、そこでさらに妹の言動に二重の意味があった、位までいくと面白いです。

2006/07/01 02:41:56
id:ombrage No.14

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ポイント1pt

『思い出す夏』

 学校は今日から夏休暇である。数少ない得意科目を除いては、いまいち見栄えのしない成績表を鞄にしまいこむと、わたしは茉里絵と連れ立って、クラスメイトたちの雑談でにぎわう教室を早々に抜け出した。

 冷房のきいたあたらしい校舎から外に出ると、一度に熱気がおそってくる。セーラー服からはみだした腕を、じりじりと焼くような真昼の日差しだ。しかし、それも今日から夏休みなのだと思えば、それほどうらめしくもなかった。

「どこか、寄っていく?」

 そう言って、隣で歩く茉里絵を見やると、めずらしく浮かない顔をしている。

「どうしたの、通知表、何かわるかったの?」

 茉里絵は成績の面では問題などないはずだった。勉強のたぐいはもちろん、体をうごかすような科目も、べつだん苦手ということはない。どれもそつなくこなしていた。茉里絵が終業式の今日、落ち込む理由など見当たらないようにわたしには思えた。

「ねえ、茉里絵ってば、どうしちゃったわけ? 今日から休みだっていうのに。……あ、気分でもわるいの」

 茉里絵のねんじゅう透き通った白い肌では、顔色がわるくなってもいまいち分かりにくい。わたしはあわてて、茉里絵の顔をのぞきこんだ。

 あいかわらず、美少女のような顔をしている女である。などと、妙なことを一瞬かんがえる。自分も同い年であるのに、「美少女」なんて形容をするのは、まるで年輩のおじさんの目線で見ているようで、なんだかおかしい。だが、物語のなかに出てくるような美少女というのが実在するとすれば、それは茉里絵のような女なのであろうとわたしは思っていた。茉里絵は染みひとつない白いセーラーに、乱れなく整った、ほどよい長さのプリーツスカートという、校則に少しも反することのないまっとうな着こなしをしていて、しかしそれがよく似合っている。茉里絵の栗色の髪はいつも控えめにつやつやと輝いていて、まつげも不思議なほど長い。

 どうしてわたしは茉里絵といちばん仲が良いのだろう、ということをたまにかんがえる。それはわたしと茉里絵の容姿からわたしが勝手にかんじとっている、差のようなものが原因だった。しかし、そんなことを気にしているのはわたしのほうだけで、茉里絵はというと、いっさい考えたことがないという顔をしていた。頭の中まではのぞけないから、わからないけれど。

 しかし、そんなわたしにも先月、はじめて彼氏というのができた。友だちのつきあいでなんとなく出かけた男子校の文化祭で、気の合う男の子に出会ったのである。彼は、見た目が端正であるというタイプではなかったが、ほどよく日焼けしていて、はにかむとかわいい感じのする男の子だ。しかも、わたしと同じロック・バンドが好きだ。わたしたちは、メールや電話でお互いの学校のことや、あたらしく買ったCDや、そのほかのくだらないことまでも話し合い、それが毎日の楽しみになっていた。

 いっぽう、茉里絵がふさぎはじめたのがその頃からだった、とか、そういうことに気づくだけの思いやりがそのときのわたしにはなかった。わたしはただ、その日からはじまる夏休みを、男の子や、茉里絵や、そのほかの友だちとともに目いっぱい愉しめると思い込んでいて、茉里絵の気持ちになど気づく余地もまだなかったのである。だが、「夏」と聞いて真っ先に思い出すのは、いまだにあの、茉里絵がかろうじて隣にいたあの夏のことである。

id:sirouto2

文字数制限にはそんなにこだわらないけれど、でも格闘技の重量別のようなことでちょっとフェアでないので、長い分は差し引いて考えます。

それで、長い分効果が出てるかというと、むしろ散漫で冗漫な気がします。「図書館」と同じ自分語り系ですね。回想だけで物語が動かない。一人で感想を長々と独白したり、回想にふけったり、いちいち心理を分析して物語を停滞させるのが、ブンガク的なんだと思われているふしがあるけれど、それで飽きさせず読ませるのは難しいですよ。例えば大江健三郎の『死者の奢り』では死体処理という異様な状況で、死という重いテーマに重い語り口が釣りあっているわけです。

とくに、「あいかわらず、美少女のような顔をしている女~」のくだりはくどいだけでなく、(自分でもオジンくさいと意識しているけれど)年頃の女の子にしてはやや不自然な感想な気がします。「物語のなかに出てくるような美少女~」だけで十分でしょう。こういう女の子の気持ち小説みたいのでは、太宰治の『女学生』が軽やかで華やかです。

というかそもそも「である」体での一人称がエラソーで不似合いですね。綿矢りさや金原ひとみとか女流作家がわざとやるなら格好がつくんですけど。これも大江で「この惑星の棄て子」では、父の「である」体を娘は使わないとか、長々と語って、話者が前景化してくる場合には、そういう工夫が欲しいですね。

2006/07/01 17:44:57
id:extramegane No.15

回答回数2ベストアンサー獲得回数1

ポイント10pt

『姉はきっと水平線を思い出しているのだ』


窓をふたつ開けて風が通るようにし、姉とふたりでじっとしていた。騒がしいと暑く感じるのでラジオの音量は小さくしてある。うちにはテレビがない。姉が何かに気付いてドアのほうを向いた。アパートの外階段を上る足音を察知したのだろう。勢いよくドアが開いたと思ったら、幼馴染のナナミネだった。

「姉弟ふたりして体育座りしてると思って、アイス買ってきたぞ。一緒に食べよ。ユメミさんはカップアイス? ノゾムはソーダね」

「勝手に決めるな。そのチョコバーがいい」

姉はそんなやりとりを聞いて微笑んだ。こうして姉とぼくの静かな朝は台無しになった。

アイスを食べながらナナミネは

「あ、そうだ。重大発表があります」

と大声を出し、運転免許証を見せびらかした。

「おめでとう」

「反応薄いなぁ。これで私はどこまでも行けるんだぞ? 海でも、山でも、東京でも!」

そして30分後、ぼくと姉はナナミネ父所有のセダンにむりやり乗せられていた。車は、昔ぼくら3人がよく連れて行ってもらった浜へ向かう。カーラジオが梅雨明けを告げた。

浜に到着して最初に目に飛び込む、入道雲と水面のコントラスト。ナナミネとぼくは遠くを眺め、景色が昔と変わらないことに感心した。人気がないのも、狭いのも、相変わらずだ。姉は波の音に耳を澄ましている。

「海のにおい、懐かしいなあ。ねえねえノゾム、この海、昔のまま? 私が見た、あのときのまま?」

あの頃、まだ姉には視力があった。


日差しを浴びて、いつのまにかうとうとしていた。ナナミネがぼくの肩を叩き、目が覚める。指先の方向を見ると、砂に文字。

(ねえキスしようよ)

ナナミネがぼくの背中に手を回す。ぼくは、指先で貝殻を弄ぶ姉の姿を、ナナミネの肩越しに眺めていた。キスが終わるまでずっと。

id:sirouto2

結末付近は背徳感があっていいですね。叙情とエロスがある。というか、投稿作にキスシーンが少ないのがむしろ不思議ですね。それに直接エロを描かなくてもアイスキャンデーを舐めるとか、色々できるのに。とにかくこの作品はシチュに萌えますね。

それで、単に登場人物が三人出ているだけでも人間関係が豊かになるという良い例です。「姉弟ふたりして体育座りしてると~」とかのセリフも人物の距離感が出ますね。

また、タイトルといい、名前のカタカナといい、ほどほどの違和感を与えます。想像の中の遠い水平線と、足元の砂文字の対比もいいです。なんか喪失感みたいなものが表現されてますね。まっとうな小説的展開です。

2006/07/01 18:44:39
id:mizunotori No.16

回答回数37ベストアンサー獲得回数6

ポイント10pt

うん、ラノベネタなんだ。済まない。

谷川流の髪もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。



『the lily blooms in summer』


私は美少女だ。


図書室に向かう途中で告白をされた。

何事かを言う少年の顔は、私にはひどくぼやけて見えた。

たぶん断ったと思うが、記憶は曖昧だった。

少年は無言で走り去ってしまった。

彼を傷付けてしまったかもしれない。

けれど、私は誰からも責められないだろう。

こんなことをしても許されるのは、私が美少女だからだ。


夏休みになっていた。

校内の図書室へなんとなく足を運ぶうち、彼女とよく話すようになった。

いつも彼女は表紙にアニメのイラストが描かれた本を読んでいて、今日もそうだった。

「それ、面白い?」

「萌え」

彼女は意味不明な単語を呟いた。

「萌え?」

「簡単に言えば、好きってこと」

「なんていう本なの」

「最近アニメ化された」

知らない?と目で訊ねてくる彼女に、私は首を横に振ってみせた。

「……わからないわ」

「わからないならわからないでいい」

彼女は教えてくれなかったが、表紙に書かれたタイトルが見えた。

帰りに買ってみようか。


私は美少女だ。

「このなかに宇宙人と未来人と超能力者はいないかしら?」

その教室では補習授業が行われていた。

君でも冗談を言うんだな、と微笑みを寄越したのは教師だった。

幾人かの生徒は好意的な視線を私に向けていた。

私は無言で踵を返した。


パソコン室へ行った。誰もいなかった。

モニタも本体も重かったので、キーボードを一つだけ鞄に入れた。

誰も私を咎めなかった。

私が美少女だからだ。


「うらやましいと思う」

彼女は言った。

「あなたはきっと何をしても許されるのでしょうね」

私は曖昧な笑みで回答を回避した。

ただ、ずっと彼女の瞳を、鼻梁を、そして唇をみつめていた。


私は美少女だ。

けれど、彼女に接吻することも許されないのだ。

id:sirouto2

ごめんこれが全作品で一番萌えた。とにかく主人公に単純に萌えました。ただ…それは谷川の力が大きい気がするんですよね。あの強力なイメージを借りて成立してるというか。SS的というか。一応オリジナル勝負なんで。

題名(百合)もいいし、書き出しと主人公は一番インパクトがあります。ただ最後まで、美少女の私のナルシシズムが崩れないのですが、ばかなこの私が恋だと美少女なのに、みたいな弱さを見せると感情移入できますね。

2006/07/01 19:03:43
id:sasuke8 No.17

回答回数12ベストアンサー獲得回数2

ポイント1pt

タイトル『先生と』

「あちー」

先生は扇風機に向かい、風に顔を嬲られている。。

「何?」

見てるのに気付かれた。

「先生がそんな風に乱れるの見たことなかったから」

こんな弛緩した人じゃなかったと思う。

先生はため息をついてこちらに向き直った。

「あのね。あれは仕事なわけよ。規律に厳しいのも、授業をするのも、仕事。で、これはオフなの」

「いくらオフでもそんなこと言っていいの? 生徒に」

「大丈夫よ。仕事中の私は、オフの私を知ったくらいの生徒には負けないから」

一瞬、いつもの先生に戻った気がした。やっぱり同じ人だ。

「確かに。明日になったら、今日のことは夢みたいに思ってしまうかも」

「でしょ。それにね。竹田君は賢いからね」

「頭悪いから、勉強教えてもらいにきてるんですけど」

「テストとかは関係ないよ。自信持ちなさい」

「教師モード……じゃないよね」

「違うよ。私はオフには仕事しないから」

だから、さっきから何も教えてくれないのか。

「…先生」

「先生じゃないってば」

「じゃあ星野さん」

「ふむ。何?」

ずっとこうだったらいいのに。

「メガネの方がかわいいですね」

「やっぱり賢いね。君は」

そう言って先生は笑い、僕はやっぱり他の奴らには見せたくないなと思った。

id:sirouto2

先生と二人きりで特別授業、という典型的な萌えシチュです。冒頭、「風に顔を嬲られている。。」の記述はちょっと驚きました。「。。」はミスだとは思うけど、扇風機の前で声を出すと「ヴヴヴ」と振動するみたいで、面白いですね。でも顔が崩れるのって萌えじゃないから、あくまで遊びの範囲ですね。

(おおげさに言うとフーコー的な性と権力が~とかになりますが)教師を出すなら、だらしないよりピシッとしてる方が萌えます。「あちー」だとあずまんがのゆかりですね。あれはともと同じレベルに降りていて色気がないですね。ズボラでがさつで無防備なのも萌え要素かもしれませんが。

いや、普段はピシッとしていてそれを崩すというのは分かるんですけど、普段のイメージが二重写しになるような仕掛けが欲しいですね。例えば他の生徒と写った記念写真の中では~みたいな。スイカに塩というか、ほんの一振り普段の授業のような真面目腐ったことを言う(英語とか数学とかにわかに分からないのが効果的)とか、年齢差を見せ付けるのは一つの手法です。

2006/07/01 17:29:25
id:castle No.18

回答回数1011ベストアンサー獲得回数12

ポイント5pt

 

お盆の一日だけ死んでしまった彼女に会える。

 

「たーくちゃん、待った?」

「待ってねえ。ていうかいい加減その子ども扱いやめろよ」

「だって、こっち来るといつもたくちゃんお墓の前でボロボロに泣いてるんだもん。刺激されちゃうっていうか? 母性本能」

「もう慣例行事だろ。気にするなよ、と。気にしないで忘れろよ」

毎年繰り返してきたいつもの似たような会話をしながら駅から降りて近郊のこのあたりでは比較的に大きな街のショッピングモールをのんびりと歩いていた。

今日、ゆきがあらわれてもう8時間が過ぎていた。今年の別れがやってくるまであと4時間ほど。

公園でアイスクリームを食べながらこっちの世界で何があったかを話していたら時間は吹っ飛ぶように過ぎ去っていた。

「いくらあっても足りないよね、時間」

「そうだな。あと10年間くらいほしいな」

木陰でひざしをさけるようにベンチに腰かけ、ゆきはじーっと拓を見上げると。

「ねえ、今年はまだ彼女できないの?」

あー、いつもの時間がきたな、と思いながら拓はゆきの隣にすわる。

「いねーよ。いてたまるか」

「おかしいな、こんないい男を放っておくなんて、世の女どもは見る目がありませんな」

「ありませんなー」

「たくちゃんってもしや非モテ?」

「ブッ! ちょ、馬鹿! ちげーよ!」

「だよねぇ」

むー、としかめっ面をして太陽を見上げるゆき。

「なあ、ホントのホントに暑くないのか?」

「暑くないってば。それ、毎年いつも聞いてくるよね。本当に飽きないんだから」

はぁと溜息をひとつついて「じゃ、そろそろいこう?」とゆきは立ちあがった。

「うーん? そうだな。もうちょっとこうしていたかったけど」

「相変わらずのんびり屋さんだねえ。来年こそたくちゃんの新しい彼女ちゃんと紹介しなさいよ」

そんなことしたらお前成仏しちまうだろが、とかみ殺して拓も立った。

「あー善処する」

「絶対だよ」

といつもの約束をかわす。

ふたりは

あと4時間で――。

 

 

【完】

*******

 

すんごいありきたりなネタでごめんなさい!!

某アニメの影響受けまくりでごーーめーーんーーなーーさーーいーー!!!

id:sirouto2

「無題(お盆の一日)」としておきます。

この『黄泉がえり』的設定は良いんですけど(『夏はロケット』で言った無時間の想い出の世界)、冒頭で説明するよりオチに持ってきた方がいいんじゃないですか。もし冒頭で出すなら彼女が生き返るか主人公が死ぬかとか。

オチに凝るのは志賀直哉が「背負い投げ」とか言って批判していますけど、800字しかないなら意外な結末の場合は読み返してくれると思うし、ショートショートではどんでん返しを仕掛けないと印象が弱くて、実戦的には損ですね。

中途半端に残された四時間に何をするのかも気になるので、それを暗示するものが欲しいですね。例えば四時間近い長編の恋愛映画を見てて、でも最後1分だけ余っちゃって、キスをするとか。まあちょっとクサイですけど。

2006/07/01 19:04:41
id:deillumination No.19

回答回数2ベストアンサー獲得回数0

ポイント5pt

 安直ですが、失礼します。

 *

 爽やかな風が私の湿りきった心を清潔に干してゆくようだった。開け放たれた出窓から吹きこんでくる乾いた風は、風鈴をちりんちりんと鳴らしながら、モニターのベゼルに貼ってある付箋と、私の長い髪をはためかせる。まるでそれに目線があるかのように、私はWebカメラを意識してしまい、ドキドキする。彼女と話す時はいつもそう。320×240のウィンドウに映った30fpsの苺子は、年に似合わぬ無邪気さで、今日友達と何処其処で遊んだ、おいしいケーキ屋さんをみつけた、街のイルミネーションがきれいだ、飼っている猫を抱くとあったかい、などということを楽しげに話しかけてくる。私はそれにじっと耳を傾け、ネットの海を飛び越えるとびきりの笑顔を、これ以上ない幸せな気持ちで見つめる。ときおり不意打ちのように飛んでくる、「智理ちゃん」という心のこもった呼び声に、胸をときめかせながら。

 遠距離恋愛の難易度を急激に緩和させた技術の進歩に感謝しながら、私は去った故国のこの月この日の過ごし方を脳裏に思い浮かべていた。寒々とした空気を和やかに暖める一冬の椿事。もうそんなことは想像もできないくらい、私はこちらでの生活に慣れきってしまった。現に私は今はTシャツ一枚しか着ていない。それで十分なのだ。

 そろそろ時間だ。こちらと向こうとでは一時間の時差がある。なので、私たちは一年に二度、この日を祝えるというわけ。羨ましい?

 時計を見ながら、私と苺子はカウントダウンしていった。三、二、一、

「メリークリスマス!」

id:sirouto2

「無題(ウィンドウ)」としておきます。

夏というモチーフが入ってるとすれば、北半球と南半球に別れた女の子同士の遠距離恋愛といったところでしょうか。風の流れに託した導入部分がスムーズでいいですね。『風のない島』に対して「風のある部屋」というところでしょうか。それに『あの子がいる』の窓がわりと古典的な装置なのに対して、320×240のウィンドウというクールさが現代的です。

狭い文字数の中でモニタを通して距離感を出して(しかも「ここ」がネットなので読者もモニタ越しに見てますし)、夏に「メリークリスマス!」が来る結びは目立ちます。設定に工夫が感じられます。投稿作に平凡な題材が多い中で、これはちゃんとモチーフ選びをしています。

が、モニタでこの文章は少し読みにくいので、改行とか工夫してください。説明も分かりにくいです。「何処其処」とか「椿事」と「Webカメラ」「30fps」みたいな言葉の食い合わせも悪い感じです。あと「~わけ。羨ましい?」とか読者に語りかけるのは、あんまり上品ではないですね。吉本ばななとかが少しやるけど、あれは親子で有名人ですから。

2006/07/01 18:39:48
id:tplusf No.20

回答回数6ベストアンサー獲得回数1

ポイント10pt

「おはよう」

 また目が覚めた。ここんとこ毎日、この時間に目が覚める。

 理由はわかってる。……たぶん。

 勢いよく起き上がって、窓の方を向く。

 白くて薄いカーテンが光っている。

 左手に握っていたイヌのヌイグルミをベッドに置いて、窓に近付く。

 そっとカーテンを押し開ける。

 あの子がいた。

 隣の小さな家の庭の、小さな木と小さな花壇に、ホースで水を撒いている。

 鼻歌でも歌っているのかもしれない。つま先がリズムをとっている。

 大きなわら帽子を頭に乗せて、いつものキャミにショートパンツ。

 細い手と足に、小さな背丈。

 強い日差しに、肌は真っ黒に日焼けしている。

 大きな帽子に隠されて、表情は見えない。

 ふいにあの子が、手で額を拭う。

 その拍子に目が合った。

 大きくて黒い瞳。驚いた色から、好奇心の色へと変わる。

「おーい! おはよー!!」

 満面の笑みでこっちに手を振った。

 私はあわててカーテンを閉め、後ろを向く。

 胸がどきどきしている。

 パジャマのスカートの裾が揺れている。

 挨拶とかしたことないのに。名前も知らないのに。ちょっと前に引っ越してきたばかりなのに。

 どうしていきなり手を振ってくるの? へんだよ。

 壁のカレンダーをみつめる。

 息を吸って、はいて、スカートの裾を握って、もう一度カーテンを開く。

 きっとまだそこにあの子がいる。

 おはようって言ったら、おはようって返してくれる。

 明日からの夏休みがきっと楽しくなる。

id:sirouto2

「無題(あの子がいる)」としておきます。

爽やかなあの子と私の淡い片思い。思春期前の女の子同士で生じる、友情と恋愛の曖昧な領域というのは、確かに萌えですね。『たけくらべ』みたいな少年少女小説の系譜でしょうか。

全体を何度か読み直してみましたが、意外とこの作品がいちばん小説的な文章力があるかもしれない。難しい言葉は一つも使ってないけれど、むしろそのことから丁寧に言葉を選択して文体を作っていることが読み取れます。記述は透明で正確ですし、実は地味に上手い。

短編という地の利を生かしていて、『海の家』の反復や『低気圧少女ましろ』の断章の問題はないし、『ウィンドウ』のあけすけな「羨ましい?」に対して、奥ゆかしい「へんだよ。」ですし、『思い出す夏』のような叙述と語り手の解離の問題もありません。洒落たつもりで無理がある軽率な表現は、慎重に避けています。

語り口についてもう少し言うと、主人公を全く説明していないのに、小学生高学年~中学生くらいではないかと語り口自体から想像できる。もしこれが「私は訝しげに少女を凝視した。」などとやってしまうと、物語全体をぶち壊してしまいます。まあ西尾維新…例えば『りすか』みたいに意識的に解離させる戦略もありますけどね。

ただ、投稿作は全体的に大人しい印象ですが、超短編なんでもっと暴れてしまっても構いません。『図書館』のように登場人物同士の接点がほとんどなくて、窓という幻想的フィルターを通してかろうじてつながっていて、しかも全体がモノローグ調なのがちょっと弱いですね。

2006/07/01 19:08:35
  • id:sirouto2
    選考終了致しました。応募者の皆様、ありがとうございました。
    http://d.hatena.ne.jp/sirouto2/20060701/p1
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