建築請負で請負人に帰責性のある仕事完成後引渡し前の履行不能の場合、請負人の債務不履行責任に基づき、注文者は解除できますか?

 民法365条但し書きにより土地の工作物については仕事を完成してしまうと、たとえ瑕疵があったとしても契約の解除はできないとされています。
もっとも、これに関して、判例は、建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるをえない場合に、注文者が請負人に対し、建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することは、635条但し書きの趣旨に反せず許されるとしています。
 請負の担保責任は、債務不履行(不完全履行)の特則であるので、「不完全履行」の債務不履行の場合は債務不履行の規定が排除されて、請負人の担保責任の規定が適用されます。建築請負の建物完成後不完全履行(瑕疵がある)の場合なら、請負人が損害の賠償金を注文者に払うことで危険負担の公平が実現するから解除が制限されても問題ありません。
 では請負人の帰責事由による建物の滅失(履行不能)の債務不履行の場合も請負人の担保責任の規定が債務不履行の規定に優先して解除はできないのでしょうか? 

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滅失の場合は可能。 falcosapiens2006/05/08 09:53:34ポイント2pt

まず,原則としては,請負人の帰責事由による履行不能の場合も請負人の担保責任の規定が債務不履行の規定に優先して解除はできないと考えられます。

請負人が,注文者の指示を確認せず,どんどん建築を進めてしまった結果,注文者が必要な建物が建たなかったが,他の用途であれば使用可能な場合(主観的瑕疵)を考えてみてください。

この場合,仮に解除が可能であれば,解除により原状回復が要求され,建物は収去されることになるでしょう。

そうなれば,重大な社会経済上を損失を生じます。

それゆえ,635条は請負人の帰責事由の有無を問わず,解除を制限している規定と読むべきです。

(また,仕事の目的物に瑕疵を生じるようなときには,請負人の帰責事由が認められる場合が多いでしょう。)

原則は以上ですが,おたずねの場合は,建物滅失です。

この場合,解除→原状回復となっても,例外的に重大な社会経済上の存在を生じないものと考えられます。

そうであるとすれば,例外的に解除を認めても635条の趣旨には反しないことになります。

なお,この点に関しては以下の文献が参考になるものと思います。

(立命館法学「建築請負契約の目的物の主観的瑕疵と請負人の瑕疵担保責任」松本克美)

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/04-6/matsumoto.pdf

ご回答いただきありがとうございます。 orph2006/05/08 14:10:27

私は635条の趣旨を、公平な危険負担を実現することだと考えるので、falcosapiens さんの意見に同意です。

建て替え費用に相当する損害賠償額を認めるなら、

建物の滅失で請負人に帰責事由のある場合は、報酬債権と損害賠償債権の相殺は、解除とほとんど変わらないわけですし、

その際の建物収去費用を注文者が負担しなければならないとするのは、注文者の側に重大な社会経済上の損失を生じさせ、建物の滅失に帰責性のある請負人を過度に保護するものであり、公平でないと思われます。

よって、この場合注文者には解除が可能であり、解除された請負人は原状回復義務を負うと思ったのです。

falcosapiens さんが提示してくださった参考文献の、注釈26の部分にあるように 解除可能性があるように思います。

論文で自論を述べるにしても、通説を押さえた上で書くのと、そうでないのとでは、説得力が違ってくると思います。

独学で、身近に尋ねられる人がいないので、

疑問に思う箇所が、本によっては違う意見で述べられていて、そのどの本も対立する意見を取り上げていない場合、

そもそもこの部分は争いのある部分なのか、 それとも、通説が存在するのか、と不安でした。

同意見の方の回答をいただいた事と参考文献を見れたことは心強いです 。

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