【イエはてな】“イエ・ルポ 2” #048

その日は前の晩から雪でした。しんしんと降りしきる、といった表現がぴったりのような夜でした。明日は積もるかな。窓を開け、うっすらと白くなっていく景色を見て、それから眠りに就きました。

翌朝は、眩しい朝日で目が覚めました。なんだ、やんじゃったのか。その日はまだ冬休み。私はそのまま布団を被って二度寝してしまいました。しばらくして、コンコンとドアを叩く音。そして母の声。

「いつまで寝てるの？せっかくの雪が溶けちゃうよ」

わ、と思って顔を上げて、驚きました。南の窓の外が青いんです。どんな晴れの日でも、窓に青空の色が映ったことはありませんでした。なのにその朝だけは、まるで窓の下に青空があるような色なんです。もちろん窓が真っ青に光っているというわけではありません。ほんのりと青みがかっている程度の色ですが、それでもいつもと違う光の色は、私を驚かせるのに十分すぎるものでした。私の部屋の南の窓は型板ガラス。ガラスの表面の凸凹の模様にほんのりとした青が拡散して、部屋を明るく照らし出していました。

起きあがって、窓を開けてみました。すると窓の外は真っ白な雪景色。そこに太陽が反射して、眩しいほどに光っていました。きっと雪が空の青を鏡のように反射して窓に映し出したのでしょう。それは雪が地面に青空を連れてきたということ。そう、地面の雪はもう一つの空なんです！

大慌てで着替えた私は、歯磨きもそこそこに庭に飛び出しました。そして雪の上に大の字になって寝そべりました。今私は地上の空に浮かんでいる。あの天からここを見下ろしたら、きっと私は真っ青な空のまにまに漂っているみたいに見えるに違いない。そう思いました。天上のみなさーん、今日は私が天の人ですよー。

起き抜けに雪の上に寝そべったので、だんだん体が冷えてきました。太陽の熱で少し溶け始めてた雪が後頭部を直撃してキーン。もっと地上の空に寝そべっていたい私でしたが、名残を惜しみながら家の中に入りました。

最近、わが家の地域では、すっかり雪が少なくなりました。温暖化による気候変動のせいではないかと思います。今年は国際生物多様性年ですが、生物の多様性を守る大切な柱の一つが温暖化防止です。私はこの冬の朝を思い出すたびに、冬こそ大幅なCO2削減を目指そうと心に誓うのです。